23 / 123
第二十三話 団結の証
しおりを挟む
「ほら、ご主人様。あそこです」
僕たちは買い物ついでに冒険者ギルドに立ち寄った。特に目的は無かったけれども、近くを通りかかったし、何かめぼしいクエストでもあれば……と思ってのことだった。
その時だった。レオナが僕にそう声をかけてきたのは。
「あ、昨日の人だ」
「ええ……」
そこにはレオナを襲っていた人の似顔絵が貼りだされていた。犯罪者にもランク付けがされているようで、それによると彼はCランクと書いてあった。
「んっと……Cランクの犯罪者……? ま、良くわかんないや……って大丈夫? レオナ、顔色が悪いよ?」
ふと横にいるレオナに視線を送ると、顔から血の気が引いて青い色になっていた。
「だ、大丈夫です。ちょっと思い出してしまって……」
レオナは少し引きつった笑顔を返してくれながら、そう口にした。気を遣ってくれているのが僕にでさえ分かる。
「ごめんね。思い出させちゃって」
「いえ! ご主人様は謝らないで下さい! そもそも助けて頂かなかったら……」
レオナは両手を前に出して手をパタパタと横に振りながらそう答えた。そして再度、似顔絵に目をやると、こう言葉を続けた。
「でも、昨日はよく見てなかったけど、Cランクだったんですね。奇跡だわ……」
「奇跡って?」
「あの犯罪者は私どころか、結構な経験を詰んだ冒険者ですら勝てるかどうか……と言った強さだったんです。そこをご主人様が偶然通りかかるなんて奇跡だなって」
「なるほどね。あの人、なかなか強かったんだ」
襲われてたし、レオナが勝てないというのはわかる。けど、他の冒険者が勝てない、というのが僕には正直分からなかった。そういうの詳しくないしね。
そんな僕の様子を察してくれたレオナが、こう話してくれた。
「私みたいな駆け出しの冒険者はFランクから始まります。EはFランクの冒険者が数人がかりでやっと互角になるくらいの強さだそうです。そしてDランクはEが数人……ご主人様は少なくともBランクは下らない強さをお持ちだ、という事です」
「なるほどね」
僕は再度似顔絵を見て、ざっと他のクエストを流し見した。レオナの顔色はだいぶ良くなったけど、長居する理由もないし、一回出た方がいいかな?
「めぼしそうなクエストもないし、行こうか?」
「はい」
そして僕たちは冒険者ギルドを後にした。しばらく歩いていると、とある店が僕の視界に入ってきた。人の出入りもまあまあ有り、結構重要そうなお店に思えたのだった。
「あそこ、なんだろ?」
立ち止まってそう呟くと、レオナがこう返してくれた。
「あれは魔導具屋です」
「へぇ……ちょっと入ってみてもいい?」
「勿論です!」
僕たちは魔導具屋に入り、並べられた数々の魔導具を順に見ていく。
「色んな魔導具があるんだね」
「魔導具は魔石に魔力を込めて作られます。用途によって形も様々になったりするんですよ」
「へぇ。確かに色々あるね。あれは魔石の形のままだけど、水を生み出す魔導具って書いてあるね。こっちは風を生み出すし扇の形になってる。あのスコップの形は地面を掘りやすくするみたい。人によっては便利なんだろうね。見てるだけでも面白いね」
「はい! そうですね! ご主人様のお役に立てる魔導具があれば良いんですが……」
「あれば……ね……」
僕の耳元でリアがボソリと呟いた。何か含みがある言い方だなぁ。と、その時、とある魔導具が僕の目に止まった。
「これはなんだろ? ただの板みたいだけど。団結の証? なんだろ。これは」
「これは名前を刻んだ人達で経験値を分け合えるものよ」
その板を手に取るとリアがそう答えてくれた。そして、こう続けて話す。
「六人まで名前が刻めるのよ。で、それを身につけた人が魔物を倒すとその人達で経験値を分け合えるわ。でもね……」
「でも?」
「マスターには無駄よ。持ってても。経験値は分け合えないわ。名前を刻んだらマスターが倒しても、経験値が入らなくて、他の人達だけで分け合っちゃうことになっちゃう。経験値の分配も世界の干渉を一度挟んじゃうから」
「え? じゃあ僕はレベル上がらないの?」
「名前を刻まなきゃ経験値はマスターに全部入るから大丈夫よ。マスターが得られる経験値はゼロか全部かどっちかってこと」
「んーなるほど……」
さっきの含みのある言い方はそういう意味だったのかもしれない。そもそも僕には魔導具が使えないのかも……ただ、これは使えそうだな。
「金貨十枚か……これ買おうかな?」
僕がそう呟くと、リアが抗議の声を上げた。
「マスターには意味無いって言ったじゃん? 話、聞いてたの?」
「うん。僕には効果無いのはわかったよ。でも、レオナには効果あるんでしょ? 経験値は全部レオナに行くから、レオナのレベルが上がる。僕のレベルを上げたきゃ名前を消してから倒せばいいんだよね? レオナの為にもレオナのレベルは上げたいし。レベルが低いのに強いって思われちゃうのもおかしな話でしょ? メイドでどうやって上げようと思ってたんだ。これでレオナが危ない思いしなくてすむ」
「あー、なるほどね。それなら経験値も無駄にならないか」
「ご主人様……申し訳ありません」
横でレオナが小さくなって謝罪の言葉を告げた。それに対して僕は首を横に振りながらこう答えた。
「違うよ。僕がやりたいからやるだけ。レオナは気にしないでよ。それに僕の代わりに色々して貰うから、これくらいはさせてよ」
「ありがとうございます」
レオナが元気よくお辞儀する。うん、可愛い。それだけで僕にはもう充分だ。と思った。
買い物も終わり魔導具屋を出るとレオナが思いついたようにこう僕に声をかけてきた。
「そうだ! この近くに教会があるんです。孤児院もありますから、カタリナちゃんのお見舞いにお付き合い頂けませんか?」
