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第9章 飛香編
第326話「奈々未の励まし」
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賄いが完成し、店長も外に出た店内で、守里と奈々未は向かい合って席に座る。
奈々未: さぁ、食べようか。いただきます。
守里: いただきます。
奈々未: パクッ……モグモグ……
守里: パクッ…モグモグ……やっぱ、店長の料理は美味しいですね~
少し居心地が悪いこの空間を和ませるためか、守里は料理を運ぶ右手と口を動かす速度を速めつつ、店長を褒める。
奈々未: だね………で、言うことは?
真っ直ぐに守里の目を見ながら、奈々未はそう言う。
守里: ……ミスを連発してすみま…
奈々未: 違う。確かに、ミスをされるのは困るけど、その後のフォローはちゃんとできてたし、お客さんにも私達にも迷惑はかかってないから、そこを謝ってほしいわけじゃないんだよね。私も……あと、外にいる店長も。
守里: ……
奈々未: …考え事をするなとは言わないけど、それで仕事の方が疎かになったらダメでしょ。お給料を貰っているんだから。
守里: 本当にすみませんでした。
奈々未: うん。バイトをしている時は、ちゃんと切り替えるように。
守里: はい。これから気をつけます。
奈々未: …はぁ……パクッ…モグモグ……それで?らしくないミスをするぐらいに、守里君が考えてたことは何なの?店長は期末テストのことなんじゃないかって言ってたけど、成績優秀の守里君はそうじゃないでしょ。
守里: いや…その……
奈々未: なに、言えないわけ?
守里: 言えないってわけでも……
奈々未: ふ~ん…
ここで、奈々未は守里の心を読みに……いや、正確に言えば、表情やちょっとした手の動きなどを観察し、守里の心の内を推測し、口に出すことで、それを受けての守里の表情と動きを見て、守里が心の内で思っていることを当てにかかる。
奈々未: 守里君が話しずらいこととなると……まぁ、どっちかだよね~笑
守里: え、どっちって……
奈々未: だって、家族関係のことや友達関係のこと、学校関係のことも、ある程度は話してくれるじゃん。渋々って感じの時もあるけど、ここまで言いにくそうにすることはない。ってことは………恋愛関係?笑
守里: 違います。
はっきりと守里は否定する。
奈々未: …そう。じゃあ………あ、七星と何かあったんでしょ。
守里: なっ…
奈々未の言葉に、守里は表情を取り繕うことができず、否定はされたものの、奈々未は自分の推測が正しいことを確信する。
一方で守里は、やはり奈々未は、人の心を読めるあく…
奈々未: ん?
守里: いえ、なんでもございません。
考えを途中で止めることにはなったが、奈々未は恐ろしいということを、再認識した。
奈々未: やっぱり、七星関連か笑
守里: …なんで分かったんですか?僕の心を読んだからですか?
奈々未: 笑、別に読んでないって。いつも言ってるけど。
守里: でも、そうじゃないと、特に今回のは説明できません。
奈々未: そうかな~ある程度、守里君と七星の関係性を知っていれば、誰でも分かると思うけど笑
守里: 絶対に無理です。奈々未さんは本当に人の心を読めるから、分かったんです。
奈々未: 頑なだね。まぁ良いや。で、悩みの内容としては?七星と喧嘩でもした?
笑みを残したまま、奈々未は守里に悩みを話させる。
守里: えっと……喧嘩と言いますか、七星さんとは、ちょっと話しずらい…いや、気まずくなっている状態でして…
奈々未: いつから?
守里: 10月末です。
奈々未: うわ、もう1ヶ月半じゃん。原因は……良いか。今の守里君の悩みとしては、七星と仲直りの仕方が分からないってこと?
守里: いえ…
奈々未: じゃあ、なに?
守里: その…一昨日にですね、七星さんから連絡が来て。今週の日曜日にテーマパークに行こう……と。
奈々未: 笑、2人きりで、でしょ?
守里: いや、そのメッセージだけなので、それは分からないですけど…
奈々未: 確実に2人きりだよ、その誘い方だと。
守里: ……
奈々未: …守里君は今、その返事に迷ってるわけだ。
守里: …はい。
奈々未: 仲直りはしたいけど、如何せん気まず過ぎて、実際に七星と一緒にテーマパークに行った時に、まずどう挨拶をしたら良いのか、どんなことを話せばいいのか、どんな表情をしたらいいのか……分からないから、答えを出せずにいると。
守里: ……
奈々未: …はぁぁぁぁぁ……
改めて自分の心の内を自分の耳で聞き、さらに思い悩んだ表情となった守里を見て、奈々未はものすごいため息をつく。
奈々未: 守里君ってさ、なんかほんと、重要なところで馬鹿になるというか……よくよく考えてみてよ。
守里: え?
