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パルメティの街
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「良かった……無事に魔法が効いてくれて」
魔法陣による治癒は成功した。今後もこの手段は使えるかもしれないと頭の片隅に入れておくことにするホイムであった。
「わた、私はなんとはしたない事を!」
「いいんですよ気にしないでください……何か仕込まれたんですよね?」
とにかくエミリアを落ち着けようと、ホイムは話を訊き出すことにした。
「……掠り傷をもらってから、体が熱くなって……ホイムを見ていると胸が苦しくなって……触れられたら頭が弾けるような……だから、さっきのは私の本意ではない! あんなことをするとは……」
「ああはい分かりましたから落ち着いてください」
実害はなかったのだし。
そう付け加えてエミリアを宥めると、彼女は小声で謝罪の言葉を繰り返し始めた。
俯いてぶつぶつ同じ言葉を繰り返していたエミリアであったが、ホイムからの反応が全く無いことに思い至ったので言葉を止めた。
謝りすぎていい加減呆れられたのだろうかと顔を上げた時、そこには誰もいなかった。
「……ホイム?」
不安にエミリアの胸が高鳴った。さっきまで一緒にいたはずの少年が姿を消し、明かりも消えて辺りは真っ暗になっていた。
いつの間にか分断されていた?
だがそのような工作をされていたなど、いくら気落ちしていたとはいえ気が付かないはずはない。
何が起きたのか焦燥感に駆られるエミリアの耳に、か細い声が届いてきた。
「……リア……エミリア……」
「この、声は……!」
聞き覚えのある声色。忘れるわけがない、彼女の所属していた聖華騎士団長アリアスのものである。
「いるのか、アリアス!」
暗がりに敵がいるかもしれないにも関わらず、エミリアは大きな声で応じていた。もしかしたらホイムにも聞こえるかもしれないと考えたからだ。
しかし少年の反応はなく、ただ彼女の名を呼ぶアリアスの声だけが遠くから響いてくる。
「どこだ! どこにいる!?」
「こっちよ……エミリア」
声が少し近付いた気がし、出処の方向がおおよそ分かってきた。
エミリアは暗闇の中を走り出す。走れども走れども壁のないただ広い闇の世界をひたすらに走り、やがて遥か彼方に薄明かりが漏れているのが見えてきた。
光に向かいひた走る。救うべき者を求めてそこへ飛び込んだエミリアが見たのは、目を覆いたくなる痴態の狂乱だった。
「ああ……やっと来てくれたのねエミリア」
嬉しそうに彼女の到着を出迎えたアリアスは、人族に魔族、様々な種族の雄に囲まれながら腰を振っていた。
彼女が身につけている鎧も既にその役を果たしてはいない。ガントレットとブーツを残し、大事な場所や隠すべき部位は曝け出して狂喜に浸っていた。
「アリアス……?」
雄の上に跨がり、手も口も雄に蹂躙されては入れ替わり立ち替わりに交わり続ける元騎士団長の姿に、エミリアはおぞましさすら覚えた。
「何をしている! お前も……貴様たちも!」
エミリアは怒り、義憤、正義感を奮い立たせ、アリアスを中心にした雄の輪の中へ分け入ろうとした。
しかし、踏み出した左足が途端に太ももから痺れるような錯覚に襲われその場へ倒れ伏してしまった。
「なに……」
ホイムに癒してもらったはずの傷が再び疼き始めた。
同時に彼女の手足を屈強な種族の雄共が押さえつけ、身動きを封じてしまった。
