ただ守りたい…〜大事な人を守るには、金と権力と腕っ節…あと諦めない心が必要です〜

ドラると

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第8章 生徒会選挙編

第301話「生徒会選挙 後編」

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生徒会選挙が始まって、およそ1時間半。

美月からバトンタッチした川嶋の演説も、序盤の立候補をした理由や、中盤の公約の部分が終わり、残るは終盤の自分の思いを伝える部分だけとなっていた。

あっという間に過ぎていった演説の序盤も中盤も、美月のような明るさはないものの、落ち着いた雰囲気で、でも強く固く前向きな意志を感じられる川嶋の演説と、遊び心をふんだんに取り入れた資料が、作戦通りにことを進めた。


演説を聞く生徒達は、美月の演説により上げさせられたテンションをそのままに、川嶋の話に耳を傾け集中する。

体育館全体の雰囲気も、途中で冷めることなく、興味と関心が行き渡る熱い状態のままであった。



川嶋: 先程も述べたように、私が生徒会長に立候補した一番の理由は、この伊衛能高校という場所が大好きだからです。それは、生徒の意志を尊重した校風や、それに適した設備、制度など、学校自体が有しているものも、もちろんですが…



ステージ下の生徒達の反応を見ながら、川嶋は言葉を続ける。



川嶋: 能高の生徒達が持つ、団結力と暖かさが好きなんです。体育祭や文化祭などの行事では、仲間のことを信頼し共に進み、感動や熱さを共有できる。普段の学校生活では、お互いがお互いのことを気に留め、必要な時には助け合い、目標に向かって進むことができる。これが、伊衛能高校が誇る能高生徒達…皆さんの力だと思うんです!



体育館内にいる全ての人の心を揺さぶるように、強く訴えかける。



川嶋: そんな皆さんが、十分に力を発揮し、この伊衛能高校での生活を最高に楽しめるように、私は最強の生徒会を作り上げます。今の生徒会をも越す、歴代最強の生徒会を作り、皆さんと、未来に入ってくる新入生も合わせて、全員で!歴代最高の伊衛能高校を……



段々と声を大きくし、生徒達の心を掴んだ上で、一瞬の沈黙を作る。


そして…



川嶋: みんなが心の底から大好きだと言える伊衛能高校を作り上げましょう!!!



決意の眼差しと、明るい笑顔で川嶋がそう言い切る。


すると…



パチパチパチ



生徒達の中から、拍手の音が聞こえ始める。

まだ、川嶋の演説が終わったと確定していない段階で。



パチパチパチパチパチパチ



初めは数人の拍手だったが、それにつられたように、一気に拍手の輪が広がり…



パチパチパチパチパチパチパチパチパチ!!!



体育館全体が拍手を鳴らし、熱気が舞い上がった。



川嶋: 笑…



その様子を見た川嶋は、微笑みながら一礼し、美月と視線を合わせた後、ステージを下りた。



守里: 笑


中谷: 川嶋ちゃん陣営の作戦通りかな笑


守里: みたいですね。


中谷: 公約の部分は仕方がないとしても、全体を通して、あまり堅苦しい雰囲気を出さないようにした上で、美月ちゃんの演説で生徒の心に余裕と熱を与え、川嶋ちゃんの演説でその熱をぶち上げさせる。


守里: まるで、体育祭や文化祭の時の櫻宮さんみたいです。


中谷: うん。麗華がよく使う手法だよ。ま、手法と言っても、麗華は自然とやっちゃってるんだけど笑


守里: あの人はいわゆる天才ですから。でも、その天才と同じようなことを、志帆は美月と2人でではあるけど、成功させることができた。言い方が上からになりますが、たとえ会長になれなくても、かなりの進歩です。


中谷: 友達の成長が嬉しい?笑


守里: そりゃ嬉しいですよ笑


中谷: だよね~笑、そんな顔してるもん。


守里: そうですか?


中谷: うん。ね?まゆちゃん。守里君、嬉しそうな顔してるよね?



嬉しそうな顔をしているらしい守里を挟んで、横に並ぶ鹿川にそう尋ねる。



鹿川: ?はい!してます!


守里: 今、まゆたんは、わけも分からないまま、とりあえず返事をしたでしょ笑


鹿川: べ、別に~


中谷: 分かりやす笑


守里: おとぼけフェイスにも程があるよ笑


鹿川: む、む~バカにしないで!!


倉田: ちょっと、まゆちゃん。声が大きい。


鹿川: 大丈夫だって!こんなに拍手が響いてるんだから!


倉田: 大丈夫じゃない。それと、2人もまゆちゃんを煽らないでください。


守里: ごめん笑、倉田さん。


中谷: ごめんね~笑


倉田: ふぅ……さ、そろそろ配置につきましょう。副会長も動き出しましたし。


中谷: あ、ほんとだ。


鹿川: お仕事、お仕事~!


中谷: みんな、気合い入れて行くよ。


鹿川: いぇっさー!!


