異世界召喚された回復術士のおっさんは勇者パーティから追い出されたので子どもの姿で旅をするそうです

かものはし

文字の大きさ
48 / 131
パルメティの街

再会しました

しおりを挟む
 そしてこの世界に来て半年、今の現状に陥っていたのだった。

「もう少し考えて要求出しておけば良かったな……」

 一番の問題であったのは要求した覚えのない回復術創造という異常に便利な特殊能力であった。
 無闇矢鱈と使えない圧倒的に優れた能力を隠してしまったせいで勇者パーティから追い出され、しかしおかげでアカネやルカと出会えたのだから悪いことばかりではなかった。
 とにかく自分の現状や今後のことについて色々話しておきたいと思い、ホイムはその足で神殿にやってきた。
 入り口で神官に対して礼拝に来たことを告げたホイムはすんなりと通された。ブロンズクラスのギルドカードを提示したためかもしれない。

(この街でもブロンズのカードはそれなりに効力を発揮してくれるかな……?)

 ギルドカードを手に入れていたことが、彼が勇者パーティにいた頃に得た数少ないメリットであったのは間違いない。
 清廉清潔な白を基調にした神殿内を進み、同じ色をした巨大な扉が開かれた先は広い礼拝の間に続いていた。
 奥には女神フォトをかたどった数メートルはあろうかという純白の彫像が、大きな十字を背景にして佇んでいる。掲げた右手は天を指し、下ろした左手は地を示している。
 そして天井付近には外の光を取り込むための大きな天窓が無数にあり、ただでさえ白い神殿内を一層明るく照らしている。
 ホイムは歩を進めながら一筋の汗をかいていた。
 室内が暑いからではなく、これから女神に会うのだと心に決めた緊張感からであった。

「……」

 彫像の前に辿り着くと、片膝をついて俯いて目を閉じる。

(女神様……女神様。僕の声が聞こえますか)

 心の中で呼びかけるが返事はない。

(聞こえるか……聞こえるだろう……)

 遥かな祈りが届いているはずだ。

「いい加減、聞こえてるだろ、クソ女神」

 ついつい五七五のリズムで罵倒を口にした瞬間、彼は体ごと天に引き上げられるような錯覚に陥りながら一瞬だけ意識を失った。



 意識が覚醒した瞬間に目を開けた彼の前に広がっていたのは、見た覚えのある白い空間であった。
 何もない白の世界。天と地の境目も曖昧な場所。

「…………」

 の、はずであったが、今この場所には初めてきた時には存在していなかった建物がある。
 木造のバンガローのような外見の、決して立派な建物ではない小さな建築物である。
 このだだっ広い世界と比べてあまりにも小さい。なんならこの無限に広がる空間なんていらないだろと言いたくなるくらいのちんまりとした小屋である。

「けどここに来たってことは、呼ばれたってこと……だよな」

 ホイムの不信感は募る一方であったが、こうして手をこまねいていても仕方がないということで、意を決して小屋に近付いていく。
 遠くから見たらみすぼらしい木造建築に思えたが、近くで見ると案外造りはしっかりとしていて、吹けば飛ぶような情けない建物ではなさそうであった。
 小屋には呼び鈴もなく、ホイムは緊張しながら木製の扉をノックした。
 しばし待つが反応は返ってこない。
 もう一度叩こうとしたところで、中から何か音声が漏れ聞こえてくるのに気が付いた。

「なんだ……?」

 扉に耳を近付けて澄ませていると、少しずつ音がはっきりとしてくる。
 どこか懐かしさを覚えるリズミカルな音楽……あれはそう、夜更かしをした深夜のテレビから聞こえてくるような胡散臭い外人のアテレコボイス。
 扉の鍵が開いていることに気付いたホイムは、中にいるであろう女神の返事を待たずして扉を押した。

『さあ! マッスルパワーが溜まってきたろう! ワン、ツー、スリー、フォー! そうだその調子だ!』

 室内には確かに女神がいた。リビングでホイムに背を向けテレビを見ている。

『ワン、ツー、スリー、フォー! さあ半分だ! まだまだいくぞ!』

 大きな液晶テレビにはムキムキの男性が軽快なトークで場を盛り上げながら女性たちと一緒にエクササイズをする番組が映し出されていた。
 肝心の女神フォトは結った金髪を揺らしながら、手足が連動して動くウォーキングマシンで汗水垂らし懸命に運動に励んでいた。



「マジ許可無しで入ってくるとかありえんしぃ。乙女の空間に無遠慮すぎるしぃ」

 女神フォトは対面でテーブルに座るホイムを正座させ、勝手に入り込んできたことをチクチク責めていた。

「すいませんでした」
「ホント反省してるし? 心から悪いと思ってるワケ?」

 しっかりと反省しているフリをしながら、どうして見た感じギャルな子に怒られてるんだろうと釈然としないホイムであった。
 金髪の女神は神殿にあった彫像のような透き通るような色白ではなく小麦色の肌をしたJKのようであった。
 ジャージ姿で運動後の汗をほんのり滲ませ、少し蒸せるような熱気を漂わせる女の子に対し、状況が状況ならホイムは少しくらい興奮を覚えたかもしれない。
 しかしそうならないのは、彼女はギャルではなく女神のはずであり、ジャージじゃなく美しい衣を着ているはずであり、こんな頭の悪そうな話し方ではなくしっかりとした口調をしていなくてはならないはずであり。
 ようするに彼女を女神として認識できず困っているわけであった。
しおりを挟む
感想 180

あなたにおすすめの小説

田舎娘、追放後に開いた小さな薬草店が国家レベルで大騒ぎになるほど大繁盛

タマ マコト
ファンタジー
【大好評につき21〜40話執筆決定!!】 田舎娘ミントは、王都の名門ローズ家で地味な使用人薬師として働いていたが、令嬢ローズマリーの嫉妬により濡れ衣を着せられ、理不尽に追放されてしまう。雨の中ひとり王都を去ったミントは、亡き祖母が残した田舎の小屋に戻り、そこで薬草店を開くことを決意。森で倒れていた謎の青年サフランを救ったことで、彼女の薬の“異常な効き目”が静かに広まりはじめ、村の小さな店《グリーンノート》へ、変化の風が吹き込み始める――。

ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。 前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。 ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。 「この家は、もうすぐ潰れます」 家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。 手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。 追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。 追記2:ひとまず完結しました!

美人同僚のおまけとして異世界召喚された私、無能扱いされ王城から追い出される。私の才能を見出してくれた辺境伯様と一緒に田舎でのんびりスローライ

さら
恋愛
美人な同僚の“おまけ”として異世界に召喚された私。けれど、無能だと笑われ王城から追い出されてしまう――。 絶望していた私を拾ってくれたのは、冷徹と噂される辺境伯様でした。 荒れ果てた村で彼の隣に立ちながら、料理を作り、子供たちに針仕事を教え、少しずつ居場所を見つけていく私。 優しい言葉をかけてくれる領民たち、そして、時折見せる辺境伯様の微笑みに、胸がときめいていく……。 華やかな王都で「無能」と追放された女が、辺境で自分の価値を見つけ、誰よりも大切に愛される――。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

3歳で捨てられた件

玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。 それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。 キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。

処理中です...