学園の華たちが婚約者を奪いに来る

nanahi

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30 エピローグ

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レッドグレイブ公が成敗されて、王国に平和が戻ってきた。

仕事に復帰したケビンが指揮を取り、地震で壊れた王都の復興が急ピッチで進められた。
パルミア大陸全土から支援金や支援物資が届けられ、王国は再びかつての活気を取り戻しつつあった。

そんなある日、ルアージュがシャロンを連れて陛下の執務室を訪れた。

「私に何か話があると?」
「はい、父上。もしかしたらこの国が地震の恐怖から解放される日が来るかもしれません。シャロンから説明があります。どうかお聞きください」
「ほう。それは興味深い。シャロン、話してみてくれ」
「はい。では申し上げます」

この国を地震から守るために、シャロンは以前からある検証を重ねていた。
そして、今日、ある推論を陛下に提示した。

「ここ王都周辺はもともと湿地でした。今でも地盤がゆるい土地に排水溝や用水路を掘って水を流し出す作業をしているのに、地盤が一向に強くなりません。
これにはある原因があるのではないかと、私は推測しています」

陛下はシャロンを見つめ、答えを促した。

「それは何だ。遠慮せずに申してみよ」

シャロンは古地図をテーブルに広げ説明を始めた。
以前、図書館に寄贈された1000年前の王国周辺の地図だ。
黄ばんだ地図に、古代文字と湿地や洞窟などを示す記号が記されている。

「ここをご覧ください」

シャロンは一筋の川を指差した。
細く描かれたその流れは、王国の周辺まで這うように走っている。

「プルト川といいます。今この川はありません。表向きは」
「表向きは?」

陛下は怪訝な顔をした。

「もしかしたら、地下の鍾乳洞を流れる地下水系ではないかと」
「なんと。こんな王都の近くにか?」
「はい。この記号がずっと謎でした。ただ最近、他の古地図でも同じ印を見つけました。おそらくこれは水門を示しているかと」

地図の端にある小さく刻まれた印。
古代文字のような記号が川のほとりに寄り添っている。

「1000年前は機能していたこの水門が、何らかの原因で壊れ、水が王都の地下に流れ続けているのではないかと推察します」

陛下は目を丸くした。
地質学者からも聞いたことのない説を、少女の口から聞くとは。

「わかった。急ぎ調査隊を派遣し、水門を調べさせよう」

陛下の言葉に、シャロンとルアージュは互いを見つめ、力強くうなずき合った。




王命により地図を元に調査隊が調べた結果、山間で未知の鍾乳洞が見つかった。
シャロンの推測通りだった。
鍾乳洞内には深い水が流れており、王都周辺まで足を伸ばしていた。

鍾乳洞を進んでいくと、王都のすぐ近くに破損した古く巨大な水門が発見された。
その水門を修理したところ、王都に流れる水量を減らすことが可能となり、王都の地盤は徐々に改善していった。

地震が来ても揺れが以前の十分の一ほどになり、国民はみな、多少の地震がきても安心して過ごせるようになった。

のちにシャロンは、国土を劇的に改善し、地震の恐怖から国民を救った賢き王太子妃として語り継がれることになる。




「地図バカのシャロンにはかないませんわね。国民の英雄になってしまったわ」

イレーネが両手を軽くあげ、降参したように言う。

「婚約が再締結されてしまったし」

今度はフィリーネが悔しそうに言う。

「ソフィアまでいなくなってしまうし」

リュシエンヌが困り果てた顔で言う。

華たちは同時にため息をついた。

「シャロンを祝福しようではないか。かつてルアージュ様をかけて競い合った仲間だ」

セレストの言葉に、みな顔を見合わせる。

「仕方ありませんわね」

リュシエンヌがひとつ息を吐いた後、一同は微笑み合った。




「あーあ。失恋かあ」

ウォルターが草原で寝転がっている。

「シャロン、絶対に幸せになれよ」

空を見上げたまま、ウォルターがぽつりと呟いた。




澄み渡る青い空。
白い鳥たちが一斉に飛び立つ。

今日はシャロンとルアージュの結婚式だ。

まだふたりは高等学校2年生だったが、ルアージュのたっての願いで学生結婚することになったのだ。

「シャロン、とっても綺麗よ」

花嫁控えの間にいるシャロンを前にカリンが涙ぐんでいる。
シャロンは艶めく純白のウエディングドレスに身を包み、天使のような美しさを放っていた。
ドゥフォード子爵の冤罪がはれ、カリンは王都に戻り、学園にも復学していた。
もちろん、左遷された学園長も学園に戻って来ている。

母親代わりのマーサも、目元をハンカチでおさえている。
松葉杖のケビンは、嬉しさと寂しさとで、目を真っ赤にしている。

「みんな。ありがとう」

シャロンは花のように微笑んだ。




王立教会の祭壇前。

ルアージュとシャロンが向かい合っている。
ルアージュは純白の婚礼服に身を包み、王太子として最高に輝いてみえる。
シャロンはブーケを手に背筋を伸ばし、王太子妃としての覚悟をその目に宿している。

「誓いのキスを」

司祭が合図した。

ルアージュはシャロンのヴェールをそっとあげる。
シャロンの嬉し涙で潤んだエメラルドの瞳が、恥じらいながらルアージュを見上げる。

「ルアージュ様。愛しています」

これまでのふたりの困難な道のりを思い出し、ルアージュの瞳も潤んでいる。

「シャロン。君のすべてを愛している」

幸せになろう。
ふたりで、永遠に。

ルアージュはシャロンの顎にそっと手を添え、想いを込め、やさしく唇を重ねた。








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