女神お気に入りの美少女(元男)、今世は魔王を誕生させるそうで。

しいな

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第14話 合流

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数分後、アンバーは暗殺を完了させ戻ってきた。
あとは待つだけ。何してようかな…
そんなことを考えていると、2回カチカチとスイッチを押した音が聞こえた。
これは…アッシュか。そういえば、アンバーは偶然遭遇して見られたけど他の人はどんな暗殺をしてるんだろ。
見てみたいな…
テン「……あ!!やば、私シオンの暗殺見ないと!!全部記録しろって女神に言われてるんだった!」
危ない危ない、忘れてた…!
私はシオンの旅を記録するために現世に来たんだった。
暗殺完了の合図来てないしまだ終わってないと信じたいけど…
アンバー「じゃあ師匠探しに行くか」
嬉しそうに言う。
目に見えてウキウキできもい…シオンに会いたいんだろうなー。ま、私も早く行かないとだしちょうどいいんだけどさ。
そうして、私たちはシオンを探すため未だにリラの歌に魅了されている客が沢山の会場内をウロウロと回ることにした。


シオンを探さなきゃいけない…それは分かっているのに…どうしてもご飯に目がいく!
そんな私の様子を察したのか、アンバーにぺちっと軽く頭をはたかれる。
テン「なにすんだ!」
アンバー「ちゃんと師匠探せよ。それに、リラさんにご飯食べたらダメって言われてるだろ」
それはそうだけど…こんな美味しそうなご飯見るなって方が無理!食べれないならせめて目で…
ていうか、なんで食べちゃダメなんだろ?ご飯食べてると無防備だからーとかかな
テン「しょうがない、ばいばいご飯…」



私の暗殺の様子について語ったり、リラの歌について感想を言い合ったり…他にも色んな事を話しながら歩いていると、気づけばパーティも終盤。
会場はとっくに明るくなっていて、リラの歌をBGMにお喋りや食事を楽しむ人も多くなった。
おかげでだいぶ分かりやすくなったな!自由に動きずらくなったけど…
テン「流石にこの状況じゃ気配消して消えるとバレちゃうよなあ…」
アンバー「探しやすくなった分、人目につきやすくなったからあんま迂闊なことできないな。さっさと師匠見つけるぞ」
軽く返事をし、周りを見渡す。
そこまで広くないし、目をこらせばすぐ見つかるはず…
アンバー「…………あ、いた」
視線を追ってみると、確かにシオンがいた。流石、シオンのこととなれば万能だな。
なんて思ってると、私の返事も待たずさっさと向かっていってしまった。こいつ…!



とうとう1歩も止まらず、シオンと合流した。
アンバーはニコニコで話しかけている。
テン「やっと合流できた…シオン、もう終わっちゃった?」
息を整えながら聞く。
やっぱ地に足つけるのは疲れるな…
シオン「ああ、終わったぞ。結構前に」
サラッと言うが、私には終わりの合図だった
うえ?!やべ、女神に怒られる…!!
ていうか音鳴ったの全然気づかなかった…私が暗殺してる時かな?集中してたし聴き逃しててもおかしくない…
……よし、こうなったら超細かく話してもらって現場見てたように偽装しよう!!
テン「シオンがどうやったか聞きたいなー。今後の参考にもなるし。出来れば細かく!」
役目しっかり果たしてないって知られたら怒られそうだし女神の言いつけ破ったのは秘密にしておこう…
バレませんように、なんて祈っていたがシオンはこちらをじっと見つめてくる。
シオン「なんか隠してるな?」
穏やかに、それでも鋭い目付きで言ってくる。
バレてるぅ…もう、なんか驚かなくなってきた。
アンバーは嘘をすぐ見通せるの、流石です!なんて新鮮な反応してるけど。
前から思ってたけど、結構嘘に気づくよな…
テン「えへへ…女神からシオンの行動全部記録するように言われてたけど暗殺のとこ見れなかったから教えて欲しいです…」
どんな反応をしているか、チラッとシオンの顔を見る。
が、思っていた反応と違い拍子抜けたような表情だ。
シオン「なんだ。そんなことか。またあの女神がなんか変なこと言ったのかと…」
軽いいつもの調子なのに、なにか闇を感じる。
アンバー「また?」
何か違うのを感じとったのか、聞き返す。
だが、次の瞬間にはシオンはいつもと変わらないようだった。
シオン「まあ、前ちょっと色々あってな。今度ちゃんと話すよ」
また濁された。やっぱり昔なにかあったんだな…
…でも、前よりは閉ざされてる気はしない。嘘をついてる感じも。いつかはちゃんと話してくれるんだろう。
時間はあるし気長に待とう。
シオン「じゃ、面白いことなんてひとつも無いけど…話してやるよ。俺の暗殺。」
壁際の周りに人の少ないイスに腰をかけ、語り始めた。
以下は、シオンに聞いた話をあたかもその現場にいたように私視点で書いたものである。



