ただ守りたい…〜大事な人を守るには、金と権力と腕っ節…あと諦めない心が必要です〜

ドラると

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第9章 飛香編

第334話「拠点襲撃 in 大阪 Last part」

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防衛団仮拠点



湊士: …由夢……


敦貴: 奥さんが心配ですか?


湊士: …まぁね。


敦貴: 笑、心配することないですよ。だって、神田先輩の奥さん…神田由夢さんは、今最も特級に近い1級団員なんですから。


湊士: …


敦貴: 信じましょう。


湊士: あぁ。


敦貴: それに、もうすぐで……


1級(作)2: 屋上班の先頭が10階に到着!


1級(作)1: 同じく酒巻さんも到着です!


敦貴: 笑、増援が来ますから。





ビル10階



紺堂: オラッ!!


ボスッ!!


由夢: グッ…



右のボディーブローが、由夢の体に撃ち込まれる。



紺堂: やられてばっかだと思うなよ。


由夢: …ふぅ……



得物の特殊警棒は遠くに投げられ、右手に拳銃を持つ紺堂を前にしても、由夢はすぐに動けるようにと足を軽くしながら、構え、集中する。



バンッ!!


由夢: っ!!



銃声が聞こえたと同時に、思いっきり右に飛び、そのまま真っ直ぐに突っ込む。



紺堂: バカが!w



バンッ!!



これまでの動きから、おそらく銃弾を避けると同時に、自分の方に走ってくるだろうと推測していた紺堂は、すぐに由夢が飛んだ方向に拳銃を向けて発砲したが…



ドンッ!



二度目の銃声が鳴ると同時に、全力で地面を蹴り、天井ギリギリまで跳ぶことで、銃弾を避け、そのまま右足を前に出して紺堂を巻き込んで着地しようとする。



紺堂: くっ…



左手側には壁があるため、回避行動を取るには、右側…開けた空間の中央付近に寄るしかない紺堂は、それに苦い顔をしながらも、右にさっと移動し、由夢の蹴りを避けた。

そして、すぐに保ちたいポジションを取り戻すために、着地で隙のできた由夢の少し下がった頭に向けて、前蹴りを放つ。



由夢: …


ガンッ!



その前蹴りを、由夢は体を後ろに反らして避け、そのままバク転の要領で、顔の横から伸ばした両手で床を弾き、壁に衝撃を与えた紺堂の右足を、蹴り上げながら、後ろに回転し、着地する。

体勢が崩された紺堂は、すぐに右足を床に着くと共に、由夢に銃口を向け、銃弾を放った。



バンッ!!



由夢: グッ…



バク転の着地をしたことで、まだ足が動かなかった由夢は、体を横に倒すようにして銃弾を避けようとしたが、完全には避け切れず、銃弾が右腕の肉を抉った。



由夢: …



それなのにも関わらず、由夢は左拳を握る。



紺堂: ww、まだ諦めないってか。でも、右腕は使えず、こうやって至近距離で銃口を向けられてる状態は、もう詰みだろ。


由夢: 詰み?どこが。


紺堂: どう考えたって詰みだろ。その痛みで、段々と動きが鈍くなるだろうしw


由夢: ……ふっ笑


紺堂: …何がおかしい。



息を漏らしながら笑った由夢に、紺堂が眉間に皺を寄せながら、そう問うと、由夢は顔を上げて、こう答えた。



由夢: 2児の母は痛みには強いんだよ。


紺堂: は?


由夢: それに……詰みはお前の方だ!!



そう由夢が叫んだ瞬間に…



1級(戦)3: くらえ!



屋上班の先頭を走っていた団員のスライディングが、右足に。



酒巻: 到着!!



ものすごい勢いで階段にいた構成員と団員を避けながら10階まで上がってきた酒巻の膝が、背中に。



紺堂: ガハッ!!



