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16 贈り物
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ルアージュはシャロンの館に馬車を急がせていた。
皆の前で告白したことで、ルアージュはシャロンとの距離が急激に縮まったと内心感じていた。
今日は休日。
シャロンに会う口実に、好物の果物をサプライズで届けようと思いついたのだ。
リボンを結んだ果物かごを手に颯爽とルアージュがシャロン宅の前に立った。
ちょうどその時、ウォルターがシャロンの元を訪れていた。
「おい、シャロン、最近お前おかしいぞ」
ウォルターに声をかけられても、ソファーのシャロンは窓の外を眺めたまま返事をしない。
「おいったら!聞いてんのか」
耳元で叫ばれ、ようやくシャロンは我にかえった。
「ああ、ごめん」
まったく、とウォルターはぼやきながらシャロンの横顔を見つめる。
シャロンはソフィアから自分を守ってくれたルアージュの一件から、ぼんやりすることが増えていた。
あの背中、どこで見たんだっけ?
疑問をそのままにしておくのが苦手なシャロンは、四六時中そのことを考えていた。
ウォルターは勘が鋭い。
もしかして、王太子との間で何かあったのか。
それも、シャロンの心に王太子が入り込むような何かが。
ウォルターを焦燥感が襲った。
シャロンは地図や学ぶことに夢中で、異性に興味を持ったことなど一度もなかった。
自分も含めて、というのはとても寂しいが。
そのシャロンがどうやら異性である王太子のことをずっと考えている。
ウォルターにはそう感じた。
「なあシャロン」
「ん?」
シャロンの生返事に構わず、ウォルターはシャロンの後ろに立った。
「覚えてるか?約束」
「約束?何だっけ?」
やっぱり覚えてないか。
まあ、小さかったからな。
ウィルターは少し落胆したが、思い出をたどるように言葉を続けた。
「俺の妻になるって」
「は?」
そう言って、ウォルターはソファーに座っているシャロンの後ろから両手を回した。
「ウォルター?苦しい。離して」
シャロンはいつもと様子が違うウォルターに初めて気がつき、とがめた。
「嫌。離さない」
ウォルターはシャロンの髪に顔を埋めたまま、さらにその手に力を込めた。
幼い頃の約束というのは一方的なものだった。
シャロンが自分よりも地図に夢中なのを知ったウォルターが、地図に嫉妬し、
「シャロン。俺の妻になったら、世界中の地図をお前に見せてやるぞ」
と言ったのだ。
シャロンは妻というものが何なのかよく理解できないまま、ただ無邪気に、
「妻っていうのになったら、本当に世界中の地図が読めるんだな!わかった!」
と返答したのだった。
シャロンはいまだに自分をただの友人としか見ていないだろう。
それでもいい。
今はこのまま一緒にいられるだけで。
シャロンがウォルターの手をほどこうと手をかけた時、ルアージュが2階のドアの前まで来てしまっていた。
ドアの隙間から、後ろからシャロンに手を回しているウォルターが見えた。
ドクン!!
ルアージュの心臓がきしんだ音をたてた。
シャロンの顔はよく見えなかった。
ふたりはルアージュが来たことに気づいていない。
「──っ!」
ルアージュはショックで数歩あとずさり、背中を向け逃げ出した。
「王太子殿下!」
紅茶の盆を2階に運ぼうとしていたマーサがルアージュを呼び止めた。
「これを渡しておいてくれ」
果物かごをマーサに渡し、ルアージュは逃げるように馬車へと戻った。
「え?ルアージュ様がこれを?」
しつこいウォルターを軽く殴りつけ、追い返した後、シャロンはマーサからルアージュが来ていたことを聞かされた。
ルアージュが届けてくれたという豪華な果物かごをシャロンは見つめる。
「そうですよ。黄桃に梨に葡萄。お嬢様のお好きな果物ばかりで。紅茶をお入れしたんですけれど、お急ぎのようですぐに帰られてしまったんです」
「そうだったのか。ちっとも気づかなかったな」
ルアージュ様は親切な方なんだな。
そういえば、ブローチ事件のときのお礼も言えてなかったっけ。
シャロンはルアージュに何かお礼をしようと考えた。
「贈り物か……ねえ、マーサ。異性にプレゼントするとしたら何がある?」
「そうですねえ。手縫いの刺繍のハンカチなんかは、令嬢がお相手に差し上げる定番と聞いていますよ」
マーサはピンと来て、微笑みながら真っ白なハンカチを何点か持ってきた。
「し、刺繍か……一体何を縫い付ければいいというのだ」
シャロンは刺繍など生まれてこの方したことがなかった。
目の前の布をただ凝視したまま固まっている。
