僕の宝具が『眼鏡』だったせいで魔界に棄てられました ~地上に戻って大人しく暮らしているつもりなのに、何故か頼られて困ります~

織侍紗(@'ω'@)ん?

文字の大きさ
17 / 49

十七話 学園長ミリアム

しおりを挟む
「入ります! ミリアム様!」

 コンコンコン、とファーガソンは扉を三度ノックをした後、大きな声でそう言ってガチャリと扉を開けた。部屋に入ると奥には机があり、その向こう側には、しわくちゃの耳が長い老婆が座っていた。どうやらエルフのようだった。中に一人しかいないことを考えると、その人が学園長であり、ミリアムなのであろう。

「君は初等部の、ファーガソンだったかのぉ」

 ミリアムは顎を撫でながら、目を細めてファーガソンの名を呼ぶ。

「ミリアム様は凄いんですよ? 学園みんなの名前、覚えてるんです!」

 背後に立つゲイルに誇らしげにそう話してから、ファーガソンは向き直って元気よくミリアムへ話しだす。

「はい! 今日は、ゲイル兄を学園で働かせて貰えないかな? ってお願いに来ました!」

「何を急に?」

 訝しげな表情を浮かべるミリアム。そしてファーガソンの背後に立つゲイルは困った表情でこう呟いた。

「ですよねぇ」

「本人はあまり乗り気ではなさそうじゃが……」

 渋る二人に対して、ファーガソンは両の拳をギュッと握り締めて熱く語り出した。

「ゲイル兄が乗り気だ、とか、乗り気じゃない。とかの話じゃないんです! 損なんです! 世界の損なんです!」

「それは無いって」

 苦笑いを浮かべるゲイル。ファーガソンは振り向き、そんなゲイルを一喝した。

「ゲイル兄は黙ってて!」

「は、はい!」

 ゲイルはそんなファーガソンに気圧されてしまう。そしてファーガソンは、ツカツカツカとミリアムに近寄り、机に身を乗り出して話を続けた。

「凄いんですよ! ちゃちゃちゃっと僕の問題点を指摘して、威力が跳ね上がったんですから!」

「とは言ってものぉ」

「今お見せしましょうか?」

 するとファーガソンは細剣を取り出し、構えだした。こんな所で魔術を放たれては堪らんと、慌ててミリアムは止めに入る。

「いや、いや、遠慮するよ。それはまた今度にしてもらおうかのぅ」

「で、でも!」

 未だ食い下がるファーガソン。しかし、ミリアムは首を縦に振る様子は見えない。ゲイルはそんなファーガソンの肩に手をポンっと置いたのだった。

「ね、ほら。無理なんだからさ。僕はクロウリーみたいに教えられないし……」

 その時、急にミリアムが立ち上がって身を乗り出した。

「クロウリー! そなたクロウリーっと言ったか!」

「え、ええ……」

「いや、待て待て。クロウリーなんて名などいくらでも……」

 ミリアムはすぐに冷静になり、顎に手をあてて考え込む。

「そんなことがあるはずがない。いや、しかし、ファーガソンの言う通りに魔術に長けているのであれば、可能性が無い訳ではない……」

「クロウリーを知っているんですか?」

「知っていると言えば知っているが、知らんと言えば知らん」

 ミリアムは顔を上げてそう答えた。そしてこう言葉を続ける。

「クロウリー様をご存知の、とある方から話を聞いたことがある。と言った程度じゃな」

 ミリアムはそこまで話すとファーガソンに視線を送り、優しく語りかける。

「ファーガソンよ。君はもう行きなさい。授業に遅れてしまう」

「で、でも」

「でももへったくれもないじゃろ。君は何しにこのアースガルズへ来ておるのじゃ? それすらわからない君ではあるまい」

 そしてミリアムは今度はゲイルに視線を送る。

「さて、ゲイル君とやら。立ち話も悪い。隣の部屋に来てくれんかの?」

 そして二人が入ってきた扉とは別の、隣の部屋に繋がる扉に視線を送った。

「じゃ、じゃあ!」

 その言葉にファーガソンは喜んだ。だが、ミリアムは首を軽く横に振る。

「そうは言っておらん。じゃが、儂は彼に興味はある。さ、行きなさい」

「はい!」

 そしてファーガソンは部屋から出ていき、その後二人は隣の部屋へと入っていったのだった。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

