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第16話『閉店後のコンビニ』
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くちなし町の中心街に、一軒だけ24時間営業ではないコンビニがある。
古い個人経営のような店舗で、夜の十一時にはきっちりシャッターを閉める。
周囲のチェーン店が深夜営業を始める中、そこだけはずっと変わらなかった。
だが、このコンビニには不思議な噂があった。
「夜中の二時に行くと、閉店してるはずの自動ドアが開いてるんだって」
友達がそう話した。
「それで、ふつうに店内の蛍光灯がついてて、レジにも誰かが立ってるの」
「でもそれ入ったら最後だよ。次の日、その人……」
そこで友達は口をつぐみ、ふっと目を逸らした。
「何?」
「いや、やっぱいいわ。冗談だから」
その言い方が気味悪くて、逆に気になった。
*
それから数日後、私は塾の帰りにそのコンビニの前を通りかかった。
時計はちょうど夜中の一時五十五分。
「どうせ、ただの怪談だろう」
そう思って少し待ってみることにした。
二時を少し過ぎたころ、目の前の自動ドアが音もなく開いた。
中は明るく、店内は営業中と変わらない光景だった。
棚には商品が並び、レジの奥には青い制服を着た店員が立っていた。
けれど何かがおかしかった。
棚の商品がどれも一昔前のパッケージなのだ。
紙パックのデザイン、見慣れない古いメーカーのロゴ、どこか黄ばんだ色合い。
私はおそるおそる一歩踏み入れた。
自動ドアが背後で閉まる音がした。
*
店員は無言でこちらを見つめていた。
顔が、見えない。
制服の襟から上が、霧のようにぼやけていて、目も鼻も口もなかった。
私は冷や汗が流れるのを感じた。
急いでUターンしようとしたそのとき。
「……いらっしゃいませ」
耳元で声がした。
振り返ると、店員がいつの間にか真後ろに立っていた。
ぼんやりした顔がすぐ目の前にあった。
私は悲鳴をあげて駆け出し、自動ドアを突き破るようにして外に飛び出した。
気がつくと、コンビニの店先にはシャッターが下ろされていた。
あの明るい光は、どこにもなかった。
*
家に帰り、胸を撫で下ろしたのも束の間。
ズボンのポケットの中に、何かが入っているのに気づいた。
取り出すと、それは小さなレシートだった。
印字はかすれていたが、最後にこう書かれていた。
【お買い上げありがとうございます】
お客様番号:000000
次は あなたが レジに立つ番です
レシートは冷たく湿っていて、まるでさっきまで冷蔵棚にあったもののようだった。
*
その日から、夜中に目を覚ますと、家の廊下の奥がぼんやり明るいことがある。
そこは台所へ続くただの暗い廊下のはずなのに。
まるで、あの店内の蛍光灯がついているかのように。
私はその光を見るたび、布団の中で固まっている。
もし立ち上がり、その明かりへ足を踏み入れたら――
次にレジに立つのは、きっと私なのだろう。
古い個人経営のような店舗で、夜の十一時にはきっちりシャッターを閉める。
周囲のチェーン店が深夜営業を始める中、そこだけはずっと変わらなかった。
だが、このコンビニには不思議な噂があった。
「夜中の二時に行くと、閉店してるはずの自動ドアが開いてるんだって」
友達がそう話した。
「それで、ふつうに店内の蛍光灯がついてて、レジにも誰かが立ってるの」
「でもそれ入ったら最後だよ。次の日、その人……」
そこで友達は口をつぐみ、ふっと目を逸らした。
「何?」
「いや、やっぱいいわ。冗談だから」
その言い方が気味悪くて、逆に気になった。
*
それから数日後、私は塾の帰りにそのコンビニの前を通りかかった。
時計はちょうど夜中の一時五十五分。
「どうせ、ただの怪談だろう」
そう思って少し待ってみることにした。
二時を少し過ぎたころ、目の前の自動ドアが音もなく開いた。
中は明るく、店内は営業中と変わらない光景だった。
棚には商品が並び、レジの奥には青い制服を着た店員が立っていた。
けれど何かがおかしかった。
棚の商品がどれも一昔前のパッケージなのだ。
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私はおそるおそる一歩踏み入れた。
自動ドアが背後で閉まる音がした。
*
店員は無言でこちらを見つめていた。
顔が、見えない。
制服の襟から上が、霧のようにぼやけていて、目も鼻も口もなかった。
私は冷や汗が流れるのを感じた。
急いでUターンしようとしたそのとき。
「……いらっしゃいませ」
耳元で声がした。
振り返ると、店員がいつの間にか真後ろに立っていた。
ぼんやりした顔がすぐ目の前にあった。
私は悲鳴をあげて駆け出し、自動ドアを突き破るようにして外に飛び出した。
気がつくと、コンビニの店先にはシャッターが下ろされていた。
あの明るい光は、どこにもなかった。
*
家に帰り、胸を撫で下ろしたのも束の間。
ズボンのポケットの中に、何かが入っているのに気づいた。
取り出すと、それは小さなレシートだった。
印字はかすれていたが、最後にこう書かれていた。
【お買い上げありがとうございます】
お客様番号:000000
次は あなたが レジに立つ番です
レシートは冷たく湿っていて、まるでさっきまで冷蔵棚にあったもののようだった。
*
その日から、夜中に目を覚ますと、家の廊下の奥がぼんやり明るいことがある。
そこは台所へ続くただの暗い廊下のはずなのに。
まるで、あの店内の蛍光灯がついているかのように。
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もし立ち上がり、その明かりへ足を踏み入れたら――
次にレジに立つのは、きっと私なのだろう。
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