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21 暴かれる6
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アダムスはエバンジェリンの隣にいる辺境伯を睨んでいた。アダムスの思いをよそに陛下がデイジーに話を続けた。
「記憶は戻ったのか?」
「はい。川に行った後、記憶喪失になったようです」
「どうして川に行ったのだ?宿舎から随分と遠いはずだが」
「あの川で砂金が取れる噂があるから一緒に砂金取りに行こうと誘われて行きました」
「誰に誘われたのだ?」
デイジーは真っ直ぐにメアリを指差した。
「メアリさんです」
「やはりメアリだ」
「あの女怪しすぎる」
「あの川で砂金が取れるなど聞いた事もないぞ」
貴族たちがメアリを疑念に満ちた目で見た。アダムスもどうしてこんなにメアリが様々な疑惑に関わっているのか不思議に思い始めていた。
「メアリ。それは本当か」
「ええ。確かに誘いました。やましいことなど何にもございません。金が取れるなら少しでも生活の足しにしたいという庶民のささやかな願いですわ。私たち庶民は日々を生きるのに必死なのです。何の苦労も知らないエバンジェリン様とは違うんです」
メアリはエバンジェリンを引き合いに出し正当性を主張した。名前を出されたエバンジェリンは居たたまれないような傷ついた表情をしてうつむいた。
ここでエバンジェリンの名前を出さなくても……!
アダムスはメアリを非難したくなった。
「デイジー、どうして記憶喪失になったのだ」
陛下の質問にデイジーは顔を曇らせた。
「川の石で頭を打って……」
「どうして頭を打ったのだ」
「その。後ろから突き飛ばされて」
「誰に突き飛ばされたのだ」
一瞬デイジーは言い淀んだ。そのあと意を決したように視線を上げ真っ直ぐにある人を指差した。
「……この人です」
デイジーはメアリを指差していた。
「殺人未遂ではないか!!」
「きっと口封じだろう。なんと恐ろしい女だ!!」
貴族たちが一斉にメアリを糾弾した。
「なんという酷い言いがかりでしょう。デイジーは嘘をついています!私はそんなことしていません。それに後ろから突き飛ばされたのなら犯人の顔は見えなかったはずです。私だと決めつけるのはおかしいのでは?」
「でもあの時川にはメアリさんと私しかいませんでした!」
メアリの言葉にデイジーが食い下がった。
「デイジー。可哀想な子。あなたは時々記憶が飛ぶことがあったわね。内緒にしてほしいとあなたに言われたから私だけしか知らないけれど」
「はい?」
デイジーは何のことかとぽかんとしている。
「アダムス様宛の手紙を隠したのはあなた。梨をどうしても欲しいというから痛みの少ない梨をデイジーに渡したわ。だから夜中に梨を食べていたのもあなた」
「いやお前だ」と傍にいる証人たちが口々にメアリを指差した。
メアリは自分に酔ったように続けた。
「可哀想なデイジー。誰にも注目されず、恋人もおらず、嘘を重ねるなんて。同情しますわ」
「いえ、恋人はいます」
「え?」
デイジーは証人たちの方に目配せをした。少年のように若い調理人がデイジーと目を合わせ照れている。
え!
私をふったあの調理人がデイジーの恋人!??
メアリは若い調理人の顔が好みだった。自分には振り向かず後輩の恋人になったのだ。メアリはデイジーを睨みつけた。
「ああ、やっぱり……メアリさんは気に食わない事があるとすごく怖い顔で睨みつけて来るんです。だからメアリさんについて証言するのも本当は気が進まなくて……」
デイジーはそう言ってメアリから目を逸らした。アダムスはメアリのあんな恐ろしい表情を見たことなど一度もなかった。
メアリの裏の顔が現れ始めた。
「記憶は戻ったのか?」
「はい。川に行った後、記憶喪失になったようです」
「どうして川に行ったのだ?宿舎から随分と遠いはずだが」
「あの川で砂金が取れる噂があるから一緒に砂金取りに行こうと誘われて行きました」
「誰に誘われたのだ?」
デイジーは真っ直ぐにメアリを指差した。
「メアリさんです」
「やはりメアリだ」
「あの女怪しすぎる」
「あの川で砂金が取れるなど聞いた事もないぞ」
貴族たちがメアリを疑念に満ちた目で見た。アダムスもどうしてこんなにメアリが様々な疑惑に関わっているのか不思議に思い始めていた。
「メアリ。それは本当か」
「ええ。確かに誘いました。やましいことなど何にもございません。金が取れるなら少しでも生活の足しにしたいという庶民のささやかな願いですわ。私たち庶民は日々を生きるのに必死なのです。何の苦労も知らないエバンジェリン様とは違うんです」
メアリはエバンジェリンを引き合いに出し正当性を主張した。名前を出されたエバンジェリンは居たたまれないような傷ついた表情をしてうつむいた。
ここでエバンジェリンの名前を出さなくても……!
アダムスはメアリを非難したくなった。
「デイジー、どうして記憶喪失になったのだ」
陛下の質問にデイジーは顔を曇らせた。
「川の石で頭を打って……」
「どうして頭を打ったのだ」
「その。後ろから突き飛ばされて」
「誰に突き飛ばされたのだ」
一瞬デイジーは言い淀んだ。そのあと意を決したように視線を上げ真っ直ぐにある人を指差した。
「……この人です」
デイジーはメアリを指差していた。
「殺人未遂ではないか!!」
「きっと口封じだろう。なんと恐ろしい女だ!!」
貴族たちが一斉にメアリを糾弾した。
「なんという酷い言いがかりでしょう。デイジーは嘘をついています!私はそんなことしていません。それに後ろから突き飛ばされたのなら犯人の顔は見えなかったはずです。私だと決めつけるのはおかしいのでは?」
「でもあの時川にはメアリさんと私しかいませんでした!」
メアリの言葉にデイジーが食い下がった。
「デイジー。可哀想な子。あなたは時々記憶が飛ぶことがあったわね。内緒にしてほしいとあなたに言われたから私だけしか知らないけれど」
「はい?」
デイジーは何のことかとぽかんとしている。
「アダムス様宛の手紙を隠したのはあなた。梨をどうしても欲しいというから痛みの少ない梨をデイジーに渡したわ。だから夜中に梨を食べていたのもあなた」
「いやお前だ」と傍にいる証人たちが口々にメアリを指差した。
メアリは自分に酔ったように続けた。
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「いえ、恋人はいます」
「え?」
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え!
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デイジーはそう言ってメアリから目を逸らした。アダムスはメアリのあんな恐ろしい表情を見たことなど一度もなかった。
メアリの裏の顔が現れ始めた。
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