ただ守りたい…〜大事な人を守るには、金と権力と腕っ節…あと諦めない心が必要です〜

ドラると

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第3章 美月編

第50話「突入」

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根川秀人に連れ去られた美月がいると思われる、町外れの工場群跡地へとやって来た守里。


防衛団の力を借りて、美月を必死に探しているが、未だ発見できていなかった。



守里: まだ、発見の報告はないですか?


森田: はい、北側の捜索が終わり、今東側、そして南側の捜索を行ってます。


守里: もっと人員は増やせないんですか?


矢口: すみません、多分無理っす。


守里: そうですよね…



防衛団に無理は言えない。


この人達は伊衛能一帯を守ってるんだ。

そう簡単に配置を動かすことはできない。



森田: 西側の未探索の工場は、あそこに見える3つだけみたいです。



タブレットに表示されたマップを見ながら、森田が言う。



守里: 分かりました。行きましょう。




数分後…



森田: いませんね…


矢口: 西側にはいないのか…



早く見つけないといけないのに!



守里: クソ!!


森田: 坊ちゃん、落ち着いて下さい。焦ったら、見つかるもんも見つけられません。



焦る守里を鎮める森田。



守里: ふぅ…すみません。



守里は森田達からちょっと離れた所に行き、目の前に広がる木々を見る。


ここにはいるはずなんだ。


この工場群は険しい森に囲まれていて、車の出入口は2つしかない。

そこは防衛団の人が封鎖してるし、森を無理やり抜けるのは不可能だろう。

美月を連れ去った車が中にあって、出入口を封鎖している防衛団の人から連絡が無いってことは、確実に美月達はこの工場群にいる。


早く見つけないと…


美月を助けないと…


再び守里の頭に血が登る。


いや、落ち着け…

森田さんの言う通り、焦らず冷静にいるべきだ。


守里は目の前にある景色を見渡し、心を落ち着けようとする。



守里: ふぅ…よし、森田さんのところに…ってあれは…



小さくだが、木々に隠れた建物らしき影が、守里の視界に入る。



守里: 森田さん!!



すぐに森田を呼ぶ守里。



森田: どうしました?坊ちゃん。


守里: あそこに何か建物がありません?


森田: え?


矢口: あ、確かにあるっすね!


森田: ちょっと待ってください!確認します。



森田が再び、タブレットに表示されたマップを見る。



森田: やっぱり、あんな建物は表示されていない…


矢口: でも、実際にはある…


守里: 行ってみましょう。


森田: ですね。



守里達は隠されていた建物に向かう。



守里: ここですか…工場みたいですけど…


矢口: 上手いこと隠されてる。これじゃあ、よく見ないと、森の外からは見つけられないっすね。


森田: 道も何も無いか。意図的に隠された建物だ。


守里: もうちょっと近づきましょう。



工場に近づく3人。



森田: 中に入ってみ…


ガヤガヤガヤ


森田: …いますね。


守里: 当たりですか。


矢口: 連絡入れとくっす。


「私に何をするつもりなの?!!」


守里: 美月の声だ。


森田: 中の状況を把握したいですね。



そう言って森田は工場を見回す。



森田: …中を覗けるような場所はなさそうです。


守里: 中からの音だけで、状況を把握をしないと…



そう言って守里は集中する。




「目覚めたと思ったら、いきなり騒ぎ始めやがって。」


「ここはどこなの?!」


「静かにしてくれないかな?美月ちゃん。」


「そうだぞ、俺らの機嫌を損ねると不味いんじゃないか?w」


「あいつらに電話しようかな?ここに来てって。」


「っ!!…それだけはやめて…」


「はぁ…にしても、いじめられただけで、ここまでソイツらにビビるかねw」


「だねデュフフ、ってかまだなの?」


「あ?もうちょっと待っとけや。あれが溶け切るまで。」


「溶け切らないと、美月ちゃんに飲ませられないのか。」


「そうだ。せっかく上から、くすねてきたやつなんだ。ちゃんと使いたいだろw」


「確かに、下手にやって、失敗したくないな~デュフフ」


「あれはなんなの…」


「デュフフフフフ、あれはね、美月ちゃんを僕の物にするためのお薬なんだよ 。」


「僕のじゃなくて、俺達のだろw」


「ごめんごめん、じゃあ、あとちょっと待っててね、美月ちゃん。デュフフ」




守里: …そういう事か。


森田: 聞こえたんですか、坊ちゃん。


矢口: 俺には全くでしたけど…


守里: とにかく時間が無いみたいです。もう突入するしかないかもしれない。


森田: どういうことですか?


守里: どうやら、根川は美月に何らかの薬を飲ませようとしてるみたいなんです。


矢口: 薬っすか。どんな物か分かったもんじゃないっすね…


守里: はい、それを防がないと…


森田: 中にいる人数は分かりましたか?


守里: 美月に根川秀人、根川雄斗の3人は確実にいますけど、他は正確には分からないです。でも、足音や話し声から、10人以上はいそうです。


森田: 分かりました。


矢口: 援軍を待つ時間はなさそうっすね。



森田は少し考えて…



森田: 突入しましょう。坊ちゃんは…


守里: 今更、待機はなしですよ。


森田: …分かりました。でも、無理だけはしないように、お願いします。


守里: 了解です。


矢口: じゃあ俺が扉を開けるんで、中に。



守里、森田、矢口は工場の扉の前に移動する。



矢口: 行きます。



バンッ!!!


