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6 養女
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「ハンナ、ハンナ!大変だ」
「どうしたの、サム。どこに行ってたの?」
アミアンを支えて屋敷に入ってきたサムに話しかけたハンナは、アミアンの異変に青ざめた。
「お嬢様!どうなさったの!?」
アミアンはショックのあまり自分では歩けないほど気力を失っていた。
「具合が悪いのかしら!?今朝はあんなにお元気だったのに」
「急に湖が見たいっておっしゃられて、その次は領地の向こうのお屋敷に連れていってほしいと」
「──!」
ハンナはピンときた。
「もしかして何か思い出したんじゃ」
「でも屋敷を二つ見に行ってからずっと泣かれてて。何かよほどお辛いことがあったようだ」
「とにかくベッドで休ませてあげましょう」
二人はアミアンを私室へ連れて行きベッドに横たわらせた。アミアンはまだ泣いている。
「お嬢様。私たちがついております。何か困ったことがあるのなら何なりとおっしゃってください」
嗚咽して返事もできないアミアンの涙をハンナはハンカチで何度も拭ってやった。
ハンナはずっとアミアンのそばに付き添っていた。
「婚約者が結婚してたの」
しばらくしてアミアンがぽつりと声を漏らした。
「婚約者?」
「ウィルが、私のウィルが、ベティと結婚して赤ちゃんまでいたの!」
アミアンは再び涙を滲ませた。
「なんてこと」
ハンナはアミアンが気の毒でアミアンの手を握りしめた。
「しかも、お墓があったの。私の名前が刻まれていたわ」
「えっ!!」
ハンナは以前業者に聞いた葬儀のことが頭をよぎった。
まさか。
「アミアン・スターリング……私は伯爵家の娘だったの」
この子のことだったの!?
ハンナは愕然とした。業者が棺があったと言っていたのでてっきり別の令嬢だと思い込んでいた。
「それに屋敷にお父様の愛人とその子どもがいたわ。年齢からしてお母様がまだ生きている時からの仲だと思うわ。私にはもう居場所がないの。私はこれからどうしたらいいの……」
「そんな……」
ハンナは言葉を失った。どれだけ傷ついたことだろう。泣くアミアンを見つめるうちにハンナはあることを思いついた。
「アミアン様……いっそのこと大公様の養女になられてはどうでしょう」
ハンナにとっては賭けだった。アミアンがどうしても実家に戻りたいのなら従うしかないが、もしこのままここにいたいと思っていたら──。
アミアンはしばらく無言だった。ハンナは固唾を飲んで返答を待った。
お父様の浮気相手が少しでも暮らした実家に戻るなんてまっぴらごめんだわ。
それに汚らわしいお父様とももう暮らしたくない。
アミアンは頑なにそう思っていた。
「大公様は許してくださるかしら?」
「それはもう、お喜びになるはずですわ!」
その気がある!
ハンナはよく回る頭で素早く手順を組み立てた。
「まず執事に相談しましょう。それから大公様が正気に戻っている時にお嬢様の事情と養女の話を、その後に伯爵様に大公家からの要望をお伝えしましょう」
「わかったわ。ありがとう、ハンナ」
拒否をしなかった。
よほどショックだったのね。
うまくやらなければ。
ハンナはこれはアミアンを正当に大公家のものにできるチャンスだと拳を握りしめた。
「どうしたの、サム。どこに行ってたの?」
アミアンを支えて屋敷に入ってきたサムに話しかけたハンナは、アミアンの異変に青ざめた。
「お嬢様!どうなさったの!?」
アミアンはショックのあまり自分では歩けないほど気力を失っていた。
「具合が悪いのかしら!?今朝はあんなにお元気だったのに」
「急に湖が見たいっておっしゃられて、その次は領地の向こうのお屋敷に連れていってほしいと」
「──!」
ハンナはピンときた。
「もしかして何か思い出したんじゃ」
「でも屋敷を二つ見に行ってからずっと泣かれてて。何かよほどお辛いことがあったようだ」
「とにかくベッドで休ませてあげましょう」
二人はアミアンを私室へ連れて行きベッドに横たわらせた。アミアンはまだ泣いている。
「お嬢様。私たちがついております。何か困ったことがあるのなら何なりとおっしゃってください」
嗚咽して返事もできないアミアンの涙をハンナはハンカチで何度も拭ってやった。
ハンナはずっとアミアンのそばに付き添っていた。
「婚約者が結婚してたの」
しばらくしてアミアンがぽつりと声を漏らした。
「婚約者?」
「ウィルが、私のウィルが、ベティと結婚して赤ちゃんまでいたの!」
アミアンは再び涙を滲ませた。
「なんてこと」
ハンナはアミアンが気の毒でアミアンの手を握りしめた。
「しかも、お墓があったの。私の名前が刻まれていたわ」
「えっ!!」
ハンナは以前業者に聞いた葬儀のことが頭をよぎった。
まさか。
「アミアン・スターリング……私は伯爵家の娘だったの」
この子のことだったの!?
ハンナは愕然とした。業者が棺があったと言っていたのでてっきり別の令嬢だと思い込んでいた。
「それに屋敷にお父様の愛人とその子どもがいたわ。年齢からしてお母様がまだ生きている時からの仲だと思うわ。私にはもう居場所がないの。私はこれからどうしたらいいの……」
「そんな……」
ハンナは言葉を失った。どれだけ傷ついたことだろう。泣くアミアンを見つめるうちにハンナはあることを思いついた。
「アミアン様……いっそのこと大公様の養女になられてはどうでしょう」
ハンナにとっては賭けだった。アミアンがどうしても実家に戻りたいのなら従うしかないが、もしこのままここにいたいと思っていたら──。
アミアンはしばらく無言だった。ハンナは固唾を飲んで返答を待った。
お父様の浮気相手が少しでも暮らした実家に戻るなんてまっぴらごめんだわ。
それに汚らわしいお父様とももう暮らしたくない。
アミアンは頑なにそう思っていた。
「大公様は許してくださるかしら?」
「それはもう、お喜びになるはずですわ!」
その気がある!
ハンナはよく回る頭で素早く手順を組み立てた。
「まず執事に相談しましょう。それから大公様が正気に戻っている時にお嬢様の事情と養女の話を、その後に伯爵様に大公家からの要望をお伝えしましょう」
「わかったわ。ありがとう、ハンナ」
拒否をしなかった。
よほどショックだったのね。
うまくやらなければ。
ハンナはこれはアミアンを正当に大公家のものにできるチャンスだと拳を握りしめた。
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