「そうなの? もちろん良いよ」
「ありがとうございます! こっちです!」
レオナは一度ぺこりとお辞儀をすると、教会に向かって僕の前を歩き始めたのだった。
僕たちは買い物ついでに冒険者ギルドに立ち寄った。特に目的は無かったけれども、近くを通りかかったし、何かめぼしいクエストでもあれば……と思ってのことだった。
その時だった。レオナが僕にそう声をかけてきたのは。
「あ、昨日の人だ」
「ええ……」
そこにはレオナを襲っていた人の似顔絵が貼りだされていた。犯罪者にもランク付けがされているようで、それによると彼はCランクと書いてあった。
「んっと……Cランクの犯罪者……? ま、良くわかんないや……って大丈夫? レオナ、顔色が悪いよ?」
ふと横にいるレオナに視線を送ると、顔から血の気が引いて青い色になっていた。
「だ、大丈夫です。ちょっと思い出してしまって……」
レオナは少し引きつった笑顔を返してくれながら、そう口にした。気を遣ってくれているのが僕にでさえ分かる。
「ごめんね。思い出させちゃって」
「いえ! ご主人様は謝らないで下さい! そもそも助けて頂かなかったら……」
レオナは両手を前に出して手をパタパタと横に振りながらそう答えた。そして再度、似顔絵に目をやると、こう言葉を続けた。
「でも、昨日はよく見てなかったけど、Cランクだったんですね。奇跡だわ……」
「奇跡って?」
「あの犯罪者は私どころか、結構な経験を詰んだ冒険者ですら勝てるかどうか……と言った強さだったんです。そこをご主人様が偶然通りかかるなんて奇跡だなって」
「なるほどね。あの人、なかなか強かったんだ」
襲われてたし、レオナが勝てないというのはわかる。けど、他の冒険者が勝てない、というのが僕には正直分からなかった。そういうの詳しくないしね。
そんな僕の様子を察してくれたレオナが、こう話してくれた。
「私みたいな駆け出しの冒険者はFランクから始まります。EはFランクの冒険者が数人がかりでやっと互角になるくらいの強さだそうです。そしてDランクはEが数人……ご主人様は少なくともBランクは下らない強さをお持ちだ、という事です」
「なるほどね」
僕は再度似顔絵を見て、ざっと他のクエストを流し見した。レオナの顔色はだいぶ良くなったけど、長居する理由もないし、一回出た方がいいかな?
「めぼしそうなクエストもないし、行こうか?」
「はい」
そして僕たちは冒険者ギルドを後にした。しばらく歩いていると、とある店が僕の視界に入ってきた。人の出入りもまあまあ有り、結構重要そうなお店に思えたのだった。
「あそこ、なんだろ?」
立ち止まってそう呟くと、レオナがこう返してくれた。
「あれは魔導具屋です」
「へぇ……ちょっと入ってみてもいい?」
「勿論です!」
僕たちは魔導具屋に入り、並べられた数々の魔導具を順に見ていく。
「色んな魔導具があるんだね」
「魔導具は魔石に魔力を込めて作られます。用途によって形も様々になったりするんですよ」
「へぇ。確かに色々あるね。あれは魔石の形のままだけど、水を生み出す魔導具って書いてあるね。こっちは風を生み出すし扇の形になってる。あのスコップの形は地面を掘りやすくするみたい。人によっては便利なんだろうね。見てるだけでも面白いね」
「はい! そうですね! ご主人様のお役に立てる魔導具があれば良いんですが……」
「あれば……ね……」
僕の耳元でリアがボソリと呟いた。何か含みがある言い方だなぁ。と、その時、とある魔導具が僕の目に止まった。
「これはなんだろ? ただの板みたいだけど。団結の証? なんだろ。これは」
「これは名前を刻んだ人達で経験値を分け合えるものよ」
その板を手に取るとリアがそう答えてくれた。そして、こう続けて話す。
「六人まで名前が刻めるのよ。で、それを身につけた人が魔物を倒すとその人達で経験値を分け合えるわ。でもね……」
「でも?」
「マスターには無駄よ。持ってても。経験値は分け合えないわ。名前を刻んだらマスターが倒しても、経験値が入らなくて、他の人達だけで分け合っちゃうことになっちゃう。経験値の分配も世界の干渉を一度挟んじゃうから」
「え? じゃあ僕はレベル上がらないの?」
「名前を刻まなきゃ経験値はマスターに全部入るから大丈夫よ。マスターが得られる経験値はゼロか全部かどっちかってこと」
「んーなるほど……」
さっきの含みのある言い方はそういう意味だったのかもしれない。そもそも僕には魔導具が使えないのかも……ただ、これは使えそうだな。
「金貨十枚か……これ買おうかな?」
僕がそう呟くと、リアが抗議の声を上げた。
「マスターには意味無いって言ったじゃん? 話、聞いてたの?」
「うん。僕には効果無いのはわかったよ。でも、レオナには効果あるんでしょ? 経験値は全部レオナに行くから、レオナのレベルが上がる。僕のレベルを上げたきゃ名前を消してから倒せばいいんだよね? レオナの為にもレオナのレベルは上げたいし。レベルが低いのに強いって思われちゃうのもおかしな話でしょ? メイドでどうやって上げようと思ってたんだ。これでレオナが危ない思いしなくてすむ」
「あー、なるほどね。それなら経験値も無駄にならないか」
「ご主人様……申し訳ありません」
横でレオナが小さくなって謝罪の言葉を告げた。それに対して僕は首を横に振りながらこう答えた。
「違うよ。僕がやりたいからやるだけ。レオナは気にしないでよ。それに僕の代わりに色々して貰うから、これくらいはさせてよ」
「ありがとうございます」
レオナが元気よくお辞儀する。うん、可愛い。それだけで僕にはもう充分だ。と思った。
買い物も終わり魔導具屋を出るとレオナが思いついたようにこう僕に声をかけてきた。
