ただ守りたい…〜大事な人を守るには、金と権力と腕っ節…あと諦めない心が必要です〜

ドラると

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第9章 飛香編

第335話「扱い慣れられた美月」

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生徒会室



川嶋: …



カタカタカタカタ



灰崎: …



ペラ…ペラ…



美月: …はぁぁ………



部屋の中では、キーボードを叩く音と、資料をめくる音、そして美月のため息しか聞こえないほど、役員の面々は、集中して仕事を行っていた。


というのも、二学期の終わりの日…

つまり、終業式が行われる今週の金曜日…

来たるクリスマス当日、12月25日に、クリスマス企画が開催されるからだ。


それに向けて、役員達は必死になって自分の仕事をこなしている。



美月: はぁぁぁぁ……



まぁ、1人だけは、手は動かしているものの、意識の5分の4ぐらいは別のところに向けているようだが。



川嶋: ……


美月: はぁぁ……


川嶋: …美月。そうやってため息つかれると、こっちも気が抜けるんだけど。



生徒会室に入ってきて、自分のデスクに座るなり、ため息を定期的につき始めた美月を見て、他の役員達は、自分の仕事もあって、何も触れずにいたのだが、とうとう生徒会長である川嶋が指摘をした。



美月: あ、ごめん……


川嶋: どうしたの?…ってか、大体予想はつくけど。


灰崎: だね笑


早水: …


鹿川: え……わ、私だって予想ついてるもん!!


璃果: 笑、絶対嘘じゃん。


ポチッ

ペチンッ!


祐希: いっ……ふぅ…ん?今、何の話?


宮瀬: …



カタカタカタカタ



倉田: チラッ…



カタカタカタカタ



柿谷: 守里先輩…ですよね?美月先輩。



会計のデスクの、見栄を張った鹿川の隣にいた柿谷が、ニヤッとした笑顔でそう言う。



美月: かぁ~バレバレだったか笑


川嶋: 当たり前でしょ。美月が仕事以外に考えていることは、八割方、守里のことなんだから。


灰崎: 噂には聞いてたけど、こうやって一緒に仕事をするようになって、実感したよ。ね?



議長のデスクから、他の役員達…特に、これまでに美月と一緒に何かをすることがなかった人達を見ながら、そう聞く灰崎。



璃果: うん。ほんと、口を開けば守里君のことを話し出すんだから笑


鹿川: 守里君のことが大好きなんだね~笑


美月: いや、大好きじゃない…


鹿川: え?


美月: もう守里の全てが大大大大だ~い好き!!!



飛び切りの笑顔で、美月は愛を叫ぶ。



鹿川: うわ~お。それは凄いね!


灰崎: 笑、どういう反応。


柿谷: いやもうほんと、ここまで美月先輩に愛される守里先輩が羨ましいです!


川嶋: ほら、美月のファンの子がこう言ってるよ笑


美月: あ、かっきーも大好きだからね!



慌てて、柿谷の方にもウインクを飛ばす。



柿谷: でも、私よりも守里先輩の方が好きなんですもんね~



そう言って、柿谷は口をすぼませる。



美月: えっ、ちょっ…


川嶋: 笑、まぁまぁ、かっきー。美月を困らせないの。


柿谷: ですね笑。ごめんなさい、美月先輩。


美月: い、いや、良いのよ、別に……


川嶋: この反応からしても、美月はちゃんとかっきーのことも大好きだってことが分かったし、かっきーは満足でしょ笑


柿谷: はい!


灰崎: 笑、柿谷さんは謀略家だね。


鹿川: ぼう…りゃく……か?………あ!なるほど、確かにねぇ~


璃果: 笑、知ったかしないよ。


ポチッ

ペチンッ!


祐希: っ!!……ふぅ…えっと今は……美月が守里のことが大好きって話か!うんうん、美月はほんと守里のことが大好きだからな~


璃果: ちょっと遅れてるかな笑、祐希ちゃんは。


祐希: え…


灰崎: 今は、柿谷さんが凄く頭が良い、って話をしてたんだ。


祐希: あぁ~うん、かっきーはめっちゃ賢い!


柿谷: ちょっと、やめてくださいよ笑



皆からの褒めの言葉を聞いた柿谷は、照れたようにそう言う。

そして、話を切り替えるように、灰崎の方を見て、こう言う。



柿谷: ってか、灰崎先輩!かっきーって呼んでください、って言ったじゃないですか!


灰崎: え、あ、いや、その……



と、以前の守里や春時と同じように、グイグイ系の後輩かっきーの餌食となった灰崎が、言葉に詰まってしまうと…



倉田: プフッ笑



隣の宮瀬の様子を確認しながら、黙って仕事をしつつも、皆の会話を聞いていた倉田が、吹き出した。



鹿川: え?桃ちゃんが笑った!!


川嶋: いや、笑うことはあるでしょ。でも、吹き出すなんてどうしたの?謙心君の反応が面白かった?


倉田: …うん笑。そうやってキョドってる謙心君を見るのは、初めてだったので。


美月: 謙心君の新たな一面を見れたね。それと、それを引き出したかっきー、ナイス!



