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28 メアリの父の証言
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これまで姿を見せなかったメアリの父が従者に連れられ大広間に現れた。
「パパ!私を弁護しに来てくれたのね!!」
メアリは目を輝かせて父に声をかけた。だがメアリの父は暗い目でメアリをちらりと見ると「すまない、メアリ」と小さく呟いた。
「え?え?何てパパ?」
陛下がメアリの父にうなずき促した。それに応えるようにメアリの問いかけに答えないまま父が証言を始めた。
「メアリは赤子の頃から怪物並みの大喰らいでした」
自分を援護してくれるとばかり思っていた父が自分のことを暴露し始めたと知ったメアリはぎっと父を睨んだ。
「パパの卑怯者!!私を売ったわね!?」
「オースト侯爵様がお前のことを正直に話せばわしを罪には問わないと言ってくださっているんだ!お願いだからわしまで巻き込まないでくれっ!!」
悲痛な叫びだった。侯爵に呼ばれたと言っていたのは司法取引をするためだったのだ。これほどの重罪を犯したメアリに対しその父もただではすまされないはずだった。
メアリが顔を真っ赤にして父を睨みつけていたが父はそのまま話を続けた。
「遠征地の食料を食べ尽くしていたのはきっとメアリです。メアリは息を吸うように胃袋の中に次々と食べ物を入れるんです。
昔食費に困っていたわしらにサーカスの団長がアドバイスをくれました。メアリの大喰らいを見せ物にして金を稼げばいいと。わしらはこの国を出てサーカス団と一緒に諸国を渡り歩きました」
それである日突然メアリがいなくなったのか。
小さい頃一緒に遊んでいたメアリが急に引越したとアダムスは思っていたがこれが理由だったのだ。
「年頃になったメアリは団長の息子と恋仲になり結婚しました。しかしよりによって他の団員と浮気をしてわしらはサーカス団を追い出されました」
「やはり浮気か」
「最初からそういう女だったんだな」
貴族たちのひそめきが聞こえてくる。
メアリはとんだふしだらな女だ!
僕もたぶらかされたんだ!
アダムスは貴族たちに同調した。
「次にメアリはある街で娼婦として働き始めました。妻を亡くした娼館の主人と間もなく結婚しました。ところが何人もの客の男と浮気をするので離婚され追い出されました」
「また懲りずに追い出されて」
「あれはもう色魔だな」
貴族たちの囁きにも動じずメアリはつんとすましたように父をねめつけている。
「そのあと畑のものを盗みながら食い繋ぎ諸国を転々としていたところ、メアリは年配の農園経営者に気に入られ結婚しました。ですがメアリが農園の売り物まで食べ尽くすので農園が破産寸前まで追い込まれ離婚されました。可愛がっていた孫にも二度と会わせないと言われわしは悲しくて悲しくて……」
メアリの父は目に涙をにじませた。
「その後この国に戻ってきましたが、メアリの怪物的な食欲のせいで生活が困窮し妻は心労でノイローゼになり、とうとう崖から飛び降りました」
え!
メアリは母親は去年熱病で亡くなったって言っていたのにメアリが原因だったのか!?
メアリは親をも不幸にしていた。
「そんなとき遠征地で働く従者を募集していることを知りました。かなりの高給だったので少しでも食費の足しになればと考え、メアリはシンバ子爵家に雇われて遠征地で働き始めました。
ある日男爵家のお坊ちゃんに結婚を申し込まれたと手紙をくれました。貴族の方ならお金持ちだろうからきっと食費も賄えるはずと、わしはようやくメアリが身を落ち着かせることができると安堵しておりました。
それなのにまさかお相手があのオースト家のエバンジェリン様の婚約者だったとは……そのことはメアリが遠征先から帰宅した後で知りました。本当に、本当に、取り返しがつかないことを……申し訳ありませんでした……」
メアリの父は涙ぐみながら陛下や貴族たち、オースト侯爵やエバンジェリンに深々と謝罪した。
「謝ることなんて何もないのに!娘を信用もしないで役立たずな親だこと!」
メアリは父親を愚弄した。父はおびえにも似た目をメアリに向けた。
「メアリは高齢になってやっと授かった娘でしたのでこれまで何とか育ててきましたがもう無理です。
この通り自分が悪いことを全く認めません。嘘を重ねても平気です。相手が傷つくことなど微塵も考えることができません。
わしらは無限の食欲と際限なく男をたぶらかす大ボラ吹きの悪魔を産んでしまったのです!