「花でも紋様でも、なんでもお好きなものでいいのですよ」
「好きなものでいいのか。それなら」
シャロンははっと思いついて、マーサにもっと大きなハンカチを用意するよう頼んだ。
ルアージュは元気のないまま数日を過ごしていた。
シャロンの屋敷での出来事が頭の中をぐるぐる回って、ずっと気分が落ち込んでいた。
シャロンのクラスに顔をだす勇気もでなかった。
「はあ」
ひとつ大きなため息を吐き、ルアージュが馬車に乗り込もうとしたとき、
「ルアージュ様」
と呼び止める声がした。
ルアージュはその声の主にばっと振り返る。
「シャ、シャロン!?」
心の準備ができていないルアージュの心臓は跳ね上がった。
シャロンはルアージュの心のうちに気づかないまま、
「少しだけお時間よろしいですか?できれば馬車の中で」
「えっ」
ルアージュの告白以来、公認の中になったふたりのはずだが、シャロンは生徒たちの目にさらされるのが恥ずかしかった。
馬車の中でならゆっくり話せる。
そう思ってルアージュに提案したのだが、当の本人はドギマギしながらシャロンの手を取り、馬車に乗り込んだ。
「は、話とは」
手を膝の上で握り、妙に硬い語り口になってしまうルアージュ。
いつものルアージュなら、今日は風に乗って薔薇のいい香りがするね、などと気の利いたセリフのひとつも言えるところだが、今は違った。
シャロンから呼び止めてくれたのは初めてだった。
感動で目の前のシャロンがまぶしくて、ルアージュは目もまともに合わせることができない。
「手短に話しますね」
「長くても構わない」
「え?」
とっさのルアージュの返しを理解できず、シャロンが聞き返す。
「ああ、いや何でもないっ」
調子が狂う。
ルアージュは自分がどこかにいってしまったようなふわふわした気持ちでいた。
「これ、プレゼントです」
すっとシャロンがルアージュの目の前に手を差し出した。
ルアージュは返事をするのも忘れ、シャロンの手に乗せられているものを見つめた。
ハンカチだ。しかも刺繍がされている。
「もしかしてこれ──」
「下手で恥ずかしいのですが、手縫いの刺繍をしてみました。ブローチ事件の時のお礼もまだ言えていませんでしたし。遅くなりましたが、助けてくださりありがとうございました」
ルアージュの胸は一気に薔薇の花びらが開いたような幸福感で満ち溢れた。
そっとシャロンの手からハンカチを受け取り、
「あり、がとう。とてもうれしい……」
と呟いた。
ルアージュのほおが嬉しさで赤く染まった。
刺繍の柄をうっとりと眺めていたルアージュだったが、ふとその柄に疑問が浮かんできた。
「この刺繍は、一体なんの?」
花でもなく、紋様でもない。
幾何学模様に似たこれは何だ??
ルアージュがハンカチを広げてみると、大ぶりのハンカチ一面に地図が刺繍されていた。
「お気に入りの古地図を縫い止めてみました。レアな古代の地下水道なんです♡」
自信作なのだろう。
ちょっと照れくさそうにシャロンがはにかんだ。
刺繍の地図は青い糸で施されている。
随所に茶色の糸で記号や古代文字までが緻密に再現され、非常に美しく仕上げられていた。
シャロンの手を見ると、指先がところどころ赤くなっている。
きっと慣れない作業で何度も指に針を刺してしまったのだろう。
なんて個性的で、緻密で、けなげ贈り物だろう。
ルアージュは嬉しさのあまり、涙ぐみそうになった。
ウォルターとのことは気になるが、今はもうどうでもよかった。
「ありがとう。一生の宝物にするよ」
そう言って、シャロンの手に自分の手をそっと重ねた。
ルアージュは今日の馬車での出来事がいつまでも忘れられなかった。
思い出すたびに幸福感に包まれる。
「シャロン」
その日一日ずっと眺めていた地図のハンカチを、ルアージュはそっとポケットにしまった。
皆の前で告白したことで、ルアージュはシャロンとの距離が急激に縮まったと内心感じていた。
今日は休日。
シャロンに会う口実に、好物の果物をサプライズで届けようと思いついたのだ。
リボンを結んだ果物かごを手に颯爽とルアージュがシャロン宅の前に立った。
ちょうどその時、ウォルターがシャロンの元を訪れていた。
「おい、シャロン、最近お前おかしいぞ」
ウォルターに声をかけられても、ソファーのシャロンは窓の外を眺めたまま返事をしない。
「おいったら!聞いてんのか」
耳元で叫ばれ、ようやくシャロンは我にかえった。
「ああ、ごめん」
まったく、とウォルターはぼやきながらシャロンの横顔を見つめる。
シャロンはソフィアから自分を守ってくれたルアージュの一件から、ぼんやりすることが増えていた。
あの背中、どこで見たんだっけ?
