魔法が使えず無能と蔑まれたので、物理で無双し使い魔たちと一緒にダンジョン攻略してみせます。

織侍紗(@'ω'@)ん?

文字の大きさ
30 / 40

三十話 懐かしい顔

しおりを挟む
 ふと意識を取り戻したアレフはガバッと身体を起こした。するとバサリとタオルが額から落ちる音が聞こえた。

「ここは……どこだ……?」

 キングバジリスクを倒してから、恐らくその毒でやられた自分は何とか魔法陣に入り込めたはず……入った魔法陣から考えると今居るのは十一階層でなければならない。
 アレフはそう思ったが、まだ視界がぼんやりとしておりはっきりとしない。目に入る限りの情報だとどこかの家の中のようにアレフは感じた。今起き上がったベッド、そのベッドに今まで横たわっていた自分と……恐らく誰かが看病してくれていたようだった。今、パサリと落ちたタオルはその事実を物語っているとしか思えなかった。

「一体誰が……」

 そう呟いたアレフの左の後ろからカタンと物音が聞こえた。アレフはその音に勢いよく振り返るとそこには何かが座っているようだった。
 位置関係からその存在がアレフを看病してくれていたのだろう。まだぼんやりとする視界でじっと見ると、その存在がはっきりとして来た。

 それ・・はウンディーネ、透き通った水色の身体を持つ少女のような姿形をした精霊族でレア度はHRハイパーレアの使い魔だ。

 使い魔であると言うことは、付近には召喚士も存在していることを物語っている。しかし普通に考えれば五階層ですら辿り着いた者はいない遺跡ダンジョン。十一階層には召喚士などいるはずはなく、助けられることなど有り得ないはずだ。しかし現にアレフの目の前に・・・・・・・・存在しているのである。
 それに、人の看病をするなど普通の使い魔などしない。

 しかし、その事以上にアレフはそのウンディーネが視界に入った瞬間息を飲んだ。
 そのウンディーネに見覚えがあったからだ。それ・・は遠い昔の記憶……十年以上前である。

 アレフがかつて知っていた人物の使い魔はウンディーネだった。そのウンディーネと目の前のウンディーネは同じ存在のように感じたと同時にアレフは何故か懐かしい気持ちに包まれたのだ。

「ま、まさか……君は……?」

 目の前のウンディーネに向かい驚きの声を漏らすアレフに対して、まるで年の離れた弟を見守るかのような雰囲気を纏ったウンディーネは優しく微笑んだ。
 アレフが意識を取り戻したことを喜んでいるのと同時に、その問いに応えているようだった。

 その懐かしい覚えのある雰囲気についアレフは記憶の片隅にあるその使い魔の名を呟いてしまう。自分の好きだった人物、目標にしていた人物、アレフの知る限り、使い魔に名前を付ける人物など一人しかいない……その人物が従えていたウンディーネに付けた名前である。

「やっぱり……ディーネ?」

 その呟きと同時にドアがカチャリと開いた。と、同時に姿を現した人物にアレフは絶句してしまう。

 その人物は入ってくるや否や、アレフが起き上がっていることに気づき、アレフに声をかけた。

「お、起きたな。まだ寝てないとダメだろ」

 懐かしく聞き覚えのあるその声を聞いたアレフは、その・・声を聞いた瞬間につい声を漏らしてしまった。

「と、父さん……」

 そう、アレフの前には死んだと思っていた父が立っていたのだ。記憶の中の姿より少し痩せているが、その姿は間違いない。

「父さんって、やっぱりアレフか? その白髪、まさかとは思ったが。年齢もあの時から考えるとこれくらいになっているはずだったし」

 目の前の男性は少し驚いている様子を示したが、自身が助けた人物がアレフである可能性は考えていたようで、アレフと違い動揺する程では無かったようだ。

「ど、どうして……父さんが?」

 色々な思いや感情が押し寄せ、言葉に詰まるアレフの頭をわしゃわしゃと撫でた父、カールはベッドの横にどかっと座って頭をポリポリとかいた。

「どうして……って言われるとなぁ……十年前にここに来てから帰ることも出来ないでいただけだがなぁ」

「十年前って……ミノタウロスもキングバジリスクも倒して来たんじゃ?」

 そうアレフが尋ねるとカールは首をゆっくりと横に振った。

「いやいや、ミノタウロスは五階層のボスなんだろうな? 倒していないし、キングバジリスクなんて一目見て死ぬと思ったから戦ってないぞ?」

「じゃあどうやって……」

「十年前にとある部屋から転移の魔法陣を使ってこの階層まで来たんだ。で、その部屋にも戻れず、キングバジリスクも倒せない、上の階層にも行けない。だからここに住むしか無かった。幸いウンディーネは治癒の特殊能力を使える。まぁお前を助けられたのもその力があったからだな…。お前はキングバジリスクを倒して来たんだろ? でも毒でやられた、だから倒れてた 違うか?」

 カールの言う通りだとアレフは首を縦に振った。その後、カールの話していたことで気になった箇所について尋ねた。

「もしかして最初のとある部屋って滝の中のある洞窟から行ける部屋?」

 そのアレフの問いにカールは少し驚いた表情を見せる。

「ああ……そうだが……お前も知ってるのか?」

「俺も何度かその部屋には行ったことがある。今考えると、父さんが居なくなったのはランク戦の日だったかも……でも、そうか、父さんは生きてたのか」

 二人とも黙り込み、しんみりとした雰囲気が漂ってしまう。しばらくの間、どちらも言葉を発することが出来ない。カールも様々な思いが去来しているのかもしれない。
 死んだと思っていた父が生きていたのだ。アレフは他にも話したいことが沢山ある。沢山ありすぎてどれか話したらいいかわからなかった。
 カールも同じである。沢山あるからこそ、どれから話せばいいかわからなかったのだ。

「なあ、アレフ……」

 沈黙を破ったのはカールだった。

「母さんは、元気か?」

 カールが一番気になったのは、母ミューズのことなのだろう。ミューズについてアレフに尋ねてきた。

「母さんか……父さんが居なくなってからしばらくして体調を崩しちゃって。最近はあまり良くないみたい」

 アレフはミューズのことを思い出すようにしながらカールに答えた。最近はアレフの目から見てもかなり体調が優れないように見えたのだった。

「そうか。苦労をかけたな」

 そうカールが呟くと再び沈黙の時が流れる。が、今度はそれ・・を打ち破ったのはアレフだった。

「ねえ、父さん。もう帰ろ? 俺がキングバジリスク倒せば……」

 しかし、カールは首を横に振った。

「でも、恐らく一緒にキングバジリスクの部屋に入ることは出来ないぞ? 恐らくお前が戦っている時……魔法陣は起動していなかった。急にそこからお前が現れたんだ。倒したから魔法陣が使えるようになったんだろ。多分入れるには一人だけだと思う。あ、お前が倒したあとにすぐ入れば……」

 今度はアレフが首を横に振ったのだった。

「いや、多分次に部屋に入ったらキングバジリスクは復活してるはず……ミノタウロスの時はそうだったから……」

 アレフはなんとか帰る方法が無いかとじっと考え、一つの疑問が浮かんだ。

「そうだ……戻る魔法陣はなんで使えないの?」

 そもそも発端はそこだ。あの部屋に行く魔法陣はこの階層にあるはず。実際カールはそれを使ってこの階層まで来たのだ。
 しかしカールはこうも言った。その部屋にも戻れないと。つまり魔法陣が使えないと言っているのである。

