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46 専務の部屋 沙耶視点
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私は専務に『どうしても専務に会いたくなってしまいました。お部屋にお邪魔してもいいですか?』とメッセージを送った。
専務は『もちろんだよ。すぐにおいで』と快諾してくれた。
私が専務の部屋に上がると、
「西くんのことは聞いたかい? まさか彼が仮想通貨を奪った犯人だったとは。会社でもかなりの騒ぎになっているよ」
と残念そうに言った。
「西くんには失望しました。かわいい後輩だと思ってたのに残念な子ですよね」
話を合わせて油断させなきゃ……
私はがっかりしたふりをして演技をはじめた。
「営業のエースだって期待されてたみたいだけど、あれじゃあ専務の足元にも及びませんよね?」
心にもないことを口から吐いて心が痛んだけど、西くんを助けるためだと思って演技を続けた。
「僕も彼には目をかけていたんだよ。見どころがある人物だって。でも、その能力を犯罪に使ってはダメだよ」
専務はやれやれという風に両手を広げ、得意げに言った。
何か会話で専務の気を緩めさせないと……
「そうそう。私、仮想通貨への投資を始めてみようかなと思ってるんです」
私は専務が興味を持つだろう仮想通貨についての話題を切り出した。
「でも種類が多くてどれがいいのかよくわからなくて……専務だったらどれにします?」
私が悩んだふうに指を顎に当てると、専務の目がきょろっと動いたのがわかった。
「そうだねえ。僕だったら、トートコインかエサリーかな」
「それなら私も聞いたことあります。それもいいですけど、私ちょっと変わった種類に興味があるんですよね。あまり人が見向きもしないような」
専務の目が一瞬輝いたのがわかった。
「君ほどの投資家になると面白いことを考えるものだね!そういうことなら、アルテミスコインというのが面白いんだよ」
「アルテミス……月の女神ですか?」
「そう!最近開発された新しい技術で生まれた仮想通貨だ。美しい君にぴったりだよ」
専務は饒舌だった。その後も仮想通貨の話題はしばらく続いた。いつもなら冷静な専務が頬を紅潮させながら話す仮想通貨への熱を私は見逃さなかった。
「専務ってすごい。こんなに詳しい人、はじめて」
私はうっとりとした表情で両手を胸に当てた。
「大したことないよ。少し調べれば誰にでもわかるさ」
違う。私は仮想通貨の下調べをしてきた。私が知らない情報を専務はたくさん知っていた。ハッキングのためにこれだけ詳しくなったに違いない。
専務が上機嫌になってきたところで、私はそろそろ仕掛けようと考えていた。
会社PCがどこかにあるはず……
私は何気ないふりをして部屋を見渡した。
あった!
リビングの奥にある書斎にノート型の会社PCが置かれていた。仕事中だったのか、PCは開かれていて電源が入っているようだった。
「あ。もしかしてお仕事中だったんですか? お邪魔しちゃったかな……でも私、PCに向かってる男の人、すごく好きなんです。数倍もかっこよく見えちゃうっていうか」
私は専務にそっと近づき、胸に顔を埋めた。
「専務……私、今日ここに泊まってもいいですか……?」
どくどくと私の心臓が緊張で波打っていた。
専務は『もちろんだよ。すぐにおいで』と快諾してくれた。
私が専務の部屋に上がると、
「西くんのことは聞いたかい? まさか彼が仮想通貨を奪った犯人だったとは。会社でもかなりの騒ぎになっているよ」
と残念そうに言った。
「西くんには失望しました。かわいい後輩だと思ってたのに残念な子ですよね」
話を合わせて油断させなきゃ……
私はがっかりしたふりをして演技をはじめた。
「営業のエースだって期待されてたみたいだけど、あれじゃあ専務の足元にも及びませんよね?」
心にもないことを口から吐いて心が痛んだけど、西くんを助けるためだと思って演技を続けた。
「僕も彼には目をかけていたんだよ。見どころがある人物だって。でも、その能力を犯罪に使ってはダメだよ」
専務はやれやれという風に両手を広げ、得意げに言った。
何か会話で専務の気を緩めさせないと……
「そうそう。私、仮想通貨への投資を始めてみようかなと思ってるんです」
私は専務が興味を持つだろう仮想通貨についての話題を切り出した。
「でも種類が多くてどれがいいのかよくわからなくて……専務だったらどれにします?」
私が悩んだふうに指を顎に当てると、専務の目がきょろっと動いたのがわかった。
「そうだねえ。僕だったら、トートコインかエサリーかな」
「それなら私も聞いたことあります。それもいいですけど、私ちょっと変わった種類に興味があるんですよね。あまり人が見向きもしないような」
専務の目が一瞬輝いたのがわかった。
「君ほどの投資家になると面白いことを考えるものだね!そういうことなら、アルテミスコインというのが面白いんだよ」
「アルテミス……月の女神ですか?」
「そう!最近開発された新しい技術で生まれた仮想通貨だ。美しい君にぴったりだよ」
専務は饒舌だった。その後も仮想通貨の話題はしばらく続いた。いつもなら冷静な専務が頬を紅潮させながら話す仮想通貨への熱を私は見逃さなかった。
「専務ってすごい。こんなに詳しい人、はじめて」
私はうっとりとした表情で両手を胸に当てた。
「大したことないよ。少し調べれば誰にでもわかるさ」
違う。私は仮想通貨の下調べをしてきた。私が知らない情報を専務はたくさん知っていた。ハッキングのためにこれだけ詳しくなったに違いない。
専務が上機嫌になってきたところで、私はそろそろ仕掛けようと考えていた。
会社PCがどこかにあるはず……
私は何気ないふりをして部屋を見渡した。
あった!
リビングの奥にある書斎にノート型の会社PCが置かれていた。仕事中だったのか、PCは開かれていて電源が入っているようだった。
「あ。もしかしてお仕事中だったんですか? お邪魔しちゃったかな……でも私、PCに向かってる男の人、すごく好きなんです。数倍もかっこよく見えちゃうっていうか」
私は専務にそっと近づき、胸に顔を埋めた。
「専務……私、今日ここに泊まってもいいですか……?」
どくどくと私の心臓が緊張で波打っていた。
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