奈々未: この1か月半、守里君は生徒会の手伝いもしてたみたいだけど、それでも七星とは気まずいままだったんでしょ?
守里: はい。
奈々未: でも、一昨日、七星の方から、テーマパークデートに誘われた。
守里: ……デートじゃ…
奈々未: じゃあ、お出かけにしとくけど。七星がお出かけに誘ってきたってことは、七星の気持ちの方に何かしらの変化があったから。それは仲直りの方なのか、絶交の方なのかは定かではないけど、テーマパークに誘っておいて、絶交パターンはない。
守里: いや、七星さんだったらその可能性も…
奈々未: …守里君がそう思うのであれば、それで構わないけど、どちらにせよ、七星は覚悟を決めて、君にそのメッセージを送ったはずじゃん。それを、君は受け止めないの?七星の言葉も聞かずに、守里君は拒絶しちゃうの?
守里: っ……
奈々未: 違うでしょ。森崎守里はそんな薄情な人でも、根性無しでもない。少なくとも、これまでに私が見てきた守里君はそんな人ではなかったよ。
あまり聞いたことのない、奈々未のストレートな励ましが、守里の胸に刺さり、守里の迷いが晴れる。
守里: …ですよね。なに、迷ってんだって話ですよね…ほんと。
奈々未: …
守里: 諦めてしまった僕に、七星さんは一歩を踏み出してくれたっていうのに……ありがとうございます、奈々未さん。おかげで、目が覚めました。
奈々未: 笑、ほんとよ。さっきまでは、死んだ魚の目をしてたんだから。
守里: え、そんなでした?
奈々未: ちょっと盛った笑。っていうか、死んだ魚の目をしてたら、ホールなんかやらせないって。
守里: ですよね笑
奈々未: じゃ、目が覚めたんなら、さっさと七星に返事をして、日曜日の朝、どうやって美月を撒くか考えときなさい。
守里: 美月?……あぁ、確かに…
奈々未: あの子、守里君が七星と2人きりでテーマパークに行くなんて知ったら、多分泣き出すわよ笑
守里: ……最近、ご機嫌取りに苦戦したばっかりなんで、できれば、また機嫌を損ねるようなことにはしたくないんですよね…
奈々未: 笑、日向子ちゃんや飛香ちゃん、あと梅ちゃん辺りに、美月の相手をさせておくのはどう?前に、守里君がやったように。
守里: …まだ根に持ってます?
奈々未: いやいや。あの時のお礼はちゃんとしてくれたから、別に。
守里: なら良かった。でも、そうですね。奈々未さんの言う通り、上手いこと、美月の目を別のところに向けさせられるように、動きます。
奈々未: うん、それが良いよ。私的にも、七星と守里君には、気まずい関係のままでは、いて欲しくないから。
守里: ?そうですか。
奈々未: よし、早く賄い食べよ。店長も外で待ってることだし。
守里: あ、そういえばそうでしたね。急がねば。パクッ!
こうして、守里と奈々未は急いで賄いを食べ、外で白い息を吐いていた店長に挨拶をして、帰るのであった。
◇◇◇◇◇
翌日
期末テスト最終日
テスト終了後
剣崎: じゃ、みんな、週末でゆっくりと休んで、また来週、元気に会いましょう。学級委員、号令!
川嶋: 起立!礼!
「ありがとうございました!」
剣崎: ありがとうございました。気をつけて帰るんだよ。
笑顔でそう言った剣崎が、教室を出て行き、テストから解放された学生達によって、一気に部屋の中が喧騒に包まれる。
守里: ふぅ……終わったね。
陽芽叶: ね。中間よりも難しかったし、精神力が削られたというかなんというか……疲れたぁ~
守里: 笑、陽芽叶でもそうなら、今の祐希のこの状態にも納得だね。
祐希: zzzzzz
最後のテストが終わった瞬間に、祐希は机に頬をつけ、ぐっすりと眠ってしまい、それに気づいた守里達や剣崎は、もちろんのこと起こそうとしたのだが、あまりに気持ち良さそうな寝顔に、伸ばした手を降ろし、そのままにしておいたのだ。
陽芽叶: にしても、こんなに賑やかな中で、ここまで熟睡できるものなんだね笑
守里: それが祐希だから笑。よし、今日は風紀委員の見回りもないし、家に帰ろっかな~
陽芽叶: え~もうちょっと話そうよ笑
守里: そう?別に良いけど笑
美月: 守里!!
