許したと思っていたのかしら?──学園に精霊のアイス屋さんを開いた伯爵令嬢

nanahi

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23 事件

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『グリアだわ。』
『ロバート様に捨てられてお気の毒。』

学園の生徒たちはグリアを陰で笑うようになっていました。

「違うわ!私たちはまだ別れていないもの!」

プライドの高いグリアはその状況に耐えられません。とうとうロバート様を呼び出し、詰め寄りました。

「ロバート様、目を覚ましてください!ジュリエットは私を貶めた女です!信じてください!」
「……。」

ロバート様はグリアをうとましそうに見た後、

「申し訳なかった。」

と呟きました。

「じゃあ……!」

グリアはまた元のように戻れるのだと思い目を輝かせました。

「いや、ちゃんと別れを君に伝えていなくて申し訳なかったという意味だ。別れよう、グリア。」
「────え」

ロバート様は背中を向け去っていきました。

「待って!ねぇ、行かないでロバート様あ!!」

どんなに必死に呼んでもロバート様は決して振り向きませんでした。

グリアは破局しました。かつての私の苦しみがようやくわかったでしょうか?

私、捨てられた──?

グリアは愕然としたまま長い間その場から動けませんでした。

「あの女のせいよ……。」

グリアは逆恨みを始めました。

「そうよ、あの女が戻ってきてから、私の人生が狂い始めたのよ!!絶対に許さない!ジュリエットを地獄の底に突き落としてやるわ!!」

グリアは涙を流しながら叫びました。グリアは最後の悪巧みを考えついたようでした。




「ちょっと話があるの。これまでのことちゃんと謝りたいの。だから少し私に付き合ってよ。」

グリアが仕事終わりの私に声をかけてきました。

この後予定が詰まってるんだけど……。

私は迷いましたが、ロバート様とグリアが破局したという噂を聞いていたので、しゅんとしているグリアが少し気の毒になり仕方なくグリアの言うまま車に乗りました。

「どちらに?」

私が聞いてもグリアはずっと黙っています。車はかなり飛ばして王都郊外にまでやってきました。

知らない場所に向かってる……。

グリアの目が据わっている様子に私は嫌な予感がして、

「降ろしてくださる!?」

と運転手に声をかけました。

「いいわよ。ここで降ろして!」

グリアが叫ぶと車が急停止し、私はがくんと大きく揺れました。

「きゃ!」

ドアが素早く開き、私は運転手に引っ張られるようにして地面に放り出されました。

「地獄に落ちるといいわ!」

グリアが車の中から私をあざ笑いました。邪悪な悪鬼のような顔でした。車は急発進して私を置いて去っていってしまいました。

「ここはどこ──!?」

辺りを見回すと見知らぬ街でした。手入れが放棄された古い建物。道に散乱するゴミ。貧相な姿の人々。鼻をつく悪臭。スラム街だとすぐにわかりました。

「この女か、ジュリーアイスの社長ってのは。」

ゆらりと黒い影が私に近づいてきました。振り向くと薄汚れた服装の男たちでした。手に持った写真と私を見比べています。

「グラン商会のお嬢さんがくれた写真と同じだ。たいそうなもんだな。まだ若いぞ。」
「どんな味がするのかな?」
「やっぱりアイスみたいに甘いんじゃないか?」

不穏な会話に私は青ざめました。

逃げなきゃ──!

「おい待てよ!」
「逃さねーぞ!」

逃げようとした私は男たちに腕を掴まれ、口を塞がれて、ビルの裏に無理やり連れて行かれました。

「いや!やめて!」
「そう言ってやめるやつなんていないんだよ!」

男たちの手が次々と伸び私の服が剥ぎ取られようとしました。

私は抵抗しながら後悔しました。私が甘かったのです。グリアは私が考える以上に悪女でした。

飢えた男たちのものすごい力に組み伏せられ、私はどんどん服を破られていきました。

ああ……お終いだわ。
せっかく血の滲むような努力でここまできたのに……。

殿下、優しくしてくださってありがとう。

涙でぼやけた視界にふとハウエル殿下の笑顔が浮かんだ気がしました。




「ぐあ!」

唐突に男たちの叫び声が聞こえました。

「すぐにその令嬢から手を離せ。」
「このやろう、俺を殴ったな!?」

男たちが激昂し後ろを振り向きました。

「言うことを聞かなければ射殺するぞ!」

殿下!

そこにはハウエル殿下がいました。ピストルを構え男たちに狙いを定めています。

ざざざと銃を構えた護衛の兵たちがハウエル殿下の前後に並びました。

「早く離れろと言っている!」

ぱん!

と一発、殿下が発砲すると、弾は建物の石壁にめり込みました。

「ひっ」
「おお、お許しを!!」

男たちは一目散に逃げて行きました。

「一人残らず捕らえよ!」
「はっ!」

護衛たちが男たちを追って駆け出しました。

「殿下……!」
「大丈夫かい?」

殿下は地面に座り込んだままの私を抱きしめてくれました。

「可哀想に。ジュリエット、怖かっただろう。もう大丈夫だよ。」

ショックのあまり、私はしばらく殿下の胸の中で泣き続けました。

「グリアの車に君が乗るところを見て、気になって車で追跡したんだ。よかった。間に合って。それにしても許せないな、あの女──。」

殿下はこれまで見たこともないような怒りの表情で空を睨んでいました。





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