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祭りと火照り 2/3
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「お祭り一緒に回らない……?」
その言葉が頭の中でループして、落ち着かない日々が続いていた。
夕日坂さんのことだ、深い意味は無いと思う。お礼にって言ってたけれど、普段からお世話になっているのは僕の方だし、正直意図が読めないのも確かだ。
だけど、それ以上に問題なのは……僕が女性と二人きりで出かけるのが初めてと言う事だ。
これは所謂デートと呼ばれるものなのだろうか。いや、デートって定義がそもそも分からない。服装もどうしたらいいか悩んで、結局普段着。
ああ、こんな事なら女の子と1度くらいお付き合いをしておくべきだった。
なんて事を考えながら、居る場所は待ち合わせ場所である駅前。日も傾き始め、普段は人気のないこの辺りも浴衣を着た人で賑わい始めていた。
待ち合わせ時間よりだいぶ早くついてしまった僕はそんな中、未だに思考を巡らせていた。
が、そんな物をすべて吹き飛ばしてしまう程の衝撃が走る。
「ごめんなさい、遅くなって……」
夕日坂さんだ。長い髪を結い上げ、濃紺で綿密な模様のある浴衣を着て現れた。
襟から覗くうなじは少し汗が滲んでいて、色っぽい。高鳴る鼓動を必死に抑えながら出た言葉は。
「とても似合ってますね」
だけだった。いや、それ以外に言葉が見つからなかった。それほどまでに彼女の姿は良い意味で痺れたのだ。
「ありがとう、朝川くん。そう言ってもらえて嬉しいわ」
笑顔が素敵な夕日坂さんはいつもと変わらない口調で応える。
鼓動は依然変わらない。何だこれ、何だこれ……。
「じゃあ、行きましょうか。このお祭り、結構混むんですよ」
動揺と呼べばいいのだろうか、そんな不可思議な感情を抑えながら彼女に告げる。
「ふふ、楽しみね」
夕日坂さんがそう答えたのを確認し、商店街へとあるき出した。
祭りというものは総じて熱気を帯びやすい、規模はどうであれそれは変わらないものだ。
「みて、朝川君! 金魚すくいに射的! それから……りんご飴!」
この、子供の様にはしゃぐ夕日坂さんを見てより一層そう思うのだ。
というか、誰だ。本当にいつもの夕日坂さん? 双子か、双子なのか?
そんな猜疑心は商店街の端に目を向ければ一瞬で晴れるのだけど、なんとも言えない感覚が僕を襲う。
そう、可愛いのだ。とにかく可愛い。
「そうですね」
なんて、気取って返してみるもののその実はまるで小動物を見ているかのようにほんわかとした気分だ。
「朝川君?」
「あ! はい!」
名前を呼ばれて、我に返る。顔を向けた先にはおおよそ、古物店を営んでいるとは思えない美人がいる。
「ごめんね、本当ならこんなおばさんより千波さんぐらい若い子のほうがいいよね」
少し俯く彼女に僕は思い切り首を横に振る。
「全然そんな事ありませんよ! その……夕日坂さんも十分綺麗ですし、若いと思います」
リア充め。そんな台詞が聞こえた気がしたが、そうじゃない。大体、この人を見て綺麗だとか美しいとか思わない人がいるのかどうか……。大多数の人は言うだろう。
「そっか、ありがとうね朝川君。じゃあ次の屋台にいきましょう」
振り返る彼女の頬が赤みを帯びている気がしたように見えたのは、夏の魔法とやらだろうか。それとも、都合のいい男の解釈か。
まあどちらにしても、今はお祭りを楽しもう。ここいらじゃこれくらいしか楽しいイベントも無いんだから。
そう心に言い聞かせて、僕は彼女の後を追った。
To Be continued……
その言葉が頭の中でループして、落ち着かない日々が続いていた。
夕日坂さんのことだ、深い意味は無いと思う。お礼にって言ってたけれど、普段からお世話になっているのは僕の方だし、正直意図が読めないのも確かだ。
だけど、それ以上に問題なのは……僕が女性と二人きりで出かけるのが初めてと言う事だ。
これは所謂デートと呼ばれるものなのだろうか。いや、デートって定義がそもそも分からない。服装もどうしたらいいか悩んで、結局普段着。
ああ、こんな事なら女の子と1度くらいお付き合いをしておくべきだった。
なんて事を考えながら、居る場所は待ち合わせ場所である駅前。日も傾き始め、普段は人気のないこの辺りも浴衣を着た人で賑わい始めていた。
待ち合わせ時間よりだいぶ早くついてしまった僕はそんな中、未だに思考を巡らせていた。
が、そんな物をすべて吹き飛ばしてしまう程の衝撃が走る。
「ごめんなさい、遅くなって……」
夕日坂さんだ。長い髪を結い上げ、濃紺で綿密な模様のある浴衣を着て現れた。
襟から覗くうなじは少し汗が滲んでいて、色っぽい。高鳴る鼓動を必死に抑えながら出た言葉は。
「とても似合ってますね」
だけだった。いや、それ以外に言葉が見つからなかった。それほどまでに彼女の姿は良い意味で痺れたのだ。
「ありがとう、朝川くん。そう言ってもらえて嬉しいわ」
笑顔が素敵な夕日坂さんはいつもと変わらない口調で応える。
鼓動は依然変わらない。何だこれ、何だこれ……。
「じゃあ、行きましょうか。このお祭り、結構混むんですよ」
動揺と呼べばいいのだろうか、そんな不可思議な感情を抑えながら彼女に告げる。
「ふふ、楽しみね」
夕日坂さんがそう答えたのを確認し、商店街へとあるき出した。
祭りというものは総じて熱気を帯びやすい、規模はどうであれそれは変わらないものだ。
「みて、朝川君! 金魚すくいに射的! それから……りんご飴!」
この、子供の様にはしゃぐ夕日坂さんを見てより一層そう思うのだ。
というか、誰だ。本当にいつもの夕日坂さん? 双子か、双子なのか?
そんな猜疑心は商店街の端に目を向ければ一瞬で晴れるのだけど、なんとも言えない感覚が僕を襲う。
そう、可愛いのだ。とにかく可愛い。
「そうですね」
なんて、気取って返してみるもののその実はまるで小動物を見ているかのようにほんわかとした気分だ。
「朝川君?」
「あ! はい!」
名前を呼ばれて、我に返る。顔を向けた先にはおおよそ、古物店を営んでいるとは思えない美人がいる。
「ごめんね、本当ならこんなおばさんより千波さんぐらい若い子のほうがいいよね」
少し俯く彼女に僕は思い切り首を横に振る。
「全然そんな事ありませんよ! その……夕日坂さんも十分綺麗ですし、若いと思います」
リア充め。そんな台詞が聞こえた気がしたが、そうじゃない。大体、この人を見て綺麗だとか美しいとか思わない人がいるのかどうか……。大多数の人は言うだろう。
「そっか、ありがとうね朝川君。じゃあ次の屋台にいきましょう」
振り返る彼女の頬が赤みを帯びている気がしたように見えたのは、夏の魔法とやらだろうか。それとも、都合のいい男の解釈か。
まあどちらにしても、今はお祭りを楽しもう。ここいらじゃこれくらいしか楽しいイベントも無いんだから。
そう心に言い聞かせて、僕は彼女の後を追った。
To Be continued……
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