ただ守りたい…〜大事な人を守るには、金と権力と腕っ節…あと諦めない心が必要です〜

ドラると

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第9章 飛香編

第336話「偶然の接敵」

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偶然、道中で会った春時と共に、楽しく喋りながら、風紀委員の見回りをする守里。


しかし、商店街通りを抜け、少し進んだところで、突然春時が足を止める。

それを不思議に思い、守里が春時の方を見ると、春時の顔は、驚きの表情のまま固まっていた。



守里: どうした?


春時: ……ふぅ……



自身の心を落ち着けた後、春時は静かにこう言った。



春時: アンチの構成員がいた。


守里: えっ…



驚きの声を上げないように、守里はすぐに自分の口を手で塞ぐ。



春時: 今さっき、あの右に見える路地に入って行った男2人組。その片方が、俺が文化祭の時に武道場で戦った奴だった。


守里: ……ほんと?


春時: 間違いない。俺は勉強の記憶力は悪いが、人の顔はちゃんと覚える方だからな。特に、アイツにはいつかリベンジしたいと思ってたし、よく覚えてる。


守里: そっか……


春時: どうする?



これから、自分達はどう動くのか、と春時は守里に聞く。



守里: とりあえず、護衛の森田さん達に連絡した後……追跡する。


春時: 了解。



見回りの為に色んなところに向けていた意識を、そのアンチの構成員が入っていったという路地だけに集中させ、防衛団用の携帯で森田にメッセージで連絡をとりながら、守里と春時は荷物をその路地の前で下ろし、警戒しつつ中に入って行く。

そして、森田へ送ったメッセージにはすぐに既読がつき、すぐに向かいますとの返信が来たのを確認した時に、守里は視界の中に、アンチの構成員を捉えた。



守里: あれかボソッ


春時: …あぁ、1人は確実にそうだボソッ



路地の奥の方には建物と建物の間にできた、真昼間にしか日が当たらないような、少し開けた空間があり、そこにアンチの構成員を見つけ、2人は路地に設置された室外機等の障害物の影に隠れて、様子を伺う。


が……



「にゃ~」


春時: あっ……


??1: ん?誰だ?



運悪く、路地にやってきた猫に服を引っ張られ、春時が咄嗟に出してしまった声に、構成員の1人が気づく。



??2: 猫じゃないんですか?


??1: いや、今確実に、男の声が聞こえた。おい、さっさと出てこい。



自分達を見ている誰かがいるということを確信づいている構成員の言葉を聞き、守里と春時はどうするべきか迷った結果…



守里: チラッ…


春時: コクン


守里: …バレちゃったか。


春時: 久しぶりだな。



そう言いながら、2人は身を隠すのを止め、アンチの構成員の前に姿を現し、構成員がいる開けた空間に踏み入る。



上位1: あっ!お前は!!


??1: なんだ知り合いか?


上位1: い、いや、能高の文化祭を襲撃した時に…


??1: w、もしかして、お前の肩をぶっ壊した奴か。


上位1: はい…


??1: へぇ~で、もう1人は……風紀委員か。



守里が右腕に着けている腕章を見ながら、??1はそう言う。



守里: お前達は、アンチの構成員なんだよね?


??1: あぁそうだ……お前らによって頭を潰された、惨めなアンチの構成員だよw


上位1: ちょっと阿墨さん…



笑いながら自虐をする、同じく上位構成員でありながら、東京の拠点を任された阿墨誠吾を、上位1は心配するような表情で止める。



守里: 頭……黒峰龍水のことか。


阿墨: あ?なんでその名前を………まさかお前、黒峰と戦った野郎か?


守里: ……


阿墨: 沈黙は是と捉えるぜw。そうか…報告では聞いてたんだ。能高文化祭襲撃時、黒峰は風紀委員に足止めを食らって作戦を失敗したって……お前がその、黒峰を足止めした風紀委員なんだな。



どこか面倒、つまらない、といった感情を感じ取れるような阿墨の目が、楽しさを感じるような獲物を見る目へと切り替わる。



上位1: やるんすね…


阿墨: その実力を見せてもらおうか!


春時: 来るぞ!守里!!


守里: うん!




カチ




守里: ここで捕らえる!!



勢いよく地面を蹴った阿墨の拳を守里が、少し遅れて続いた上位1の拳を春時が、それぞれ受け止め、戦闘を開始する。



阿墨: おりゃっ!!


ブンッ!!



受け止められた右拳を戻し、次は左腕を横から振るう阿墨に対し、守里はその攻撃を鼻の先ギリギリで避け、目の前を横切った左手首を左手で掴んで引っ張り、ガラ空きとなった脇腹に、素早く一発を入れる。



ドンッ!


阿墨: クフッ!……離せよ!



脇腹の痛みを我慢し、左腕を引っ張られた力を利用して回転、左腕の拘束を解きつつ、右後ろ回し蹴りを、守里の顔目掛けて放つ。



守里: っ!!


バシッ!!



その阿墨の反撃速度に驚きながらも、守里は避けるという行動を捨て、右腕で蹴りを弾き、隙のできた阿墨の体に、渾身の右前蹴りをに入れようとする。



守里: ふんっ!


阿墨: 甘い!



しかし、守里の右足が伸び切る前に、阿墨は蹴りを弾かれた反動に沿って回転し、左腕でその足を弾いた後、右拳を守里の顔…は避けられると思い、胸に撃ち込む。



ボコッ!!


守里: グッ……


阿墨: やっぱ、黒峰を足止めしてただけはあるな……



2人は体に受けたダメージを感じながら、お互いを睨み合う。





上位1: お前、あの時から強くなったんだろうな!


ブンッ!!


春時: そっちこそ、右肩は治ったかよ!


