賢者の幼馴染との中を引き裂かれた無職の少年、真の力をひた隠し、スローライフ? を楽しみます!

織侍紗(@'ω'@)ん?

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第六話 女神ノルン

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 俺はふと意識を取り戻した。どこかに横たわっている。目の前には白い天井が広がっている。
 俺はなんでここにいるんだろう……ってかここはどこだ? 思考がぼやけて何も思い出せない……

「やっと起きた?」

 俺の足の方から声が聞こえた。どうやら誰かがそこにいるようだ。俺はなんとか上半身を起こした。綺麗な女性がソファに横なりながら片手に持っているタブレットのようなものを見ながら気だるそうにしていた。声の主は恐らくこの女性なのだろう。
 銀髪のツインテールで小柄である。ちょっとキツめな顔をしているが、背中に生えている白銀の羽も特徴的で、一目で神々しさを感じる。その雰囲気は俺に直感的に神的な存在であると思わせるほどの神々しさだった。

海堂 かいどう はじめであってる?」

 その女性はタブレットを見ながら俺に問いかけてきた。いくら頭がぼんやりしておると言っても自分の名前はさすがにわかる。俺はゆっくりと頷いた。

「そちらは?」

 俺は恐る恐る尋ねた。その存在感は俺を萎縮させるほどだったからだ。

「私は女神ノルン。運命担当をする女神なんだけどさ、ちょっとしくじっちゃってさー」

 ノルンはタブレットから視線を逸らすことなく答えた。が、その神々しさとは打って変わった適当な口調だ。
 語ってる内容は恐らくノルンが失敗をしたという類のようなのだろうが、悪びれる様子もない。

「いや、ホント、他の人の運命をいじってたら、あなたが勝手に死んじゃってさー」

 俺は驚いた。ここには俺とノルンしかない。ならノルンが言った『あなた』ってのは俺しかいない。

「え、し、死んじゃった?」

「そーそー、覚えてない? あなた死んじゃったの。電車に轢かれてさー」

 ちょっとウンザリした顔でノルンが答えた。そこで俺は思い出した。死の瞬間を。と、同時に思考が鮮明になっていく……
 電車を待っていた帰り道、隣で待ってた女子高校生が、後ろから酔っ払いにどんっと押された所が見えて、俺は慌てて手を出して引っ張ったんだ。逆に入れ替わるように俺がホームから投げ出されたんだ。
 俺が黙っているとノルンが再び喋りだした。ちなみに俺が起き上がってからずっとタブレットを見ていて一切こっちは見ていない。

「思い出した? あなた電車に轢かれたんだよー。隣に居た落ちそうになった女子高校生を引っ張った変わりにさー。ってかさ、なんであなた、あそこにいたのさ。ホントならあなたの後ろにいた男子高校生が女子高校生を助けて二人とも無事で、そこでラブロマンスになるのー」

 くねくねと体を動かし、そんな事を言いながらジト目でこちらを見てきた。しかし、やっとこっちを見たな……

「なんであなた、あそこにいたの? あーあ、おかげで計画がぜーんぶパーよ。女子高校生は助かったけど、あなたが引っ張ったおかげで捻挫しちゃうし。あなたが引っ張らなきゃ別に捻挫もせずに無傷で、男子高生に助けられて、女子高校生も男子高生も、なーんともなかったのに、あなたが女子高校生の事怪我させちゃうし。ホント邪魔だわー」

「え、俺はそこで死ぬ運命だったの?」

「いっぱい運命管理する中であなたなんかいちいち構ってるわけないじゃん」

 こいつ俺に興味無いんだな……でも、そのラブロマンスとやらには興味津々だったと……

「つまり俺があんたの見たかったラブロマンスとやらの邪魔をしちゃったって事?」

「そーそー、ホント余計な事をしてくれたよね。マジで死んで欲しいわー」

 いや、俺はもう死んでるんですよね? これ以上死んで欲しいってこいつマジか……
 無茶苦茶なことを言う女神だな……ってか本当に神様か? さっきまでの威厳は一体……
 俺はさっきまでの神々しさと打って変わっての女神の態度に驚きを隠せず言葉にならない。

「でさ、勝手に死んでもらっちゃカ・ン・ペ・キな仕事をしてるワ・タ・ク・シの沽券にかかわるからさー。あなた勝手に死んじゃホント困るのよー」

 いや、お前さっき死んで欲しいって言ってたよね? 望み通り死んでるんですけど、今度は死んじゃ困るって身勝手過ぎない?

「だから、ちょっと転生させるねー」

「え? 転生? ラノベによくあるやつ? ってちょっと話が唐突過ぎるんですけど……」

「黙れドン太郎!」

 え、俺が? ドンってしたのあんただろ?