まだ話したいという陽芽叶のお願いを聞き、再び席に座り直した守里だったが、後ろから叫ばれると同時に、美月に肩を掴まれる。
守里: うわ!っと……急に大声を出さないでよ、美月。
美月: ごめんごめん笑。いや~テストの呪縛から開放された勢いでさ~
陽芽叶: 呪縛って笑……でも、本当に疲れたね。
美月: 笑、今回の期末の出来としては?
陽芽叶: まぁまぁってとこかな。美月は?
美月: 私は……自信あり笑
陽芽叶: ほんと?笑
美月: 結構解けたよ。分からない問題は、そりゃもちろんいくつかあったけど、でも……いけた笑
守里: それは楽しみだね笑、成績が。
美月: うん!守里は?……って、聞くまでもないか。
守里: ……いや、ちょっともしかしたら……
美月: え?
守里: ……意外とミスってる可能性が……
美月: ふむふむ……となると、私が守里に勝ってるかも!!!
守里: 笑、かもね。
美月: やったぁぁあ!!
陽芽叶: 本当に勝った時のリアクションじゃん笑。まだ結果は分かってないのに。
美月: それぐらい、守里にテストで勝つってことが嬉しいことなの。だって、私が勝ったら、守里に1つだけお願いごとを聞いてもらえるし。
守里 陽芽叶: え、そうなの?
陽芽叶: え?
守里: いやいや、僕もそんな話をした覚えは…
美月: 聞いて、くれないの?キラキラ
上目遣いでその大きな目をキラキラと輝かせて、訴えかける美月に対し、守里は…
守里: う~ん……まぁ、それだけ美月が頑張ったってことだし、ありっちゃありかも…
美月: よっしゃぁぁああ!!テストよ早く返って来い!!!
陽芽叶: え~ズルい!
美月: じゃあまずは、陽芽叶も守里に勝たないと笑
陽芽叶: くっ……でも、まだ美月も守里に勝ったとは決まってないから!
美月: へへ笑、その可能性が高いのは、私の方だけどね~
と、よく見るやり取りだな、と思いながら、目を閉じている祐希の頬をつついている守里の目の前で、美月が陽芽叶を煽っていると…
飛香: ほほう。守里にテストで勝ったら、お願いを聞いてもらえるんだ笑
美月: あ、飛香…
陽芽叶: 志帆ちゃんが生徒会室に行った今、この教室の中で、1番の強者が来ちゃった笑
守里: いや、飛香は別でしょ。
飛香: なに?私だけ仲間外れにするわけ?ひっど~笑
守里: うわぁ、そう言い方をするとは、ひっど~笑
飛香: マネすんなし笑。それで、優しい守里は、私のことを仲間外れにしないで、私がテストで勝ったら、お願いを聞いてくれるんだよね?
守里: えぇ……正直、今回は負けが見えてるというか……
飛香: 何のお願いをしようかな~
ニヤニヤと笑いながら、飛香は守里を見て考える。
すると、このままではマズいと思ったのか、美月が動き出す。
美月: よし!守里、逃げるぞ!
グイッ!
守里: え、ちょっ!
陽芽叶: なら私も帰ろ。
美月: ほら、飛香の魔の手に掴まれる前に、行こう!
守里: 分かったから、引っ張らないでよ~あ、飛香、バイバイ!
陽芽叶: また来週。
美月: さらばっ!
こうして、慌ただしく守里達が教室を出て行き、飛香はその背中を見送る。
飛香: 笑、全く。
そして、机に頬をつけている祐希の背中に手を置く。
飛香: 起きてるでしょ。
祐希: ………
飛香: ……七星さんはいつ、守里とテーマパークに行くの?
祐希: ……ふぅ……疲れた。肩揉んで。
飛香: っ……………………………………しょうがない。
to be continued
奈々未: さぁ、食べようか。いただきます。
守里: いただきます。
奈々未: パクッ……モグモグ……
守里: パクッ…モグモグ……やっぱ、店長の料理は美味しいですね~
少し居心地が悪いこの空間を和ませるためか、守里は料理を運ぶ右手と口を動かす速度を速めつつ、店長を褒める。
奈々未: だね………で、言うことは?