バチンッ!!



こちらの2人も、喋りながら…お互いを煽りながらではあるが、上位1の右の大振りを避け、春時は左腿を狙って蹴りを放ち、それを上位1は左の蹴りで受け止める、というような攻防を続ける。



春時: はっ!!



一歩退いた春時は、真っ直ぐ上位1の体軸に向けて、右の縦拳を放ち、防御は得策では無いと思った上位1は、それを左側…春時の背面側に避ける。



上位1: 背中がガラ空きだぞ!w



そう言って、右拳を振り上げたが…



春時: どこが!



一気に右脚を胸に引き付け、背面側に向かって蹴りを放つ。



上位1: へぇw…


ドンッ!


ズザザ



瞬時に蹴りを感知した上位1は両腕を交差させてそれを受け止めたが、少し後退してしまう。



上位1: お前、あの時から随分と戦闘経験を積んだようだな。


春時: …どうも。


上位1: だが、向こうも本気でやり始めるみたいだから、俺も本気で行かせてもらうぜw



隣の阿墨の方を確認した上位1はそう言う。





阿墨: 黒峰を弔うためにも、やっとくか。


守里: …



懐から短刀を取り出した阿墨は、動きを観察するように、守里を睨む。





春時: あっそう。なら、俺も…


上位1: あ?



先程の上位1の言葉を聞いた春時は、さらに集中力を高め、そして、こう叫んだ。



春時: 武炎・臨越!!



その瞬間、春時から放たれているプレッシャーがさらに強くなる。



上位1: っ!コイツw


春時: ここからは短期決戦だ。





阿墨: ww、向こうは楽しそうだな。こっちも楽しもうぜ。


守里: 笑、春時……すぐに終わらせよう。



アンチの構成員相手に、木村道場で一から教わったことを思い出しつつ、2人は構え、次の攻防に入ろうとするが…



森田: 坊ちゃん!!



このタイミングで、守里の護衛である森田が路地に到着する。



阿墨: チッ…増援か。逃げるぞ。


上位1: …はい!


阿墨: この戦いの決着は次に会った時だ。楽しみにしとけよw



そう言って、阿墨は上位1を連れて、森田が来た方向とは逆の方向に、全力で走り出した。



春時: っ!追わないと!


守里: …いや、春時。ダメだ。


春時: でも!


守里: たとえ追いついたとしても、今の俺達じゃ、あの二人には敵わない。春時だって、一戦交えて分かっただろ。


春時: ……あぁ。武炎使ってる状態なら、本気のアイツともやり合えただろうが、今の俺は1分程度しか、あの状態を保てないからな…


守里: ……ふぅ…




カチ




守里: これからもっと強くなろう笑


春時: 笑、おう。



戦闘態勢を解いた2人は、そう言って改めて決意を固め、笑い合う。


そのやり取りを微笑ましく見ながらも、話し出す機会を伺っていた森田は、2人の話が終わったタイミングで、口を開く。



森田: 遅くなってしまい、申し訳ございませんでした。怪我はないですか?


守里: はい。僕はないです。春時は…


春時: 俺もないです。


森田: 良かったです。あの2人は今も路地の外に待機させていた矢口と3級団員に追わせていますが…


守里: 拠点の場所は掴めないでしょうね。黒峰龍水のことを知っていたことや、あの強さからしても、十中八九、あの2人は上位構成員でしょうから。


森田: そうですか……すみません。ちゃんと包囲網を組めていれば。


守里: いえ。それでさらに森田さん達の到着が遅れていれば、僕と春時はこうやって五体満足ではいられなかったでしょうし。


森田: …ありがとうございます。


春時: ……あ、そう言えば、大阪での作戦終了後はどうなったんですか?



会話に一区切りがついたところで、思い出したように春時が尋ねる。



森田: えっとですね。作戦時に捕らえた構成員を尋問し、大阪の拠点に所属していた構成員をリスト化。捕らえられていない者を、構成員の個人携帯や、ビル内の固定電話で誘き出して捕らえたり、屯していた場所に乗り込んだりなどして、逃がしてしまった竹川とその側近2名以外の構成員は、全員捕まえました。


春時: おぉ…


守里: ……でも、その逃がしてしまった3人の行方が気になりますね…


森田: はい。我々も、竹川とその側近の顔を見ている団員の情報を元に、大阪近辺を中心に捜索しているのですが、捜索範囲が広すぎて、中々尻尾を掴めていません。


守里: ………逃げるとしたら、やっぱり他のアンチの拠点じゃないですか?体勢を整えるためにも。


森田: ですね。なので、今、我々が竹川の居場所として最も可能性が高いのは、他の幹部がいると思われる愛知の拠点です。


春時: 愛知…


森田: 愛知の拠点は、我々も未だに捜索に難航していますが、必ず見つけます。


守里: お願いします。


森田: はい笑


春時: ………って、守里。お前今、見回りの途中じゃん。


守里: あっ、やば……若月さんに怒られる!


春時: 早く終わらせてこい笑


守里: う、うん!じゃあ、春時と森田さん、また!


森田: 笑、お気をつけて。


春時: また明日な~



重大なことに気づき、慌てて去って行く守里の背中を眺める2人。



森田: 木村君、改めて、これからも坊ちゃんのことをよろしくお願いしますね。


春時: もちろんです。あと、春時って呼んでくださいよ笑


森田: 分かりました、春時君。では、私も坊ちゃんの護衛をしないといけないので。


春時: 守里をよろしくお願いします笑


森田: 笑、春時君もお気をつけて帰ってください。


春時: はい笑



笑顔で軽く言葉を交わし、森田は走って行った守里の護衛に向かい、春時は外の荷物を拾って、自分の家へと帰るのであった。




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