矢口が勢いよく扉を開き、守里と森田が中に入る。


工場の中は、薄暗く、壁際にはドラム缶や木箱が積み上がっており、奥の方に秀人と男が4人、そして、天井に伸びる柱に縛り付けられてる美月。

その手前には、柄の悪そうな男達がたくさんいた。



雄斗: あ?誰だ?!



奥にいる男4人のうち、1番ガタイの良い男が叫ぶ。



守里: 美月!


美月: っ!!!守里君!


秀人: …森崎君ですか。


森田: 根川雄斗に、根川秀人。あと、中位構成員が3人に、下位が数十人ってところか。


雄斗: てめぇは…


守里: 行きます。


森田: はい。



雄斗達が動揺してる間に、美月に近づこうとするが…



雄斗: チッ!!まぁいい!お前ら止めろ!!



その声で、下位構成員が守里達の突撃を防ぐために動く。



守里: 邪魔だ!どけ!!


森田: フンッ!



守里は、無理やり突破しようとするが、数が多く上手くいかない。


それに対し、森田は下位構成員を殴り飛ばして行く。



下位: グハッこいつ強え!


下位: なにもんだ!


森田: さっさとどけ!!


下位: どんどん行くぞ!!


しかし、次から次へと壁が行く手を阻む。


森田: チッ、数が多い。


矢口: 俺も行く!!オラッ


下位: 数で押せ!!


下位: ブハッ


森田: 邪魔だ!!


矢口: コラッ!!


下位: グッ


下位: まだまだだぞ!!


下位: 行け行け!!



そこに矢口も加わるが、中々数が減らない。



雄斗: おい、まだか?



雄斗が、そばの木箱の上にある瓶を見つつ、後ろにいる男に尋ねる。



中位: あと少しだ。


秀人: 兄貴、どうする?


雄斗: あぁ?まぁそうだな、あいつらを潰すことは確定だが…あの弱い奴は、美月ちゃんの知り合いなんだろ?


秀人: うん。


雄斗: それなら、目の前で俺らの物になるところを見せてやりたいじゃないかw


秀人: デュフフフ、それもそうだね。


雄斗: よし、じゃあお前らも加わってこい。殺さない程度になw


中位: はいよ。


森田: (不味いな、下位のヤツらだけなら問題ないんだが、今の状態から中位まで入ってくるとなると…それに…)


守里: ハァハァ



守里はただ前に行こうと踏ん張るだけで、周りから攻撃を受け続ける。



森田: (坊ちゃんが限界だ。ある程度の攻撃には耐えれるって言っても、限度がある。今はダメージが蓄積しすぎて、かなり危険…)


中位: オラッ!!!


森田: させるか!!



守里に殴りかかった中位構成員の腕を、森田が蹴りで弾く。



守里: 森田さん…


森田: 坊ちゃん、一旦下がってください。このままだと…


守里: 嫌だ!!


森田: 坊ちゃん!


中位: 自分の心配をしたらどうだ!!


森田: クッ



別の中位構成員の蹴りをモロに食らう森田。



矢口: 大丈夫か!森田!!



もう1人の中位の相手をする矢口が叫ぶ。



森田: あぁ、当たり前だ。こんなヤツらにやられるかよ。


矢口: だな笑



そう言って2人は、それぞれの敵へと向かう。



守里: ハァハァ



なんで僕は前に進めないんだ…


結局、人に頼ってしまう。

今もそうだ、美月を助けると意気込んでおきながら、森田さんと矢口さんに任せて、僕はまともに戦うこともできない…


なんてザマなんだ…


守里は俯く。



中位: おいおい、後ろの坊ちゃんって奴は諦めちまったみたいだぞw


森田: あぁ?


中位: まぁそりゃそうだよな。目の前に助けたい女がいるのに、自分は何もできずボコられ続けることしかできないんだもんなw


森田: 黙れ!



森田が、中位構成員の顔目掛けて殴り掛かる。



中位: 事実だろうがw



が、もう1人の中位が森田の腕を掴み抑える。



森田: 坊ちゃんを見くびらない方が良いぞ。



そう言って森田は腕を掴んだ中位構成員を振り回し、周りにいた下位構成員達を吹き飛ばす。


そして目の前にいる中位に蹴りを入れる。



中位: カハッ、さすがだな…


森田: …


中位: ふぅ…でも、終わりだ。


森田: あ?


雄斗: よっしゃ、完成したぞ!


美月: っ!!


守里: っ!!!!


秀人: マジか!兄貴!!



雄斗が薬の入った瓶を手に取る。



雄斗: ほら、お前、しっかりと見とけよw



守里の方を見ながら言う。



美月: い、いや…


森田: おい!!やめろ!!!



と、森田が雄斗の方に行こうとするが…



中位: だから、てめぇの相手は俺らなんだよ。


森田: チッ


矢口: 邪魔するな!!



中位構成員と下位構成員が、物量で森田と矢口を押さえ込む。



森田: (数が多すぎて、体を動かせない…このままだと…)


秀人: やっと、やっと、美月ちゃんを僕の物にできるんだね。デュフフフ


雄斗: 秀人、美月ちゃんの口を開けておけ。


秀人: 分かったよ。デュフフ


美月: いや、やめて!!! 



雄斗と秀人が美月に近づく。



守里: …



やめろ、やめろ、やめろ、やめろ、やめろ…


僕の家族を傷つけるな…

僕の大切なものを傷つけるな…


守らないと、守らないと、守らないと…



美月: 守里!!!!助けて!!!!!


守里: !!!!!!!



家族を守らないと!!!!!!!!




カチ




守里: 俺の家族に手を出すな!!!!!





to be continued

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