解散して数分。シオンは運良くターゲットを早々に見つけていた。だが、一向に近づこうとしない。
どうやら暗殺方法を考えているようだ。
シオン(俺が今使える魔法は暗殺には使えない。となると、今覚えるかなにか道具を使うか…)
長考した後、パッと顔を上げる。
シオン(前の世界で暗殺をやった時。元いた世界の漫画を参考にしたな。その時は魔力を具現化させた。新しく覚えるのは無理にしても、作るのなら…)
周りから見えないよう、それでいて不自然じゃないくらいに手を体で隠す。
すると、隠した手から紫っぽい霧が出てくる。
それはみるみるうちに固まり始め、糸のように細長くなった。なんだ?これは。
どこかの世界のものなのかな…
シオン(よし。ワイヤーをよく再現できてる。強度も十分。…これなら、いける。)
イメージが固まったのか、シオンはターゲットへと近寄っていく。
シオン「こんばんは。」
ターゲットは一瞬身構えたものの、すぐに柔らかい笑顔で対応する。
ターゲット「やあ、こんばんは。何か用かな?お嬢さん。」
警戒は解いていないが、相手にそれを悟られないようにしている。手練だな。
シオン「特に用事がある訳ではないのですけど…私、こういう場初めてで緊張しちゃって。でも、貴方なら話しやすそうでつい…」
自然なうるうるとした目の上目遣い。内股気味の立ち方。両手で必死にキュッと持つジュースのコップ。初々しい女の子の立ち振る舞いが完璧だ。
ターゲット「おやおや、それは光栄だ。…ん?君、もしかしてエルフかい?」
シオン「そうです!」
それを聞いた途端、目付きが変わる。
これまで1度も見ていないし、エルフは珍しいのかもしれない。
ターゲット「……それじゃあ、少し外に行って話そうか?ここじゃ人が沢山いて緊張してしまうよね」
優しい口調で語る。
シオンは元気よく返事をし、一緒に歩いていった。


庭に出てみると、人はいない。
ここだと中から見られる危険があるが、もう少し奥に進めば暗殺に最適な場所だ。
シオン「お話したいですし…少し歩きましょう?」
そう言い、シオンは人目のつかない場所へと誘導する。歩いている時は、狙って1歩後ろを歩いているようだ。
シオン(…警戒されてるな。ま、あんな不自然な話しかけ方されて警戒しない馬鹿なんてそうそういないだろうけど。)
ターゲットはずっと前を歩いているものの、完全に体を前には向けずチラチラと後ろを確認している。
隙を見せないようにしている…が、それがシオンに通用するかな? 
シオン(策は何個か考えてきた。さて、どれにするか。)
2人は1件微笑ましく穏やかに雑談をかわしているが、空気はピリピリと緊張が走っていた。
シオン(ワイヤーを使った暗殺…普通に窒息させるだけだと時間がかかってしまう。時間をかければかけるほど見つかったり抵抗されるリスクは上がる。と、なると…頚椎を狙って、脊髄を断裂させる。)
とうとうシオンが動きを止め、暗殺を仕掛けようとする。恐らくターゲットは、来ることを察知し、よけれるように構えているだろう。…だが、半端な警戒が通用する相手ではない。
惑わしの言葉を発することもなくシオンは素早く魔力の糸を生成し、相手の頭をトンと軽く押して首を前屈させた状態にする。そして、すぐに糸をひゅっと首にかける。
ターゲットは避けようと試みたものの、残酷にも失敗。シオンは勢いよく、でも丁寧に。鋭く後ろに糸を引く。
…次の瞬間。音は全くしないのに、ポキッと折れる効果音が聞こえてきた。ターゲットは糸を引かれたあとすぐ。体が跳ね、痙攣をした後。糸が切れたように力が抜け、倒れ込んでしまった。
確認すると、息をしていない。
あんな手練が、あんな警戒していたのに。
もがく間も苦しむ間もなく、呆気なく死んでしまった。声を上げることも出来ずに。
悪党の最後の最後はこんなにも寂しく、なにも残せないのか。
やっぱりシオンはすごい。私じゃ、多分倒せなかった。
…シオンが敵だったらと思うと、恐怖でしかない。
あのターゲットも可哀想だな。人身売買組織の中でも上位の立場だったろうに。そんな上手く行ってた人生がこんな結末で。
これは自業自得なのかただ運が悪かったのか。
私には、分からなかった。



テン「…OK!書けた!ありがとー!!」
パタンとメモ帳を閉じ、顔を上げる。
すると、アンバーが目をキラキラと輝かせていた。
うわぁ…なんとなく予想はついてたけど、いつにも増して尊敬の眼差しだ。キモさはいつも通り…
アンバー「凄いです!師匠!即興で魔法を作ってしまうなんて…!それに、中は男性とはいえ力は女性のものですよね。振りほどかれそうな気が…なのにほとんど即死のはやさで仕留めるとは…どうやったんですか?!」
すごい早口で、ずっと感想を言い続けている。
やっぱやばいなこいつ。……けど、なんというか…闇というか、なにか悪いものが抜けて真っ当な執着になったような…
いや、真っ当な執着ってなに?
そんなことを考えている最中も続くアンバーの話に我慢の限界を感じ、止めようとすると一足先にシオンが静止した。
シオン「まあまあ、落ち着けって。あれは経験があったからたまたま出来ただけだよ」
なんて平気な顔で言っているが、すごいものは凄い。
アンバーの聞き方はやかましすぎてウザかったけど…
気になるのはわかる。
テン「経験って…別世界でも同じ魔法使えるの?!」
シオン「いや、あれは魔法じゃなくて普通に物理攻撃だよ。人体の大事な部分を傷つけただけ。
あ、真似はするなよ。条件が厳しいし即興でできる技じゃない。」
シオンはしれっと語る。
一瞬だったらしいし、絶対魔法だと思ってたのに。
シオン(この世界は今までの世界と全然違う、おかしな世界だけど…どこでも、毎回絶対に人体の作りは同じなんだよな。)
魔法じゃないなら私でも頑張ればできたり…
なんて思ったけど無理そうだな。シオンほどの経験と器用さがないとだもんな。
シオン「さて、パーティも終盤。そろそろリラ達の所に行こう」
そう言われ前を見ると、リラはお辞儀をしてステージを後にしていた。
プロの暗殺、楽しみ!
なんて思っていると…
カチカチ。
暗殺完了の合図が聞こえてきた。
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