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第二十四話 カタリナの悲哀
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私はぼんやりと窓の外を眺めていました。いや、その表現は間違っているのかもしれないですわ。窓のあるべき方向に顔を向けていた。と言った方が正しいのかもしれないです。
何故なら、私には窓が見えないから。近づけば見えないことはない。そう、鼻先が触れるくらいの距離ならばですけど。
このベッドの上からじゃ、窓なんか見えない。かろうじて光が差し込んでいるのが分かる程度でしかないのです。
「はぁ……お祈りの時間か……」
部屋の外が少し賑やかになったことで、私はその時間が近づいて来ていることを知りました。私と同じように、この孤児院で住む子たちが礼拝堂に向かっていく音。間もなくお祈りの時間が始まる。
いつもならシスターが迎えに来るけど、今日は多分来ないと思います。ヤケになって、しばらく放っておいてって言っちゃったから。
それに……
「お祈りなんかしても意味ないですわ。神様なんていないのですから」
そう。私は神様の存在なんて信じてないのです。もし、神様がいるなら私にばかり、こんな運命を背負わせるなんておかしいのですから。
目も不自由に、両親にも棄てられ、物心付いた時から孤児院での生活をさせるなんて……
逆に居るとしたら……
「こんな事なら生まれて来なければ良かったですわ。無駄な時間ばかり過ごして……」
一筋の涙が頬を伝う。誰かの手を借りないと何も出来ない。周りは気にしないでと言ってくれるが、そんなの無理な話ですわ。
こちらから何も手助け出来ないのに、助けて貰うだけ。こんな思いをするなら産んで貰いたくなど無かったですわ。
そう……棄てるくらいなら殺して欲しかったくらいです。昨日はシスターにも当たってしまって……ああ! 私なんて!
私が塞ぎこんでいたその時でした。
コンコン! その時、ドアをノックする音が部屋に響き渡ったのは。遅れて聞き覚えのある声が聞こえてきました。
「カタリナちゃん? いる?」
レオナちゃんの声だわ。レオナちゃんは、ここ一年くらい前から知り合った女の子その頃から教会にお祈りしに来るようになったのです。そう言えばレオナちゃんもお母さんが体調悪くなったからお祈りに来ていたんだっけ。確か半年くらい前に亡くなったはず……
「ほら、やっぱり神様なんていないんだ……」
気がつくと私はそんなことを呟きながら少し笑っていました。レオナちゃんには悪いけど、レオナちゃんのお母さんだって救われなかった。神様は居ないという証。諦めの笑みが零れてしまったようです。
「カタリナちゃん? いないの?」
レオナちゃんが再度私を呼ぶ声が聞こえ、私はハットしながら言葉を返しました。
「レオナちゃんかしら? いるわよ」
「入っていい?」
「良くってよ」
私の返事と共に、ガチャリと扉が開く音が聞こえました。
「お邪魔します。礼拝堂を覗いてもカタリナちゃん居なかったから、部屋かなって」
「ごめんなさいね。ちょっと気分が悪くて……」
「大丈夫?」
「大丈夫よ。レオナちゃんの声を聞いて少し元気になったから」
レオナちゃんは心配そうに私を覗き込むような仕草をしているようですわ。ボヤけて見えなどしないのだけど。私には声の位置や朧げな形でそれくらいしか分かりませんけれども。
「ほら、お花を買ってきたの。お花ならいい匂いもするから、カタリナちゃんも楽しめるかなって」
レオナちゃんはそう言いながら、窓の方へ移動して行きました。レオナちゃんはとても気遣いが出来る良い子。その気遣いに私は少し感極まってしまいました。
「あ、ありがとう……」
「ここ、飾っていい?」
「ええ、勿論よ」
ふわりと窓から花の甘い香りが漂ってきます。私は目を閉じてその香りを楽しみました。
「ん……いい香り……」
レオナちゃんはお母さんが亡くなった時に少し落ち込んでいる様子はあったけど、それ以降も頻繁に様子を見に来てくれます。
もう神様にお祈りする意味なんてないのだから、教会に来る意味なんてないのに……私の様子を見に来てくれる本当にいい子なのです……
「レオナちゃんと一緒に学校に行きたかったですわ……」
「ん? 何か言いました?」
つい口にしてしまっていたようですわ。そんなこと、レオナちゃんに聞かれたら、毎日でも迎えに来るって話になっちゃいますわ。そんな負担になること、絶対にさせたくないですわ。
そう思った私は誤魔化すことにしました。
「き、気の所為ですわ……あ、あれ?」
「どうしたの?」
「いや、レオナちゃん以外に人が居るような気がして……」
