捨てられた私が今度はあなたを捨てる

nanahi

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23 裁定2

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「入りなさい」

女王の合図で一人の若い男が入室してきた。カミラの父の甥っ子、ダニエルだった。

「ダニエル。お前、こんなところで何をしているの?」

年上の従兄弟をカミラは呼び捨てにし、ぞんざいな言葉を投げつけた。

「ゾフ男爵はこれまで何度も、貿易で得た莫大な利益の一部を隠すよう私に命じてきました」
「なっ」

カミラが青ざめた。

「ちょっとダニエル、嘘つかないで!!お前そんなこと言ってただですむと思うんじゃないわよっ!?」

カミラは父の不正を知らなかった。父はいつでも正しく金持ちで強いと思っていた。

「隠し財産のある場所は、すべてここに記してあります」

ダニエルが王国の地図を広げた。ゾフ家所有のさまざまな建物に赤い丸が付けられていた。

「私の試算では、その額、9000億リル」
「9000億リル!?」

みなが仰天した。

「納税逃れね。すぐに現場に兵と調査官を向かわせなさい」
「はっ」

女王が兵たちに命じた。脱税は貴族であっても厳罰が処されることになっていた。額が大きければなおさらだ。

「ダニエル、裏切るなんてお前──」

カミラがダニエルを睨んだ。だがダニエルは睨み返した。

「君は知らないだろうな。ゾフ男爵は僕の母を無理矢理寝とって自害に追いやり、父のことも家から追い出したことを」
「は……??」

信じがたかった。カミラにとっての父は母にも優しくおしどり夫婦に見えていた。

「男爵は家庭でも仮面を被っていたんだよ。両親がいないことをいいことに僕のことを不正の手駒として扱ってきた。君はそんなことも知らないで能天気にいばってばかりだったね。でも君も君の家もお終いだよ。僕の通報で今頃君の家はもう兵たちに取り囲まれているだろう」
「嘘よ!!!」

カミラは吠えた。

「エルザ!君は僕の妻だったんだ。僕に惚れていたよね?またよりを戻そう!」

グレイはカミラも頼れないと悟り、とっさにエルザに救いを求めた。

「な──裏切るの、グレイ!?」

カミラは涙目になった。そんなカミラにもお構いなしに、グレイはエルザのもとに走り、両手を広げた。

「愛しているよ、エルザ!」


バキッ!

グレイは床に弾け飛んだ。

「汚らわしい手でエルザに触れるな!」

エルザを守るようにユリウスが仁王立ちしていた。グレイを殴り飛ばしたのだ。

「私はもうあなたを愛してなんかいないわ。永遠にさようなら」
「そ、そんな、エルザ、エルザ──」

グレイは目に涙をためて呟き、がくりと気を失った。

終わったわ。

エルザは清々しい気分だった。連行されていくグレイとカミラを見て、涙が滲んだ。

「終わったんだ。よかったな、エルザ」

涙を流すエルザの肩を侯爵がそっと抱き寄せた。


「ユリウス殿下、ありがとうございました」
「王宮にはあらためて礼に伺います」

エルザと侯爵が頭を下げた。

「力になれてよかった」
「では私たちはこれで」
「ちょっと待ってくれ──」

侯爵と一緒に侯爵家の馬車に乗り込もうとしたエルザをユリウスが呼び止めた。

「あの、何か?」

エルザと一緒に振り向いた侯爵に、ユリウスが慌てて駆け寄った。

「あの、その。エルザを私の馬車に乗せてもいいだろうか。屋敷まで送りたい」
「えっ!?ご迷惑では──」
「いや是非そうしたいのだ。その。エルザがよければだが……」

ちらっとエルザを見てユリウスが顔を赤らめた。ユリウスの近くにいた側近ジャンが侯爵に大きくうなずいた。

「そうですか。確かにレグザンドまでは距離がありますから殿下もお暇でしょうな。エルザ。しっかり殿下のお相手をするんだぞ」
「えっ、私なんかでいいんですの?」

君がいいのだ、エルザ。

ユリウスはジリジリした気持ちで待った。

「私のことは気にせず、さあ」

侯爵はエルザの背中を押した。

「そんなにおっしゃるなら……わかりましたわ。お世話になります、殿下」

エルザはまだわかっていないようだった。道中暇だから自分を呼んだのだろうと軽く考えていた。

ユリウスはドキドキしながらエルザの手を取り、王家の馬車に乗せた。

嬉しい……!

「慌てなくてゆっくりで良いぞ」

ユリウスは御者に声をかけた。ジャンがくすりと笑んだ。

永遠に馬車が屋敷に着かなければいいのに。

隣りで微笑むエルザを見つめながら恋するユリウスはひそかに胸を高鳴らせていた。


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