大きなダメージを受けた紺堂は、前に勢いよく倒れ、酒巻によって床に押さえつけられた。



1級(戦)3: よく1人で持ち堪えたな。


由夢: 中々にキツかったけどね。さてと…



カチッ



右腕の怪我を負った部分を応急処置しながら、イヤホンマイクの回線を湊士に繋げる。



由夢: 戦闘終了。これから、情報を引き出す。


湊士 T: っ!良かった…


由夢: 笑、良かった?


湊士 T: あ、あぁ、いや……分かった。ただ、由夢と酒巻さんはエレベーターで下に降りて、情報の引き出しは部下に任せて。


由夢: 了解。



カチッ



1級(戦)3: 夫婦だな笑


由夢: え、聞こえてた?


酒巻: 笑、だって、相当焦ってたのか、湊士さんの方は全体回線で喋ってたもん。


由夢: はぁ……全く。


1級(戦)3: まぁまぁ。それでは、俺がコイツから情報を引き出しますんで、酒巻さんと神田はエレベーターに。


由夢: うん。


酒巻: 任せたぞ。



そう言って、酒巻は1級(戦)3と、紺堂を抑える役目を代わろとしたのだが…



紺堂: ……どけ!


酒巻: なっ!


1級(戦)3: コイツっ!



拳銃を持つ右手を抑える手を入れ替えた瞬間の力の緩みを見逃さなかった紺堂は、瞬時に右手の拘束だけを解き、銃口を…



紺堂: おつかれw



バンッ!!



自分の右顬に当て、笑みを浮かべながら引き金を引いた。



1級(戦)3: マジかよ……クソっ、情報が…


酒巻: …仕方ない。お前はコイツの装備を外した後、上か下の加勢に行け。由夢は地下通路に行くぞ。


由夢: はい。



すぐに切り替えた酒巻は、由夢を連れて、鍵が閉まっていた扉を、蹴りで強引に開け、竹川がいたと思われる中央の部屋に入った。



酒巻: ここ…だよな。


由夢: おそらく。エレベーターは…


酒巻: ……なんだこれ…ノーパソが折られてんだけど……


由夢: あ!ありました!


酒巻: よし行くぞ!



そう言って、酒巻がエレベーターのボタンを押そうとしたところで、イヤホンマイクから声が聞こえた。


◆◆◆


酒巻が10階中央の部屋のエレベーターのボタンを押す、およそ1分前



和地: オラッ!!


ボコッ!!


青垣: っ!!くふぅ……ふんっ!!



力強い右拳を、両腕を交差して受け止めた青垣は、後退することなく、やり返しとばかりにボディーブローを放つ。



和地: グフッ!……まだまだ!!



その拳を鍛え上げられた腹筋と防弾チョッキで受け止めた和地は、青垣の顔を掴もうと左手を伸ばす。



青垣: がぁぁ!!



上体を反らして左手を避け、強引に和地の顎を目掛けて、左拳を振り上げる。



和地: ふっ……喰らえや!!



同じように、青垣の左拳を上体を反らすことで避けた和地は、グッと右膝を胸に引き付けて、全力で蹴りを放った。



青垣: ガハッ!……


ズザザザ…



もろにその蹴りを腹に喰らった青垣は、二三歩分、後退させられた。



和地: 康二!まだいけるか?!


康二: ほらっ!!!


ドンッ!!


藍染: グッ……



右のラリアットがきまり、藍染は地面に尻もちを着く。

それを見逃すことなく、康二は追撃をかけようと、右足を振り上げるが…



藍染: クソっ!!



地面を蹴って、倒れていた藍染が後ろに下がったことで、康二の右足はそのまま着地した。



康二: ふぅ……いけるよ。


和地: そりゃあ良かった。(ただ…ちょっと足にきてるみたいだな……)



未だに並んだ状態で、お互いの様子をチラッと確認し、前を睨みつける。



竹川: ……はぁ………


青垣: っ……


竹川: お前らさ……


青垣: 申し訳ございません!!


藍染: えっ、す、すみません!!