どうかこの子をどこかに隔離してください!もう人様に二度と迷惑かけないよう切れない鎖で牢に繋いでいてください!!」
父の叫びが広間に響き渡った。
「パパ!私を弁護しに来てくれたのね!!」
メアリは目を輝かせて父に声をかけた。だがメアリの父は暗い目でメアリをちらりと見ると「すまない、メアリ」と小さく呟いた。
「え?え?何てパパ?」
陛下がメアリの父にうなずき促した。それに応えるようにメアリの問いかけに答えないまま父が証言を始めた。
「メアリは赤子の頃から怪物並みの大喰らいでした」
自分を援護してくれるとばかり思っていた父が自分のことを暴露し始めたと知ったメアリはぎっと父を睨んだ。
「パパの卑怯者!!私を売ったわね!?」
「オースト侯爵様がお前のことを正直に話せばわしを罪には問わないと言ってくださっているんだ!お願いだからわしまで巻き込まないでくれっ!!」
悲痛な叫びだった。侯爵に呼ばれたと言っていたのは司法取引をするためだったのだ。これほどの重罪を犯したメアリに対しその父もただではすまされないはずだった。
メアリが顔を真っ赤にして父を睨みつけていたが父はそのまま話を続けた。
「遠征地の食料を食べ尽くしていたのはきっとメアリです。メアリは息を吸うように胃袋の中に次々と食べ物を入れるんです。
昔食費に困っていたわしらにサーカスの団長がアドバイスをくれました。メアリの大喰らいを見せ物にして金を稼げばいいと。わしらはこの国を出てサーカス団と一緒に諸国を渡り歩きました」
それである日突然メアリがいなくなったのか。
小さい頃一緒に遊んでいたメアリが急に引越したとアダムスは思っていたがこれが理由だったのだ。
「年頃になったメアリは団長の息子と恋仲になり結婚しました。しかしよりによって他の団員と浮気をしてわしらはサーカス団を追い出されました」
「やはり浮気か」
「最初からそういう女だったんだな」
貴族たちのひそめきが聞こえてくる。
メアリはとんだふしだらな女だ!
僕もたぶらかされたんだ!
アダムスは貴族たちに同調した。
「次にメアリはある街で娼婦として働き始めました。妻を亡くした娼館の主人と間もなく結婚しました。ところが何人もの客の男と浮気をするので離婚され追い出されました」
「また懲りずに追い出されて」
「あれはもう色魔だな」
貴族たちの囁きにも動じずメアリはつんとすましたように父をねめつけている。
「そのあと畑のものを盗みながら食い繋ぎ諸国を転々としていたところ、メアリは年配の農園経営者に気に入られ結婚しました。ですがメアリが農園の売り物まで食べ尽くすので農園が破産寸前まで追い込まれ離婚されました。可愛がっていた孫にも二度と会わせないと言われわしは悲しくて悲しくて……」
メアリの父は目に涙をにじませた。
「その後この国に戻ってきましたが、メアリの怪物的な食欲のせいで生活が困窮し妻は心労でノイローゼになり、とうとう崖から飛び降りました」
え!
メアリは母親は去年熱病で亡くなったって言っていたのにメアリが原因だったのか!?
メアリは親をも不幸にしていた。
「そんなとき遠征地で働く従者を募集していることを知りました。かなりの高給だったので少しでも食費の足しになればと考え、メアリはシンバ子爵家に雇われて遠征地で働き始めました。
ある日男爵家のお坊ちゃんに結婚を申し込まれたと手紙をくれました。貴族の方ならお金持ちだろうからきっと食費も賄えるはずと、わしはようやくメアリが身を落ち着かせることができると安堵しておりました。
それなのにまさかお相手があのオースト家のエバンジェリン様の婚約者だったとは……そのことはメアリが遠征先から帰宅した後で知りました。本当に、本当に、取り返しがつかないことを……申し訳ありませんでした……」
メアリの父は涙ぐみながら陛下や貴族たち、オースト侯爵やエバンジェリンに深々と謝罪した。
「謝ることなんて何もないのに!娘を信用もしないで役立たずな親だこと!」
メアリは父親を愚弄した。父はおびえにも似た目をメアリに向けた。
「メアリは高齢になってやっと授かった娘でしたのでこれまで何とか育ててきましたがもう無理です。
この通り自分が悪いことを全く認めません。嘘を重ねても平気です。相手が傷つくことなど微塵も考えることができません。
わしらは無限の食欲と際限なく男をたぶらかす大ボラ吹きの悪魔を産んでしまったのです!
どうかこの子をどこかに隔離してください!もう人様に二度と迷惑かけないよう切れない鎖で牢に繋いでいてください!!」
父の叫びが広間に響き渡った。
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