破棄前提で婚約したあなたへ─予想に反して幸せになりそうです

nanahi

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3 旦那様

体が熱い…苦しい。
ここはどこ?
私どうなったの?


「クリスティーナ様に似ている…」


誰かが囁き合う声がした。


誰かいるの?


確かめることはできなかった。
私は高熱に飲み込まれ、再び眠りに落ちた。





二日後、私は大きなベッドの上で目を覚ました。
そこは森の奥にあるとても大きなお屋敷だった。
山道で倒れている私を屋敷の侍従が見つけ助けてくれたらしい。


「旦那様がお戻りです」


侍女の一人が皆に知らせた。
ここの主人だろうか。外に出かけていたらしい。


「倒れていたというのは君か。熱が下がってよかった。気分はどうかな?」


と呼ばれる男が私のベッドの前に来る。


後ろに品よくまとめた銀髪が日の光に輝く。
端正な顔立ちと透き通った灰眼の青年だった。


どこかの貴族様かしら…?


並々ならぬ品格を感じて私は恐縮した。


「あの…助けていただき、ありがとうございました」


私が深々と礼をして顔を上げた時、旦那様は目を大きく見開き、私を凝視した。


「ク──」


何か言いかけたが、はっと我に返り、旦那様は取り消すように私に尋ねた。


「い…家はどこかな?侍従に送らせよう」

「……それが…実は…」


ヴィンセント達の酷い仕打ちをまざまざと思い出し、私は堰を切ったように泣き出した。


「なんと卑劣な──!」


事情を聞いた旦那様は他人事とは思えないほど、ヴィンセントに怒っていた。


「行くところがないのなら…君さえよければ、ここで侍女として働かないか?」


老齢の侍従が一瞬とがめるような目を旦那様に向けたのが気になった。
だが、私にとってはありがたい話だった。


「いいんですか!助かります!粗相のないようにがんばります」


私は旦那様に礼を言った。
旦那様は、長いなと感じるほど私をじっと見つめた後、部屋から去った。


きっと神様が私に新しい住処を与えてくださったのよ。
辛いことはあったけど、私はここで生まれ変わろう。


私は希望をふくらませ心に誓った。
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