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すずちゃんのJK生活
第41話 プレゼントは戦場だ!
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休日の午前中。晴れた空の下、駅前のショッピングモールは軽やかに賑わっていた。
カフェのテラス席には親子連れの笑い声が響き、通路を行き交う人々は、夏の終わりを惜しむかのように軽装で軽やかだ。服屋のショーウィンドウには秋色の新作が並び、耳をすませば、流れるBGMのテンポにもどこか高揚感が宿っている。
そんな中、小鈴は改札を抜け、ショッピングモールの広場に出た瞬間、思わず足を止めた。
「それにしても……どこ見ても広すぎる……」
人混みに溶け込む前に、小さく深呼吸。胸の奥が、そわそわする。今日はただの休日じゃない。乃斗楓の誕生日プレゼントを探しに来た、大事な一日なのだ。
せっかくなら、“自分にしかできない”贈り物にしたい。それが小鈴の中の、ささやかだけれど確かな目標だった。だけど──
(でも、その“自分らしさ”って……何だろう?)
思いつくものが、なかった。頭の中にぽつりぽつりと浮かぶのは、ありきたりな品ばかりで、楓にふさわしい気がしない。
──何か、ヒントが欲しい。だから今日は、実物を見て、ひらめきに出会うための“探索”の日。
そんなことを考えながら、ふとエスカレーター前を通りかかったときだった。
「……小鈴ちゃん?」
思わず反応してしまうほど、聞き慣れた柔らかい声。
「わっ! 優凜先輩!?」
そこにいたのは、いつもとは違う服装の優凜だった。白いブラウスに、薄青のジーンズ。髪を少しだけ結んで、カジュアルながら洗練された印象で、どこか年上の女性のように見える。
思わず見惚れてしまった自分に気づき、顔が少し熱くなる。
「まさか、同じ目的?」
「は、はい。楓ちゃんへの……プレゼント、です」
「ふふ。やっぱりね」
優凜は、手に持っていた紙袋を軽く揺らして見せた。
「私は、ちょっとしたアクセサリーを見て回ってたわ。楓ちゃん、細かいところまでおしゃれには気を抜かない子だから、喜んでくれると思って」
「なるほど……」
確かに楓は、元気全開な運動少女なのに、髪型や靴下の柄など、細部に気を遣っている印象がある。さりげないけれど、確かなこだわり。
「それと、手作りのレターセットも考えてるの。武器を作るだけが私の能じゃないってところ、見せたいしね」
さらりと言ってのけるあたり、どこか余裕を感じさせる。飾らない強さに、思わず憧れてしまう。
「じゃ、私は次の店に行くわね。健闘を祈ってる」
「はいっ、ありがとうございます!」
深く頭を下げた瞬間、風のように去っていく先輩の背中が少し眩しく見えた。
──と、その数分後。
「おっ、小鈴じゃん。来てたんだ?」
今度は別方向から、紅葉がアイス片手に現れる。今日の彼はいつにも増してリラックスした雰囲気で、Tシャツにカーゴパンツという、いかにも兄貴分らしいラフさだった。
「紅葉先輩まで!?」
「だってプレゼント選ぶならここが一番でしょ? 俺はもう大体候補決まってるけど」
「どんなの選んだんですか?」
「ふふん、ひみつ。ただ──今の楓に一番必要なものを考えたよ。体のメンテナンスグッズと、あと……ちょっとしたサプライズ仕掛けができる箱」
「サプライズ……?」
「開けた瞬間、音が鳴って、メッセージが流れるんだよ。“今日も全力で頑張れ、楓!”ってね」
「……兄バカですか?」