「ま、とりあえず転生用の端末パクってきたんだよねー。バレないウチに返さないとまずいからさっさと始めましょ。初めて触るけど、まぁ大丈夫っしょー。なんか問題あってもそんなの関係ねぇ。ピッポッパっと……ん? 職? 何か選ばないといけないの? うわー、いっぱいあって面倒いや。どうせ死ぬ前も無職だったみたいだし、無職でいいや……ってあはは、三十歳童貞無職ニート野郎だったのあんた。まじウケるー」

「いやいや、死んだ時は確かに無職だったけどリストラされたばかりだったぞ? 再就職活動中に電車に轢かれたからニートじゃないし。リストラだって俺の手柄を全部横取りした課長が、支店長に昇格した時に口封じで辞めさせられたんだし」

 俺は不満の声を上げたがそんな主張をノルンは全く気にすることなくタブレットをポンポン叩き続ける。

「エラーかな? なんか表示出てきたわー。まあ関係ないね、とりあえずOKしとけばいいっしょ。って何これまた変な表示出てきたわー。えー、なんかこれ、面倒くさすぎ! マジでお前死んでくれてチョー迷惑! ホント死んで詫びろっての……ってあれ? なんか大丈夫っぽい。次は……魂の記憶? 何それ……職がわかった時に目覚める設定にしちゃったみたい。じゃあその時までは現地人と変わんないってことね。まあどうでもいいけど」

 こいつの言葉どおりであれば俺はその職がわかった時まで多分前世の記憶が戻らないってことだろう。魂の記憶とか言ってたし。

「え、十二歳までかかるの? せっかく苦労して転生させたのに記憶が目覚める前に死んじゃうとかちょっとムカつくんですけどー。まぁいいやー、こいつが死んでも転生さえさせれば、もうどうでもいいし。とりあえず一応生き残れるようにお祈りでもしといてあげるか。女神の祈りとかマジ感謝して欲しいわー。ん、また、なんか出てきたわ。とりあえず、はい、はい、連打ねー。あ、ちがう! もっと真剣になるのだ! なんちって」

「あ、あの……女神様の祈りって効果は?」

「あん? い、祈りの力はスゲーに、き、決まってるじゃん! 凄いよー」

 ぜってーこいつの祈りに効果なんかない!

「ってかさ、そもそも転生しなくていいって選択肢はないの?」

「はぁ? 勝手に死んだあなたが悪いんだから黙ってて! 三十歳で無職の童貞さん?」

「う……そこ、今は関係ないよね?」

「あはは、ごめんごめんねー。せめて次の人生は女の子とお付き合い出来るようにはしてあげるわー」

「童貞だったけど、彼女だって居たことあるわ!って何言わせんだよ! ってもしかして、女の子選べたりも出来る?」

 俺は特に下心なんかなかったけど、単純に興味から聞いてしまう。運命の女神って言うくらいだからそれくらいも出来るのかもしれない。

「あはは、そんな事出来るわけないじゃん。ってかあんたの為に付き合う相手の運命いじるとか相手に悪いでしょ」

 いや、確かに人の運命を勝手にいじるのは悪いのかもしれないが、そもそも論で俺がこうなったのも、こいつが退屈しのぎで、男子高生と女子高校生くっつけようとしてたからだ。
 ま、こいつと言い合ってても時間の無駄か……

「そ、そうですね」

「まぁ解ってるなら許すわー」

 と、俺の体が段々と光に包まれる。

「お、どうやらとりあえず成功したみたいだねー。仕事はカ・ン・ペ・キに! だね!」

 どうやら転生が始まったようだ……完璧とは程遠いけど……ってこれでおしまい?

「あれ? ラノベでよくあるチートとか貰えないの?」

「ああ、考えるのめんどいからさっき全部キャンセルしといたわ」

「な、なにぃ!!」

 俺は頭を抱えた。
 マジか! さっきポンポンタップしてた時か! せっかくの体験をめんどいの一言で終わらせるとか、このクソ女神ホントムカつくわ!
 そんな俺に構わずノルンは言葉を続ける。

「これからあんたが転生する世界は剣と魔法が広がっている世界。あなたが好きだった所謂ファンタジーの世界ね!しかも、千年前に魔王が滅んでチョー平和らしいよ! さすがにその辺は選んだわー。殺伐とした世界とかちょっとだけ良心が痛むしね! マジで感謝することを許そう」

 こいつに良心なんかあるのか……まあ、でも平和に越したことははないか……チートも無いみたいだし、記憶が戻る前に死んでも嫌だし……
 俺は頭を抱えたままそんなことを考えた。
 しかし、暇そうにタブレットを眺めていたノルンの様子が急に変わった。

  「えっ、ちょっと待って! 魔王って約千年に一度復活するっぽい! やばくね? ちょうど復活する時期じゃん! ま、まぁもう転生止められないしいいよね?」

 この慌てっぷりは本当なようだ。一応良心はあったみたいだな。ってさっきより光が強くなったし、体も段々と透けていくな……

「ま、まぁ、とりあえず死なないようにお祈りします。ナムー」

 いや、それ、絶対間違えてんだろ! ってかこいついつも祈ってんな!
 とツッコもうかと顔を上げると、時は既に遅かったようだ。両手を合わせてお祈りしているノルンの姿が薄れていくところだった。
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