真っ直ぐに守里の目を見ながら、奈々未はそう言う。
守里: ……ミスを連発してすみま…
奈々未: 違う。確かに、ミスをされるのは困るけど、その後のフォローはちゃんとできてたし、お客さんにも私達にも迷惑はかかってないから、そこを謝ってほしいわけじゃないんだよね。私も……あと、外にいる店長も。
守里: ……
奈々未: …考え事をするなとは言わないけど、それで仕事の方が疎かになったらダメでしょ。お給料を貰っているんだから。
守里: 本当にすみませんでした。
奈々未: うん。バイトをしている時は、ちゃんと切り替えるように。
守里: はい。これから気をつけます。
奈々未: …はぁ……パクッ…モグモグ……それで?らしくないミスをするぐらいに、守里君が考えてたことは何なの?店長は期末テストのことなんじゃないかって言ってたけど、成績優秀の守里君はそうじゃないでしょ。
守里: いや…その……
奈々未: なに、言えないわけ?
守里: 言えないってわけでも……
奈々未: ふ~ん…
ここで、奈々未は守里の心を読みに……いや、正確に言えば、表情やちょっとした手の動きなどを観察し、守里の心の内を推測し、口に出すことで、それを受けての守里の表情と動きを見て、守里が心の内で思っていることを当てにかかる。
奈々未: 守里君が話しずらいこととなると……まぁ、どっちかだよね~笑
守里: え、どっちって……
奈々未: だって、家族関係のことや友達関係のこと、学校関係のことも、ある程度は話してくれるじゃん。渋々って感じの時もあるけど、ここまで言いにくそうにすることはない。ってことは………恋愛関係?笑
守里: 違います。
はっきりと守里は否定する。
奈々未: …そう。じゃあ………あ、七星と何かあったんでしょ。
守里: なっ…
奈々未の言葉に、守里は表情を取り繕うことができず、否定はされたものの、奈々未は自分の推測が正しいことを確信する。
一方で守里は、やはり奈々未は、人の心を読めるあく…
奈々未: ん?
守里: いえ、なんでもございません。
考えを途中で止めることにはなったが、奈々未は恐ろしいということを、再認識した。
奈々未: やっぱり、七星関連か笑
守里: …なんで分かったんですか?僕の心を読んだからですか?
奈々未: 笑、別に読んでないって。いつも言ってるけど。
守里: でも、そうじゃないと、特に今回のは説明できません。
奈々未: そうかな~ある程度、守里君と七星の関係性を知っていれば、誰でも分かると思うけど笑
守里: 絶対に無理です。奈々未さんは本当に人の心を読めるから、分かったんです。
奈々未: 頑なだね。まぁ良いや。で、悩みの内容としては?七星と喧嘩でもした?
笑みを残したまま、奈々未は守里に悩みを話させる。
守里: えっと……喧嘩と言いますか、七星さんとは、ちょっと話しずらい…いや、気まずくなっている状態でして…
奈々未: いつから?
守里: 10月末です。
奈々未: うわ、もう1ヶ月半じゃん。原因は……良いか。今の守里君の悩みとしては、七星と仲直りの仕方が分からないってこと?
守里: いえ…
奈々未: じゃあ、なに?
守里: その…一昨日にですね、七星さんから連絡が来て。今週の日曜日にテーマパークに行こう……と。
奈々未: 笑、2人きりで、でしょ?
守里: いや、そのメッセージだけなので、それは分からないですけど…
奈々未: 確実に2人きりだよ、その誘い方だと。
守里: ……
奈々未: …守里君は今、その返事に迷ってるわけだ。
守里: …はい。
奈々未: 仲直りはしたいけど、如何せん気まず過ぎて、実際に七星と一緒にテーマパークに行った時に、まずどう挨拶をしたら良いのか、どんなことを話せばいいのか、どんな表情をしたらいいのか……分からないから、答えを出せずにいると。
守里: ……
奈々未: …はぁぁぁぁぁ……
改めて自分の心の内を自分の耳で聞き、さらに思い悩んだ表情となった守里を見て、奈々未はものすごいため息をつく。
奈々未: 守里君ってさ、なんかほんと、重要なところで馬鹿になるというか……よくよく考えてみてよ。
守里: え?
