123 / 131
王都フラシュ
殲滅しました
しおりを挟む
「……助かった」
「うん!」
ルカに感謝を述べるエミリアの瞳からは幾分激情の色は薄れていた。本気の一撃をブチかました事で多少感情が落ち着いてきていた。
「敵はまだ多いぞ」
「分かってる!」
エミリアはルカの目を見て言い、ルカも彼女の目を真っ直ぐ見て頷いた。
一度背中を合わせて広場と周囲を警戒すると、建物の影に逃れたり、魔物を幾重にも盾にして雷槌の直撃を避け生き延びた魔物たちが次第に集結しつつあった。
「グエ、グエ……女だ」
民家の屋上から這い出てくるカエルの化物。通りを駆け回る二つ頭の狼。中身が空っぽの頭部を失った甲冑デュラハン。ほぼ全裸で色気を振りまくサキュバス。
その他大勢の生き延びた魔族が広場へ押し寄せてくる。
下劣な声と視線を向けながら這い寄る巨大なリザードの首をエミリアの剣が石畳へ串刺しにする。
「一匹も……生かしてはおかんぞ!」
手首を捻ると首を刎ねられたリザードの恨みがましい目をした頭を踏み砕いた。
彼女は怒りの全てをまだ吐き出せてはいない。なのでぶつける対象が続々と大挙してくることは好都合であった。
エミリアの剣が振るわれる毎に魔物の数が減っていく。彼女が得手とする広範囲高威力の魔法剣は広場で戦うルカを巻き込む危険があるので封じているが、斬れ味鋭い斬撃は魔法を宿していなくても一太刀で確実に敵を仕留めていた。
「はあッ!」
魔物を縦一文字に斬り捨てたエミリアに背後から襲いかかるダークウルフ。俊敏な動きで一気に間合いを詰めた魔獣は彼女の首筋に鋭い牙を突き立てる。
だが牙がエミリアの肌を裂くより早く、獣が飛びかかるより疾く、ルカの足蹴りがダークウルフの首を吹き飛ばした。
「ほっ、とっ」
ルカはそのまま動きを止めることなく広場を縦横無尽に駆け回り、進路にいる魔族を次々に薙ぎ倒していく。
時折、ルカが吹き飛ばしたモンスターの一部がホイムの横を掠めていく。
「圧倒的だなあ……」
二人に敵う相手はいない。このままホイムが何もしなくても広場を制圧されることはない。
しかしながら如何せん数が多い。時間を浪費してしまえば城への突入が遅くなり魔人に猶予を与えることになるし、先行したアカネのことも気になる。
幸いなことに保護した五名は気を失っているものの落ち着いた様子であり、傷も癒やした以上もうホイムにできることはない。
「さて」
ルカとエミリアにばかり戦ってもらっていたが、ようやく彼も動き出す。
数十か百……見えないところにまだいるかもしれないが、ひとまずはそれくらいの数であろう。
門を破壊した時と同様に両手に魔力を込める。
小さな回復術士の動きに気付いたかどうかは定かではないが、ルカとエミリアの猛攻の隙を縫って突出した複数のグリフォンが嘴や爪を煌めかせて急降下してくる。
様子に気付いた二人であったが、援護が必要ない事は彼の放つ魔法を見てすぐに悟った。寧ろ、ホイムの攻撃が彼女たちの援護となったのだった。
「デュアルキュア【多重追矢】!」
合掌した腕を左右に開くと同時に呪文を唱えれば、両掌から無数の光の帯が拡散する。
ただ単にホイムの手から飛び出したわけではない。その光一つ一つが意志を持つように急激に向きを変え、ホイム目がけて襲いかかっていたグリフォンは勿論、広場にてルカとエミリアが相手をしていた大勢の魔物だけを狙い雨霰のように降り注いで貫いた。
広範囲に渡り敵だけを狙い撃つマルチロックチェイスアロー。普通の術士が使えば膨大な魔力を消費する術も、ホイムにかかればキュア二回分の魔力で済む省エネ魔法と化す。
「……ひとまず目につく敵は全部片付いたと思います」
ホイムの言う通り、広場に見える範囲で動いている魔族は一匹たりともいなかった。
ピョンとホイムの傍に跳んで戻ってきたルカは目をキラキラさせている。
「今の流れ星みたい! もう一回やって!」
「敵がいないとできないよ……」
初めて見た魔法をリクエストするルカに困った表情を浮かべるホイムのもとに、階段を上がってきたエミリアが納刀しながら声をかける。
「今ので大分早く片付いた」
暴れたことで感情が落ち着いたか、エミリアの瞳に宿っていた怒りの色は幾らか薄らいでいたが、並んで横たわっている騎士団の女性たちに視線が落ちた時には酷く悲壮な色が顔に表れていた。
「すぐにお城へ向かいたいところですが」
「……このまま放っておくわけにはいくまい」
ようやく保護できた彼女たちを野外に晒したままにしておくことはできない。まだ魔族の一部が闇の中から機会を伺っているかもしれない。せめて姿を隠せる屋内にでも運び入れておきたいという想いがあった。
「んん……? ん? んん? ホイムホイム!」
どうしたものかと思案していたホイムの頭をルカがペチペチ叩いてくる。
何事かと顔を上げたホイムがルカの指し示す方を見ると、広場へと駆けつけてくる数名の人影があった。
