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二十話 王女アリス
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「これは確かにファーガソンの言いたいこともわかるわね」
ファリスはそう呟いた。それは目の前のに広がる光景を見たから。ファリスの眼前に広がるのは、粉々に砕けたり、ひしゃげた的ばかり。ファリスの認知として、まだ小等部である彼らが出せる威力では無かった。全員が中等部のトップクラスに匹敵するほど。高等部に勝る威力の者もいるほどであった。
だからファーガソンの言ったことに対して同意を示したのだった。
「ね、ね? 凄いでしょ?」
「え、ええ……軒並み威力が上がってるわ。落第スレスレだったファーガソンはともかく、上の子たちもね」
ファリスは笑顔でそう答えたが、目は笑っていない。それは、ファーガソンにはまだ上がいるのだから満足せずに精進しなさい、と語っているようだった。その意図を感じとれたファーガソンは苦笑いを浮かべてしまう。
「あはは……だ、だから!」
「ダーメ」
ファリスはファーガソンの言葉を遮って、腰に両手をあてながら否定の言葉を述べた。ファーガソンが言いたいことは、ゲイルを教師として働かせて欲しいと分かっていたから。
そして、まだ沢山の子どもたちに囲まれているゲイルに視線をチラリと送ってから、ファーガソンにこう続けて話す。
「彼自身が乗り気じゃないもの。それに読み書きも出来ないって話だし」
「え! ゲイル兄って読み書きも出来ないの?」
ファーガソンの大きな声にゲイルは気づいて、子どもたちの頭を撫でながら、ファーガソンたちに少し恥ずかしそうに近づいてきた。
「あ。う、うん」
「そっか。それじゃあ無理かも」
「そういう事。だから読み書き出来なくてもなんとかなる冒険者くらいしかなぁって」
すると一人だけ離れたところで様子を見守っていた長い金髪の美少女が、少し偉そうな態度でゲイルにこう言った。
「あら、ウチで雇ってあげるわよ」
「アリスの所で?」
ファーガソンがアリスと呼んだ少女へゲイルは視線を送ってから、ファーガソンへと視線を戻した。
「アリス?」
「そう。アリスは王女様なんだ! ブラケット王国の!」
「ブラケット王国の王女様?」
今度はアリスにそう尋ねる。疑っている訳ではないが、状況の確認といったところであった。
「それはそうよ。でも、五女だから継承権とかはまず回って来ないけどね」
アリスはやれやれ、といった様子で肩を竦めてそう返した。否定はしないが変な期待はしないでね。という意味を込めた動作である。
「でも、ゲイル兄を雇ってくれるって?」
「継承権は無いけど、宮廷魔術師として何処かしらの枠を上げられるくらいの事は出来るわ。もしかしたら同じようなことをウチの魔術師たちに出来たら戦力アップになるし」
同じようなこと、とはファーガソンやアリスたちへ行った、魔術の威力を上げる指導である。
「うーん」
「乗り気じゃないわね」
「なんか、そういう堅苦しいのは……それに、僕にそういうことできるかなぁ」
実際に魔術を使ってみて貰わないと、何処かに漏れがあるかどうかなんて分からない。ゲイルはその漏れについて指摘してあげているだけで、それが無ければ指摘すら出来ない。だから出来るかどうかわからない、と返したのであった。
ゲイル自身は魔術を使っている者なんてクロウリーしか今まで見たことが無かった。クロウリーには漏れのようなモノなんて無かったから違いに気づいた。宮廷魔術師にもなるレベルの高い人たちが、そんな物あるのだろうか? といった思いもある。
ただ、見ることが出来る者と出来ない者の差、その大きさがゲイルの想像以上であることまでは考えられないのであるが……
「やってみないと分からないと思うけど。ま、私も無理にとは言わないわ。でも、気が向いたら言ってね。色々見て回ったあとでもいいし」
「アリスは結構乗り気なんだね」
ファーガソンはアリスの言葉に意外そうな態度でそう言った
「まーね。物騒なことも耳にするし、出来ることはしておきたいもの」
「物騒なこと?」
「あくまで噂レベルよ。気にしないで」
するとパンッ! と大きな手を叩く音が響き渡った。音の主はファリスである。
「はい! 雑談はそこまでよ。皆、魔術の練習に戻って。ではゲイルさん、行きましょうか」