倉田: はい。


守里: 了解です。



壁際に立っていた生徒会役員と守里、そして灰崎と櫻宮の近くに待機していた七星が、体育館の後方に移動し始める。

それと同時に、灰崎がマイクに向かって、口を開いた。



灰崎: 立候補者と代表推薦者の演説が、全て終了しましたので、2分後に投票を始めます。生徒の皆さんは、投票までの2分間の間に、監査と生徒会長それぞれで、誰に投票するのかを決定してください。また、周りの人と相談することなく、1人で決めるようにお願いします。では、どうぞ。



生徒達が誰に投票するのかの最終決定を行うこの2分間。

その裏で、守里達は投票箱や投票記載台の準備を行い、それぞれが配置に着く。


体育館の後方入口前に置かれた4つの投票箱の間に、守里と七星と中谷が座り、倉田と鹿川がその手前(生徒側)にある記載台付近に立つ。




2分後



灰崎: 2分経過しましたので、投票に移ります。投票の手順としては、まず、後方にある4つの投票箱とその手前の投票記載台、そのさらに手前にある机に、投票用紙を置いていますので、それを1枚とって、生徒会役員の指示に従い、投票記載台で投票用紙を記入。その後、投票用紙を投票箱に入れてください。早速、3年1組の生徒から投票を開始します。3年1組の生徒は、今、手を挙げている生徒会役員の前に1列に並んでください。



鹿川: こちらに並んでくださ~い!



元気な鹿川の声で、3年1組の生徒達が立ち上がり、1列に並ぶ。



鹿川: はい、ここにある投票用紙を1枚取って、記載台の方に…えっと4×4だから……あ、16!一気に16人は入れますから、用紙を記入し終わった人は、どんどん抜けて、あそこの投票箱に投票して、体育館を出て行ってください!記載台に空きが出たら、私達が案内しますので、待ってる人は、静かに1列に並んでてくださいね!



そうして、生徒達は、投票用紙が置かれた机の前にいる鹿川と、記載台近くの倉田、投票箱の隣に座る守里、七星、中谷の監視の中で、投票をして体育館から出て行き始めた。


◇◇◇


灰崎: 2年1組、列に並んでください。



鹿川からの合図を受けて、次の組を列の後ろに並ぶように指示する灰崎。



春時: 後ろの方から……って、分かってるか笑


璃勇: 3年生がやるのを見てたからね。


杉浦: 川嶋さんがいないからって、そんなに学級委員ぶらなくて良いぞ笑


春時: 別にそんなんじゃないって。


杉浦: 笑、にしては準備してたように見えたが?


春時: …


璃勇: いや、学級委員ぶってるってわけじゃないでしょ、実際に学級委員なんだから。単純に、川嶋さんがいなくて、より気合が入ってるだけだよ笑


杉浦: 確かに笑。見せ場だもんな。


春時: うるさい!さっさと行くぞ。


杉浦: はーい笑


璃勇: うん笑



祐希: zzz


陽芽叶: 祐希、行くよ~…って、いつの間にか寝てる……さっきまで起きてたのに…


東野: 笑、祐希、起きて。


秋吉: 早く動かないと、先生に怒られるよ笑


祐希: う、う~ん……


陽芽叶: はい、さっさと立つ。


祐希: はぁ~い……



日向子: あ、まゆちゃん、やっほ~


鹿川: 日向子ちゃんだ!やっほー!!


倉田: …ギロッ


鹿川: っ!おぉう……シーー静かにね。


日向子: あ、はーい笑…


飛香: …(この子は……書記の鹿川真佑……守里がまゆたんって呼んでた。)


鹿川: そこの、投票用紙を1枚取って。


日向子: うん。


飛香: ジー


鹿川: ん?……ジー


飛香: ジー


鹿川: ジー


日向子: え?……ジー


飛香: ジー


東野: いや、何を3人で見つめ合ってるの笑


飛香: …別になんでもない。


鹿川: 飛香ちゃんが見つめてきたから!


日向子: なんか楽しそうだったから!


東野: そう笑


倉田: ちょっと、まゆちゃん。


鹿川: あ!3人どうぞ~


飛香: 日向子、進んで。


日向子: はーい!


倉田: 右端に2人と、その隣に1人、入ってください。


日向子: 了解です!


飛香: ……チラッ


守里: …



投票箱の隣に座る守里を横目で見つつ、その正面にある記載台に飛香と日向子が入る。

そして、投票用紙に色々と記入した後、投票箱の方に向かう。



日向子: はい!どうぞ、守里!


守里: うん。そのまま入れてね。


日向子: 分かってるって~


飛香: おつかれ。


守里: 笑、ありがと。



2人は、投票箱に投票用紙を入れて、そのまま体育館を出て行った。


その後も、生徒達は投票箱に投票用紙を入れていき…



祐希: …あ、守里だ~……ウトウト


守里: ほら、あとちょっとだから、起きて。


祐希: うん……zzz


守里: マジか……


陽芽叶: 大丈夫。私が連れてくから。


守里: 笑、よろしく、陽芽叶。


陽芽叶: うん笑




梅澤: うっす。


守里: あ、香蓮。ちゃんと来てたんだね笑


梅澤: たりめぇだろ。


守里: 大好きな親友の頑張りを見るために?笑


梅澤: //うるせぇ。そんなんじゃねぇよ。


守里: 素直じゃないな~




菊山: あの、守里先輩。


守里: ん?


菊山: やんちゃんの家に頻繁に行ってるって、本当なん…


紗耶: ちょっ///す、すみません、なんでもないです~


菊山: もう、押さないでよ笑


守里: 笑




珠美: そのままで良いんですよね?


守里: うん。折らずに入れて。


珠美: 了解です!頑張ってください、守里先輩!


守里: 笑、頑張るよ。





キンコンカンコーン



灰崎: これで、第45回伊衛能高校生徒会選挙を終わります。



6限目終了を知らせるチャイムが鳴ると同時に、灰崎がマイクを通して、役員と守里、一部の先生、立候補者、代表推薦者だけがいる体育館内に、生徒会選挙の終わりを告げたのだった。




to be continued


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