1 / 23
第1話『断罪の宴、冷たい瞳の王子』
しおりを挟むそれは、春の訪れを告げる宮中舞踏会の夜だった。
シャンデリアの光が揺れ、絢爛なドレスの裾が床を撫でる。王族、貴族、聖職者たちが一堂に会し、祝福と華やぎの空気が場を満たしていた。
――だが、アメリア=ローゼンベルクは、その中央に立ち尽くしていた。
「アメリア=ローゼンベルク。お前との婚約を、この場をもって破棄する」
王太子レオン=ヴァルトハイムの声が響いた瞬間、宮廷内に静寂が走った。
「な……」
信じられないというようにアメリアは小さく呟いた。だが、その言葉が終わるよりも早く、レオンは冷たい視線を向け、追い討ちをかけた。
「聖女としての資質を偽り、王家を欺いた罪。これは国に対する裏切りであり、決して許されるものではない」
「待って……それは誤解です。私には聖女としての資格があり――」
「ならば証明してみろ。聖女の加護を、この場で使ってみせろ。誰の助けもなく、今すぐにだ」
アメリアは震えながらも指先に力を込めた。だが――何も起きなかった。
空気が冷たくなる。貴族たちの嘲笑、誰かの笑い声、そして彼女に向けられる哀れみと蔑みの眼差し。
「見ろ。何も起きない。やはり、お前は偽物だったのだな」
王太子の背後には、紅いドレスを身に纏った少女――リディア=クロフォードの姿があった。彼女は静かに微笑み、すべてが“仕組まれていた”ことを物語っていた。
アメリアは息を飲んだ。何度も神殿に通い、祈りを捧げ、王家の未来を支えるために尽くしてきた自分が、なぜこのような断罪を受けねばならないのか。
――わたしが偽物? そんなはずがない。
――これは、罠だ。
だが、それを証明する手段はもうなかった。あらゆる証人は買収され、証拠は消され、声を上げる者は一人もいない。
「本日をもって、ローゼンベルク侯爵家は聖女の血統から除籍される。貴族の身分も剥奪だ。出ていけ、偽りの聖女よ」
護衛兵が歩み寄る。サラ=ミルシュタインが駆け寄ろうとするも、他の侍女たちに止められた。
アメリアは背筋を伸ばし、ただ一言、呟いた。
「……覚えておいてください。私は、あなたたちを決して許しません」
その瞳には、凍てつくような決意が宿っていた。
あとがき
ここから彼女の“ざまぁ”と“逆転劇”が始まります。
聖女として失墜し、令嬢としても追放されたアメリアは、復讐と再起のために歩み出します。
📢 応援のお願い
いいね・感想・フォローをぜひお願いします! あなたの応援がアメリアの力になります。
10
あなたにおすすめの小説
捨てられ侯爵令嬢ですが、逃亡先で息子と幸せに過ごしていますので、邪魔しないでください。
蒼月柚希
恋愛
公爵様の呪いは解かれました。
これで、貴方も私も自由です。
……だから、もういいですよね?
私も、自由にして……。
5年後。
私は、ある事情から生まれ育った祖国を離れ、
親切な冒険者パーティーと、その地を治める辺境伯様のご家族に守られながら、
今日も幸せに子育てをしています。
だから貴方も勝手に、お幸せになってくださいね。
私のことは忘れて……。
これは、お互いの思いがこじれ、離れ離れになってしまった一組の夫婦の物語。
はたして、夫婦は無事に、離婚を回避することができるのか?
転生皇女セラフィナ
秋月真鳥
恋愛
公爵家のメイド・クラリッサは、幼い主君アルベルトを庇って十五歳で命を落とした。
目覚めたとき、彼女は皇女セラフィナとして生まれ変わっていた——死の、わずか翌日に。
赤ん坊の身体に十五歳の記憶を持ったまま、セラフィナは新しい人生を歩み始める。
皇帝に溺愛され、優しい母に抱かれ、兄に慈しまれる日々。
前世で冷遇されていた彼女にとって、家族の愛は眩しすぎるほどだった。
しかし、セラフィナの心は前世の主・アルベルトへの想いに揺れ続ける。
一歳のお披露目で再会した彼は、痩せ細り、クラリッサの死を今も引きずっていた。
「わたしは生涯結婚もしなければ子どもを持つこともない。わたしにはそんな幸福は許されない」
そう語るアルベルトの姿に、セラフィナは決意する。
言葉も満足に話せない。自由に動くこともできない。前世の記憶を明かすこともできない。
それでも、彼を救いたい。彼に幸せになってほしい。
転生した皇女が、小さな身体で挑む、長い長い物語が始まる。
※ノベルアップ+、小説家になろうでも掲載しています。
魔法師団長の家政婦辞めたら溺愛されました
iru
恋愛
小説家になろうですでに完結済みの作品です。よければお気に入りブックマークなどお願いします。
両親と旅をしている途中、魔物に襲われているところを、魔法師団に助けられたティナ。
両親は亡くなってしまったが、両親が命をかけて守ってくれた自分の命を無駄にせず強く生きていこうと決めた。
しかし、肉親も家もないティナが途方に暮れていると、魔物から助けてくれ、怪我の入院まで面倒を見てくれた魔法師団の団長レオニスから彼の家政婦として住み込みで働かないと誘われた。
魔物から助けられた時から、ひどく憧れていたレオニスの誘いを、ティナはありがたく受ける事にした。
自分はただの家政婦だと強く言い聞かせて、日に日に膨らむ恋心を抑え込むティナだった。
一方、レオニスもティナにどんどん惹かれていっていた。
初めはなくなった妹のようで放っては置けないと家政婦として雇ったが、その健気な様子に強く惹かれていった。
恋人になりたいが、年上で雇い主。
もしティナも同じ気持ちでないなら仕事まで奪ってしまうのではないか。
そんな思いで一歩踏み出せないレオニスだった。
そんな中ある噂から、ティナはレオニスの家政婦を辞めて家を出る決意をする。
レオニスは思いを伝えてティナを引き止めることができるのか?
