くちなし町、夜の記録

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第16話『閉店後のコンビニ』

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くちなし町の中心街に、一軒だけ24時間営業ではないコンビニがある。
古い個人経営のような店舗で、夜の十一時にはきっちりシャッターを閉める。

周囲のチェーン店が深夜営業を始める中、そこだけはずっと変わらなかった。

だが、このコンビニには不思議な噂があった。

「夜中の二時に行くと、閉店してるはずの自動ドアが開いてるんだって」

友達がそう話した。

「それで、ふつうに店内の蛍光灯がついてて、レジにも誰かが立ってるの」

「でもそれ入ったら最後だよ。次の日、その人……」

そこで友達は口をつぐみ、ふっと目を逸らした。

「何?」

「いや、やっぱいいわ。冗談だから」

その言い方が気味悪くて、逆に気になった。



それから数日後、私は塾の帰りにそのコンビニの前を通りかかった。

時計はちょうど夜中の一時五十五分。

「どうせ、ただの怪談だろう」

そう思って少し待ってみることにした。

二時を少し過ぎたころ、目の前の自動ドアが音もなく開いた。

中は明るく、店内は営業中と変わらない光景だった。

棚には商品が並び、レジの奥には青い制服を着た店員が立っていた。

けれど何かがおかしかった。

棚の商品がどれも一昔前のパッケージなのだ。

紙パックのデザイン、見慣れない古いメーカーのロゴ、どこか黄ばんだ色合い。

私はおそるおそる一歩踏み入れた。

自動ドアが背後で閉まる音がした。



店員は無言でこちらを見つめていた。

顔が、見えない。

制服の襟から上が、霧のようにぼやけていて、目も鼻も口もなかった。

私は冷や汗が流れるのを感じた。

急いでUターンしようとしたそのとき。

「……いらっしゃいませ」

耳元で声がした。

振り返ると、店員がいつの間にか真後ろに立っていた。

ぼんやりした顔がすぐ目の前にあった。

私は悲鳴をあげて駆け出し、自動ドアを突き破るようにして外に飛び出した。

気がつくと、コンビニの店先にはシャッターが下ろされていた。

あの明るい光は、どこにもなかった。



家に帰り、胸を撫で下ろしたのも束の間。

ズボンのポケットの中に、何かが入っているのに気づいた。

取り出すと、それは小さなレシートだった。

印字はかすれていたが、最後にこう書かれていた。

【お買い上げありがとうございます】
お客様番号:000000
次は あなたが レジに立つ番です

レシートは冷たく湿っていて、まるでさっきまで冷蔵棚にあったもののようだった。



その日から、夜中に目を覚ますと、家の廊下の奥がぼんやり明るいことがある。

そこは台所へ続くただの暗い廊下のはずなのに。

まるで、あの店内の蛍光灯がついているかのように。

私はその光を見るたび、布団の中で固まっている。

もし立ち上がり、その明かりへ足を踏み入れたら――
次にレジに立つのは、きっと私なのだろう。
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