GPTであそぼ

鹿又杏奈\( ᐛ )/

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すずちゃんのJK生活

第34話 探索者の影

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裏文芸部としての探索当番が割り振られた翌朝、一郎は人の気配もまばらな早朝の学園に足を踏み入れていた。

東棟。グリフィンチ学園の中でも、主に研究職志望の生徒や技術系部活が活動している静かな建物。その片隅に、昨日までとほんの少しだけ“何かが違う”気配を一郎は感じ取っていた。

(……気配は、消えてる)

彼の《探索》が拾う情報は、視覚や聴覚をはるかに超えた「場の記憶」にも近い。昨日まで感じた“異物のようなうねり”は消え、今はただ空間が異様なまでに静まり返っている。

「まるで……“気配そのもの”を削ぎ落としたようだな」

つぶやいた声も、壁に吸い込まれていくように小さく響いた。

彼の《探索》は精密かつ広範囲。ただし、相手が“自ら存在を隠す”能力に長けている場合、その網は空振りする可能性がある。昨日、かすかに感じた不快なざわつき。それが、ただの偶然だったとは思えなかった。

(……何かが、こちらの能力を“学習”している?)

そう考えると、背筋にじっとりとした汗がにじんでくる。

手にしていたカバンを床に置き、古びた帳面をそっと取り出す。彼の一族が代々記してきた“異能の記録”。ページのいくつかは破れ、残る文字も古文体で読みづらいが、そこには明らかに“今回のような何か”について触れている一節があった。

「視えざる者とは、見ることを拒む者なり。
それは影の意志にして、構造を持たぬもの」

(……やっぱり、“それ”か)

この記述にある「影の意志」は、一郎がかつて子どもの頃に一度だけ体験したことのある“正体不明の気配”と酷似していた。あの時も、どんな異能でも正体を掴めなかった。

(けど、あの時は“観察”されただけで終わった……)

校舎の壁際にある空気口へ視線を向け、慎重に手をかざす。

一郎の《探索》が起動。音、温度、空気の流れ……ありとあらゆる感覚を重ねて編まれた網が空間に広がっていく。

「……ここに、“いた”」

声に出すことで確信が増す。

それは“何か”の残した、かすかな靄のような痕跡。完全に消え去ってはいない。だが、明らかにこちらの網を避けるように動いた形跡がある。

(痕跡を追えば、向こうの“意思”がわかる……はず)

そう思った瞬間──

ピリッ、と首筋をなぞるような感覚が走った。

(……視られている?)

直感的な“拒絶”の気配。それは恐怖というよりも、本能的な緊張を誘うものだった。

誰もいないはずの廊下。けれど、確かにそこに“視線”がある。

「やっぱり、“視えない敵”ってのは……本当に厄介だな」

ふっと苦笑混じりに呟いたその言葉は、自分を奮い立たせるためのものだった。



その頃、校舎の屋上では、紅葉が空を見上げながら無線で一郎と連絡を取っていた。

「……どうだった、一郎?」

『例の場所には確かに痕跡があった。けど、奴は意図的に網の隙間を縫ってる。探索されないように、ルートを変えてる』

「探知回避行動か。いやらしいな」

『それだけじゃない……“気配”はあった。けど、悪意じゃない。“興味”だ。まるで、俺たちを観察してるみたいだった』

紅葉は黙り込んだ。

観察──

その言葉に、彼女は一つの警鐘を感じ取っていた。裏文芸部の“対処対象”が明確にこちらの様子をうかがい、学習しているとしたら──

「小鈴ちゃんや楓に近づく前に、こちらから動くべきかもしれないな」

『同感だ。でも……まだ楓には言わないでくれ』

「わかってる。“異能に関わらない”って、あの子と約束したからね」

紅葉の表情には、静かな決意が浮かんでいた。



その日の昼休み、日常は何事もなかったかのように流れていた。

優凜は食堂の片隅で例の“幻想科学小説”を執筆中。謎の図形をノートに描きながら、時折ページに何かを書き込んでいた。

楓は校庭で助っ人としてサッカー部に混ざり、元気にボールを蹴っていた。都斗はその様子を日陰からぼんやりと眺めていた。

そんな中、小鈴は購買でパンを選び終えた帰りに、廊下の曲がり角で一郎とばったり出会った。

「あ、一郎くん。……って、顔色、悪い?」

「……? ああ、ちょっと集中してただけだよ」

「そう……でも、無理しないでね。“探索”って、すごく神経使うと思うし……」

柔らかな声に心配を乗せて覗き込まれると、一郎はほんのわずかに目線をそらした。

「……ありがとう。でも、僕の役割は“記録者”だから。……戦うのは、他の人の役目だよ」

「それでも……一郎くんは、十分に頼りになると思う」

不意に返された言葉に、一郎は一瞬驚いたような顔をした。

そして、ふっと、柔らかく微笑んだ。

それは、ほんの一瞬の出来事だったけれど──
小鈴にとっては、彼の“心の距離”が、少しだけ近くなったような気がした瞬間だった。



その夜、東棟の廊下にふわりと何かが現れた。

音もなく、気配もなく。
まるで空間の継ぎ目から染み出すように、輪郭の曖昧な“何か”が滑る。

そして、そのままどこかへと──

ほんの一瞬、校舎全体の空気がざわついた。

まるで、扉が開いたかのような。

まるで、“何か”がこちらの世界に入り込んだかのような。

それは、静かな侵入だった。

けれど──
確かに、“予兆”だった。
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