「離……せ! 貴様らぁ!」
抵抗を顕にする言葉とは裏腹に、体には力が籠もらない。まるで先程ホイムに治癒してもらった体の異常が再発したかのように、体が熱く敏感になっていく。
「何をしているか……見れば分かるわよね」
近付いてきたアリアスを睨み上げるように見つめるエミリアに、彼女が恍惚とした表情で告げてくる。
「交尾よ、交尾。いくら貴女に無縁でも聞いたことくらいあるでしょう?」
裸体を晒すことを恥とも思わぬ佇まい。彼女の知る聖華騎士団長アリアスならば絶対にありえぬ姿に、喪失感と悔しさが滲んでくるのだった。
「何故だ……何故お前はこんな場所でそんな真似をしている? 何故皆を見捨て脱獄した? 何故姫様を襲った? 分からない……答えろ、答えろアリアス!」
様々な感情を込めた問に対する回答は、酷くあっけらかんとしたものであった。
「だって、こっちの方が愉しいじゃあない?」
エミリアは開いた口が塞がらなかった。
言葉の意味が浸透してくるにつれ、ショックと怒りが込み上げてくる。
「ふざ、けるなよ……! そんな理由で、騎士団が壊滅したなどと……認めるわけがなかろう!」
「素敵な理由じゃないかしら?」
腰を屈めたアリアスが手を伸ばし、エミリアの左頬に触れてくる。
たくさんの男のもので汚れた指先が古傷に触れることに穢らわしさを感じるかと思いきや、ホイムが触れてきた時に抱いた欲情と同じ気持ちの昂ぶりがエミリアの体を震わせた。
「好きな男に触れられた時……戦場では味わえない幸福を感じたでしょう?」
「馬鹿を言え! 私は……騎士だ。それに、好きな男など」
「貴女を悦ばせた少年がいるじゃない。それを好きになってもいいのよ」
エミリアは言い返そうとしたのだが、傷を撫でられる度に体に走る痺れに思考が乱されていく。
やがては冷静な判断がつかなくなり……これではホイムに襲いかかった時と全く同じ状態に陥ってしまうのは目に見えていた。
「もういいじゃない。騎士の務めなんて投げ出して……私と一緒に落ちるところまで堕ちましょう」
尊敬の念を抱いていたアリアスからの口から溢れる甘美な誘い。彼女が言うのなら、いるのなら、行くのなら、それもいいのかもしれない。
意識を手放しそうになりながらもそうしなかったのは、エミリアの頭の中に目の前にいる女と同じ顔をした者がかつて彼女に伝えたある言葉がよぎったからだ。
魔法陣による治癒は成功した。今後もこの手段は使えるかもしれないと頭の片隅に入れておくことにするホイムであった。
「わた、私はなんとはしたない事を!」
「いいんですよ気にしないでください……何か仕込まれたんですよね?」
とにかくエミリアを落ち着けようと、ホイムは話を訊き出すことにした。
「……掠り傷をもらってから、体が熱くなって……ホイムを見ていると胸が苦しくなって……触れられたら頭が弾けるような……だから、さっきのは私の本意ではない! あんなことをするとは……」
「ああはい分かりましたから落ち着いてください」
実害はなかったのだし。
そう付け加えてエミリアを宥めると、彼女は小声で謝罪の言葉を繰り返し始めた。
俯いてぶつぶつ同じ言葉を繰り返していたエミリアであったが、ホイムからの反応が全く無いことに思い至ったので言葉を止めた。
謝りすぎていい加減呆れられたのだろうかと顔を上げた時、そこには誰もいなかった。
「……ホイム?」
不安にエミリアの胸が高鳴った。さっきまで一緒にいたはずの少年が姿を消し、明かりも消えて辺りは真っ暗になっていた。
いつの間にか分断されていた?