「正解っ☆」
得意げに親指を立てる姿に、小鈴は思わず笑ってしまった。真剣だからこそ、少しだけ空回っている。でも、その不器用な優しさが、きっと誰よりも伝わる気がする。
──さらに、数十分後。
文房具店で可愛いペンを選んでいたところ、今度は黒酒一郎と鉢合わせた。
「……あれ、小鈴さん?」
「黒酒くんも、プレゼント……?」
「ええ。外部生のくせに、と言われたくないので、全力です」
その真顔に、ちくりと刺さるものがある。
「うわ、刺さる……」
「僕は“探索”を使って、楓先輩が最近立ち寄ったお店や商品をリスト化してきたんです。そこから選べば、失敗はありません」
「いや、それ完全にストーキング……!」
「参考調査です」
きっぱりと言い切るあたり、確かに筋は通っている。異能を実用的に使っている時点で、ある意味で彼も“本気”だ。
「今のところ、有力なのは高性能のマッサージクッション。彼女、全身酷使してますからね。実用性で勝負です」
「意外と、実用的……!」
そんな言葉を交わしつつ、気づけば小鈴はまたひとりで雑貨店、書店、インテリアショップなどを回っていた。
(でも……なんだろう。何かが、決め手に欠ける)
気持ちはたくさんあるのに、それをどう伝えればいいのか、分からない。
と、その時。
買い物メモを握りしめたまま、足が止まる。
そこは──手作りアルバムのコーナーだった。
白い台紙、シール、リボン、カラフルなペン、クラフト用の小物たちが、棚いっぱいに並んでいる。
(……そうだ)
出会った日、席が隣になって、気さくに話しかけてくれたこと。緊張していた自分を、何度も笑わせてくれたこと。裏文芸部の活動。文化祭。夜の探索。彼女の無邪気さと勇気に、何度助けられたことか。
「……これだ」
白いアルバムの台紙を手に取る。手が震えるほど、確信があった。
──彼女に贈るのは、言葉と想いのアルバム。
“普通じゃない”日々の中で、自分がどれだけ支えられてきたか。その全部を、写真と手書きのメッセージで伝える。それなら、きっと“私にしかできない贈り物”になる。
決意を胸に、スマホが震えた。
《文芸部(裏)》グループチャットが動いている。
紅葉:
全員、何買ったか言わないけどヒントだけ出してくってのどう?
優凜:
ふふ、いいわね。匿名で投稿しましょう。
都斗:
楓はまだフォーム確認中。戻るのは夜。時間はある。
???:
「全身ケアグッズ+メッセージ」
「手作りアクセ&手紙」
「最近の行動を分析した便利グッズ」
「日々の記録、詰め込んだ1冊」←New!!
──それぞれ違っていて、それぞれ“らしい”。
画面を眺めながら、小鈴の口元が自然とほころぶ。
(……あと少し。頑張ろう)
誕生日まで、あとわずか。勝負は、これからだ。
カフェのテラス席には親子連れの笑い声が響き、通路を行き交う人々は、夏の終わりを惜しむかのように軽装で軽やかだ。服屋のショーウィンドウには秋色の新作が並び、耳をすませば、流れるBGMのテンポにもどこか高揚感が宿っている。
そんな中、小鈴は改札を抜け、ショッピングモールの広場に出た瞬間、思わず足を止めた。
「それにしても……どこ見ても広すぎる……」
人混みに溶け込む前に、小さく深呼吸。胸の奥が、そわそわする。今日はただの休日じゃない。乃斗楓の誕生日プレゼントを探しに来た、大事な一日なのだ。
せっかくなら、“自分にしかできない”贈り物にしたい。それが小鈴の中の、ささやかだけれど確かな目標だった。だけど──
(でも、その“自分らしさ”って……何だろう?)