後ろに立つ竹川の声に反応した青垣と、その青垣の声に反応した藍染は、パッと竹川の方を振り向き、頭を下げて謝る。



竹川: もういいや。アレやるよ。


青垣: はい。


藍染: …分かりました。



これまでずっと後方で戦いを見ていた竹川が、前に出てくる。



和地: やっと、自分で戦うんだな笑


竹川: ww、いや…もう戦いは十分でしょ。


康二: …


竹川: そろそろ通らせてもらうよ。



そう言った竹川は、いつの間にか手に持っていたスモークグレネードを、地面に投げつける。

すると、白煙が物凄い勢いで吹き出し、狭い地下通路に瞬時に広がった。



和地: チッ、煙幕か。康二、ゴーグル!


康二: 了解!



こういう場合を想定していた敦貴の指示で、煙の中でも人の動きを捉えることのできるサーマルゴーグルを腰に携帯していた2人は、すぐにそれを装着する。



和地: っ!!来てるぞ!道を塞げ!!


康二: おう!



3つの熱源体が近づいてきているのが見え、和地と康二は両手を広げて、通路を塞ぐように構える。


が……



竹川: これでも?w


バチンッ!!


康二: ?……グッ!!…



高速のローキックが腿に入り、康二は思わず、地面に膝を着いてしまう。



和地: おい、康二!!クソっ!!



それにより空いてしまった隙間を、竹川達は通り、和地と康二が形成していた壁を突破する。

そして、和地はすぐに追いかけようと、体の向きを変え、康二も後方を振り向く。



竹川: あと、お土産。


和地: 何がっ!


康二: っ!!!



去っていく竹川の声が聞こえると同時に、何かが空気を切るような音がほんの少しだけしたが、和地にはその物が何か分からなかった。


しかし、膝を床に着け、体勢が低くなっていた康二は、気づいた……


いや、気づいてしまったのだ。



康二: 和地!!行け!!!!


和地: っ、分かった!



そう康二に叫ばれ、和地は思いっ切り地面を蹴り、竹川を追いかけ始め、康二は……


投げられた手榴弾を、残りの力を全て振り絞って地面を蹴って、掴み、すぐにその場にうつ伏せになった。



康二: (何とか和地だけでも!!)



そして次の瞬間…


地下通路に轟音が響き、突風が巻き起こり、白煙が地下鉄の線路の方に押しやられた。



和地: っ!!!



必死に足を動かしていた和地は、音が鳴ると同時に、地面に飛び込み、無傷でこの衝撃を乗り越えた。

しかし…



和地: な、なんだ………



何が起こったのかと思い、後ろを振り返るとそこには…



和地: 嘘だろ……



惨状が広がっていた。


◆◆◆



酒巻: え、今なんて?


敦貴 T: 作戦失敗だ。竹川に逃げられた。


酒巻: は?逃げられたって……


敦貴 T: 後で説明する。酒巻と由夢さんは、ビル内の制圧に加勢してくれ。


酒巻: ……分かった。


由夢: ………行きましょう。


酒巻: あぁ……



イヤホンマイクから聞こえた、作戦失敗の言葉を聞き、何があったのかという疑問と落胆を感じながら、エレベーターのボタンを押そうと伸ばしていた手を下ろし、敵の掃討に向かった。


およそ20分後、ビル内にいた全ての構成員を拘束し、ビルの制圧は完了。

周辺で索敵を行っていた椎名率いる情報部の班によると、外に逃げた敵はおらず、加勢に入ろうとした勢力もいなかったため、大阪にいたアンチの構成員のほとんどを捕らえたと敦貴は考えた。

しかし、竹川とその側近2名に関しては、地下鉄線路の方にまで広がった煙幕と、新たに竹川が展開したと思われる煙幕によって、保守用通路付近で待機していた川藤や、他の情報部団員、3級団員も追跡することができず、逃走を許してしまった。


こうして、大阪のアンチの拠点は潰すことができ、多くの構成員を捕らえることができたが、アンチのボスや幹部に関する情報を持っているであろう構成員は捕えられず、一番の標的であった竹川は逃走し、2級団員13名と1級団員4名、そして、特級団員1名が死亡して、今回の作戦は終了…



失敗に終わったのだった。




to be continued
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