奈々未: この1か月半、守里君は生徒会の手伝いもしてたみたいだけど、それでも七星とは気まずいままだったんでしょ?
守里: はい。
奈々未: でも、一昨日、七星の方から、テーマパークデートに誘われた。
守里: ……デートじゃ…
奈々未: じゃあ、お出かけにしとくけど。七星がお出かけに誘ってきたってことは、七星の気持ちの方に何かしらの変化があったから。それは仲直りの方なのか、絶交の方なのかは定かではないけど、テーマパークに誘っておいて、絶交パターンはない。
守里: いや、七星さんだったらその可能性も…
奈々未: …守里君がそう思うのであれば、それで構わないけど、どちらにせよ、七星は覚悟を決めて、君にそのメッセージを送ったはずじゃん。それを、君は受け止めないの?七星の言葉も聞かずに、守里君は拒絶しちゃうの?
守里: っ……
奈々未: 違うでしょ。森崎守里はそんな薄情な人でも、根性無しでもない。少なくとも、これまでに私が見てきた守里君はそんな人ではなかったよ。
あまり聞いたことのない、奈々未のストレートな励ましが、守里の胸に刺さり、守里の迷いが晴れる。
守里: …ですよね。なに、迷ってんだって話ですよね…ほんと。
奈々未: …
守里: 諦めてしまった僕に、七星さんは一歩を踏み出してくれたっていうのに……ありがとうございます、奈々未さん。おかげで、目が覚めました。
奈々未: 笑、ほんとよ。さっきまでは、死んだ魚の目をしてたんだから。
守里: え、そんなでした?
奈々未: ちょっと盛った笑。っていうか、死んだ魚の目をしてたら、ホールなんかやらせないって。
守里: ですよね笑
奈々未: じゃ、目が覚めたんなら、さっさと七星に返事をして、日曜日の朝、どうやって美月を撒くか考えときなさい。
守里: 美月?……あぁ、確かに…
奈々未: あの子、守里君が七星と2人きりでテーマパークに行くなんて知ったら、多分泣き出すわよ笑
守里: ……最近、ご機嫌取りに苦戦したばっかりなんで、できれば、また機嫌を損ねるようなことにはしたくないんですよね…
奈々未: 笑、日向子ちゃんや飛香ちゃん、あと梅ちゃん辺りに、美月の相手をさせておくのはどう?前に、守里君がやったように。
守里: …まだ根に持ってます?
奈々未: いやいや。あの時のお礼はちゃんとしてくれたから、別に。
守里: なら良かった。でも、そうですね。奈々未さんの言う通り、上手いこと、美月の目を別のところに向けさせられるように、動きます。
奈々未: うん、それが良いよ。私的にも、七星と守里君には、気まずい関係のままでは、いて欲しくないから。
守里: ?そうですか。
奈々未: よし、早く賄い食べよ。店長も外で待ってることだし。
守里: あ、そういえばそうでしたね。急がねば。パクッ!
こうして、守里と奈々未は急いで賄いを食べ、外で白い息を吐いていた店長に挨拶をして、帰るのであった。
◇◇◇◇◇
翌日
期末テスト最終日
テスト終了後
剣崎: じゃ、みんな、週末でゆっくりと休んで、また来週、元気に会いましょう。学級委員、号令!
川嶋: 起立!礼!
「ありがとうございました!」
剣崎: ありがとうございました。気をつけて帰るんだよ。
笑顔でそう言った剣崎が、教室を出て行き、テストから解放された学生達によって、一気に部屋の中が喧騒に包まれる。
守里: ふぅ……終わったね。
陽芽叶: ね。中間よりも難しかったし、精神力が削られたというかなんというか……疲れたぁ~
守里: 笑、陽芽叶でもそうなら、今の祐希のこの状態にも納得だね。
祐希: zzzzzz
最後のテストが終わった瞬間に、祐希は机に頬をつけ、ぐっすりと眠ってしまい、それに気づいた守里達や剣崎は、もちろんのこと起こそうとしたのだが、あまりに気持ち良さそうな寝顔に、伸ばした手を降ろし、そのままにしておいたのだ。
陽芽叶: にしても、こんなに賑やかな中で、ここまで熟睡できるものなんだね笑
守里: それが祐希だから笑。よし、今日は風紀委員の見回りもないし、家に帰ろっかな~
陽芽叶: え~もうちょっと話そうよ笑
守里: そう?別に良いけど笑
美月: 守里!!