思いつくものが、なかった。頭の中にぽつりぽつりと浮かぶのは、ありきたりな品ばかりで、楓にふさわしい気がしない。
──何か、ヒントが欲しい。だから今日は、実物を見て、ひらめきに出会うための“探索”の日。
そんなことを考えながら、ふとエスカレーター前を通りかかったときだった。
「……小鈴ちゃん?」
思わず反応してしまうほど、聞き慣れた柔らかい声。
「わっ! 優凜先輩!?」
そこにいたのは、いつもとは違う服装の優凜だった。白いブラウスに、薄青のジーンズ。髪を少しだけ結んで、カジュアルながら洗練された印象で、どこか年上の女性のように見える。
思わず見惚れてしまった自分に気づき、顔が少し熱くなる。
「まさか、同じ目的?」
「は、はい。楓ちゃんへの……プレゼント、です」
「ふふ。やっぱりね」
優凜は、手に持っていた紙袋を軽く揺らして見せた。
「私は、ちょっとしたアクセサリーを見て回ってたわ。楓ちゃん、細かいところまでおしゃれには気を抜かない子だから、喜んでくれると思って」
「なるほど……」
確かに楓は、元気全開な運動少女なのに、髪型や靴下の柄など、細部に気を遣っている印象がある。さりげないけれど、確かなこだわり。
「それと、手作りのレターセットも考えてるの。武器を作るだけが私の能じゃないってところ、見せたいしね」
さらりと言ってのけるあたり、どこか余裕を感じさせる。飾らない強さに、思わず憧れてしまう。
「じゃ、私は次の店に行くわね。健闘を祈ってる」
「はいっ、ありがとうございます!」
深く頭を下げた瞬間、風のように去っていく先輩の背中が少し眩しく見えた。
──と、その数分後。
「おっ、小鈴じゃん。来てたんだ?」
今度は別方向から、紅葉がアイス片手に現れる。今日の彼はいつにも増してリラックスした雰囲気で、Tシャツにカーゴパンツという、いかにも兄貴分らしいラフさだった。
「紅葉先輩まで!?」
「だってプレゼント選ぶならここが一番でしょ? 俺はもう大体候補決まってるけど」
「どんなの選んだんですか?」
「ふふん、ひみつ。ただ──今の楓に一番必要なものを考えたよ。体のメンテナンスグッズと、あと……ちょっとしたサプライズ仕掛けができる箱」
「サプライズ……?」
「開けた瞬間、音が鳴って、メッセージが流れるんだよ。“今日も全力で頑張れ、楓!”ってね」
「……兄バカですか?」
「正解っ☆」
得意げに親指を立てる姿に、小鈴は思わず笑ってしまった。真剣だからこそ、少しだけ空回っている。でも、その不器用な優しさが、きっと誰よりも伝わる気がする。
──さらに、数十分後。
文房具店で可愛いペンを選んでいたところ、今度は黒酒一郎と鉢合わせた。
「……あれ、小鈴さん?」
「黒酒くんも、プレゼント……?」
「ええ。外部生のくせに、と言われたくないので、全力です」
その真顔に、ちくりと刺さるものがある。
「うわ、刺さる……」
「僕は“探索”を使って、楓先輩が最近立ち寄ったお店や商品をリスト化してきたんです。そこから選べば、失敗はありません」
「いや、それ完全にストーキング……!」
「参考調査です」
きっぱりと言い切るあたり、確かに筋は通っている。異能を実用的に使っている時点で、ある意味で彼も“本気”だ。
「今のところ、有力なのは高性能のマッサージクッション。彼女、全身酷使してますからね。実用性で勝負です」
「意外と、実用的……!」
そんな言葉を交わしつつ、気づけば小鈴はまたひとりで雑貨店、書店、インテリアショップなどを回っていた。
(でも……なんだろう。何かが、決め手に欠ける)
気持ちはたくさんあるのに、それをどう伝えればいいのか、分からない。
と、その時。
買い物メモを握りしめたまま、足が止まる。
そこは──手作りアルバムのコーナーだった。
白い台紙、シール、リボン、カラフルなペン、クラフト用の小物たちが、棚いっぱいに並んでいる。
(……そうだ)
出会った日、席が隣になって、気さくに話しかけてくれたこと。緊張していた自分を、何度も笑わせてくれたこと。裏文芸部の活動。文化祭。夜の探索。彼女の無邪気さと勇気に、何度助けられたことか。
「……これだ」
白いアルバムの台紙を手に取る。手が震えるほど、確信があった。
──彼女に贈るのは、言葉と想いのアルバム。
“普通じゃない”日々の中で、自分がどれだけ支えられてきたか。その全部を、写真と手書きのメッセージで伝える。それなら、きっと“私にしかできない贈り物”になる。
決意を胸に、スマホが震えた。
《文芸部(裏)》グループチャットが動いている。
紅葉:
全員、何買ったか言わないけどヒントだけ出してくってのどう?
優凜:
ふふ、いいわね。匿名で投稿しましょう。
都斗:
楓はまだフォーム確認中。戻るのは夜。時間はある。
???:
「全身ケアグッズ+メッセージ」
「手作りアクセ&手紙」
「最近の行動を分析した便利グッズ」
「日々の記録、詰め込んだ1冊」←New!!
──それぞれ違っていて、それぞれ“らしい”。
画面を眺めながら、小鈴の口元が自然とほころぶ。
(……あと少し。頑張ろう)
誕生日まで、あとわずか。勝負は、これからだ。
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