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王都フラシュ
仕掛けました
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「まだ質問が途中だった…」
「ふむ?」
「お前たちは……聖華騎士団を潰し、獣王を殺し、竜を実験台にして、他にも色々暗躍してるんだろう」
「はて。何のことやら」
「確かにどれもこれも勇者たちの嫌がらせにはなってるかもしれない……間接的に。けどあいつらの道中、魔人がちょっかいをかけてきたこともない……直接手を出す気はないのか?」
瞳を僅かに細めたバルバドはホイムの質問に答えない。
「行く手を阻むつもりはないのか……? やつらの旅自体は拒まないと」
「少し喋りすぎたかな」
これまでの軽口は鳴りを潜め、至極真面目な口ぶりでホイムとエミリアを見据えてくる。
「もう少しお喋りに付き合えよ。答えてくれてもいいじゃないか」
「私を殺せたら教えてやろう」
話すつもりはもうない。戦いを始めようとその目は語っていた。
「ならその薄汚い手を王からどけろ。人質のつもりか」
エミリアの要求にバルバドは「はいはい」とお手上げの仕草をして両手を上げた。
その左手には引きちぎられた王の頭が握られて。
「おや。勢い余ってやってしまいました。これは困った」
対峙していた二人は一瞬、状況が呑み込めなかった。
視線の先には血をドプドプと吹き上がらせる王の体が、体だけが玉座にあった。
「ですがいいでしょう」
その手から首を放したバルバドが、右手のステッキで王だった者の頭を粉微塵に砕き飛ばした。
「人質はお姫様一人で充分。これの役目はもう終わり……」
バルバドは額を押さえてくぐもった笑いを漏らし、やがて高笑いへと変えていった。
「残念! この国の王様はもういなくなってしまいました! ハーハッハッハ――」
「――あああああッ!」
ホイムを置き去りにして駆け出したエミリアが剣を抜き放つ。
邪魔な王の体を横に蹴飛ばしたバルバドが不敵な笑みを浮かべながら彼女を迎え撃つ。
「っデュアルキュア【超絶強化】!」
出遅れたホイムは自身にハイアップの呪文をかけ、身体能力の全てを劇的に向上させて遅れ馳せながら戦闘へと突入した。
始まる前にエミリアにも補助魔法をかけておくべきだった。
悔やみつつも、そこは相手が上手だったと認めざるを得ない。
人質かと思っていた王様をあっさりと殺し、唐突に戦いを始めさせたのだ。
ホイムの視線は壁際に転がる王の体に向けられた。アリアスをはじめとした聖華騎士団に対し国を挙げて非道な行為をしていた相手だが、その心は姫という人質を利用した魔人に掌握されていた。虚ろになりながらも謝罪を繰り返していたのは、心の底では後悔していたからに違いない。
罪のないエミリアたちにしたことは到底すぐに許せるものではない。しかし彼だけを責めるのは難しいとホイムも理解していた。その代償が無造作に訪れた死というのも同情してしまう一因であった。
「……」
多くのものを犠牲にしてでも守りたかったお姫様……彼女を無事に救うことが彼の弔いになるかもしれないと思い、ホイムは改めて魔人との戦いに臨むのだった。
先行して飛び出したエミリアは既にバルバドに向け剣を振り下ろしていた。
数多くの魔物を粉砕してきた一撃が床を裂く。そこに魔人の姿はない。横目でその動きを追っていたエミリアは、変わらぬバルバドの薄ら笑いを睨みつけていた。
「たあッ!」
すかさず下方から斬り上げ追撃するも、ステッキで容易く受けられ刃が届くことはない。
「やはりお前の実力が最も厄介だな……良い斬撃を持っている!」
得物を拮抗させてくる彼女の体を蹴り壁際まで弾き飛ばし間合いを離す。魔人といえども筆頭騎士の近接戦には警戒をしていた。