グッドサインを向けて、美月は柿谷に笑顔を見せる。



柿谷: ありがとうございます!では、灰崎先輩は、かっきーって呼んでください!


灰崎: もう、分かったから笑。かっきー。


柿谷: はい!


璃果: 笑、良い返事。


ポチッ

ペチンッ!


祐希: ……ふぅ…今は……謙心君がかっきーのことをかっきーって呼んだところか。


璃果: お、正解笑


祐希: よし!


川嶋: いや、よし!じゃないのよ。ちゃんと起きて仕事をして。


祐希: は~い。


川嶋: もう明後日には、幼稚園でのクリスマス会と、保護者に向けたクリスマスバザーがあるんだから。今日明日で、これを仕上げないと。


祐希: うん…って、もうクリスマスか~早いな~


美月: クリスマス……



その祐希の呟きの中にあった単語。


これを聞いた美月は…



美月: デートしたかったぁぁ!!!



天井を見上げて、再び嘆き始めた。



美月: 今日だって、守里と一緒に見回りに行きたかったのに、まさかクリスマスデートまでできないなんて!!守里と一緒に聖なる夜を過ごしたかったよぉぉ!!!


川嶋: ちょっと、祐希!


祐希: いや、さすがにこれを予想しろは無理があるでしょ!



そんな川嶋と祐希を見て、灰崎が笑顔で美月をなだめ始める。



灰崎: まぁまぁ、美月さん。クリスマスバザーは後片付け含めても、20時には終わるだろうから。その後の夜は、森崎君と一緒に過ごせるよ。


美月: ……デートには行けない…


灰崎: 美月さんはデートでしか、森崎君に愛を伝えられないの?


美月: っ……伝えられる……伝えられるに決まってるじゃん!!!


灰崎: だったら、ほら、クリスマスの夜、雪が降っている夜空を窓から眺めながら、隣に座っている森崎君に、大好きって伝えれば良いんじゃない?



優しい笑顔を作る灰崎の言葉を受け、美月は想像を膨らませる。



鹿川: 今年のクリスマスって、雪降るの?ボソッ


柿谷: えっと……あ、30分前に出た天気予報だと、降るみたいですボソッ



璃果: 今頃、美月ちゃんの頭の中は幸せに溢れてるんだろうねボソッ


祐希: だねボソッ



川嶋: 笑、どの口が、かっきーのことを謀略家って言ってんのよボソッ



宮瀬: こっわボソッ…


倉田: ですよねボソッ笑


宮瀬: っ…はいボソッ



早水: …



と、生徒会室が、他の役員達が小声で話す静かな空間となってから、およそ10秒後、美月が妄想の旅から帰ってくる。



美月: よし!!守里とラブラブするぞ!!!


灰崎: 笑、そうしな。


川嶋: さ、美月も切り替えたところで、改めてみんな、気合いを入れて、明後日に向けて仕事するよ!


「はい!」



そうして、生徒会役員達はさらに気持ちを上げて、仕事に取り組んで行くのだった。


1人を除いて。 



早水: 森崎守里……何がええんや…



◇◇◇


一方その頃、生徒会室で自分の名前が挙げられているとも知らない、守里は…



守里: ……1人で見回りというのも、寂しいもんだな…



美月が生徒会の仕事で一緒に見回りができなくなり、生徒会室で美月が嘆いていたのと同じように、寂しさを感じながら、いつものルートを見回りしていた。



守里: まぁ、これからは1人でやることも多くなるだろうし、徐々に慣れていかないと。



と、自分に言い聞かせながら、商店街の近くを歩いていると、奥の方に見えるお店から、とても見覚えのある人物が出てくる。



守里: ん、あれは……



その人物に気づいた守里は、周りを確認しつつも、見回りルートに沿って走り、その人物の元へ。



守里: 春時!


春時: え?あ、守里じゃん。



そう、お店から出てきたのは、通学用のカバンとは別のバックに、そのお店で買ったであろう商品をパンパンに入れた春時であった。



守里: ほんと偶然。買い物?


春時: あぁ。お袋に頼まれてな。守里は…風紀委員の見回りか。


守里: そうだよ。美月がいないから、1人で見回り中。


春時: 笑、寂しいんだろ。


守里: 正解笑



幼なじみである2人は、息のあった短い言葉のやり取りで笑い合う。



春時: ちょっとだけ、付き合ってやるよ。


守里: いや…


春時: 遠慮すんなって。こっちから来たってことは、これから向こうに行くんだろ?



空いている手で、守里の進行ルートの方を指す。



守里: うん、そうだけど…


春時: なら、お前も知ってる通り、俺の帰り道もそっちだからさ。行こうぜ。


守里: ……笑、ありがと。


春時: おう笑



こうして、守里は春時と、楽しく話しながら、見回りをしながら歩く。



しかし、そんな時間は長くは続かなかった。



守里: うん、あれは面白かったよね~


春時: あぁ…………っ!!!!!




to be continued
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