敵意を持った魔族ではなく、屋内に身を潜めていた町に住む女性たちであった。
「うん!」
ルカに感謝を述べるエミリアの瞳からは幾分激情の色は薄れていた。本気の一撃をブチかました事で多少感情が落ち着いてきていた。
「敵はまだ多いぞ」
「分かってる!」
エミリアはルカの目を見て言い、ルカも彼女の目を真っ直ぐ見て頷いた。
一度背中を合わせて広場と周囲を警戒すると、建物の影に逃れたり、魔物を幾重にも盾にして雷槌の直撃を避け生き延びた魔物たちが次第に集結しつつあった。
「グエ、グエ……女だ」
民家の屋上から這い出てくるカエルの化物。通りを駆け回る二つ頭の狼。中身が空っぽの頭部を失った甲冑デュラハン。ほぼ全裸で色気を振りまくサキュバス。
その他大勢の生き延びた魔族が広場へ押し寄せてくる。
下劣な声と視線を向けながら這い寄る巨大なリザードの首をエミリアの剣が石畳へ串刺しにする。
「一匹も……生かしてはおかんぞ!」
手首を捻ると首を刎ねられたリザードの恨みがましい目をした頭を踏み砕いた。
彼女は怒りの全てをまだ吐き出せてはいない。なのでぶつける対象が続々と大挙してくることは好都合であった。
エミリアの剣が振るわれる毎に魔物の数が減っていく。彼女が得手とする広範囲高威力の魔法剣は広場で戦うルカを巻き込む危険があるので封じているが、斬れ味鋭い斬撃は魔法を宿していなくても一太刀で確実に敵を仕留めていた。
「はあッ!」
魔物を縦一文字に斬り捨てたエミリアに背後から襲いかかるダークウルフ。俊敏な動きで一気に間合いを詰めた魔獣は彼女の首筋に鋭い牙を突き立てる。
だが牙がエミリアの肌を裂くより早く、獣が飛びかかるより疾く、ルカの足蹴りがダークウルフの首を吹き飛ばした。
「ほっ、とっ」
ルカはそのまま動きを止めることなく広場を縦横無尽に駆け回り、進路にいる魔族を次々に薙ぎ倒していく。
時折、ルカが吹き飛ばしたモンスターの一部がホイムの横を掠めていく。
「圧倒的だなあ……」
二人に敵う相手はいない。このままホイムが何もしなくても広場を制圧されることはない。
しかしながら如何せん数が多い。時間を浪費してしまえば城への突入が遅くなり魔人に猶予を与えることになるし、先行したアカネのことも気になる。
幸いなことに保護した五名は気を失っているものの落ち着いた様子であり、傷も癒やした以上もうホイムにできることはない。
「さて」
ルカとエミリアにばかり戦ってもらっていたが、ようやく彼も動き出す。
数十か百……見えないところにまだいるかもしれないが、ひとまずはそれくらいの数であろう。
門を破壊した時と同様に両手に魔力を込める。
小さな回復術士の動きに気付いたかどうかは定かではないが、ルカとエミリアの猛攻の隙を縫って突出した複数のグリフォンが嘴や爪を煌めかせて急降下してくる。
様子に気付いた二人であったが、援護が必要ない事は彼の放つ魔法を見てすぐに悟った。寧ろ、ホイムの攻撃が彼女たちの援護となったのだった。
「デュアルキュア【多重追矢】!」
合掌した腕を左右に開くと同時に呪文を唱えれば、両掌から無数の光の帯が拡散する。
ただ単にホイムの手から飛び出したわけではない。その光一つ一つが意志を持つように急激に向きを変え、ホイム目がけて襲いかかっていたグリフォンは勿論、広場にてルカとエミリアが相手をしていた大勢の魔物だけを狙い雨霰のように降り注いで貫いた。
広範囲に渡り敵だけを狙い撃つマルチロックチェイスアロー。普通の術士が使えば膨大な魔力を消費する術も、ホイムにかかればキュア二回分の魔力で済む省エネ魔法と化す。
「……ひとまず目につく敵は全部片付いたと思います」
ホイムの言う通り、広場に見える範囲で動いている魔族は一匹たりともいなかった。
ピョンとホイムの傍に跳んで戻ってきたルカは目をキラキラさせている。
「今の流れ星みたい! もう一回やって!」
「敵がいないとできないよ……」
初めて見た魔法をリクエストするルカに困った表情を浮かべるホイムのもとに、階段を上がってきたエミリアが納刀しながら声をかける。
「今ので大分早く片付いた」
暴れたことで感情が落ち着いたか、エミリアの瞳に宿っていた怒りの色は幾らか薄らいでいたが、並んで横たわっている騎士団の女性たちに視線が落ちた時には酷く悲壮な色が顔に表れていた。
「すぐにお城へ向かいたいところですが」
「……このまま放っておくわけにはいくまい」
ようやく保護できた彼女たちを野外に晒したままにしておくことはできない。まだ魔族の一部が闇の中から機会を伺っているかもしれない。せめて姿を隠せる屋内にでも運び入れておきたいという想いがあった。
「んん……? ん? んん? ホイムホイム!」
どうしたものかと思案していたホイムの頭をルカがペチペチ叩いてくる。
何事かと顔を上げたホイムがルカの指し示す方を見ると、広場へと駆けつけてくる数名の人影があった。