だがそのような工作をされていたなど、いくら気落ちしていたとはいえ気が付かないはずはない。
何が起きたのか焦燥感に駆られるエミリアの耳に、か細い声が届いてきた。
「……リア……エミリア……」
「この、声は……!」
聞き覚えのある声色。忘れるわけがない、彼女の所属していた聖華騎士団長アリアスのものである。
「いるのか、アリアス!」
暗がりに敵がいるかもしれないにも関わらず、エミリアは大きな声で応じていた。もしかしたらホイムにも聞こえるかもしれないと考えたからだ。
しかし少年の反応はなく、ただ彼女の名を呼ぶアリアスの声だけが遠くから響いてくる。
「どこだ! どこにいる!?」
「こっちよ……エミリア」
声が少し近付いた気がし、出処の方向がおおよそ分かってきた。
エミリアは暗闇の中を走り出す。走れども走れども壁のないただ広い闇の世界をひたすらに走り、やがて遥か彼方に薄明かりが漏れているのが見えてきた。
光に向かいひた走る。救うべき者を求めてそこへ飛び込んだエミリアが見たのは、目を覆いたくなる痴態の狂乱だった。
「ああ……やっと来てくれたのねエミリア」
嬉しそうに彼女の到着を出迎えたアリアスは、人族に魔族、様々な種族の雄に囲まれながら腰を振っていた。
彼女が身につけている鎧も既にその役を果たしてはいない。ガントレットとブーツを残し、大事な場所や隠すべき部位は曝け出して狂喜に浸っていた。
「アリアス……?」
雄の上に跨がり、手も口も雄に蹂躙されては入れ替わり立ち替わりに交わり続ける元騎士団長の姿に、エミリアはおぞましさすら覚えた。
「何をしている! お前も……貴様たちも!」
エミリアは怒り、義憤、正義感を奮い立たせ、アリアスを中心にした雄の輪の中へ分け入ろうとした。
しかし、踏み出した左足が途端に太ももから痺れるような錯覚に襲われその場へ倒れ伏してしまった。
「なに……」
ホイムに癒してもらったはずの傷が再び疼き始めた。
同時に彼女の手足を屈強な種族の雄共が押さえつけ、身動きを封じてしまった。
「離……せ! 貴様らぁ!」
抵抗を顕にする言葉とは裏腹に、体には力が籠もらない。まるで先程ホイムに治癒してもらった体の異常が再発したかのように、体が熱く敏感になっていく。
「何をしているか……見れば分かるわよね」
近付いてきたアリアスを睨み上げるように見つめるエミリアに、彼女が恍惚とした表情で告げてくる。
「交尾よ、交尾。いくら貴女に無縁でも聞いたことくらいあるでしょう?」
裸体を晒すことを恥とも思わぬ佇まい。彼女の知る聖華騎士団長アリアスならば絶対にありえぬ姿に、喪失感と悔しさが滲んでくるのだった。
「何故だ……何故お前はこんな場所でそんな真似をしている? 何故皆を見捨て脱獄した? 何故姫様を襲った? 分からない……答えろ、答えろアリアス!」
様々な感情を込めた問に対する回答は、酷くあっけらかんとしたものであった。
「だって、こっちの方が愉しいじゃあない?」
エミリアは開いた口が塞がらなかった。
言葉の意味が浸透してくるにつれ、ショックと怒りが込み上げてくる。
「ふざ、けるなよ……! そんな理由で、騎士団が壊滅したなどと……認めるわけがなかろう!」
「素敵な理由じゃないかしら?」
腰を屈めたアリアスが手を伸ばし、エミリアの左頬に触れてくる。
たくさんの男のもので汚れた指先が古傷に触れることに穢らわしさを感じるかと思いきや、ホイムが触れてきた時に抱いた欲情と同じ気持ちの昂ぶりがエミリアの体を震わせた。
「好きな男に触れられた時……戦場では味わえない幸福を感じたでしょう?」
「馬鹿を言え! 私は……騎士だ。それに、好きな男など」
「貴女を悦ばせた少年がいるじゃない。それを好きになってもいいのよ」
エミリアは言い返そうとしたのだが、傷を撫でられる度に体に走る痺れに思考が乱されていく。
やがては冷静な判断がつかなくなり……これではホイムに襲いかかった時と全く同じ状態に陥ってしまうのは目に見えていた。
「もういいじゃない。騎士の務めなんて投げ出して……私と一緒に落ちるところまで堕ちましょう」
尊敬の念を抱いていたアリアスからの口から溢れる甘美な誘い。彼女が言うのなら、いるのなら、行くのなら、それもいいのかもしれない。
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