「あ、ごめんなさい。私のご主人様。ちょっと買い物ついでにお見舞いに来たんだ」
その言葉を合図にするかのように、私の耳に声が届いてきました。
何故なら、私には窓が見えないから。近づけば見えないことはない。そう、鼻先が触れるくらいの距離ならばですけど。
このベッドの上からじゃ、窓なんか見えない。かろうじて光が差し込んでいるのが分かる程度でしかないのです。
「はぁ……お祈りの時間か……」
部屋の外が少し賑やかになったことで、私はその時間が近づいて来ていることを知りました。私と同じように、この孤児院で住む子たちが礼拝堂に向かっていく音。間もなくお祈りの時間が始まる。
いつもならシスターが迎えに来るけど、今日は多分来ないと思います。ヤケになって、しばらく放っておいてって言っちゃったから。
それに……
「お祈りなんかしても意味ないですわ。神様なんていないのですから」
そう。私は神様の存在なんて信じてないのです。もし、神様がいるなら私にばかり、こんな運命を背負わせるなんておかしいのですから。
目も不自由に、両親にも棄てられ、物心付いた時から孤児院での生活をさせるなんて……
逆に居るとしたら……
「こんな事なら生まれて来なければ良かったですわ。無駄な時間ばかり過ごして……」
一筋の涙が頬を伝う。誰かの手を借りないと何も出来ない。周りは気にしないでと言ってくれるが、そんなの無理な話ですわ。
こちらから何も手助け出来ないのに、助けて貰うだけ。こんな思いをするなら産んで貰いたくなど無かったですわ。
そう……棄てるくらいなら殺して欲しかったくらいです。昨日はシスターにも当たってしまって……ああ! 私なんて!
私が塞ぎこんでいたその時でした。
コンコン! その時、ドアをノックする音が部屋に響き渡ったのは。遅れて聞き覚えのある声が聞こえてきました。
「カタリナちゃん? いる?」
レオナちゃんの声だわ。レオナちゃんは、ここ一年くらい前から知り合った女の子その頃から教会にお祈りしに来るようになったのです。そう言えばレオナちゃんもお母さんが体調悪くなったからお祈りに来ていたんだっけ。確か半年くらい前に亡くなったはず……
「ほら、やっぱり神様なんていないんだ……」
気がつくと私はそんなことを呟きながら少し笑っていました。レオナちゃんには悪いけど、レオナちゃんのお母さんだって救われなかった。神様は居ないという証。諦めの笑みが零れてしまったようです。
「カタリナちゃん? いないの?」
レオナちゃんが再度私を呼ぶ声が聞こえ、私はハットしながら言葉を返しました。
「レオナちゃんかしら? いるわよ」
「入っていい?」
「良くってよ」
私の返事と共に、ガチャリと扉が開く音が聞こえました。
「お邪魔します。礼拝堂を覗いてもカタリナちゃん居なかったから、部屋かなって」
「ごめんなさいね。ちょっと気分が悪くて……」
「大丈夫?」
「大丈夫よ。レオナちゃんの声を聞いて少し元気になったから」
レオナちゃんは心配そうに私を覗き込むような仕草をしているようですわ。ボヤけて見えなどしないのだけど。私には声の位置や朧げな形でそれくらいしか分かりませんけれども。
「ほら、お花を買ってきたの。お花ならいい匂いもするから、カタリナちゃんも楽しめるかなって」
レオナちゃんはそう言いながら、窓の方へ移動して行きました。レオナちゃんはとても気遣いが出来る良い子。その気遣いに私は少し感極まってしまいました。
「あ、ありがとう……」
「ここ、飾っていい?」
「ええ、勿論よ」
ふわりと窓から花の甘い香りが漂ってきます。私は目を閉じてその香りを楽しみました。
「ん……いい香り……」
レオナちゃんはお母さんが亡くなった時に少し落ち込んでいる様子はあったけど、それ以降も頻繁に様子を見に来てくれます。
もう神様にお祈りする意味なんてないのだから、教会に来る意味なんてないのに……私の様子を見に来てくれる本当にいい子なのです……
「レオナちゃんと一緒に学校に行きたかったですわ……」
「ん? 何か言いました?」
つい口にしてしまっていたようですわ。そんなこと、レオナちゃんに聞かれたら、毎日でも迎えに来るって話になっちゃいますわ。そんな負担になること、絶対にさせたくないですわ。
そう思った私は誤魔化すことにしました。
「き、気の所為ですわ……あ、あれ?」
「どうしたの?」
「いや、レオナちゃん以外に人が居るような気がして……」
「あ、ごめんなさい。私のご主人様。ちょっと買い物ついでにお見舞いに来たんだ」
その言葉を合図にするかのように、私の耳に声が届いてきました。
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