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二十二話 鉱山の街
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「ここがザムデンかぁ。すっかり日が暮れてしまったなぁ」
ザムデンの街に着いたゲイルは空を見上げてそう呟いた。日はすっかり落ち暗くなり、月も天頂に間もなく届くであろう所まで上がってしまっている。
するとゲイルに小太りの壮年男性が足下がおぼつかない様子で近づいてきた。
「ヒック。お前さん、ザムデンは初めてかい?」
顔が少し紅潮し、酔っていることがハッキリとわかるその男性は親しげにゲイルへ話かけてきた。
「さっきは近くまでは来たけど、中には入らなかったからなぁ……あ、はい、初めてです!」
「やっぱりな。キョロキョロしてたから、そうだと思ったぜ。まぁここは大きな街だ。一攫千金狙いのヤツも沢山来る。お前もそのクチなんだろ?」
ゲイルの肩に腕を回し、ニヤニヤ笑みを浮かべながらその男性はゲイルにそう尋ねた。
「一攫千金? なんのことです?」
「知らないでここに来たってのか? そりゃ驚いた。良いぜ、ちょと案内してやるよ。こっちきな」
そして有無を言わさずそのままゲイルを誘導しながらその男性は話しだした。
「まずだな、ここはこう呼ばれている。鉱山の街ザムゼンってな」
「鉱山ですか?」
「おうよ、街の中心に大きな穴が開いている。そこで皆、鉱石を掘るんだよ。一攫千金夢見てな」
「なるほど」
「金や銀、それだけじゃねぇ。ダイヤモンドやエメラルドみたいな宝石まで出てくることも稀にある。むかーしはオリハルコンも出たことがあるらしい」
「へぇ」
「へぇ、ってあんま興味なさそうだなぁ」
「僕は冒険者なので……」
「そっか。まぁ俺にはあんま関係ないな。俺は鉱石で成り上がるんだからな! ま、お前が冒険者だってんなら目的はアソコだろ」
そしてその男性は一つの建物を指し示した。そこには見慣れた看板が掲げられている。文字の読めないゲイルでも、書かれているのは冒険者ギルドの文字だと言うことはわかった。
「あ、冒険者ギルド! ありがとうございます!」
「ん」
礼を述べるゲイルに対して、その男性は手を差し出した。
「はい?」
状況が飲み込めないゲイルは首を傾げてしまう。すると、その男性はゲイルを離して怒り出した。
「金だよ金! 案内してやっただろ!」
「え?」
「てめぇ、人の時間をタダで奪おうって言うのか!」
その男性がそう怒鳴ると同時に女の子の声が響き渡った。
「お父さん!」
「やべ! フレアだ!」
そして先程までの千鳥足はどこに行ったかわからないほどの勢いで、一目散に去っていってしまった。
入れ替わるようにゲイルの目の前で、先程の少女が膝に手を付いて、肩で息をしている。
「はぁ、はぁ……逃げられちゃった」
息を整えた少女は、ゲイルに向き直るとこう話しだした。
「あ、父が迷惑かけて申し訳ないです。私はフレア。あの酔っ払いの娘です」
先程の男性の娘だとその少女、フレアはゲイルに語った。謝るフレアに対して、ゲイルは苦笑いを浮かべながら財布を逆さにして見せた。
「僕はゲイル。大丈夫だよ。盗られるようなお金、無いし」
無一文だと語るゲイルに対して、フレアも苦笑いを浮かべてこう返した。
「それは……そうだ! じゃあ良かったら私の家に泊まっていきませんか? 宿代も無いでしょうし……」
「あはは……有難いんだけど……」
ゲイルはフレアの父が去った方向にチラリと視線を送る。すると、その意図を察したフレアがゲイルにこう告げた。
「父は大丈夫です。家には戻ってきませんから」
「なるほど……じゃあお言葉に甘えようかな」
「はい! 喜んで! こっちです!」
