裏切られた俺(勇者)よりも魔王の方が闇が濃かった件について

白猫サイコー!

文字の大きさ
13 / 13

10

しおりを挟む
「そういえば、なぜ我々はお互いに名前で呼ばないんでしたっけ?」

「なあ、今この状況で言うかそれ。場所考えようぜ?」

 先日の調理で大破した調理場は修理のため立ち入り禁止となった。そしてこれを機に廃城の方の魔王城も全体的に補修を入れるため俺と魔王は廃城からもう一つの魔王城のほうへと強制的に居住変えをさせられた。 
 ちなみに、魔王の機嫌が悪くなりすぎて城の魔族が怯えまくっているのが少し可愛そうだと思う。

 俺らが今いるのは、魔王が王として仕事をするときに使う執務室だ。ちなみに品の良い家具が必要最低限置かれた部屋だが、殺風景だとは感じさせず広々としていてむしろ使いやすそうな印象を受ける配置だ。

「場所?何か問題がありましたか?」

「なあ、それ素で言ってんなら一度病院に行ってこい。絶対に目が終わってるからお前」

 現在、俺は魔王の補佐をする執務官達に穴が開きそうなくらいガン見されてるんだが!?しかも、手だけは高速で書類書いてるから怖いんだけど!

「確かにそうですね。私の瞳は神殺しとも言われる強力な魔眼です。その気になれば目を合わせただけで相手を終わらせることも可能ですよ」

「そういう意味じゃねぇ!」

 つか、さらっと言ってる内容が怖ぇんだけど!何、神殺しって、目を合わせただけで相手を終わらせるって!メドゥーサかよ!初耳なんだけど!良く俺たち生きてたな!?

 あ、魔王の言葉を聞いた補佐の奴らが一斉に視線を手元に戻した。…わかる、その気持ちわかるぜ。不機嫌な魔王にずっと威圧されて怯えてたのに今の言葉じゃ、自分達が魔眼の餌食にされると思うよな。まあ、本人にはそのつもりはないんだろうけど。

「それで、話を戻しますが何故名前呼びをしないんでしょうか」

 刺すような視線が無くなったところで魔王がもう一度聞いてきた。

「そう言われてもなあ。そもそも俺らって職業や祝福的に絶対に仲良くならない筈だったし、最初からこの呼び名勇者と魔王で呼んでたからもう慣れちゃったんだよな」

 俺が感慨深げに言うと魔王は俺の方を見た。

「ですが、もう貴方は勇者ではないので勇者と呼ぶのは変ですよね?何て呼びましょうか、今までの流れだと大罪人でしょうか?」

「いや、それはないだろ安直すぎるし」

「では、Magna peccatorマイナ ペッカトールでいいですか?」

「誰が、古代語で呼べなんて痛いこと言ったんだよ!それなら普通に大罪人って呼ばれた方がまだマシだわ!」

 俺は黒魔術師たちのごく少数にいる詠唱を『漆黒の~』とか言うヤバイ奴らじゃないぞ!しかも、あいつら詠唱の改善にマジだから知らない言語使いまくっててたまに魔法を誤爆させるからヤなんだよ!

「だー!普通に名前で呼べばいいだろうが!?」

 俺がそう言うと魔王は一瞬不思議そうにしたものの勝手に納得したのか一つ頷くと真剣な顔をして言った。

「では、改めて。
 初めまして、元勇者よ。私は今代の魔王として君臨しているフィリムス・アーシェリーだ。
 神々がこの地から消え去り、我ら勇者と魔王が先代達が散り幾星霜、先代達とは違った結末をそなたと迎えることが出来ることを願っている」


「っ…!俺はアレク・ウォリアース、元勇者だ。えっと、既に勇者の地位は剥奪されているが俺はあんたが道を間違えることがない限り、勇者の証が消えるそのときまであんたとは戦うことはないとここに誓う」

 いきなり始まった緊張感漂う厳粛な空気に部屋にいた他の魔族はもちろん、勇者本人も困惑と極度の緊張に襲われていた。

 しかし、魔王はそんな勇者達を見て…

「ブフォ!」

 と、吹いた。

「「「…」」」

 部屋の中は必死に笑いを押さえようとする魔王と困惑する勇者と魔族達に別れた。

 …おい、この微妙な空気をどうするつもりだ魔王。


しおりを挟む

この作品は感想を受け付けておりません。

あなたにおすすめの小説

【8話完結】帰ってきた勇者様が褒美に私を所望している件について。

キノア9g
BL
異世界召喚されたのは、 ブラック企業で心身ボロボロになった陰キャ勇者。 国王が用意した褒美は、金、地位、そして姫との結婚―― だが、彼が望んだのは「何の能力もない第三王子」だった。 顔だけ王子と蔑まれ、周囲から期待されなかったリュシアン。 過労で倒れた勇者に、ただ優しく手を伸ばしただけの彼は、 気づかぬうちに勇者の心を奪っていた。 「それでも俺は、あなたがいいんです」 だけど――勇者は彼を「姫」だと誤解していた。 切なさとすれ違い、 それでも惹かれ合う二人の、 優しくて不器用な恋の物語。 全8話。

先輩、可愛がってください

ゆもたに
BL
棒アイスを頬張ってる先輩を見て、「あー……ち◯ぽぶち込みてぇ」とつい言ってしまった天然な後輩の話

二本の男根は一つの淫具の中で休み無く絶頂を強いられる

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

推し変したら婚約者の様子がおかしくなりました。ついでに周りの様子もおかしくなりました。

オルロ
BL
ゲームの世界に転生したコルシャ。 ある日、推しを見て前世の記憶を取り戻したコルシャは、すっかり推しを追うのに夢中になってしまう。すると、ずっと冷たかった婚約者の様子が可笑しくなってきて、そして何故か周りの様子も?! 主人公総愛されで進んでいきます。それでも大丈夫という方はお読みください。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

ハッピーエンドのために妹に代わって惚れ薬を飲んだ悪役兄の101回目

カギカッコ「」
BL
ヤられて不幸になる妹のハッピーエンドのため、リバース転生し続けている兄は我が身を犠牲にする。妹が飲むはずだった惚れ薬を代わりに飲んで。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

同僚に密室に連れ込まれてイケナイ状況です

暗黒神ゼブラ
BL
今日僕は同僚にごはんに誘われました

処理中です...