「まあな。それは見た方が早いか……」

 そう呟いてじっとアレフを見つめカールは大きく息を吐いた。

「しかし、もう大丈夫そうだな。あんなに死にそうな顔色で倒れてたのに、ピンピンしてやがる……どんな鍛え方をしたんだか……」

 少し呆れているかのような表情をカールは浮かべた後のすっと立ち上がってこう言った。

「その様子だともう立てるな? ほら外に出るぞ、付いてこい」

 そしてガチャリと扉を開けて外に出ていったのだった。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

えっ、能力なしでパーティ追放された俺が全属性魔法使い!? ~最強のオールラウンダー目指して謙虚に頑張ります~

たかたちひろ【令嬢節約ごはん23日発売】
ファンタジー
コミカライズ10/19(水)開始! 2024/2/21小説本編完結! 旧題:えっ能力なしでパーティー追放された俺が全属性能力者!? 最強のオールラウンダーに成り上がりますが、本人は至って謙虚です ※ 書籍化に伴い、一部範囲のみの公開に切り替えられています。 ※ 書籍化に伴う変更点については、近況ボードを確認ください。 生まれつき、一人一人に魔法属性が付与され、一定の年齢になると使うことができるようになる世界。  伝説の冒険者の息子、タイラー・ソリス(17歳)は、なぜか無属性。 勤勉で真面目な彼はなぜか報われておらず、魔法を使用することができなかった。  代わりに、父親から教わった戦術や、体術を駆使して、パーティーの中でも重要な役割を担っていたが…………。 リーダーからは無能だと疎まれ、パーティーを追放されてしまう。  ダンジョンの中、モンスターを前にして見捨てられたタイラー。ピンチに陥る中で、その血に流れる伝説の冒険者の能力がついに覚醒する。  タイラーは、全属性の魔法をつかいこなせる最強のオールラウンダーだったのだ! その能力のあまりの高さから、あらわれるのが、人より少し遅いだけだった。  タイラーは、その圧倒的な力で、危機を回避。  そこから敵を次々になぎ倒し、最強の冒険者への道を、駆け足で登り出す。  なにせ、初の強モンスターを倒した時点では、まだレベル1だったのだ。 レベルが上がれば最強無双することは約束されていた。 いつか彼は血をも超えていくーー。  さらには、天下一の美女たちに、これでもかと愛されまくることになり、モフモフにゃんにゃんの桃色デイズ。  一方、タイラーを追放したパーティーメンバーはというと。 彼を失ったことにより、チームは瓦解。元々大した力もないのに、タイラーのおかげで過大評価されていたパーティーリーダーは、どんどんと落ちぶれていく。 コメントやお気に入りなど、大変励みになっています。お気軽にお寄せくださいませ! ・12/27〜29 HOTランキング 2位 記録、維持 ・12/28 ハイファンランキング 3位

大自然を司る聖女、王宮を見捨て辺境で楽しく生きていく!

向原 行人
ファンタジー
旧題:聖女なのに婚約破棄した上に辺境へ追放? ショックで前世を思い出し、魔法で電化製品を再現出来るようになって快適なので、もう戻りません。 土の聖女と呼ばれる土魔法を極めた私、セシリアは婚約者である第二王子から婚約破棄を言い渡された上に、王宮を追放されて辺境の地へ飛ばされてしまった。 とりあえず、辺境の地でも何とか生きていくしかないと思った物の、着いた先は家どころか人すら居ない場所だった。 こんな所でどうすれば良いのと、ショックで頭が真っ白になった瞬間、突然前世の――日本の某家電量販店の販売員として働いていた記憶が蘇る。 土魔法で家や畑を作り、具現化魔法で家電製品を再現し……あれ? 王宮暮らしより遥かに快適なんですけど! 一方、王宮での私がしていた仕事を出来る者が居ないらしく、戻って来いと言われるけど、モフモフな動物さんたちと一緒に快適で幸せに暮らして居るので、お断りします。 ※第○話:主人公視点  挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点  となります。

治療院の聖者様 ~パーティーを追放されたけど、俺は治療院の仕事で忙しいので今さら戻ってこいと言われてももう遅いです~

大山 たろう
ファンタジー
「ロード、君はこのパーティーに相応しくない」  唐突に主人公:ロードはパーティーを追放された。  そして生計を立てるために、ロードは治療院で働くことになった。 「なんで無詠唱でそれだけの回復ができるの!」 「これぐらいできないと怒鳴られましたから......」  一方、ロードが追放されたパーティーは、だんだんと崩壊していくのだった。  これは、一人の少年が幸せを送り、幸せを探す話である。 ※小説家になろう様でも連載しております。 2021/02/12日、完結しました。

辺境薬術師のポーションは至高 騎士団を追放されても、魔法薬がすべてを解決する

鶴井こう
ファンタジー
【書籍化しました】 余分にポーションを作らせ、横流しして金を稼いでいた王国騎士団第15番隊は、俺を追放した。 いきなり仕事を首にされ、隊を後にする俺。ひょんなことから、辺境伯の娘の怪我を助けたことから、辺境の村に招待されることに。 一方、モンスターたちのスタンピードを抑え込もうとしていた第15番隊。 しかしポーションの数が圧倒的に足りず、品質が低いポーションで回復もままならず、第15番隊の守備していた拠点から陥落し、王都は徐々にモンスターに侵略されていく。 俺はもふもふを拾ったり農地改革したり辺境の村でのんびりと過ごしていたが、徐々にその腕を買われて頼りにされることに。功績もステータスに表示されてしまい隠せないので、褒賞は甘んじて受けることにしようと思う。