疑問をそのままにしておくのが苦手なシャロンは、四六時中そのことを考えていた。
ウォルターは勘が鋭い。
もしかして、王太子との間で何かあったのか。
それも、シャロンの心に王太子が入り込むような何かが。
ウォルターを焦燥感が襲った。
シャロンは地図や学ぶことに夢中で、異性に興味を持ったことなど一度もなかった。
自分も含めて、というのはとても寂しいが。
そのシャロンがどうやら異性である王太子のことをずっと考えている。
ウォルターにはそう感じた。
「なあシャロン」
「ん?」
シャロンの生返事に構わず、ウォルターはシャロンの後ろに立った。
「覚えてるか?約束」
「約束?何だっけ?」
やっぱり覚えてないか。
まあ、小さかったからな。
ウィルターは少し落胆したが、思い出をたどるように言葉を続けた。
「俺の妻になるって」
「は?」
そう言って、ウォルターはソファーに座っているシャロンの後ろから両手を回した。
「ウォルター?苦しい。離して」
シャロンはいつもと様子が違うウォルターに初めて気がつき、とがめた。
「嫌。離さない」
ウォルターはシャロンの髪に顔を埋めたまま、さらにその手に力を込めた。
幼い頃の約束というのは一方的なものだった。
シャロンが自分よりも地図に夢中なのを知ったウォルターが、地図に嫉妬し、
「シャロン。俺の妻になったら、世界中の地図をお前に見せてやるぞ」
と言ったのだ。
シャロンは妻というものが何なのかよく理解できないまま、ただ無邪気に、
「妻っていうのになったら、本当に世界中の地図が読めるんだな!わかった!」
と返答したのだった。
シャロンはいまだに自分をただの友人としか見ていないだろう。
それでもいい。
今はこのまま一緒にいられるだけで。
シャロンがウォルターの手をほどこうと手をかけた時、ルアージュが2階のドアの前まで来てしまっていた。
ドアの隙間から、後ろからシャロンに手を回しているウォルターが見えた。
ドクン!!
ルアージュの心臓がきしんだ音をたてた。
シャロンの顔はよく見えなかった。
ふたりはルアージュが来たことに気づいていない。
「──っ!」
ルアージュはショックで数歩あとずさり、背中を向け逃げ出した。
「王太子殿下!」
紅茶の盆を2階に運ぼうとしていたマーサがルアージュを呼び止めた。
「これを渡しておいてくれ」
果物かごをマーサに渡し、ルアージュは逃げるように馬車へと戻った。
「え?ルアージュ様がこれを?」
しつこいウォルターを軽く殴りつけ、追い返した後、シャロンはマーサからルアージュが来ていたことを聞かされた。
ルアージュが届けてくれたという豪華な果物かごをシャロンは見つめる。
「そうですよ。黄桃に梨に葡萄。お嬢様のお好きな果物ばかりで。紅茶をお入れしたんですけれど、お急ぎのようですぐに帰られてしまったんです」
「そうだったのか。ちっとも気づかなかったな」
ルアージュ様は親切な方なんだな。
そういえば、ブローチ事件のときのお礼も言えてなかったっけ。
シャロンはルアージュに何かお礼をしようと考えた。
「贈り物か……ねえ、マーサ。異性にプレゼントするとしたら何がある?」
「そうですねえ。手縫いの刺繍のハンカチなんかは、令嬢がお相手に差し上げる定番と聞いていますよ」
マーサはピンと来て、微笑みながら真っ白なハンカチを何点か持ってきた。
「し、刺繍か……一体何を縫い付ければいいというのだ」
シャロンは刺繍など生まれてこの方したことがなかった。
目の前の布をただ凝視したまま固まっている。
「花でも紋様でも、なんでもお好きなものでいいのですよ」
「好きなものでいいのか。それなら」
シャロンははっと思いついて、マーサにもっと大きなハンカチを用意するよう頼んだ。
