異世界召喚された回復術士のおっさんは勇者パーティから追い出されたので子どもの姿で旅をするそうです

かものはし

文字の大きさ
59 / 131
パルメティの街

自己紹介されました

しおりを挟む
「突然の乱入、非礼として改めてお詫び申し上げる」

 日も暮れた森の傍、展開されたホイムたちのキャンプの竈の火を囲む三つの影があった。
 ホイム達の前に現れたマント姿の冒険者はエミリアと名乗った。
 自己紹介をしたところでホイムの提案で食事をしながら事情を訊くことにした。

「いえ……助けに入ってくれたことに、改めて感謝します」

 そう言うホイムが少し話しにくそうなのは、彼の身をアカネがしっかりと抱きしめて座っているからだ。
 それはまるで蛇から雛を守る親鳥のようである。過保護!
 ルカは客人に熊肉を焼いた塊を差し出し、自分はより大きな肉塊をもぐもぐと頬張っている。
 そして客人であるエミリアは、熊肉に手を付けずに真剣な面持ちで彼らの輪に加わっていた。

「それで、エミリアさんはどうして僕の加勢に?」

 一つ息をつき、エミリアは話をしてくる。

「……ギルドで貴方がたを見かけ、討伐クエストをこなしにいくと耳にした」
「ほう。その時からホイム様に目を付けていたと」
「ああ」

 むむむー!
 自分で問いかけておきながらあっさりと肯定されたことで、ホイムを抱くアカネの手が一層力を増した。

「アカネさんギブギブ……それで目を付けたっていうのは、その……どういう意味です?」
「私は腕に覚えのある者を探していた。討伐依頼を進んでこなそうとするような腕利きをだ。私もあの街に滞在して日は浅いが、その間このクエストを受けて街を立ったものは貴方がただけだった」
「ずっとギルドで人を観察してたんですか? 強い人を見つけるために……」
「はい。それも身軽で、できれば数名のパーティを」
「その条件に僕らはぴったりだった、と」

 エミリアは頷いた。
 身軽な者が条件になっているのは、彼女の装備が重装なことと関係しているのかもしれない。
 くたびれたマントの下には薄汚れたプレートメイルと皮のスカートと布のズボンにメタルグリーブ。頑強なシールドとセットのブレード。
 一見するとあまり綺麗な装備とは言い難いが、じっくりと見ればその一つ一つに上等な装飾が施されており、磨き上げれば相応の輝きと価値のあるものであると見る者が見れば気付くはずである。
 それは装備だけでなく、エミリア自身もであった。
 重装備を纏うだけの屈強な肉体が鎧の下に収められており、肌を晒している部位となれば顔くらいのものである。
 その顔も左頬には古傷が刻まれており、歴戦の女冒険者を思わせる風貌であるが、短い青髪は柔らかくさらりとしており、強い光を宿す黒い瞳は美しく輝いている。
 手入れをすればその長身もあり相応に人目を惹く女性であることは間違いない。
 それを見抜いているからこそ、突然ホイムに膝をついたエミリアをアカネは警戒していたが、彼女が気付いていたのはその美しさだけではなかった。

「貴方がたには依頼をしたい。私の……私の目的を手助けしてもらいたい。その強さを貸していただきたい」
「解せませんね」

 口を挟んだのはホイムを抱くアカネである。

「貴女ほどの手練がわざわざ見ず知らずの冒険者に協力を仰ぐなど不自然極まりない。ほとんどの問題事など、一人で解決できように」
「ああ。否定はしない」

 アカネがまたムッとする。その度にホイムの体はギリギリと。

「ギブギブ……」

 どうにか腕を緩めてもらいながら、ホイムもその点は些か疑問ではあった。
 ヘビーダノスを倒した力量を見ただけでも、彼女の実力はかなりのものであることは明白である。
 そんな彼女がわざわざ依頼してくる理由とは一体何かと思いながら耳を傾けた。

「問題は場所だ」
「場所ですか?」
「はい。私が貴方がたに協力していただきたいのは、遺跡にある洞窟に潜む標的の討伐と、おそらく囚えられているであろう仲間の救出なのです」

 どうやらその洞窟という場所こそ、エミリアが一人で出向けぬ理由のようであった。

「ご覧いただいた通り、私の技や装備は洞窟という狭い空間での戦闘にはおおよそ向いてはおりません。標的の潜む洞窟の規模や深さも分からぬこともあり、おそらく私は実力の三割も出せないと考えております」
「なるほど。だからできるだけ身軽そうで戦いに慣れた人たちを探していたと」

 ホイムにもエミリアの考えが大体理解できてきた。
 確かにホイム、アカネ、ルカはエミリアのように大きな装備を必要としない。加えてアカネとルカは探索に向いた技術も身につけており、未知の洞窟を進むならば大いにプラスになるだろう。
 しかし、話を訊いてからホイムにも解せない疑問が湧いてきた。

「でも、そういうのは直接依頼せずにギルドにクエスト登録すれば良かったのではないですか?」

 エミリアも冒険者ならば、そうして協力者を募った方が楽なことは知っているはずである。細かい条件もつけられるので、このように街を立つ冒険者を追って力量を見定める必要もない。
しおりを挟む
感想 180

あなたにおすすめの小説

田舎娘、追放後に開いた小さな薬草店が国家レベルで大騒ぎになるほど大繁盛

タマ マコト
ファンタジー
【大好評につき21〜40話執筆決定!!】 田舎娘ミントは、王都の名門ローズ家で地味な使用人薬師として働いていたが、令嬢ローズマリーの嫉妬により濡れ衣を着せられ、理不尽に追放されてしまう。雨の中ひとり王都を去ったミントは、亡き祖母が残した田舎の小屋に戻り、そこで薬草店を開くことを決意。森で倒れていた謎の青年サフランを救ったことで、彼女の薬の“異常な効き目”が静かに広まりはじめ、村の小さな店《グリーンノート》へ、変化の風が吹き込み始める――。

ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。 前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。 ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。 「この家は、もうすぐ潰れます」 家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。 手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。 追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。 追記2:ひとまず完結しました!

美人同僚のおまけとして異世界召喚された私、無能扱いされ王城から追い出される。私の才能を見出してくれた辺境伯様と一緒に田舎でのんびりスローライ

さら
恋愛
美人な同僚の“おまけ”として異世界に召喚された私。けれど、無能だと笑われ王城から追い出されてしまう――。 絶望していた私を拾ってくれたのは、冷徹と噂される辺境伯様でした。 荒れ果てた村で彼の隣に立ちながら、料理を作り、子供たちに針仕事を教え、少しずつ居場所を見つけていく私。 優しい言葉をかけてくれる領民たち、そして、時折見せる辺境伯様の微笑みに、胸がときめいていく……。 華やかな王都で「無能」と追放された女が、辺境で自分の価値を見つけ、誰よりも大切に愛される――。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

3歳で捨てられた件

玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。 それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。 キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。

処理中です...