そしてフレアは父が去った方向と反対に歩きだし、ゲイルはその後を追ったのだった。
ザムデンの街に着いたゲイルは空を見上げてそう呟いた。日はすっかり落ち暗くなり、月も天頂に間もなく届くであろう所まで上がってしまっている。
するとゲイルに小太りの壮年男性が足下がおぼつかない様子で近づいてきた。
「ヒック。お前さん、ザムデンは初めてかい?」
顔が少し紅潮し、酔っていることがハッキリとわかるその男性は親しげにゲイルへ話かけてきた。
「さっきは近くまでは来たけど、中には入らなかったからなぁ……あ、はい、初めてです!」
「やっぱりな。キョロキョロしてたから、そうだと思ったぜ。まぁここは大きな街だ。一攫千金狙いのヤツも沢山来る。お前もそのクチなんだろ?」
ゲイルの肩に腕を回し、ニヤニヤ笑みを浮かべながらその男性はゲイルにそう尋ねた。
「一攫千金? なんのことです?」
「知らないでここに来たってのか? そりゃ驚いた。良いぜ、ちょと案内してやるよ。こっちきな」
そして有無を言わさずそのままゲイルを誘導しながらその男性は話しだした。
「まずだな、ここはこう呼ばれている。鉱山の街ザムゼンってな」
「鉱山ですか?」
「おうよ、街の中心に大きな穴が開いている。そこで皆、鉱石を掘るんだよ。一攫千金夢見てな」
「なるほど」
「金や銀、それだけじゃねぇ。ダイヤモンドやエメラルドみたいな宝石まで出てくることも稀にある。むかーしはオリハルコンも出たことがあるらしい」
「へぇ」
「へぇ、ってあんま興味なさそうだなぁ」
「僕は冒険者なので……」
「そっか。まぁ俺にはあんま関係ないな。俺は鉱石で成り上がるんだからな! ま、お前が冒険者だってんなら目的はアソコだろ」
そしてその男性は一つの建物を指し示した。そこには見慣れた看板が掲げられている。文字の読めないゲイルでも、書かれているのは冒険者ギルドの文字だと言うことはわかった。
「あ、冒険者ギルド! ありがとうございます!」
「ん」
礼を述べるゲイルに対して、その男性は手を差し出した。
「はい?」
状況が飲み込めないゲイルは首を傾げてしまう。すると、その男性はゲイルを離して怒り出した。
「金だよ金! 案内してやっただろ!」
「え?」
「てめぇ、人の時間をタダで奪おうって言うのか!」
その男性がそう怒鳴ると同時に女の子の声が響き渡った。
「お父さん!」
「やべ! フレアだ!」
そして先程までの千鳥足はどこに行ったかわからないほどの勢いで、一目散に去っていってしまった。
入れ替わるようにゲイルの目の前で、先程の少女が膝に手を付いて、肩で息をしている。
「はぁ、はぁ……逃げられちゃった」
息を整えた少女は、ゲイルに向き直るとこう話しだした。
「あ、父が迷惑かけて申し訳ないです。私はフレア。あの酔っ払いの娘です」
先程の男性の娘だとその少女、フレアはゲイルに語った。謝るフレアに対して、ゲイルは苦笑いを浮かべながら財布を逆さにして見せた。
「僕はゲイル。大丈夫だよ。盗られるようなお金、無いし」
無一文だと語るゲイルに対して、フレアも苦笑いを浮かべてこう返した。
「それは……そうだ! じゃあ良かったら私の家に泊まっていきませんか? 宿代も無いでしょうし……」
「あはは……有難いんだけど……」
ゲイルはフレアの父が去った方向にチラリと視線を送る。すると、その意図を察したフレアがゲイルにこう告げた。
「父は大丈夫です。家には戻ってきませんから」
「なるほど……じゃあお言葉に甘えようかな」
「はい! 喜んで! こっちです!」
そしてフレアは父が去った方向と反対に歩きだし、ゲイルはその後を追ったのだった。
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