魔力ゼロで出来損ないと追放された俺、前世の物理学知識を魔法代わりに使ったら、天才ドワーフや魔王に懐かれて最強になっていた

黒崎隼人
ファンタジー
「お前は我が家の恥だ」――。 名門貴族の三男アレンは、魔力を持たずに生まれたというだけで家族に虐げられ、18歳の誕生日にすべてを奪われ追放された。 絶望の中、彼が死の淵で思い出したのは、物理学者として生きた前世の記憶。そして覚醒したのは、魔法とは全く異なる、世界の理そのものを操る力――【概念置換(コンセプト・シフト)】。 運動エネルギーの法則【E = 1/2mv²】で、小石は音速の弾丸と化す。 熱力学第二法則で、敵軍は絶対零度の世界に沈む。 そして、相対性理論【E = mc²】は、神をも打ち砕く一撃となる。 これは、魔力ゼロの少年が、科学という名の「本当の魔法」で理不尽な運命を覆し、心優しき仲間たちと共に、偽りの正義に支配された世界の真実を解き明かす物語。 「君の信じる常識は、本当に正しいのか?」 知的好奇心が、あなたの胸を熱くする。新時代のサイエンス・ファンタジーが、今、幕を開ける。

地味な薬草師だった俺が、実は村の生命線でした

有賀冬馬
ファンタジー
恋人に裏切られ、村を追い出された青年エド。彼の地味な仕事は誰にも評価されず、ただの「役立たず」として切り捨てられた。だが、それは間違いだった。旅の魔術師エリーゼと出会った彼は、自分の能力が秘めていた真の価値を知る。魔術と薬草を組み合わせた彼の秘薬は、やがて王国を救うほどの力となり、エドは英雄として名を馳せていく。そして、彼が去った村は、彼がいた頃には気づかなかった「地味な薬」の恩恵を失い、静かに破滅へと向かっていくのだった。

【収納∞】スキルがゴミだと追放された俺、実は次元収納に加えて“経験値貯蓄”も可能でした~追放先で出会ったもふもふスライムと伝説の竜を育成〜

あーる
ファンタジー
「役立たずの荷物持ちはもういらない」 貢献してきた勇者パーティーから、スキル【収納∞】を「大した量も入らないゴミスキル」だと誤解されたまま追放されたレント。 しかし、彼のスキルは文字通り『無限』の容量を持つ次元収納に加え、得た経験値を貯蓄し、仲間へ『分配』できる超チート能力だった! 失意の中、追放先の森で出会ったのは、もふもふで可愛いスライムの「プル」と、古代の祭壇で孵化した伝説の竜の幼体「リンド」。レントは隠していたスキルを解放し、唯一無二の仲間たちを最強へと育成することを決意する! 辺境の村を拠点に、薬草採取から魔物討伐まで、スキルを駆使して依頼をこなし、着実に経験値と信頼を稼いでいくレントたち。プルは多彩なスキルを覚え、リンドは驚異的な速度で成長を遂げる。 これは、ゴミスキルだと蔑まれた少年が、最強の仲間たちと共にどん底から成り上がり、やがて自分を捨てたパーティーや国に「もう遅い」と告げることになる、追放から始まる育成&ざまぁファンタジー!

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

才がないと伯爵家を追放された僕は、神様からのお詫びチートで、異世界のんびりスローライフ!!

