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王都フラシュ
ルカの場面
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市民と騎士を匿う家屋への襲撃を幾度も幾度も撃退していたルカは次第に疑問を抱き始めていた。
「ヒヒヒ、あそこだ!」
「騎士共を取り返すぜ!」
意気揚々と離れた屋根に上がってきた二匹のコボルトをぺぺっと下に蹴り落とす。
それなりに強い奴らは序盤に集中して来たので残ってやって来ているのはルカの相手にはならない弱い敵ばかりである。
「アソコ」
「アソコダ」
だが、いくら弱くとも数が多くては手がかかる。
今度は反対側の屋根に小柄なゴブリンが現れたのでルカはせっせと跳んでいって蹴り飛ばした。
「うぅ……多い!」
頭を抱えて大声で嘆いた。
この場を離れすぎるわけにはいかない。かといって現れた敵を潰しに行かなければどんどん大挙して手が回らなくなる。
一対一を得意としている上に気の短いルカの性根も相俟って防衛戦は不向きである。逆に段々と苛々が募って冷静さを欠いてしまい大きなミスに繋がりかねない。
今現在そうなっていないのは、大好きなホイムのために頑張っているからであった。
「あの女邪魔」
「だがあそこを守ってる」
「あそこにいるはず!」
そんな話し声が聞こえた後にまたしても現れる魔物の群れ。行ったり来たりに辟易するルカだったが、蹴落とさない訳にはいかない。
「グケー」
三匹まとめて蹴り落としたところで疲れの色を見せる。
「どうして全部ここ来るの……?」
いくらなんでも集まり過ぎだと感じたところで、彼女にしては珍しくハッと気付くものがあった。
さっきの魔物たちの会話である。
「分かった……! ルカが此処にいるからあいつらやって来る!」
自分が目印となっているせいで敵が寄ってくると理解したルカ。
今まで自分が警護していた建物の屋上から離れ、通りを挟んだ向かいの建物の屋上に陣取った。
「見ろ! あいつ向こうに行ったぞ!」
屋上に集まる魔物の一匹がルカが移動したのを見て騒ぐ。
「ルカ此処! お前らこっち来い!」
目論見通り敵の注意がルカの方へ向いてきた。更に気を引くべく手をブンブン振って存在をアピールしていく。
これで万事上手くいくと得意気になるルカであったが、
「……あいついなくなった」
「そこの建物からいなくなった」
「今なら攻め放題じゃね?」
その事に気付いた魔物たちはルカが警備を放棄した建物目がけて駆け出した。
「そっちじゃなあい!!」
目論見通りにいかなかったことに腹を立てたルカのドロップキックが屋根の上の魔物たちをまとめて吹き飛ばした。
「ンガー! どうしてこうなる!」
狙い通りにいかないことに地団駄を踏むルカであった。
そうやって少しずつストレスが蓄積していたところに、これまでとは違う者の接近を察した。
「ん……」
屋上から街の通りを見下ろすと、これまで撃退してきた魔物とは一線を画す巨体が空気を震わせながら歩いている。
足元にいる魔物を意に介さず踏み潰し、のしのしと迫る家屋ほどの全高を誇る敵を目撃したルカはニカッと笑った。
「ああいうのがいい! 分かりやすい!」
シュタッと地面に降りると魔物の前に立ちはだかる。
魔族の中で巨体と怪力を有するトロルという魔物であるが、種族名などルカは知らない。
ただ此処へ辿り着くのに結構な時間がかかるくらい足が遅いのと、五倍以上は身長が違うとにかく大きい相手だということだけは分かった。
小物をせっせと追い払うだけであったことに頭を悩ませていたところに大物の到来。やる気が溢れていた。
しかしながら、トロルにだけ気を取られてしまえば本末転倒である。