両片思いのすれ違いのお話です。
愛は契約範囲外〈完結〉
伊沙羽 璃衣
恋愛
「カヴァリエリ令嬢! 私はここに、そなたとの婚約を破棄することを宣言する!」
王太子の婚約破棄宣言を笑顔で見つめる令嬢、フェデリカ。実は彼女はある目的のために、この騒動を企んだのであった。目論見は成功したことだし、さっさと帰って論文を読もう、とるんるん気分だったフェデリカだが、ひょんなことから次期王と婚約することになってしまい!?
「婚約破棄騒動を仕向けたのは君だね?」
しかも次期王はフェデリカの企みを知っており、その上でとんでもない計画を持ちかけてくる。
愛のない契約から始まった偽りの夫婦生活、果たしてフェデリカは無事に計画を遂行して帰ることができるのか!?
※本編43話執筆済み。毎日投稿予定。アルファポリスでも投稿中。旧題 愛は契約に含まれません!
令嬢の復讐代行者
渡里あずま
恋愛
大国エスカーダに、他国の外交官の養女・クロエが留学してくる。
クロエの目的は、この国の『真実の愛』に関わった面々への復讐だった。
「『ジャンヌ』の代わりに、俺はアイツらに復讐する。『真実の愛』に関わったアイツらを」
絶望した少女と、彼女を守る為に目覚めた男の物語。
※※※
精神的にBL要素があります。苦手な方はご注意を。
※重複投稿作品※
無能妃候補は辞退したい
水綴(ミツヅリ)
ファンタジー
貴族の嗜み・教養がとにかく身に付かず、社交会にも出してもらえない無能侯爵令嬢メイヴィス・ラングラーは、死んだ姉の代わりに15歳で王太子妃候補として王宮へ迎え入れられる。
しかし王太子サイラスには周囲から正妃最有力候補と囁かれる公爵令嬢クリスタがおり、王太子妃候補とは名ばかりの茶番レース。
帰る場所のないメイヴィスは、サイラスとクリスタが正式に婚約を発表する3年後までひっそりと王宮で過ごすことに。
誰もが不出来な自分を見下す中、誰とも関わりたくないメイヴィスはサイラスとも他の王太子妃候補たちとも距離を取るが……。
果たしてメイヴィスは王宮を出られるのか?
誰にも愛されないひとりぼっちの無気力令嬢が愛を得るまでの話。
この作品は「小説家になろう」「カクヨム」にも掲載しています。
婚約破棄、追放された令嬢ですが、国民全員ついてきました ――国王陛下まで付いてくるのは聞いてません――
ふわふわ
恋愛
王太子から一方的に婚約破棄を言い渡され、
さらに理由も曖昧なまま国外追放を宣告された公爵令嬢カグラ。
――けれど。
追放当日、彼女の後ろに並んだのは
王城の使用人、騎士、職人、学者、医師、商人、そして民衆。
気づけば、国民のほぼ全員がついてきていた。
「……え? ちょっと待ってくださいませ?」
さらに事態は加速する。
「わしも行くぞ」 そう言って荷物をまとめたのは、まさかの国王陛下本人。
こうして始まったのは、 “追放された令嬢”を中心に人が集まり、
誰にも命じられず、誰にも縛られない――
前代未聞の共同体づくりだった。
国家でも、反乱でも、理想郷でもない。
制度を作らず、序列を決めず、
「ここにいていいかどうか」を自分で選び続ける場所。
逃げ場ではなく、
「選び直せる場所」を作ろうとするカグラの前に立ちはだかるのは、
・“前例”として監視し始める周辺諸国
・選ばれないことへの不安
・居場所を与えないという残酷な優しさ
・祝うことすら拒む、歪で不器用な共同体の在り方
そして問われる――
「人は、制度なしに共に生きられるのか?」
これは、ざまぁで終わらない物語。
婚約破棄から始まり、
追放の先で“世界の仕組みそのもの”を揺さぶっていく、
静かで強い、新しい建国譚。
なお、
国王陛下がついてきた理由は――
最後まで読むと、少しだけ分かります。
断罪ざまぁも冴えない王子もお断り!~せっかく公爵令嬢に生まれ変わったので、自分好みのイケメン見つけて幸せ目指すことにしました~
古堂 素央
恋愛
【完結】
「なんでわたしを突き落とさないのよ」
学園の廊下で、見知らぬ女生徒に声をかけられた公爵令嬢ハナコ。
階段から転げ落ちたことをきっかけに、ハナコは自分が乙女ゲームの世界に生まれ変わったことを知る。しかもハナコは悪役令嬢のポジションで。
しかしなぜかヒロインそっちのけでぐいぐいハナコに迫ってくる攻略対象の王子。その上、王子は前世でハナコがこっぴどく振った瓶底眼鏡の山田そっくりで。
ギロチンエンドか瓶底眼鏡とゴールインするか。選択を迫られる中、他の攻略対象の好感度まで上がっていって!?
悪役令嬢? 断罪ざまぁ? いいえ、冴えない王子と結ばれるくらいなら、ノシつけてヒロインに押しつけます!
黒ヒロインの陰謀を交わしつつ、無事ハナコは王子の魔の手から逃げ切ることはできるのか!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる