裏切られた俺(勇者)よりも魔王の方が闇が濃かった件について

白猫サイコー!

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 この城に連れてこられて三日がたった。その間に分かったことがある。
 まず、俺は魔力を生成する魔力炉が破壊されているため魔法が使えなくなっていること。そして魔王には調理という概念が存在していなかったことが分かった。

「だから、ジャガイモは皮と芽を取れ!何でシチューを作るのにそのまま入れようとしてるんだよ!」

「楽だからに決まってるじゃないですか?」

「いやいや、何当たり前のこと言ってるんだこいつって顔で見てきてもアウトだからな!腹壊すわ!」

「別にジャガイモくらい生で食べてもお腹は壊しませんよ?」

「蛮族かよ!?俺が腹壊すわ!」

 何で男二人、調理場で言い争っているかというと理由がある。
 そもそもの原因は毎食、豪華絢爛な魔王城に行って食事をするのは面倒だし何より城にいる魔族の視線が痛過ぎて食事が喉を通らない。なので、その事をぼかして魔王に伝えたら不思議そうにしながらも自炊をすることに許可を貰った。
 そう、そこまでは良い。問題はこいつが

「え?魔法で洗って火を通せば食べれますよ」

 と素で言うほど食事に興味がなかったということだ。まあ、そこまではまだ良い。大人しくしてくれたなら価値観の相違だと思えば良いだけだからな。だが、こいつは何にでも興味をもつ。それは料理も例外ではないらしく、無理やり調理に混ざってきた。しかもたちが悪いことに調理場も食材もこいつが用意したし俺はこいつの奴隷だ。だから断るわけにも行かず渋々了承したが間違いだった!

「分かった、ジャガイモは俺が切るからあんたは肉を一口大に切ってくれ」

「はあ、分かりました。それでは『エアカッ』むぐっ!」

「うおぉい!何で中位魔法で肉切ろうとしてんだよ!」

 あぶねえ!魔王が放つ魔王は1ランクUP特性が付いてるくせに何やろうとしてんのこいつ!俺が口塞がなかったら今頃目の前の壁に大穴開いてんぞ!

「ふう、いきなりなんですか調理中にふざけるのは危ないですよ」

「それはこっちのセリフだ。何で中位魔法で肉を切ろうとしてるんだよ、包丁で切れよ!」

「ドラゴンの肉がただの包丁で切れるわけないでしょう?」

「…え?これドラゴンの肉なの?」

 確かにシチューには合わなそうな霜降りの良い肉だとは思ったけど。

「あれ?ドラゴンって魔族の一員だよな?同族食いOKなの魔族って」

「誤解ですよそれ、ドラゴンでも尻尾は他の部位よりも比較的簡単に再生するので金策のために売るものがいるんですよ。なのでドラゴンの肉は食用という認識が魔族にはあります」

「うへぇ、マジか」

 てっきり魔族っていう種族の集まりだと思ってたんだが、確かにドラゴン以外でもオーガや夢魔って分かれて呼ばれてるし総称的なものならそんなもんか?
 つうか、尻尾は再生が早いってトカゲみたいだな。

「ええ、ちなみに今回の肉は竜王の尻尾から取っているので聖剣でもうまく切れないと思いますよ?」

「…え?マジか、竜王って今金欠なの?」

 あまりの衝撃に思わず、ずれた質問をした。

「いえ、竜族の長ですからお金持ちですよ?」

 だよな!あの、生ける黄金と呼ばれる竜の王がそんな金策に走る程緊迫した金銭事情を抱えている訳じゃないよな!

「え、じゃあ何で肉があるんだ?」

「ああ、それは竜族の卸しに注文をしたら是非使ってくれと押し付けられまして」

「どんな状況だよ!」

 ホッとしたのもつかの間、何でもないように言われた状況に思わず突っ込んだ。

「何でも私が彼らのことをトカゲというのが嫌だったみたいです。渡された後、ドラゴンと呼ぶようにと土下座されました」

 …いや、確かに俺も思ったけどさ。土下座って、あのプライドが高いドラゴンがか?

 困惑する俺を見て魔王は俺の考えを見透かしたかのような顔をしてから言った。

酔っ払い酔った竜王をあしらったら簡単に折れましたよ、それプライド

「…」

 いろいろとついていけなくなった俺は、この後黙々と野菜を切って晩飯を作った。
 



 この日作ったシチューは今まで食べた料理の中で一番美味しかった。しかし、俺の中にあったドラゴンに対する憧れが崩れ去ったのは言うまでもないだろう。あと、大穴が開いた調理場も。
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