「そうだ! この近くに教会があるんです。孤児院もありますから、カタリナちゃんのお見舞いにお付き合い頂けませんか?」
「そうなの? もちろん良いよ」
「ありがとうございます! こっちです!」
レオナは一度ぺこりとお辞儀をすると、教会に向かって僕の前を歩き始めたのだった。
12
あなたにおすすめの小説
神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします
夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。
アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。
いわゆる"神々の愛し子"というもの。
神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。
そういうことだ。
そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。
簡単でしょう?
えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか??
−−−−−−
新連載始まりました。
私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。
会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。
余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。
会話がわからない!となるよりは・・
試みですね。
誤字・脱字・文章修正 随時行います。
短編タグが長編に変更になることがございます。
*タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。
異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。
もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。
異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。
ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。
残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、
同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、
追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、
清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
異世界に転生したので幸せに暮らします、多分
かのこkanoko
ファンタジー
物心ついたら、異世界に転生していた事を思い出した。
前世の分も幸せに暮らします!
平成30年3月26日完結しました。
番外編、書くかもです。
5月9日、番外編追加しました。
小説家になろう様でも公開してます。
エブリスタ様でも公開してます。
異世界転生旅日記〜生活魔法は無限大!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
農家の四男に転生したルイ。
そんなルイは、五歳の高熱を出した闘病中に、前世の記憶を思い出し、ステータスを見れることに気付き、自分の能力を自覚した。
農家の四男には未来はないと、家族に隠れて金策を開始する。
十歳の時に行われたスキル鑑定の儀で、スキル【生活魔法 Lv.∞】と【鑑定 Lv.3】を授かったが、親父に「家の役には立たない」と、家を追い出される。
家を追い出されるきっかけとなった【生活魔法】だが、転生あるある?の思わぬ展開を迎えることになる。
ルイの安寧の地を求めた旅が、今始まる!
見切り発車。不定期更新。
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
魔法が使えない落ちこぼれ貴族の三男は、天才錬金術師のたまごでした
茜カナコ
ファンタジー
魔法使いよりも錬金術士の方が少ない世界。
貴族は生まれつき魔力を持っていることが多いが錬金術を使えるものは、ほとんどいない。
母も魔力が弱く、父から「できそこないの妻」と馬鹿にされ、こき使われている。
バレット男爵家の三男として生まれた僕は、魔力がなく、家でおちこぼれとしてぞんざいに扱われている。
しかし、僕には錬金術の才能があることに気づき、この家を出ると決めた。
田舎娘、追放後に開いた小さな薬草店が国家レベルで大騒ぎになるほど大繁盛
タマ マコト
ファンタジー
【大好評につき21〜40話執筆決定!!】
田舎娘ミントは、王都の名門ローズ家で地味な使用人薬師として働いていたが、令嬢ローズマリーの嫉妬により濡れ衣を着せられ、理不尽に追放されてしまう。雨の中ひとり王都を去ったミントは、亡き祖母が残した田舎の小屋に戻り、そこで薬草店を開くことを決意。森で倒れていた謎の青年サフランを救ったことで、彼女の薬の“異常な効き目”が静かに広まりはじめ、村の小さな店《グリーンノート》へ、変化の風が吹き込み始める――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる