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第12話『屋根裏にいるもの』
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私の家は、くちなし町の外れにある築六十年の古い家だ。
祖父母が建て、そのまま両親が住み、私が生まれた。
子供の頃から慣れ親しんだこの家には、昔から妙なところがあった。
夜中に、屋根裏から誰かが歩くような音がする。
コトリ、コトリ、と何かが転がる音。
ギシギシと床板を踏む重み。
けれど両親は「ネズミだよ」と言って取り合わなかった。
私もいつしか気にしなくなっていた。
けれど、ある夜のことだった。
*
その日はやけに蒸し暑く、夜中に目が覚めてしまった。
布団を抜け出して台所に水を飲みに行き、ふと廊下を見た。
屋根裏へ上がる梯子が、少しだけ降りていた。
普段は押し上げて収納してあるはずの梯子だ。
誰が触ったのか――そもそも夜中に。
背筋が冷たくなる。
だが、確かめなければもっと怖くなる気がした。
私はゆっくりと梯子を引き伸ばし、懐中電灯を手に屋根裏へ登った。
*
屋根裏は低く狭く、埃と古い木の匂いが満ちていた。
電気はなく、懐中電灯の光だけが頼りだった。
梁の間に、古い段ボールや壊れた家具が積まれている。
ふと視界の端で何かが動いた気がした。
灯りを向ける。
だがそこには、古い子供用の小さな椅子があるだけだった。
その椅子の座面に、埃を払った跡があった。
まるで誰かが、そこに腰掛けていたかのように。
心臓が強く打つ。
帰ろう。
そう思って梯子へ戻ろうとしたとき、背後でギシリと木が鳴った。
振り返る。
何もいなかった。
……いや。
小さな息づかいが聞こえた。
暗闇の奥から、微かに湿った音が響いてくる。
「……だれ?」
思わず声を出した。
返事はなかった。
だが、その代わりに――
屋根裏のいちばん奥、暗闇の中で、小さな白い顔がこちらを覗いていた。
幼い女の子のようだった。
髪がぼさぼさで、顔は真っ白で、目だけが異様に黒かった。
私は悲鳴をあげて梯子を駆け下りた。
*
次の日、父に頼んで屋根裏を見てもらった。
だが、父は「何もなかった」と言った。
ただ埃まみれの古い家財があるだけだと。
けれど夜になると、再び音がした。
コトリ、コトリ、と何かが転がる音。
そのあとに、小さく軋むような声がした。
「……ここ……いる……」
私は布団を頭までかぶり、耳を塞いだ。
それから数日、音は続いた。
*
ある朝、目を覚ますと、枕元に何かが置かれていた。
小さな木の人形だった。
埃をかぶっていたが、どこかで見た気がする。
思い出した。
あれは屋根裏にあった、壊れた家具の上に積まれていたもののひとつ。
それが、なぜ――。
私はもう屋根裏には上がらない。
だが夜になると、今も天井から微かに聞こえる。
小さな足音が。
「……まだ いるよ……」
そう、屋根裏の暗い奥で。
祖父母が建て、そのまま両親が住み、私が生まれた。
子供の頃から慣れ親しんだこの家には、昔から妙なところがあった。
夜中に、屋根裏から誰かが歩くような音がする。
コトリ、コトリ、と何かが転がる音。
ギシギシと床板を踏む重み。
けれど両親は「ネズミだよ」と言って取り合わなかった。
私もいつしか気にしなくなっていた。
けれど、ある夜のことだった。
*
その日はやけに蒸し暑く、夜中に目が覚めてしまった。
布団を抜け出して台所に水を飲みに行き、ふと廊下を見た。
屋根裏へ上がる梯子が、少しだけ降りていた。
普段は押し上げて収納してあるはずの梯子だ。
誰が触ったのか――そもそも夜中に。
背筋が冷たくなる。
だが、確かめなければもっと怖くなる気がした。
私はゆっくりと梯子を引き伸ばし、懐中電灯を手に屋根裏へ登った。
*
屋根裏は低く狭く、埃と古い木の匂いが満ちていた。
電気はなく、懐中電灯の光だけが頼りだった。
梁の間に、古い段ボールや壊れた家具が積まれている。
ふと視界の端で何かが動いた気がした。
灯りを向ける。
だがそこには、古い子供用の小さな椅子があるだけだった。
その椅子の座面に、埃を払った跡があった。
まるで誰かが、そこに腰掛けていたかのように。
心臓が強く打つ。
帰ろう。
そう思って梯子へ戻ろうとしたとき、背後でギシリと木が鳴った。
振り返る。
何もいなかった。
……いや。
小さな息づかいが聞こえた。
暗闇の奥から、微かに湿った音が響いてくる。
「……だれ?」
思わず声を出した。
返事はなかった。
だが、その代わりに――
屋根裏のいちばん奥、暗闇の中で、小さな白い顔がこちらを覗いていた。
幼い女の子のようだった。
髪がぼさぼさで、顔は真っ白で、目だけが異様に黒かった。
私は悲鳴をあげて梯子を駆け下りた。
*
次の日、父に頼んで屋根裏を見てもらった。
だが、父は「何もなかった」と言った。
ただ埃まみれの古い家財があるだけだと。
けれど夜になると、再び音がした。
コトリ、コトリ、と何かが転がる音。
そのあとに、小さく軋むような声がした。
「……ここ……いる……」
私は布団を頭までかぶり、耳を塞いだ。
それから数日、音は続いた。
*
ある朝、目を覚ますと、枕元に何かが置かれていた。
小さな木の人形だった。
埃をかぶっていたが、どこかで見た気がする。
思い出した。
あれは屋根裏にあった、壊れた家具の上に積まれていたもののひとつ。
それが、なぜ――。
私はもう屋根裏には上がらない。
だが夜になると、今も天井から微かに聞こえる。
小さな足音が。
「……まだ いるよ……」
そう、屋根裏の暗い奥で。
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