許したと思っていたのかしら?──学園に精霊のアイス屋さんを開いた伯爵令嬢

nanahi

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8 魅惑のアイス2

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「ちょっとどういうことよ!!!」

翌日またグリアが店に怒鳴り込んできました。グリアは頭にスカーフを巻き顔を隠すようにしています。ちょうど行列で並んでいたお客様たちが怪訝な目でグリアを眺めております。

「どうなさいましたか。」

私が聞くとグリアはスカーフの影からギラギラした目を光らせ私を睨みつけました。

「いくらお化粧しても肌を隠せないのよ!!!」
「ああ……悪い作用が出てしまいましたか……。」

グリアはアバタが増えさらに大きく育ちとても化粧では隠せないほどになっていました。

「魅惑のアイスを食べたあと殿下がせっかく私のそばに近づいてきてくれたのに、私の顔を見た途端ギョッとしたように逃げてしまったのよ!!」

アイスはハウエル殿下にお試しになったのね。

グリアはロバート様だけでは足りないようです。

「なんとかしなさいよっ!!あんたが売ったんでしょう!?」

またグリアは私に文句をぶつけてきます。それに2回目に食したアイスはグリアが男子生徒から奪ったものです。

「食すのは一度だけだと申し上げましたが。」
「黙って!」

話の通じない方ですのね。

「あれはどなたですの。ちょっと物言いが酷くありませんこと?」
「グリアに似てないか?」
「え?あんな顔だった?」

行列の生徒たちが化粧で隠せないグリアの素顔を見て顔をしかめています。ちょうどハウエル殿下が従者とお店の前を通りかかりました。

殿下は私に片手をあげてご挨拶してくださいました。グリアはあんなに殿下に近づきたがっていたのに殿下を見かけると慌ててスカーフで顔を隠して逃げるように去っていってしまいました。




本日の店仕舞い間際にこれまで一度も来店していなかったロバート様がお見えになりました。

「いらっしゃいませ。」
「あ、ああ。」

私が挨拶をするとロバート様は視線を外しながら少々バツが悪そうに作り笑いをされました。

「どちらになさいますか?」

ロバート様は迷いながらも「じゃあ……メロンフレーバーで。」と小さな声で注文されました。

「お目が高いですね。こちらは今シーズン初入荷の新作で海外から取り寄せたクイーンメロンを使用しました自信作となっております。」
「……とてもよい香りだ。」

アイスを受け取ったロバート様は感動したように呟かれました。

「香り豊かでジューシーなクイーンメロンの果肉と果汁をふんだんに使い、人工的な香料は一切使っておりません。当店のポリシーでございます。」
「何だかすごいね。それに嬉しいな。メロンは僕が一番好きな果物だから。」

そうでしたわね。

商品のことになるとつい熱がこもり饒舌になってしまった私はふと我に返り「お買い上げありがとうございました。」と頭を下げました。

ロバート様は会話が止まった私になぜか戸惑っているご様子です。

「ジュリエット。その、もう少し話せないかな。」
「商品の事でしたらなんなりと。」
「いや。そうではなくて、その。もっと個人的な話を。」

今更何をお話になりたいのでしょう。

ロバート様にとって婚約を破棄した相手はうとましいだろうと思っていた私には意外な反応でございました。

実際婚約破棄で学園を賑わせた私とロバート様が会話している姿を見て生徒たちは好奇な目を向けています。

「注文いいかな。」

ロバート様の後ろから男子生徒の声が聞こえました。

「あ、すまないっ。」

ロバート様は慌てて男子生徒に場所をお譲りになりました。

「また来るよ。」

ロバート様は次の接客を始めた私に名残り惜しそうにそう言い残し店を去りました。

ロバート様は令嬢なら誰もが憧れるような令息でいらっしゃいます。容姿端麗で輝くプラチナブロンドの髪に紅茶色の瞳は品格を纏い伝統ある血筋の証のようでもありました。

私もかつては恋焦がれた方です。父同士が友人だったご縁で婚約者に選ばれ、どんなに幸せだったことか。

それでも今の私の心はロバート様に一ミリも動きませんでした。もう終わった恋だとすっきりとした心持ちでさえありました。

ですがロバート様は違ったようでした。




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