手切れ金代わりに渡されたトカゲの卵、実はドラゴンだった件 追放された雑用係は竜騎士となる

草乃葉オウル ◆ 書籍発売中
ファンタジー
上級ギルド『黒の雷霆』の雑用係ユート・ドライグ。 彼はある日、貴族から依頼された希少な魔獣の卵を探すパーティの荷物持ちをしていた。 そんな中、パーティは目当ての卵を見つけるのだが、ユートにはそれが依頼された卵ではなく、どこにでもいる最弱魔獣イワトカゲの卵に思えてならなかった。 卵をよく調べることを提案するユートだったが、彼を見下していたギルドマスターは提案を却下し、詳しく調査することなく卵を提出してしまう。 その結果、貴族は激怒。焦ったギルドマスターによってすべての責任を押し付けられたユートは、突き返された卵と共にギルドから追放されてしまう。 しかし、改めて卵を観察してみると、その特徴がイワトカゲの卵ともわずかに違うことがわかった。 新種かもしれないと思い卵を温めるユート。そして、生まれてきたのは……最強の魔獣ドラゴンだった! ロックと名付けられたドラゴンはすくすくと成長し、ユートにとって最強で最高の相棒になっていく。 その後、新たなギルド、新たな仲間にも恵まれ、やがて彼は『竜騎士』としてその名を世界に轟かせることになる。 一方、ユートを追放した『黒の雷霆』はすべての面倒事を請け負っていた貴重な人材を失い、転げ落ちるようにその名声を失っていく……。 =====================  アルファポリス様から書籍化しています!  ★★★★★第1〜4巻発売中!★★★★★  ★★★コミカライズ第1巻発売中!★★★ =====================

最低最悪の悪役令息に転生しましたが、神スキル構成を引き当てたので思うままに突き進みます! 〜何やら転生者の勇者から強いヘイトを買っている模様

コレゼン
ファンタジー
「おいおい、嘘だろ」  ある日、目が覚めて鏡を見ると俺はゲーム「ブレイス・オブ・ワールド」の公爵家三男の悪役令息グレイスに転生していた。  幸いにも「ブレイス・オブ・ワールド」は転生前にやりこんだゲームだった。  早速、どんなスキルを授かったのかとステータスを確認してみると―― 「超低確率の神スキル構成、コピースキルとスキル融合の組み合わせを神引きしてるじゃん!!」  やったね! この神スキル構成なら処刑エンドを回避して、かなり有利にゲーム世界を進めることができるはず。  一方で、別の転生者の勇者であり、元エリートで地方自治体の首長でもあったアルフレッドは、 「なんでモブキャラの悪役令息があんなに強力なスキルを複数持ってるんだ! しかも俺が目指してる国王エンドを邪魔するような行動ばかり取りやがって!!」  悪役令息のグレイスに対して日々不満を高まらせていた。  なんか俺、勇者のアルフレッドからものすごいヘイト買ってる?  でもまあ、勇者が最強なのは検証が進む前の攻略情報だから大丈夫っしょ。  というわけで、ゲーム知識と神スキル構成で思うままにこのゲーム世界を突き進んでいきます!

神様の忘れ物

mizuno sei
ファンタジー
 仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。  わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。

ユニークスキルの名前が禍々しいという理由で国外追放になった侯爵家の嫡男は世界を破壊して創り直します

かにくくり
ファンタジー
エバートン侯爵家の嫡男として生まれたルシフェルトは王国の守護神から【破壊の後の創造】という禍々しい名前のスキルを授かったという理由で王国から危険視され国外追放を言い渡されてしまう。 追放された先は王国と魔界との境にある魔獣の谷。 恐ろしい魔獣が闊歩するこの地に足を踏み入れて無事に帰った者はおらず、事実上の危険分子の排除であった。 それでもルシフェルトはスキル【破壊の後の創造】を駆使して生き延び、その過程で救った魔族の親子に誘われて小さな集落で暮らす事になる。 やがて彼の持つ力に気付いた魔王やエルフ、そして王国の思惑が複雑に絡み大戦乱へと発展していく。 鬱陶しいのでみんなぶっ壊して創り直してやります。 ※小説家になろうにも投稿しています。

処理中です...