もうひとり、子どもは何処へ行ったかと左目だけをギョロリと動かしその姿を探った。
天井である。
エミリアを迎え撃っていた隙に彼は高く飛び上がり、天井を足場にして更に壁へ向かい跳躍する。
「撹乱のつもりかな?」
エミリアを飛ばしたのとは逆側の壁に着地したホイムは、バルバドへ両手を向けた。
「キュア!」
さて何が飛び出してくるか。
回復呪文しか唱えないくせに様々な魔法を放つ珍妙な少年の攻撃を少しだけ楽しみにするバルバドは、笑みを貼り付けたまま身構えた。
しかし両手に魔力が集中するのみで肝心の魔法は放たれない。
前方を警戒していた魔人の背後から飛びかかるエミリアが剣を脳天目がけて突き下ろす。
「囮かぁ!」
振り向きざまに腕を振り回しエミリアの剣を弾き上げる。がら空きになった彼女のボディをステッキで打ち据える寸前、すかさず背を向けた魔人に接近したホイムの魔法が次こそ唱えられる。
「キュア【針雨】!」
至近距離で炸裂させるのは掌から散弾のように放たれる細く鋭い魔力弾の攻撃魔法。
当たれば体を粉々に穿つか、そうでなくとも無数の針に刺され痛手を負うはずであったが、魔力の弾丸が射出される寸前にバルバドの爪先がホイムの手を弾いた。
射出口は大きく逸れ、放たれた散弾は玉座の背後の壁を粉微塵に砕いた。そこに出来上がったバルコニーまで続く穴からは薄暗い空の景色が垣間見えた。
「いってぇ……!」
右手の甲を蹴られたホイムは背後に飛び退きながら手首を振った。魔法で強化を施していなければ間違いなく手首から先は千切れ飛んでいた。
「二人がかりなら」
完全に背を向けている好機。躊躇いのないエミリアの突きがバルバドの背中を強襲する。
「どうにかなると」
彼女は目を疑った。捉えたと思った背中が一瞬陽炎のように揺らめき、切っ先は魔人の脇の下をすり抜けていたからだ。
「思ってしまったか?」
瞬間、痛烈な肘打ちがエミリアの顔面を撃ち抜いた。
「ふむ?」
「お前たちは……聖華騎士団を潰し、獣王を殺し、竜を実験台にして、他にも色々暗躍してるんだろう」
「はて。何のことやら」
「確かにどれもこれも勇者たちの嫌がらせにはなってるかもしれない……間接的に。けどあいつらの道中、魔人がちょっかいをかけてきたこともない……直接手を出す気はないのか?」
瞳を僅かに細めたバルバドはホイムの質問に答えない。
「行く手を阻むつもりはないのか……? やつらの旅自体は拒まないと」
「少し喋りすぎたかな」
これまでの軽口は鳴りを潜め、至極真面目な口ぶりでホイムとエミリアを見据えてくる。
「もう少しお喋りに付き合えよ。答えてくれてもいいじゃないか」
「私を殺せたら教えてやろう」
話すつもりはもうない。戦いを始めようとその目は語っていた。
「ならその薄汚い手を王からどけろ。人質のつもりか」
エミリアの要求にバルバドは「はいはい」とお手上げの仕草をして両手を上げた。
その左手には引きちぎられた王の頭が握られて。
「おや。勢い余ってやってしまいました。これは困った」
対峙していた二人は一瞬、状況が呑み込めなかった。
視線の先には血をドプドプと吹き上がらせる王の体が、体だけが玉座にあった。
「ですがいいでしょう」
その手から首を放したバルバドが、右手のステッキで王だった者の頭を粉微塵に砕き飛ばした。
「人質はお姫様一人で充分。これの役目はもう終わり……」
バルバドは額を押さえてくぐもった笑いを漏らし、やがて高笑いへと変えていった。
「残念! この国の王様はもういなくなってしまいました! ハーハッハッハ――」
「――あああああッ!」
ホイムを置き去りにして駆け出したエミリアが剣を抜き放つ。
邪魔な王の体を横に蹴飛ばしたバルバドが不敵な笑みを浮かべながら彼女を迎え撃つ。
「っデュアルキュア【超絶強化】!」
出遅れたホイムは自身にハイアップの呪文をかけ、身体能力の全てを劇的に向上させて遅れ馳せながら戦闘へと突入した。
始まる前にエミリアにも補助魔法をかけておくべきだった。
悔やみつつも、そこは相手が上手だったと認めざるを得ない。
人質かと思っていた王様をあっさりと殺し、唐突に戦いを始めさせたのだ。
ホイムの視線は壁際に転がる王の体に向けられた。アリアスをはじめとした聖華騎士団に対し国を挙げて非道な行為をしていた相手だが、その心は姫という人質を利用した魔人に掌握されていた。虚ろになりながらも謝罪を繰り返していたのは、心の底では後悔していたからに違いない。
罪のないエミリアたちにしたことは到底すぐに許せるものではない。しかし彼だけを責めるのは難しいとホイムも理解していた。その代償が無造作に訪れた死というのも同情してしまう一因であった。
「……」
多くのものを犠牲にしてでも守りたかったお姫様……彼女を無事に救うことが彼の弔いになるかもしれないと思い、ホイムは改めて魔人との戦いに臨むのだった。
先行して飛び出したエミリアは既にバルバドに向け剣を振り下ろしていた。
数多くの魔物を粉砕してきた一撃が床を裂く。そこに魔人の姿はない。横目でその動きを追っていたエミリアは、変わらぬバルバドの薄ら笑いを睨みつけていた。
「たあッ!」
すかさず下方から斬り上げ追撃するも、ステッキで容易く受けられ刃が届くことはない。
「やはりお前の実力が最も厄介だな……良い斬撃を持っている!」
得物を拮抗させてくる彼女の体を蹴り壁際まで弾き飛ばし間合いを離す。魔人といえども筆頭騎士の近接戦には警戒をしていた。
もうひとり、子どもは何処へ行ったかと左目だけをギョロリと動かしその姿を探った。
天井である。
エミリアを迎え撃っていた隙に彼は高く飛び上がり、天井を足場にして更に壁へ向かい跳躍する。
「撹乱のつもりかな?」
エミリアを飛ばしたのとは逆側の壁に着地したホイムは、バルバドへ両手を向けた。
「キュア!」
さて何が飛び出してくるか。
回復呪文しか唱えないくせに様々な魔法を放つ珍妙な少年の攻撃を少しだけ楽しみにするバルバドは、笑みを貼り付けたまま身構えた。
しかし両手に魔力が集中するのみで肝心の魔法は放たれない。
前方を警戒していた魔人の背後から飛びかかるエミリアが剣を脳天目がけて突き下ろす。
「囮かぁ!」
振り向きざまに腕を振り回しエミリアの剣を弾き上げる。がら空きになった彼女のボディをステッキで打ち据える寸前、すかさず背を向けた魔人に接近したホイムの魔法が次こそ唱えられる。
「キュア【針雨】!」
至近距離で炸裂させるのは掌から散弾のように放たれる細く鋭い魔力弾の攻撃魔法。
当たれば体を粉々に穿つか、そうでなくとも無数の針に刺され痛手を負うはずであったが、魔力の弾丸が射出される寸前にバルバドの爪先がホイムの手を弾いた。
射出口は大きく逸れ、放たれた散弾は玉座の背後の壁を粉微塵に砕いた。そこに出来上がったバルコニーまで続く穴からは薄暗い空の景色が垣間見えた。
「いってぇ……!」
右手の甲を蹴られたホイムは背後に飛び退きながら手首を振った。魔法で強化を施していなければ間違いなく手首から先は千切れ飛んでいた。
「二人がかりなら」
完全に背を向けている好機。躊躇いのないエミリアの突きがバルバドの背中を強襲する。
「どうにかなると」
彼女は目を疑った。捉えたと思った背中が一瞬陽炎のように揺らめき、切っ先は魔人の脇の下をすり抜けていたからだ。
「思ってしまったか?」
瞬間、痛烈な肘打ちがエミリアの顔面を撃ち抜いた。
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