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30 再びの結婚宣言
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ああ、やっといなくなった。
アダムスは連行されるメアリを眺めながらほっと息をついた。
よかった。
これでメアリと別れられる。
メアリは残飯喰らいの刑という聞いたこともない重罪を受けるのだ。もう自分と関わることはないのだと自分から結婚を申し込んだくせにアダムスは都合よく考えていた。
今こそ僕の出番だ。
アダムスは自分も刑を下されたことをもう忘れエバンジェリンを見つめた。アダムスは自分を連行しようとした兵の手をぽいと振り払った。
さあ、勇気を出して。
アダムスは息を大きく吸い張りのある声を上げた。
「陛下に申し上げます!」
ようやく審議が終わったと帰り支度にとりかかっていた一同が何事かとアダムスに注目した。
見てろよ、辺境伯。
お前なんか蹴散らしてやる。
エバンジェリンや辺境伯がこちらに注目していることを確認しアダムスは胸を張り演説を始めた。
「僕は深く反省しております。僕はエバンジェリンへの愛に目覚めました。今や僕とエバンジェリンは相思相愛です。
もう障壁はなくなりました。僕はメアリと婚約破棄し、エバンジェリンと結婚します!」
アダムスは声高らかに宣言した。メアリとの結婚を取りやめ再びエバンジェリンと婚約すれば罪は消える、そうアダムスは思い込んでいた。
ところが周囲はしーんと水を打ったように静まり返っていた。
あれあれ??
どうしたんだろみんな。
ここは「よく言った」と僕を称賛する場面じゃないのか??
無学のアダムスのメルヘンチックな頭では皆の反応がどうしてこうなるのか理解できなかった。
「お前は大事なことを知らないままのようだな……」
陛下が地獄の底まで届きそうな深いため息を吐いた。そして気の毒そうにアダムスに言い聞かせるように語り始めた。
「オースト家の令息令嬢と婚姻する者はある王国法を守らねばならない。アダムス。お前はそれを破った」
「え?王国法??」
父の話をまじめに聞いてなかったアダムスには何のことやら見当もつかなかった。
「その王国法とは。清い体でいることだ」
「清い体ということは……」
まさか。
アダムスはさっきまで高みにいた自分が急激に闇の底に落ちていくような息苦しさを感じた。
”君は肝心なことを理解していないようだな”
あの時階段で辺境伯が自分に言ったセリフがアダムスの頭の中で重なった。
まさか。
まさか清い体って────
「そうだ。お前はメアリと関係を持った。これによりお前はとうにエバンジェリンの婿候補から外されているのだ」
「そっ、そんな──!!!!」
アダムスは言葉を失った。
「僕の夢はどうなるんですか──!」
妖精のように美しく純情なエバンジェリンと夫婦になり富と権力を得るという夢は──?
「夢?今更何を言ってるんだ、自業自得であろう?」
陛下はアダムスの言葉をさっくりと切り捨てた。
「王国法も知らなかったのか!」
「我々の息子たちが年頃になっても我慢して清い体でいるのは全てエバンジェリン様との婚姻を勝ち取るためだったんだぞ!?」
「それを何の苦労もなく掴んだ幸運をドブに捨てるような真似をして」
「どうしようもない男だな、アダムスは」
貴族たちが呆れ返ってアダムスを眺めた。
「そんな、そんな……」
夢は消え去った。アダムスは抵抗する気力も失い糸の切れた操り人形のように兵に連行されていった。
アダムスは連行されるメアリを眺めながらほっと息をついた。
よかった。
これでメアリと別れられる。
メアリは残飯喰らいの刑という聞いたこともない重罪を受けるのだ。もう自分と関わることはないのだと自分から結婚を申し込んだくせにアダムスは都合よく考えていた。
今こそ僕の出番だ。
アダムスは自分も刑を下されたことをもう忘れエバンジェリンを見つめた。アダムスは自分を連行しようとした兵の手をぽいと振り払った。
さあ、勇気を出して。
アダムスは息を大きく吸い張りのある声を上げた。
「陛下に申し上げます!」
ようやく審議が終わったと帰り支度にとりかかっていた一同が何事かとアダムスに注目した。
見てろよ、辺境伯。
お前なんか蹴散らしてやる。
エバンジェリンや辺境伯がこちらに注目していることを確認しアダムスは胸を張り演説を始めた。
「僕は深く反省しております。僕はエバンジェリンへの愛に目覚めました。今や僕とエバンジェリンは相思相愛です。
もう障壁はなくなりました。僕はメアリと婚約破棄し、エバンジェリンと結婚します!」
アダムスは声高らかに宣言した。メアリとの結婚を取りやめ再びエバンジェリンと婚約すれば罪は消える、そうアダムスは思い込んでいた。
ところが周囲はしーんと水を打ったように静まり返っていた。
あれあれ??
どうしたんだろみんな。
ここは「よく言った」と僕を称賛する場面じゃないのか??
無学のアダムスのメルヘンチックな頭では皆の反応がどうしてこうなるのか理解できなかった。
「お前は大事なことを知らないままのようだな……」
陛下が地獄の底まで届きそうな深いため息を吐いた。そして気の毒そうにアダムスに言い聞かせるように語り始めた。
「オースト家の令息令嬢と婚姻する者はある王国法を守らねばならない。アダムス。お前はそれを破った」
「え?王国法??」
父の話をまじめに聞いてなかったアダムスには何のことやら見当もつかなかった。
「その王国法とは。清い体でいることだ」
「清い体ということは……」
まさか。
アダムスはさっきまで高みにいた自分が急激に闇の底に落ちていくような息苦しさを感じた。
”君は肝心なことを理解していないようだな”
あの時階段で辺境伯が自分に言ったセリフがアダムスの頭の中で重なった。
まさか。
まさか清い体って────
「そうだ。お前はメアリと関係を持った。これによりお前はとうにエバンジェリンの婿候補から外されているのだ」
「そっ、そんな──!!!!」
アダムスは言葉を失った。
「僕の夢はどうなるんですか──!」
妖精のように美しく純情なエバンジェリンと夫婦になり富と権力を得るという夢は──?
「夢?今更何を言ってるんだ、自業自得であろう?」
陛下はアダムスの言葉をさっくりと切り捨てた。
「王国法も知らなかったのか!」
「我々の息子たちが年頃になっても我慢して清い体でいるのは全てエバンジェリン様との婚姻を勝ち取るためだったんだぞ!?」
「それを何の苦労もなく掴んだ幸運をドブに捨てるような真似をして」
「どうしようもない男だな、アダムスは」
貴族たちが呆れ返ってアダムスを眺めた。
「そんな、そんな……」
夢は消え去った。アダムスは抵抗する気力も失い糸の切れた操り人形のように兵に連行されていった。
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