「あいつ離れた」
「今手薄」
ルカがトロルを食い止めようとしている間に、小物たちが建物の入口へ殺到しようとする。
「それダメ!」
慌てて駆け出したルカの前に、唸りを上げるトロルの豪腕が迫る。
地表を掠めて薙ぐような一撃が、地表を這うように滑走するルカの鼻先を通過していった。
チッと擦った鼻から血が吹き出すのを構わず走るルカが建物に群がる魔物を引き剥がし、蹴り飛ばしと我武者羅に追い払う。
「お前たち邪魔ッ!」
ルカの咆哮搏撃に気圧された魔物たちが怖気づいて後退る。
フンスと鼻を鳴らす彼女の前に群れの中から歩み出るのは、恐れることなく攻勢を仕掛けてきたトロルである。
豪と振り上げた腕が重圧を伴って真正面から襲撃してくる。サッと避けて反撃に転ずることは容易であったが、この位置で避けてしまえば背後の建物がどうなるかくらいルカにも理解できる。
なので彼女は腕を拡げ、その身で大きな拳を真っ向から受け止めた。
「んぎ!」
流石に衝撃は大したものだった。拳の威力を受け止めきれずに足元の石畳が陥没する。
「んぐぐぐぐ……!」
そのまま膝が折れてしまうかに思われたが、彼女がグイと体ごと腕を捻ると、トロルの巨体が宙を舞って地面に転がった。
地震と錯覚する振動に包まれる一帯の中、ルカは仁王立ちで背後の砦を守るのであった。
しかしながら徐々にルカも限界を感じ始めていた。素早い動きで攻めてくる敵を撃退していたが、数に頼った相手の攻勢がルカの守りを上回りだしていた。
「あっちからも、こっちからも!」
建物の上から、通りの角からうじゃうじゃと。そして大通りの向こうからは今転がしたものと同じ大きなトロルが数体迫ってきていた。
「……ちょっと多い」
少し愚痴を零したルカだが、それでも通りに立ちはだかって敵を押し止めようと迎え撃つ。
そんな彼女は背後から新たに迫る音に耳を立てた。
後ろから敵が来るなら厄介だなと思いつつ肩越しに視線を送り、そして見えた光景に目を丸くした。
そこへ姿を見せたのは、彼女が見たことのあるような鎧を身につけた……。
「ヒヒヒ、あそこだ!」
「騎士共を取り返すぜ!」
意気揚々と離れた屋根に上がってきた二匹のコボルトをぺぺっと下に蹴り落とす。
それなりに強い奴らは序盤に集中して来たので残ってやって来ているのはルカの相手にはならない弱い敵ばかりである。
「アソコ」
「アソコダ」
だが、いくら弱くとも数が多くては手がかかる。
今度は反対側の屋根に小柄なゴブリンが現れたのでルカはせっせと跳んでいって蹴り飛ばした。
「うぅ……多い!」
頭を抱えて大声で嘆いた。
この場を離れすぎるわけにはいかない。かといって現れた敵を潰しに行かなければどんどん大挙して手が回らなくなる。
一対一を得意としている上に気の短いルカの性根も相俟って防衛戦は不向きである。逆に段々と苛々が募って冷静さを欠いてしまい大きなミスに繋がりかねない。
今現在そうなっていないのは、大好きなホイムのために頑張っているからであった。
「あの女邪魔」
「だがあそこを守ってる」
「あそこにいるはず!」
そんな話し声が聞こえた後にまたしても現れる魔物の群れ。行ったり来たりに辟易するルカだったが、蹴落とさない訳にはいかない。
「グケー」
三匹まとめて蹴り落としたところで疲れの色を見せる。
「どうして全部ここ来るの……?」
いくらなんでも集まり過ぎだと感じたところで、彼女にしては珍しくハッと気付くものがあった。
さっきの魔物たちの会話である。
「分かった……! ルカが此処にいるからあいつらやって来る!」
自分が目印となっているせいで敵が寄ってくると理解したルカ。
今まで自分が警護していた建物の屋上から離れ、通りを挟んだ向かいの建物の屋上に陣取った。
「見ろ! あいつ向こうに行ったぞ!」
屋上に集まる魔物の一匹がルカが移動したのを見て騒ぐ。
「ルカ此処! お前らこっち来い!」
目論見通り敵の注意がルカの方へ向いてきた。更に気を引くべく手をブンブン振って存在をアピールしていく。
これで万事上手くいくと得意気になるルカであったが、
「……あいついなくなった」
「そこの建物からいなくなった」
「今なら攻め放題じゃね?」
その事に気付いた魔物たちはルカが警備を放棄した建物目がけて駆け出した。
「そっちじゃなあい!!」
目論見通りにいかなかったことに腹を立てたルカのドロップキックが屋根の上の魔物たちをまとめて吹き飛ばした。
「ンガー! どうしてこうなる!」
狙い通りにいかないことに地団駄を踏むルカであった。
そうやって少しずつストレスが蓄積していたところに、これまでとは違う者の接近を察した。
「ん……」
屋上から街の通りを見下ろすと、これまで撃退してきた魔物とは一線を画す巨体が空気を震わせながら歩いている。
足元にいる魔物を意に介さず踏み潰し、のしのしと迫る家屋ほどの全高を誇る敵を目撃したルカはニカッと笑った。
「ああいうのがいい! 分かりやすい!」
シュタッと地面に降りると魔物の前に立ちはだかる。
魔族の中で巨体と怪力を有するトロルという魔物であるが、種族名などルカは知らない。
ただ此処へ辿り着くのに結構な時間がかかるくらい足が遅いのと、五倍以上は身長が違うとにかく大きい相手だということだけは分かった。
小物をせっせと追い払うだけであったことに頭を悩ませていたところに大物の到来。やる気が溢れていた。
しかしながら、トロルにだけ気を取られてしまえば本末転倒である。
「あいつ離れた」
「今手薄」
ルカがトロルを食い止めようとしている間に、小物たちが建物の入口へ殺到しようとする。
「それダメ!」
慌てて駆け出したルカの前に、唸りを上げるトロルの豪腕が迫る。
地表を掠めて薙ぐような一撃が、地表を這うように滑走するルカの鼻先を通過していった。
チッと擦った鼻から血が吹き出すのを構わず走るルカが建物に群がる魔物を引き剥がし、蹴り飛ばしと我武者羅に追い払う。
「お前たち邪魔ッ!」
ルカの咆哮搏撃に気圧された魔物たちが怖気づいて後退る。
フンスと鼻を鳴らす彼女の前に群れの中から歩み出るのは、恐れることなく攻勢を仕掛けてきたトロルである。
豪と振り上げた腕が重圧を伴って真正面から襲撃してくる。サッと避けて反撃に転ずることは容易であったが、この位置で避けてしまえば背後の建物がどうなるかくらいルカにも理解できる。
なので彼女は腕を拡げ、その身で大きな拳を真っ向から受け止めた。
「んぎ!」
流石に衝撃は大したものだった。拳の威力を受け止めきれずに足元の石畳が陥没する。
「んぐぐぐぐ……!」
そのまま膝が折れてしまうかに思われたが、彼女がグイと体ごと腕を捻ると、トロルの巨体が宙を舞って地面に転がった。
地震と錯覚する振動に包まれる一帯の中、ルカは仁王立ちで背後の砦を守るのであった。
しかしながら徐々にルカも限界を感じ始めていた。素早い動きで攻めてくる敵を撃退していたが、数に頼った相手の攻勢がルカの守りを上回りだしていた。
「あっちからも、こっちからも!」
建物の上から、通りの角からうじゃうじゃと。そして大通りの向こうからは今転がしたものと同じ大きなトロルが数体迫ってきていた。
「……ちょっと多い」
少し愚痴を零したルカだが、それでも通りに立ちはだかって敵を押し止めようと迎え撃つ。
そんな彼女は背後から新たに迫る音に耳を立てた。
後ろから敵が来るなら厄介だなと思いつつ肩越しに視線を送り、そして見えた光景に目を丸くした。
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