敵意を持った魔族ではなく、屋内に身を潜めていた町に住む女性たちであった。
1
あなたにおすすめの小説
田舎娘、追放後に開いた小さな薬草店が国家レベルで大騒ぎになるほど大繁盛
タマ マコト
ファンタジー
【大好評につき21〜40話執筆決定!!】
田舎娘ミントは、王都の名門ローズ家で地味な使用人薬師として働いていたが、令嬢ローズマリーの嫉妬により濡れ衣を着せられ、理不尽に追放されてしまう。雨の中ひとり王都を去ったミントは、亡き祖母が残した田舎の小屋に戻り、そこで薬草店を開くことを決意。森で倒れていた謎の青年サフランを救ったことで、彼女の薬の“異常な効き目”が静かに広まりはじめ、村の小さな店《グリーンノート》へ、変化の風が吹き込み始める――。
ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。
旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。
前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。
ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。
「この家は、もうすぐ潰れます」
家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。
手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします
夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。
アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。
いわゆる"神々の愛し子"というもの。
神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。
そういうことだ。
そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。
簡単でしょう?
えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか??
−−−−−−
新連載始まりました。
私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。
会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。
余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。
会話がわからない!となるよりは・・
試みですね。
誤字・脱字・文章修正 随時行います。
短編タグが長編に変更になることがございます。
*タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。
【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます
腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった!
私が死ぬまでには完結させます。
追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。
追記2:ひとまず完結しました!
美人同僚のおまけとして異世界召喚された私、無能扱いされ王城から追い出される。私の才能を見出してくれた辺境伯様と一緒に田舎でのんびりスローライ
さら
恋愛
美人な同僚の“おまけ”として異世界に召喚された私。けれど、無能だと笑われ王城から追い出されてしまう――。
絶望していた私を拾ってくれたのは、冷徹と噂される辺境伯様でした。
荒れ果てた村で彼の隣に立ちながら、料理を作り、子供たちに針仕事を教え、少しずつ居場所を見つけていく私。
優しい言葉をかけてくれる領民たち、そして、時折見せる辺境伯様の微笑みに、胸がときめいていく……。
華やかな王都で「無能」と追放された女が、辺境で自分の価値を見つけ、誰よりも大切に愛される――。
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
3歳で捨てられた件
玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。
それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。
キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる