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第11話 王国評議会と、処方された真実
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王都・王城西翼、大議事堂。
そこは王国の頂に位置する者たちが一堂に会し、国の未来を左右する決定を下す場所。
王族、五大公爵家、魔法院長、神殿代表――
あらゆる“力”が、形だけの平等を装って並ぶ席。
だがこの日、その場に新たな“異物”が現れた。
「王家医務顧問、リーナ・アークレイン。
殿下の推挙により、特別監察発言権を認める」
第三王子アリウスがそう口にした瞬間、貴族たちの視線が一斉に集中する。
冷笑、警戒、困惑、怒気――
歓迎の色は、ひとつとしてなかった。
だがリーナは怯まなかった。
緋の礼服を纏い、まっすぐ壇上へと進む。
「議題に入る前に、本日、王宮医務局より提出された報告書をご覧ください」
彼女が差し出したのは、封蝋つきの一冊の書簡。
魔法院の印章と、王妃直筆の署名が付されていた。
中には、王宮における十年以上の“違法処方”と“感情操作薬物”の記録が収められていた。
「この中には、王妃陛下、王太子殿下、そして複数の上級侍従への不適切処方が確認されております。
責任は“医療”の範囲を超え、“国政操作”の域に達します」
ざわり、と議場が揺れた。
公爵のひとりが立ち上がる。
ラダム公爵、王太子派の重鎮。
「証拠はあるのか? そのような文書など、いくらでも捏造できよう!」
「あります。
王妃陛下ご本人の診察報告、および服薬後の回復映像。
王太子殿下からは、処方に対する謝罪文と、感情回復後の自主録音が提出されております」
リーナは、一枚の魔導結晶を掲げる。
「ご希望であれば、ここで再生いたしますか?」
ラダム公爵は言葉を失い、そのまま椅子に崩れ落ちた。
◆ ◆ ◆
評議会はその後、騒然とした空気のまま進んだが、
アリウスが一言、静かに言い放ったことで流れは決まった。
「我々が今問うべきは、過去の過ちを暴くことではない。
この“毒された王宮”を、どう“治療”するかだ」
その言葉に、神殿代表が初めて口を開いた。
「……アークレイン顧問。
では、貴女の“処方”とは、具体的に何を指しますか?」
リーナはひとつ頷き、答えた。
「王家の薬物記録と精神操作術の混用記録を完全に開示し、
関与者の再診と服薬解除を行うこと。
その上で、全王宮侍従・近衛・主要役人に対する《真実の霧》による確認儀式を実施。
全処方記録の透明化と、王族自身への診断義務の明文化です」
沈黙のなか、魔法院長が口元をぴくりと動かした。
「つまり――王家も例外ではないと?」
「例外を認めれば、毒はまた広がります。
薬師としての私の答えは、“無差別処方”です」
堂内の空気が、一瞬にして変わった。
「……異議、なし」
「……異議なし」
「……同意する」
一人、また一人と声が上がる。
ついには、ラダム公爵すらも重々しく頭を下げた。
「……アークレイン顧問。
今後、我が公爵家の者も、貴女の診察を受けさせよう。
貴女の処方が“毒”でなければ、我らは受け入れる」
◆ ◆ ◆
評議会の帰り道、アリウスが肩を並べた。
「見事だったな、リーナ。
“ざまぁ”というより、もはやこれは“解毒戦”だ」
「でも、“毒”を撒いた者たちへの“ざまぁ”も、これからですよ。
処方が終われば、次は――“精算”ですから」
彼女は笑った。
薬師の笑みではなく、復讐を終えた令嬢の、それでも尚、未来を選び直す者の笑みだった。
◆ ◆ ◆
その夜、王城最上階の“隠し塔”。
ひとつの黒い影が立ち上がる。
「……ふん。リーナ・アークレイン。
貴様ごときが、この“王国の裏”まで手を伸ばす気か」
その男の手には、違法処方薬《黒哭》の瓶。
かつてロルベン閣下を沈黙させた“毒の最終形”。
「ならば、私も“処方”してやろう。
この国に最もふさわしい“絶望”という名の薬をな……」
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
あとがき
第11話、お読みいただきありがとうございました。
国そのものへの“処方”という、物語の核心に踏み込む大きな転換点でした。
次はいよいよ、裏の勢力との直接対決、“毒”そのものとの闘いが始まります。
引き続きご感想・フォロー・お気に入りなど、大きな力になります。
どうぞよろしくお願いいたします!
そこは王国の頂に位置する者たちが一堂に会し、国の未来を左右する決定を下す場所。
王族、五大公爵家、魔法院長、神殿代表――
あらゆる“力”が、形だけの平等を装って並ぶ席。
だがこの日、その場に新たな“異物”が現れた。
「王家医務顧問、リーナ・アークレイン。
殿下の推挙により、特別監察発言権を認める」
第三王子アリウスがそう口にした瞬間、貴族たちの視線が一斉に集中する。
冷笑、警戒、困惑、怒気――
歓迎の色は、ひとつとしてなかった。
だがリーナは怯まなかった。
緋の礼服を纏い、まっすぐ壇上へと進む。
「議題に入る前に、本日、王宮医務局より提出された報告書をご覧ください」
彼女が差し出したのは、封蝋つきの一冊の書簡。
魔法院の印章と、王妃直筆の署名が付されていた。
中には、王宮における十年以上の“違法処方”と“感情操作薬物”の記録が収められていた。
「この中には、王妃陛下、王太子殿下、そして複数の上級侍従への不適切処方が確認されております。
責任は“医療”の範囲を超え、“国政操作”の域に達します」
ざわり、と議場が揺れた。
公爵のひとりが立ち上がる。
ラダム公爵、王太子派の重鎮。
「証拠はあるのか? そのような文書など、いくらでも捏造できよう!」
「あります。
王妃陛下ご本人の診察報告、および服薬後の回復映像。
王太子殿下からは、処方に対する謝罪文と、感情回復後の自主録音が提出されております」
リーナは、一枚の魔導結晶を掲げる。
「ご希望であれば、ここで再生いたしますか?」
ラダム公爵は言葉を失い、そのまま椅子に崩れ落ちた。
◆ ◆ ◆
評議会はその後、騒然とした空気のまま進んだが、
アリウスが一言、静かに言い放ったことで流れは決まった。
「我々が今問うべきは、過去の過ちを暴くことではない。
この“毒された王宮”を、どう“治療”するかだ」
その言葉に、神殿代表が初めて口を開いた。
「……アークレイン顧問。
では、貴女の“処方”とは、具体的に何を指しますか?」
リーナはひとつ頷き、答えた。
「王家の薬物記録と精神操作術の混用記録を完全に開示し、
関与者の再診と服薬解除を行うこと。
その上で、全王宮侍従・近衛・主要役人に対する《真実の霧》による確認儀式を実施。
全処方記録の透明化と、王族自身への診断義務の明文化です」
沈黙のなか、魔法院長が口元をぴくりと動かした。
「つまり――王家も例外ではないと?」
「例外を認めれば、毒はまた広がります。
薬師としての私の答えは、“無差別処方”です」
堂内の空気が、一瞬にして変わった。
「……異議、なし」
「……異議なし」
「……同意する」
一人、また一人と声が上がる。
ついには、ラダム公爵すらも重々しく頭を下げた。
「……アークレイン顧問。
今後、我が公爵家の者も、貴女の診察を受けさせよう。
貴女の処方が“毒”でなければ、我らは受け入れる」
◆ ◆ ◆
評議会の帰り道、アリウスが肩を並べた。
「見事だったな、リーナ。
“ざまぁ”というより、もはやこれは“解毒戦”だ」
「でも、“毒”を撒いた者たちへの“ざまぁ”も、これからですよ。
処方が終われば、次は――“精算”ですから」
彼女は笑った。
薬師の笑みではなく、復讐を終えた令嬢の、それでも尚、未来を選び直す者の笑みだった。
◆ ◆ ◆
その夜、王城最上階の“隠し塔”。
ひとつの黒い影が立ち上がる。
「……ふん。リーナ・アークレイン。
貴様ごときが、この“王国の裏”まで手を伸ばす気か」
その男の手には、違法処方薬《黒哭》の瓶。
かつてロルベン閣下を沈黙させた“毒の最終形”。
「ならば、私も“処方”してやろう。
この国に最もふさわしい“絶望”という名の薬をな……」
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
あとがき
第11話、お読みいただきありがとうございました。
国そのものへの“処方”という、物語の核心に踏み込む大きな転換点でした。
次はいよいよ、裏の勢力との直接対決、“毒”そのものとの闘いが始まります。
引き続きご感想・フォロー・お気に入りなど、大きな力になります。
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