にのまえ
ファンタジー
剣や魔法に才能がないカストール伯爵家の次男、ノエール・カストールは家族から追放され、辺境の別荘へ送られることになる。しかしノエールは追放を喜ぶ、それは彼に異世界の神様から、お詫びにとして貰ったチートスキルがあるから。 そう、ノエールは転生者だったのだ。 そのスキルを駆使して、彼の異世界のんびりスローライフが始まる。

【完結】帝国から追放された最強のチーム、リミッター外して無双する

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】  スペイゴール大陸最強の帝国、ユハ帝国。  帝国に仕え、最強の戦力を誇っていたチーム、『デイブレイク』は、突然議会から追放を言い渡される。  しかし帝国は気づいていなかった。彼らの力が帝国を拡大し、恐るべき戦力を誇示していたことに。  自由になった『デイブレイク』のメンバー、エルフのクリス、バランス型のアキラ、強大な魔力を宿すジャック、杖さばきの達人ランラン、絶世の美女シエナは、今まで抑えていた実力を完全開放し、ゼロからユハ帝国を超える国を建国していく。   ※この世界では、杖と魔法を使って戦闘を行います。しかし、あの稲妻型の傷を持つメガネの少年のように戦うわけではありません。どうやって戦うのかは、本文を読んでのお楽しみです。杖で戦う戦士のことを、本文では杖士(ブレイカー)と描写しています。 ※舞台の雰囲気は中世ヨーロッパ〜近世ヨーロッパに近いです。 〜『デイブレイク』のメンバー紹介〜 ・クリス(男・エルフ・570歳)   チームのリーダー。もともとはエルフの貴族の家系だったため、上品で高潔。白く透明感のある肌に、整った顔立ちである。エルフ特有のとがった耳も特徴的。メンバーからも信頼されているが…… ・アキラ(男・人間・29歳)  杖術、身体能力、頭脳、魔力など、あらゆる面のバランスが取れたチームの主力。独特なユーモアのセンスがあり、ムードメーカーでもある。唯一の弱点が…… ・ジャック(男・人間・34歳)  怪物級の魔力を持つ杖士。その魔力が強大すぎるがゆえに、普段はその魔力を抑え込んでいるため、感情をあまり出さない。チームで唯一の黒人で、ドレッドヘアが特徴的。戦闘で右腕を失って以来義手を装着しているが…… ・ランラン(女・人間・25歳)  優れた杖の腕前を持ち、チームを支える杖士。陽気でチャレンジャーな一面もあり、可愛さも武器である。性格の共通点から、アキラと親しく、親友である。しかし実は…… ・シエナ(女・人間・28歳)  絶世の美女。とはいっても杖士としての実力も高く、アキラと同じくバランス型である。誰もが羨む美貌をもっているが、本人はあまり自信がないらしく、相手の反応を確認しながら静かに話す。あるメンバーのことが……

追放された私の代わりに入った女、三日で国を滅ぼしたらしいですよ?

タマ マコト
ファンタジー
王国直属の宮廷魔導師・セレス・アルトレイン。 白銀の髪に琥珀の瞳を持つ、稀代の天才。 しかし、その才能はあまりに“美しすぎた”。 王妃リディアの嫉妬。 王太子レオンの盲信。 そして、セレスを庇うはずだった上官の沈黙。 「あなたの魔法は冷たい。心がこもっていないわ」 そう言われ、セレスは**『無能』の烙印**を押され、王国から追放される。 彼女はただ一言だけ残した。 「――この国の炎は、三日で尽きるでしょう。」 誰もそれを脅しとは受け取らなかった。 だがそれは、彼女が未来を見通す“預言魔法”の言葉だったのだ。

(完結)魔王討伐後にパーティー追放されたFランク魔法剣士は、超レア能力【全スキル】を覚えてゲスすぎる勇者達をザマアしつつ世界を救います

しまうま弁当
ファンタジー
魔王討伐直後にクリードは勇者ライオスからパーティーから出て行けといわれるのだった。クリードはパーティー内ではつねにFランクと呼ばれ戦闘にも参加させてもらえず場美雑言は当たり前でクリードはもう勇者パーティーから出て行きたいと常々考えていたので、いい機会だと思って出て行く事にした。だがラストダンジョンから脱出に必要なリアーの羽はライオス達は分けてくれなかったので、仕方なく一階層づつ上っていく事を決めたのだった。だがなぜか後ろから勇者パーティー内で唯一のヒロインであるミリーが追いかけてきて一緒に脱出しようと言ってくれたのだった。切羽詰まっていると感じたクリードはミリーと一緒に脱出を図ろうとするが、後ろから追いかけてきたメンバーに石にされてしまったのだった。

処理中です...