ただ守りたい…〜大事な人を守るには、金と権力と腕っ節…あと諦めない心が必要です〜

ドラると

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第7章 文化祭編

第268話「試合に負けて勝負に勝つ」

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実習校舎4階



黒峰: オラッ!!


バコンッ!!


守里: グッ!!…ハッ!


黒峰: クッ…



一瞬で距離を詰め、放たれた拳を、守里は右腕で受け止めつつ、反撃とばかりに右足を振るい、黒峰は横に避けられないと判断し、後ろに跳ぶ。



黒峰: 全く……崩れねぇな!そんなボロボロになってんのに。


守里: フッ笑…どうやら、壁が味方しているみたいでな。



廊下という、空間が制限された場所が、戦場であることも相まって、守里は黒峰と相対してからの40分間、攻撃は受けつつも、黒峰を後ろに通すことなく、扉を守り続けていた。

しかし、既に守里の体は各所から血を流し、顔や腕、足は腫れ上がり、一部は骨にひびが入っている状態であった。



黒峰: さすがにイラついてくるよ、ここまで手こずると。


守里: 褒め言葉として、受け取ってやる笑…


黒峰: チッ…



プルルルル


ここで、携帯の着信音が廊下に響く。



守里: 今度は、お前の携帯みたいだぞ。


黒峰: 分かってるよw



ピ



戦う中で黒峰は、守里が防御だけが上手いということを見抜いており、自分が電話をかけている間に、自発的に攻撃をしてくることはないと考え、守里のことを見つつも、余裕の笑みを浮かべて電話に出る。



黒峰: なんだ、作戦中だぞ。


上位1 T: すみません、黒峰さん。ですが、緊急の件で。


黒峰: 緊急だと?


上位1 T: はい。作戦に参加していた構成員のおよそ半数が捕まってしまい、このままだと黒峰さんが逃げることが困難になります。ですので、作戦は…失敗と…


黒峰: あ?


守里: っ!!!



怒りによるものか、黒峰からさらに強烈なオーラが放たれる。



上位1 T: 申し訳ございません!ですか今は…


黒峰: …分かった。すぐに戻る。



ピ



守里: ふぅ…


黒峰: あぁ…良かったな。お前の勝ちだ。


守里: は?


黒峰: はぁ……初めてだよ、俺が失敗したのは。クソ…もっと人員を増やしとけばよかった…もっと下の連中の戦闘力を上げとけばよかった…もっと情報を集めとけばよかった…


守里: 何ごちゃごちゃ言って…


黒峰: 黙れ!!……元はと言えば、お前がいなければ、俺が失敗することはなかったんだよ……お前がいなければ…


守里: っ!!!!



殺気に近いようなものを向けられ、守里は少し怯む。



黒峰: …いや待て。今はもう退却すべきだ。でもコイツを…



と、守里が動けないまま、黒峰が動かず頭を回していると…



先生: う、うぅ……森崎君?…


守里: 先生!



後ろで倒れていた先生のうちの1人が、意識を取り戻す。


そして、その先生の声を聞いた黒峰は…



黒峰: 森崎だと?……おい、お前の名前を教えろ。



そう尋ねた。



守里: なんで…


黒峰: もしかして、森崎守里だったりしないか?


守里: …違う。


黒峰: まぁいい…w



何を考えついたのか、微笑んだ黒峰は、自分に向かって構えている守里に歩み寄り、守里の耳に口を近づける。



黒峰: 明日、19時に~~~~~に1人で来い。来なかったり、他のヤツを連れて来たり、このことを誰かに話したりすれば、今回みたいにお前の大事な学校を襲う。もしかしたら、大事な友達を失うことになるかもなw


守里: なっ…


黒峰: じゃ、そういうことで。待ってるぞw


守里: っ!


