異世界召喚された回復術士のおっさんは勇者パーティから追い出されたので子どもの姿で旅をするそうです

かものはし

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パルメティの街

過去を聞きました

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「それこそ噂だ。私や騎士団の下にそのような打診がきたことはない」
「そう噂でしかない。だがそれだけ世間に認められていたにも関わらず、己の主を手に掛けようとした凶悪な騎士団に所属していた者を、ホイム様に近付けるわけにはいかぬ!」
(まただ……)

 またエミリアが苦しげに表情を歪める。そしてホイムの首も苦しげに締まっていく。
 ギブギブ。

「エミリア」

 警戒を続けるアカネとは裏腹に、食事を終えたルカは何の警戒もせずに俯くエミリアの顔を覗き込む。

「お前悪い奴か?」

 屈託のない表情と言葉。真っ直ぐな問いかけが苦悶に苛まれる彼女の心に突き刺さる。

「悪い奴?」
「…………違う」

 小さな声で絞り出したエミリアの頭を、ルカはお姉さんのように撫でてあげた。

「エミリア良い子。心配ない」
「……ですって、アカネさん」

 ルカの言葉にホイムも乗っかり、アカネを見上げる。

「……」

 一人だけずっとエミリアを警戒していたアカネであったが、二人の視線を受けて折れることとなった。

「はあ……分かりました。これ以上続けていては私だけ悪者になってしまいます」
「僕たちの身を案じてのことじゃないですか」

 アカネの腕からようやく解放されたホイムは、今にも泣き出しそうな顔をしているエミリアに歩み寄って腰を下ろした。

「エミリアさん。話を訊かせてくれますか?」
「……はい」

 ホイムの言葉に、エミリアは心から感謝の言葉を述べるのだった。

「素性を隠していたことは謝罪します。ですが嘘は申していません。私は、遺跡の洞窟に潜む我らを陥れた黒幕の成敗と……元聖華騎士団団長の救出をお願いしたいのです」

 改めて、ホイムたち四人は竈の火を囲んで話を始めた。
 今度はホイムがアカネに抱かれることなく、しっかり四人で火を囲んでいた。

「黒幕……というのは、半年前の事件の?」

 炎越しに向かい合うホイムの問いに、エミリアは頷いた。

「その正体は一体……?」

 その問いかけに対しては明確な返答はなかった。というよりも彼女自身知らないことであったのだ。

「分かりません」
「分からないということはないだろう。怪しい者がいたから、お前はそいつのいる洞窟へいくのではないか?」

 エミリアはアカネの言葉には頷いた。

「その通りだ。黒幕は間違いなくいるはずだ」

 はず、という語尾に一抹の不安を覚えるアカネであったが、エミリアは尚も力説した。

「そうでなければ! アリアスが……団長が姫を襲うなどありえん……」

 アリアスというのが、エミリアの依頼にあった救助対象の騎士団長の女性の名であるようだ。

「その時のこと、知っているなら教えてください」

 ホイムが訊くと、エミリアはぽつりぽつりと当時の状況を語り始めた。



 岬の国、フラシュ王国。
 南部大陸の北東端に位置する強国には聖華騎士団と呼ばれる女性のみで構成された見目麗しく勇壮な騎士団が存在していた。
 特に騎士団長以外の団員から選ばれた今代の筆頭騎士においては南方の大国、ガミニアから近々魔王討伐に乗り出すと噂される勇者一行にすら引けを取らぬ実力であると噂されていた。
 彼女たちが代々守護しているのは国だけでなく、歴代の王女――姫君であった。
 そして彼女らには姫の護衛だけでなく、勉学の面倒や遊戯の相手も任されていた。そして今エミリアがしているように、寝かしつけも仕事の内であった。

「……そして最初の王様は、悪い人たちをいっしょに倒した最初の騎士と手を取り合い、この国を作ったのでした……めでたしめでたし」

 欠伸混じりのエミリアが王女の私室にある豪奢なベッドに腰を掛け、同じベッドに寝転がる齢十ほどの王女リアラに読み聞かせていたのは、フラシュ王国の成り立ちを分かりやすく描いた絵本であった。
 王女の寝かしつけを担当するのは聖華騎士団の中でも筆頭騎士をはじめ、真に信頼と実力と美貌を伴う者だけであった。

「エミリア! もう一回! もう一回読んで!」

 レースの寝巻きで小さな体を包むリアラが、エミリアの腕に抱きつきながらせがんでくる。

「姫様……もう三回目ですよ? いい加減私も眠くなって参りました」

 呆れて物を言うエミリアの格好もシルクでできた光沢のある寝間着である。
 エミリア自身はあまりこのような麗しい格好は好んでいない。聖歌騎士団の入団条件に美貌が優れていることが挙げられるが、自分は剣の腕のみで騎士団に入れたものだと信じていた。
 男よりも大柄で体中には戦場で刻んだ古傷も多く、およそ女性らしさと無縁だと本人が自覚していた。
 そんなエミリアをこのようにリアラが慕うのも、そのような自分が聖歌騎士団に所属する見目麗しい女性たちの中でも異質で目立ち、珍しいからであるからだと考えていた。
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