僕の宝具が『眼鏡』だったせいで魔界に棄てられました ~地上に戻って大人しく暮らしているつもりなのに、何故か頼られて困ります~

織侍紗(@'ω'@)ん?

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二十七話 再会

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「あーあ、また失敗しちゃったなぁ……フレアが無事だったからまだ良かったけど」

 ジュックデルトの冒険者ギルドに辿り着いたゲイルはそう呟きながら掲示板でクエストを確認しようとするが、掲示板の前には人だかりが出来ており、掲示板を確認することが出来なかった。

「人だかりが邪魔で掲示板見れないな」

 ゲイルはふと近くにいた壮年の男性に声をかけた。

「なんでこんなに人がいっぱいいるんです?」

「うっせーな。お前知らないのか?」

「何をです?」

「新進気鋭の冒険者が今、この街に来てるんだ。最近、たくさんの最高難度のクエストを解決しまくってるらしいぞ」

「へぇ……」

 ゲイルの生返事を聞いたその壮年の男性は、少しゲイルのことを呆れるような表情をしながた言葉を続けた。

「ってその冒険者がこの街に来てることだけじゃなくて、その冒険者のこと自体を知らなかったみたいだな」

「えっと、そういうのに疎いもので……」

「脇からなら見えるかもな」

 促されるままにゲイルが掲示板の前を見ると、一人の女性が掲示板を眺めている姿が目に入った。掲示板を眺めているその女性は、横からしか確認できないが、とても整った顔立ちをしていた。溢れんばかりの胸は下着のような薄い布しか纏われておらず、妖艶な身体からはスラリと長い手が伸び、そしてホットパンツからも細く長い脚が伸びていた。
 その美女は掲示板を眺めていた視線をふと横に落とす。すると、ゲイルと目が合った。

「う、うそ!」

 とても驚いた様子で美女が声を上げる。

「ふぇ?」

 そして人垣をかきわけてゲイルに近づき手を取ったのだった。

「ゲイル! ゲイルじゃない!」

「え? 何処かでお会いしましたっけ?」

 会った覚えのないゲイルはとても申し訳なさそうにそう尋ねた。

「ミュー! ミューだよ!」

「そうですか。ミューさんですか」

 と、返事はしたものの、ミューという名の美女にあった覚えのないゲイルは生返事を返してしまう。
 まだ気づかないことに業を煮やしたその美女は、ぎゅっとゲイルに抱きついて耳元でこう囁く。

「俺だよ。龍族のミューだよ」

 さすがにそれは忘れていないゲイルはとても驚いてしまった。

「え、うそ! なんで、なんで、なんで?」

「良かった。思い出してくれたか。ってちょっと人目につくな。ゲイル、ちょっとこっちに来てよ」

 そしてミューはゲイルを引っ張り、冒険者ギルドから出て、人目が無い路地裏へと連れていったのだった。

「だいぶ混乱してるって顔をしてるね」

「そ、そりゃそうだよ。まずミューがここに居るってこともそうだし、それになんでそんな姿なのさ」

「いやね、グランドラグーン様から頼まれてね。ゲイルが地上に居るかもしれないから探してくれって。で、探すのにあの・・格好って訳にもいかないでしょ? だから人の姿になってるんだよ」

「ミューって人になれたの? 知らなかった」

「俺じゃなくても皆なれるよ。龍族なら。魔界じゃこんな貧弱な姿になる必要も無いけどね」

 その言葉にゲイルは納得してしまう。人間の姿よりも龍の姿の方が強いことは明白だったから。サイズも違うし、ブレスも吐ける。比べるまでもない。

「それもそうか……でもさ、わざわざそんな姿にならなくても」

「どういう意味?」

 ミューは少し怪訝そうな表情でゲイルに尋ねた。

「わざわざ女性にならなくても良かったんじゃって」

「俺が? 逆になんで男性の姿にならなきゃいけないんだ? 女の俺が?」

「それもそうか。女性なら女性の姿になった方がいいか……っっっっっっっっっっっって! まってーーーーーー! ミューって女だったの!」

「何を今更……生殖器だって男性のはついてないぞ。ほら見てみ」

 ミューはそこまで話すとホットパンツに手をかけて脱いで見せようとするが、ゲイルが焦って止めたのだった。

「待て待て待て待て! いいから! 見せなくていいから!」

「いや、ゲイルが信じてなさそうだったから」

「違う違う。そうじゃない。信じてない訳じゃない。今まで男だと思ってたから、そのギャップに……」

「ま、それならいいけど」

 少し不貞腐れたような表情を見せながら、ミューはホットパンツからその手を離した。

「でも、なんで僕を探してってグランドラグーン様が?」

「クロウリーさんとフェイレイさんが頼んだんだよ。グランドラグーン様に」

「あ!」

「だからゲイルと仲が良かった俺が探してたってワケだ」

「嫌だよ! 僕は二人の所には戻らない。僕の出来が悪いのがいけないんだ」

「いいよ。別に」

 予想だにしなかったミューの言葉にゲイルは素っ頓狂な声を出してしまう。

「ふぇ?」

「いや、だから、別に無理して戻らなくてもいいんじゃない? って言ってるの」

「え、だって。ミューは僕のこと探すように頼まれたんじゃ?」

「そうだよ。探してくれって頼まれた。だから探した。以上」

「え、それだけ? 連れて帰ろうとしないの?」

「うん。俺は別に連れて帰れだなんて一言も頼まれてないからね。探してくれって頼まれただけだよ」

「な、なるほど」

 ゲイルの中で煮え切らないような何か……のような物が渦巻くが、ミューの言っていることは最もだと納得してしまう。

「ま、帰りたくなったら帰ればいいんじゃない? しばらく地上こっちで旅でもしてれば帰りたくなるかもしれないし」

「しばらくか……」

「そうだね。百年くらい……」

「百年経ったら僕はもう死んでるってば!」

 そして路地裏にゲイルのツッコミが響き渡ったのだった。
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