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第15話『消えた呼び鈴』
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くちなし町の南側には、今はもう誰も住んでいない古い長屋が並んでいる。
朽ちた木造の家々が軒を連ね、屋根は崩れかけ、通りには雑草が伸び放題だった。
私の友人が、その通りにあった家を改装して住もうとしていた。
築年数は古いが、間取りは広く、家賃も破格。
最近ようやく引っ越しを終えたというので、私は遊びに行くことになった。
その家には、妙な特徴があった。
玄関の横に、今は外されて使えなくなった呼び鈴の跡がある。
丸いボタンだけが、壁にぽつんと残っていた。
「これ押すと鳴るんじゃない?」
冗談めかしてそう言うと、友人は少しだけ顔を強ばらせた。
「やめとけって。不動産屋も言ってたんだ。
それ、ずいぶん前に取り外したはずなのに、夜になると鳴ることがあるって」
私は笑った。
「まさか。オバケの話かよ」
だが、友人は真剣な顔で言った。
「夜中に玄関先で、ピンポンって鳴ったら……絶対に出るなってさ」
*
夜、遅くまで映画を見て、私はそのまま泊まることになった。
深夜二時を過ぎ、静かな寝室に友人の寝息だけが響いていた。
窓の外では虫の声がしていた。
そのとき――
「ピンポーン」
玄関の方から、電子音が聞こえた。
私は息を呑んだ。
確かに呼び鈴は外されているはずだった。
それなのに、はっきりとした電子チャイムの音が鳴った。
友人は眠ったままだった。
もう一度、呼び鈴の音が鳴った。
「ピンポーン」
私は布団を抜け出し、そっと廊下を歩いて玄関まで行った。
ドアの向こうに誰かが立っている気配がした。
玄関扉の下の小さな郵便受けの隙間から、冷たい空気が流れ込んできた。
覗こうとして、私は思いとどまった。
ドアの向こうで、誰かが小さく笑った。
「……開けて」
女の声だった。
静かに、囁くように。
私は無理やり息を押し殺し、そっと寝室へ戻った。
*
朝になり、友人に夜中のことを話した。
友人は顔色を変え、玄関の外を確認しに行った。
戻ってきたとき、その手には小さな白い封筒が握られていた。
封筒の表には何も書かれていなかった。
開けると、中には一言だけ。
「やっと みつけた」
友人は唇を噛み、震える声で言った。
「昨日、不動産屋が言ってたんだ。
この家、昔住んでた女性が行方不明になって……それからずっと夜中になると呼び鈴が鳴るって」
私はその紙をそっと返した。
それ以来、私は友人の家には泊まらない。
そして時々思い出す。
あの夜、ドアの向こうで女が笑っていた声を
朽ちた木造の家々が軒を連ね、屋根は崩れかけ、通りには雑草が伸び放題だった。
私の友人が、その通りにあった家を改装して住もうとしていた。
築年数は古いが、間取りは広く、家賃も破格。
最近ようやく引っ越しを終えたというので、私は遊びに行くことになった。
その家には、妙な特徴があった。
玄関の横に、今は外されて使えなくなった呼び鈴の跡がある。
丸いボタンだけが、壁にぽつんと残っていた。
「これ押すと鳴るんじゃない?」
冗談めかしてそう言うと、友人は少しだけ顔を強ばらせた。
「やめとけって。不動産屋も言ってたんだ。
それ、ずいぶん前に取り外したはずなのに、夜になると鳴ることがあるって」
私は笑った。
「まさか。オバケの話かよ」
だが、友人は真剣な顔で言った。
「夜中に玄関先で、ピンポンって鳴ったら……絶対に出るなってさ」
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夜、遅くまで映画を見て、私はそのまま泊まることになった。
深夜二時を過ぎ、静かな寝室に友人の寝息だけが響いていた。
窓の外では虫の声がしていた。
そのとき――
「ピンポーン」
玄関の方から、電子音が聞こえた。
私は息を呑んだ。
確かに呼び鈴は外されているはずだった。
それなのに、はっきりとした電子チャイムの音が鳴った。
友人は眠ったままだった。
もう一度、呼び鈴の音が鳴った。
「ピンポーン」
私は布団を抜け出し、そっと廊下を歩いて玄関まで行った。
ドアの向こうに誰かが立っている気配がした。
玄関扉の下の小さな郵便受けの隙間から、冷たい空気が流れ込んできた。
覗こうとして、私は思いとどまった。
ドアの向こうで、誰かが小さく笑った。
「……開けて」
女の声だった。
静かに、囁くように。
私は無理やり息を押し殺し、そっと寝室へ戻った。
*
朝になり、友人に夜中のことを話した。
友人は顔色を変え、玄関の外を確認しに行った。
戻ってきたとき、その手には小さな白い封筒が握られていた。
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開けると、中には一言だけ。
「やっと みつけた」
友人は唇を噛み、震える声で言った。
「昨日、不動産屋が言ってたんだ。
この家、昔住んでた女性が行方不明になって……それからずっと夜中になると呼び鈴が鳴るって」
私はその紙をそっと返した。
それ以来、私は友人の家には泊まらない。
そして時々思い出す。
あの夜、ドアの向こうで女が笑っていた声を
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