ドサ



軽く守里の肩を押し、床に背中をつかせた後、黒峰は素早くスタンガンを回収し、守里の目の前から去っていった。



守里: …



既に体力も切れ、身体中に大きなダメージを蓄積している守里は、黒峰から受けた強い殺気をきっかけに、体が言うことを聞かなくなっており、黒峰の接近に対しても、肩を押されたことにも、何も抵抗できなかった。



守里: クッ…ソ………



そして、黒峰に負けたことと、黒峰を逃がしてしまったことへの悔しさ、自分の弱さへの怒りが溢れ出ながらも、意識が遠のき始める。



「守里!!!大丈夫か?!!」


「坊ちゃん!!」


「すぐに救急車や!!」


「はい!!」


「守里!!守里!!」



あぁ、なんか、なぁちゃんの声が…聞こ…える……


◇◇◇◇


およそ1時間後



「さぁ、これからは、皆さんが楽しみにしていた、後夜祭の始まりです!!!」



学校中にこの放送が響いた瞬間、生徒達の歓喜の声が校舎を揺らす。


文化祭の三日目が終わった後となれば、生徒は疲れ果てているため、これは、例年では見られないような現象であった。

生徒会室でその様子を体感していた櫻宮は、その理由を、生徒全員で協力して困難を乗り越えたからこそ、例年以上の達成感を生徒全員が感じていたからだと、言っている。


このように、ほとんどの生徒が、櫻宮の言った通りの達成感と、高揚感に包まれながら、後夜祭を楽しんでいた。


しかし、何人かの生徒は、他の生徒とは違う感情を抱いているのだった。




空き教室


ここでは、七星と祐希、春時、梅澤が集まり話していた。



七星: せやから、とにかく、守里はななの家に泊まるっちゅうことで、みんなに説明しといてや。


春時: …分かりました。守里の見舞いには?


七星: これから、ななが行ってくる。


春時: よろしくお願いします。


七星: うん。任せとき。


祐希: 祐希は行ったらダメ?


七星: ごめんやけど、祐希はまだ…な。


祐希: うん…


梅澤: …話は終わりですか?


七星: せや。みんなは、後夜祭を楽しむんやで。


春時: はい。では、失礼します。


梅澤: 失礼します。


祐希: またね。


七星: うん。



ガチャ



春時: …はぁ……


梅澤: ……正直、キツいよな。あいつのピンチに何も気づけなかったんだから。


春時: あぁ。


祐希: しょうがないよ。2人は、お姉ちゃんが言ってたコンピュータのことを知らなかったんでしょ?


春時: そうだけどさ…



教室校舎に向かって歩く3人の顔に、笑顔はなく、悲しさと悔しさが混ざったような表情が浮かんでいた。



祐希: …よし、教室校舎に入ったら、切り替えよう。みんなに嘘つかないとだし。


梅澤: だな。こんな雰囲気だと、飛香や美月は騙せない。


祐希: 頑張ろ!


春時: ふぅ……おう。今、俺らが任された事を、ちゃんとやり遂げなきゃだな。


梅澤: ってか、お前のあの質問って、どういう意味だったんだ?


春時: あの質問?……あぁ、アレは、俺がちょっと気になっただけだよ。


梅澤: ふ~ん……で、それに対する副会長の答えは、お前にとってどうだったんだ?


春時: う~ん………あんまり、良くはなかったかな笑


梅澤: へぇ~


祐希: …




2年1組教室


教室内の机には、余った食材で作られた料理が並べられており、1組の生徒達はバイキング形式で、それを食べながら後夜祭を楽しんでいた。



東野: みんな、じゃんじゃん食べるんだよ!料理担当は頑張って!!



秋吉: みなみ、パフェ食べたい!


川嶋: パフェならそこにあるよ。


秋吉: ありがと、志帆。いただきま~す。


川嶋: ちなみに、パンを食べたいなら、1年6組の教室に行けば、余ってると思う。


秋吉: ほんと?パフェ食べ終わったら、すぐに行ってくる。


川嶋: うん笑



杉浦: いや~あっという間だったな、文化祭。


璃勇: そうだね。


杉浦: 執事の役も何気にやってて楽しかったしな笑


璃勇: じゃあ、これからも執事コスプレ、たまにやったら良いじゃん笑


杉浦: なんでだよ笑。そもそも、執事服がなかったら、コスプレなんかできねぇし。


東野: 各自の服は、記念に持って帰ることになったけど?笑


杉浦: マジ?