その言葉に子どもたちは蜘蛛の子を散らすように、元の場所に戻っていき、ファリスとゲイルは部屋を後にしたのだった。
ファリスはそう呟いた。それは目の前のに広がる光景を見たから。ファリスの眼前に広がるのは、粉々に砕けたり、ひしゃげた的ばかり。ファリスの認知として、まだ小等部である彼らが出せる威力では無かった。全員が中等部のトップクラスに匹敵するほど。高等部に勝る威力の者もいるほどであった。
だからファーガソンの言ったことに対して同意を示したのだった。
「ね、ね? 凄いでしょ?」
「え、ええ……軒並み威力が上がってるわ。落第スレスレだったファーガソンはともかく、上の子たちもね」
ファリスは笑顔でそう答えたが、目は笑っていない。それは、ファーガソンにはまだ上がいるのだから満足せずに精進しなさい、と語っているようだった。その意図を感じとれたファーガソンは苦笑いを浮かべてしまう。
「あはは……だ、だから!」
「ダーメ」
ファリスはファーガソンの言葉を遮って、腰に両手をあてながら否定の言葉を述べた。ファーガソンが言いたいことは、ゲイルを教師として働かせて欲しいと分かっていたから。
そして、まだ沢山の子どもたちに囲まれているゲイルに視線をチラリと送ってから、ファーガソンにこう続けて話す。
「彼自身が乗り気じゃないもの。それに読み書きも出来ないって話だし」
「え! ゲイル兄って読み書きも出来ないの?」
ファーガソンの大きな声にゲイルは気づいて、子どもたちの頭を撫でながら、ファーガソンたちに少し恥ずかしそうに近づいてきた。
「あ。う、うん」
「そっか。それじゃあ無理かも」
「そういう事。だから読み書き出来なくてもなんとかなる冒険者くらいしかなぁって」
すると一人だけ離れたところで様子を見守っていた長い金髪の美少女が、少し偉そうな態度でゲイルにこう言った。
「あら、ウチで雇ってあげるわよ」
「アリスの所で?」
ファーガソンがアリスと呼んだ少女へゲイルは視線を送ってから、ファーガソンへと視線を戻した。
「アリス?」
「そう。アリスは王女様なんだ! ブラケット王国の!」
「ブラケット王国の王女様?」
今度はアリスにそう尋ねる。疑っている訳ではないが、状況の確認といったところであった。
「それはそうよ。でも、五女だから継承権とかはまず回って来ないけどね」
アリスはやれやれ、といった様子で肩を竦めてそう返した。否定はしないが変な期待はしないでね。という意味を込めた動作である。
「でも、ゲイル兄を雇ってくれるって?」
「継承権は無いけど、宮廷魔術師として何処かしらの枠を上げられるくらいの事は出来るわ。もしかしたら同じようなことをウチの魔術師たちに出来たら戦力アップになるし」
同じようなこと、とはファーガソンやアリスたちへ行った、魔術の威力を上げる指導である。
「うーん」
「乗り気じゃないわね」
「なんか、そういう堅苦しいのは……それに、僕にそういうことできるかなぁ」
実際に魔術を使ってみて貰わないと、何処かに漏れがあるかどうかなんて分からない。ゲイルはその漏れについて指摘してあげているだけで、それが無ければ指摘すら出来ない。だから出来るかどうかわからない、と返したのであった。
ゲイル自身は魔術を使っている者なんてクロウリーしか今まで見たことが無かった。クロウリーには漏れのようなモノなんて無かったから違いに気づいた。宮廷魔術師にもなるレベルの高い人たちが、そんな物あるのだろうか? といった思いもある。
ただ、見ることが出来る者と出来ない者の差、その大きさがゲイルの想像以上であることまでは考えられないのであるが……
「やってみないと分からないと思うけど。ま、私も無理にとは言わないわ。でも、気が向いたら言ってね。色々見て回ったあとでもいいし」
「アリスは結構乗り気なんだね」
ファーガソンはアリスの言葉に意外そうな態度でそう言った
「まーね。物騒なことも耳にするし、出来ることはしておきたいもの」
「物騒なこと?」
「あくまで噂レベルよ。気にしないで」
するとパンッ! と大きな手を叩く音が響き渡った。音の主はファリスである。
「はい! 雑談はそこまでよ。皆、魔術の練習に戻って。ではゲイルさん、行きましょうか」
その言葉に子どもたちは蜘蛛の子を散らすように、元の場所に戻っていき、ファリスとゲイルは部屋を後にしたのだった。
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