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Ep.2-17
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アーシャは離宮にいるユリアの元に来ていた。
ヴィヴィアンの魔力が弱まって以来、ユリアの肌の水玉模様は消えてしまっていたが、アーシャが宮廷医師筆頭の祖父に事情を話して、診察を免除してもらっていたのだ。
「ユリア様、陛下が王家の血筋ではないかもしれないという話があがっているのです。ユリア様は陛下の出生に関することで何かご存知のことはありませんか?」
ユリアはアーシャの話に「やっぱり」と呟いた。
「どういうことですか?」
その呟きにアーシャが鋭く反応した。
「お父様がお若い頃、先王の王子や王女たちの家庭教師をなさっていたんですけど」
「ノデル伯爵は歴史学者ですものね」
「ええ。ところが、ある時期から王子たちが次々に不審死をしたらしいのです」
「不審死?」
穏やかでない言葉にアーシャが眉をひそめた。
「全ての王子が亡くなったあと生まれたのが、ジェハス陛下だと。しかも、陛下のお母上の身分は侍女でしたの」
「まあ」
「陛下をお産みになったあと愛妾となったのだけれど、裏である噂がまことしやかにささやかれたそうですわ」
「噂?」
アーシャは核心に近づいていることに心拍があがってきた。
「父親が重装騎兵の一人だったグスタフという男なのではないかと」
「重装騎兵?」
「武神のように強い体を持ち、戦争でも功をあげていたそうです。その侍女と恋仲だった時期もあると」
符合する。
先王は線が細く、文化的な方だった。ジェハスは先王には全く似ていなかった。
「なぜ、ジェハス陛下の出生が疑われなかったのです?」
アーシャは根本的な疑問をユリアに呈した。
「殺されたのです、グスタフが父親ではないかと少しでも噂したものは全員」
不穏な内容に、部屋の温度がどんどん冷えていく。
「その後、他に男子が生まれず、先王がジェハス陛下を王太子として認めたこともあって、みな口を閉ざしましたの。しかも、グスタフ自身もその後まもなく事故死したのです」
「そんなことが」
アーシャは唖然とした。
ジェハスの本当の父親かもしれないグスタフまで死んだ。おそらく口封じだ。
ジェハスの母は恐ろしい人だったのだろう。
「第一側妃デリカ様と第二側妃ミア様までは、陛下のお母上が婚姻を取り仕切っていたけれど、お母上が病で亡くなられたあとは、陛下が好きなように妃を選んだと聞きました」
それでジェハスは、自分の好みではないデリカやミアにはあまり目を向けないのか。
アーシャはユリアから仕入れた情報をヴィヴィアンに報告した。
「偽王だということは限りなく黒に近いわね。この計画にかけましょう」
ヴィヴィアンとアーシャは同志のようにうなずきあった。
ヴィヴィアンの魔力が弱まって以来、ユリアの肌の水玉模様は消えてしまっていたが、アーシャが宮廷医師筆頭の祖父に事情を話して、診察を免除してもらっていたのだ。
「ユリア様、陛下が王家の血筋ではないかもしれないという話があがっているのです。ユリア様は陛下の出生に関することで何かご存知のことはありませんか?」
ユリアはアーシャの話に「やっぱり」と呟いた。
「どういうことですか?」
その呟きにアーシャが鋭く反応した。
「お父様がお若い頃、先王の王子や王女たちの家庭教師をなさっていたんですけど」
「ノデル伯爵は歴史学者ですものね」
「ええ。ところが、ある時期から王子たちが次々に不審死をしたらしいのです」
「不審死?」
穏やかでない言葉にアーシャが眉をひそめた。
「全ての王子が亡くなったあと生まれたのが、ジェハス陛下だと。しかも、陛下のお母上の身分は侍女でしたの」
「まあ」
「陛下をお産みになったあと愛妾となったのだけれど、裏である噂がまことしやかにささやかれたそうですわ」
「噂?」
アーシャは核心に近づいていることに心拍があがってきた。
「父親が重装騎兵の一人だったグスタフという男なのではないかと」
「重装騎兵?」
「武神のように強い体を持ち、戦争でも功をあげていたそうです。その侍女と恋仲だった時期もあると」
符合する。
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「なぜ、ジェハス陛下の出生が疑われなかったのです?」
アーシャは根本的な疑問をユリアに呈した。
「殺されたのです、グスタフが父親ではないかと少しでも噂したものは全員」
不穏な内容に、部屋の温度がどんどん冷えていく。
「その後、他に男子が生まれず、先王がジェハス陛下を王太子として認めたこともあって、みな口を閉ざしましたの。しかも、グスタフ自身もその後まもなく事故死したのです」
「そんなことが」
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