まだ話したいという陽芽叶のお願いを聞き、再び席に座り直した守里だったが、後ろから叫ばれると同時に、美月に肩を掴まれる。
守里: うわ!っと……急に大声を出さないでよ、美月。
美月: ごめんごめん笑。いや~テストの呪縛から開放された勢いでさ~
陽芽叶: 呪縛って笑……でも、本当に疲れたね。
美月: 笑、今回の期末の出来としては?
陽芽叶: まぁまぁってとこかな。美月は?
美月: 私は……自信あり笑
陽芽叶: ほんと?笑
美月: 結構解けたよ。分からない問題は、そりゃもちろんいくつかあったけど、でも……いけた笑
守里: それは楽しみだね笑、成績が。
美月: うん!守里は?……って、聞くまでもないか。
守里: ……いや、ちょっともしかしたら……
美月: え?
守里: ……意外とミスってる可能性が……
美月: ふむふむ……となると、私が守里に勝ってるかも!!!
守里: 笑、かもね。
美月: やったぁぁあ!!
陽芽叶: 本当に勝った時のリアクションじゃん笑。まだ結果は分かってないのに。
美月: それぐらい、守里にテストで勝つってことが嬉しいことなの。だって、私が勝ったら、守里に1つだけお願いごとを聞いてもらえるし。
守里 陽芽叶: え、そうなの?
陽芽叶: え?
守里: いやいや、僕もそんな話をした覚えは…
美月: 聞いて、くれないの?キラキラ
上目遣いでその大きな目をキラキラと輝かせて、訴えかける美月に対し、守里は…
守里: う~ん……まぁ、それだけ美月が頑張ったってことだし、ありっちゃありかも…
美月: よっしゃぁぁああ!!テストよ早く返って来い!!!
陽芽叶: え~ズルい!
美月: じゃあまずは、陽芽叶も守里に勝たないと笑
陽芽叶: くっ……でも、まだ美月も守里に勝ったとは決まってないから!
美月: へへ笑、その可能性が高いのは、私の方だけどね~
と、よく見るやり取りだな、と思いながら、目を閉じている祐希の頬をつついている守里の目の前で、美月が陽芽叶を煽っていると…
飛香: ほほう。守里にテストで勝ったら、お願いを聞いてもらえるんだ笑
美月: あ、飛香…
陽芽叶: 志帆ちゃんが生徒会室に行った今、この教室の中で、1番の強者が来ちゃった笑
守里: いや、飛香は別でしょ。
飛香: なに?私だけ仲間外れにするわけ?ひっど~笑
守里: うわぁ、そう言い方をするとは、ひっど~笑
飛香: マネすんなし笑。それで、優しい守里は、私のことを仲間外れにしないで、私がテストで勝ったら、お願いを聞いてくれるんだよね?
守里: えぇ……正直、今回は負けが見えてるというか……
飛香: 何のお願いをしようかな~
ニヤニヤと笑いながら、飛香は守里を見て考える。
すると、このままではマズいと思ったのか、美月が動き出す。
美月: よし!守里、逃げるぞ!
グイッ!
守里: え、ちょっ!
陽芽叶: なら私も帰ろ。
美月: ほら、飛香の魔の手に掴まれる前に、行こう!
守里: 分かったから、引っ張らないでよ~あ、飛香、バイバイ!
陽芽叶: また来週。
美月: さらばっ!
こうして、慌ただしく守里達が教室を出て行き、飛香はその背中を見送る。
飛香: 笑、全く。
そして、机に頬をつけている祐希の背中に手を置く。
飛香: 起きてるでしょ。
祐希: ………
飛香: ……七星さんはいつ、守里とテーマパークに行くの?
祐希: ……ふぅ……疲れた。肩揉んで。
飛香: っ……………………………………しょうがない。
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ごく普通の女子中学生だった結城かなみはある日両親から借金を押し付けられた黒服の男にさらわれてしまう。一億もの借金を返済するためにかなみが選ばされた道は、魔法少女となって会社で働いていくことだった。
今日もかなみは愛と正義と借金の天使、魔法少女カナミとなって悪の秘密結社と戦うのであった!新感覚マジカルアクションノベル!
※基本1話完結なのでアニメを見る感覚で読めると思います。
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
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