東野: 良かったね。楽しい楽しい執事に、またなれるよ。なんなら、その格好で学校に来てみたら?笑


杉浦: 遠慮させていただきます笑……って、俺ってこんなイジられ役なの?!


璃勇: そうなんじゃないの?


東野: 大丈夫、板についてる笑


杉浦: くっそ~笑


秋吉: あ、澪奈~パンもらいに行こ!


東野: パン?


璃勇: あぁ、パン屋さんやってた1年6組のとこにでしょ?


秋吉: そうそう!


東野: それは良いんだけど、まだ余ってるかな?


璃勇: 確かに。結構人気だったから、後夜祭に入った瞬間に、色んな人がもらいに行ったかもしれないね。


秋吉: ヤバい!早く行かないと!


東野: はいはい笑



そうして、東野と秋吉は教室を出て行った。



杉浦: 秋吉は、パンのこととなると、騒がしくなるんだな。いつもは、ほわ~ん、ってしてるのに。


璃勇: ほわ~んって笑…言えてる。


川嶋: 確かに、ふわふわとは違うもんね笑


璃勇: あ、川嶋さん。


川嶋: 2人ともおつかれ。


杉浦: おつかれ!


璃勇: お疲れ様。川嶋さんは、こっちにいたんだ笑


川嶋: え、なに。私の影が薄いって言いたいの?笑


璃勇: いやいや笑。いつも騒がしい人達は、みんな教室を出て、校内中を走り回ってるじゃん、今。


川嶋: まさか、私もそのいつも騒がしい人達判定されてる?笑


璃勇: え?うん。


川嶋: 嘘……さっきみたいに否定してくれるって思ったのに…


杉浦: 笑、二学期入ってからの川嶋さんは、完全にあのグループの一員だろ。


璃勇: そうだよ笑


川嶋: マジか…


璃勇: 川嶋さんにとって、それは嬉しいの?笑


川嶋: う~ん……ちょっとは笑


杉浦: 笑、じゃあ、良かったじゃん。


川嶋: うん!



と、3人が教室の端で喋っていると…


ガラガラ



春時: お、盛り上がってんな笑


祐希: わ~料理がいっぱい!



教室に、春時と祐希が戻ってくる。



杉浦: 笑、春時。生徒会に呼び出された理由はなんだったんだ?


春時: ん?あぁ、昼に巻き込まれたトラブルについて聞かれた。


杉浦: なるほど。


璃勇: 神田さんも同じ?


祐希: うん!ねぇ志帆、どれ食べても良いの?


川嶋: 好きなやつをどうぞ笑


祐希: やった!


杉浦: ってか、春時は守里がどこにいんのか知らないのか?


春時: え、守里?守里なら、七星先輩と一緒にいるはずだぞ。


璃勇: あ、そうだったんだ。道理でみんなが見つけられないわけだ。


川嶋: 副会長と……美月達には連絡したの?


春時: 美月達に?いや、まだだけど。


川嶋: だったら、早く連絡してあげた方が良いよ。今、学校内を探し回ってるから。


春時: 笑、了解。じゃあ、いっその事、守里のことを探してそうな人達全員に連絡しとくか。



そう言って、春時は携帯を操作してメッセージを送った。




10分後…



春時: おぉ、これ美味いな…


杉浦: だろ?笑



ダダダダダダダ



璃勇: なんかすごい足音が…


川嶋: やっと来たね笑


祐希: モグモグ…



ガラガラ!!



美月: 春時!!



血走った目をしている美月が、教室の扉を勢いよく開けた瞬間に、春時を呼ぶ。



春時: はいはい笑。祐希も来て。


祐希: うん…モグモグ


春時: 雅史、これ持っといてくれる?


杉浦: 了解。


川嶋: 祐希は……持ってくよね笑


祐希: モグモグ…もちろん。



そして、春時と祐希は、気を引き締めながら、教室の外に出るのだった。




to be continued

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