ルアージュは元気のないまま数日を過ごしていた。
シャロンの屋敷での出来事が頭の中をぐるぐる回って、ずっと気分が落ち込んでいた。
シャロンのクラスに顔をだす勇気もでなかった。
「はあ」
ひとつ大きなため息を吐き、ルアージュが馬車に乗り込もうとしたとき、
「ルアージュ様」
と呼び止める声がした。
ルアージュはその声の主にばっと振り返る。
「シャ、シャロン!?」
心の準備ができていないルアージュの心臓は跳ね上がった。
シャロンはルアージュの心のうちに気づかないまま、
「少しだけお時間よろしいですか?できれば馬車の中で」
「えっ」
ルアージュの告白以来、公認の中になったふたりのはずだが、シャロンは生徒たちの目にさらされるのが恥ずかしかった。
馬車の中でならゆっくり話せる。
そう思ってルアージュに提案したのだが、当の本人はドギマギしながらシャロンの手を取り、馬車に乗り込んだ。
「は、話とは」
手を膝の上で握り、妙に硬い語り口になってしまうルアージュ。
いつものルアージュなら、今日は風に乗って薔薇のいい香りがするね、などと気の利いたセリフのひとつも言えるところだが、今は違った。
シャロンから呼び止めてくれたのは初めてだった。
感動で目の前のシャロンがまぶしくて、ルアージュは目もまともに合わせることができない。
「手短に話しますね」
「長くても構わない」
「え?」
とっさのルアージュの返しを理解できず、シャロンが聞き返す。
「ああ、いや何でもないっ」
調子が狂う。
ルアージュは自分がどこかにいってしまったようなふわふわした気持ちでいた。
「これ、プレゼントです」
すっとシャロンがルアージュの目の前に手を差し出した。
ルアージュは返事をするのも忘れ、シャロンの手に乗せられているものを見つめた。
ハンカチだ。しかも刺繍がされている。
「もしかしてこれ──」
「下手で恥ずかしいのですが、手縫いの刺繍をしてみました。ブローチ事件の時のお礼もまだ言えていませんでしたし。遅くなりましたが、助けてくださりありがとうございました」
ルアージュの胸は一気に薔薇の花びらが開いたような幸福感で満ち溢れた。
そっとシャロンの手からハンカチを受け取り、
「あり、がとう。とてもうれしい……」
と呟いた。
ルアージュのほおが嬉しさで赤く染まった。
刺繍の柄をうっとりと眺めていたルアージュだったが、ふとその柄に疑問が浮かんできた。
「この刺繍は、一体なんの?」
花でもなく、紋様でもない。
幾何学模様に似たこれは何だ??
ルアージュがハンカチを広げてみると、大ぶりのハンカチ一面に地図が刺繍されていた。
「お気に入りの古地図を縫い止めてみました。レアな古代の地下水道なんです♡」
自信作なのだろう。
ちょっと照れくさそうにシャロンがはにかんだ。
刺繍の地図は青い糸で施されている。
随所に茶色の糸で記号や古代文字までが緻密に再現され、非常に美しく仕上げられていた。
シャロンの手を見ると、指先がところどころ赤くなっている。
きっと慣れない作業で何度も指に針を刺してしまったのだろう。
なんて個性的で、緻密で、けなげ贈り物だろう。
ルアージュは嬉しさのあまり、涙ぐみそうになった。
ウォルターとのことは気になるが、今はもうどうでもよかった。
「ありがとう。一生の宝物にするよ」
そう言って、シャロンの手に自分の手をそっと重ねた。
ルアージュは今日の馬車での出来事がいつまでも忘れられなかった。
思い出すたびに幸福感に包まれる。
「シャロン」
その日一日ずっと眺めていた地図のハンカチを、ルアージュはそっとポケットにしまった。
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