賢者の幼馴染との中を引き裂かれた無職の少年、真の力をひた隠し、スローライフ? を楽しみます!

織侍紗(@'ω'@)ん?

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第三十話 畏怖

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「ご主人様、本当にこちらの方がいいのですか?」

 人通りがないルーチェ村への道。私とご主人様が初めて会った場所よりも少しだけ奥、ご主人様の仰る目的地はそこでした。

「うん。ほら、街道の方だと人も居るからね。あまり人目につきたく無いから」

「なるほど、でしたら確かにこちらの方が都合宜しいですね」

 私がご主人様の言葉にそう頷くとほぼ同時に、ご主人様は前方を指さしました。

「ほら、ちょうどいい。あそこにゴブリンが三体いるよ」

「確かに……」

 私がご主人様の指さした方を見ると、木の影に三体のゴブリンが見えます。

「ねぇ、リア。この距離でも大丈夫? 団結の証は効果ある?」

「大丈夫よ。この森の中くらいなら効果はあるわ」

 リアはご主人様の言葉に頷きながらそう言いました。

「良かったー」

 再度、私がご主人様を見ると、安堵しているような様子が見えました。

「ちなみにレオナがレベル2になるのに、ゴブリンだとどれくらい必要なの?」

 ご主人様の言葉に私の背後にいたリアの答えはこうでした。

「うーん。ゴブリンにもよるけど、大体十体くらいかしら」

「うーん……じゃあアイツら纏めて倒してもダメか……」

 私はその言葉を聞いて、目の前にいるご主人様にこう尋ねます。

「纏めて? ご主人様、もしかして三体と一度に戦うおつもりですか?」

「え? そうだったけど?」

「気をつけて下さい。私はご主人様のお強さを信じております。でも、敵が複数になればなるほど、相手にするのは難しくなる、とも聞いてます」

「え? そうなの?」

 ご主人様の言葉に対して、リアが私に同意してくれました。

「ま、そりゃそうでしょ。そこに関しては、レオナの言う通りだわ」

「だから、私のために無理しないで下さいね。私が至らなくて申し訳無いのに、こんなこと言って……」

「え? どういうこと?」

「出来れば、一匹ずつ倒せる相手を見つけて頂いて。私は時間がかかっても全然良いので」

 私の為にご主人様へ危険が及ぶのは嫌です。私はそう伝えたつもりでした。でも、ご主人様の答えは私の予想とは全然違いました。

「あ! そういうこと! ごめん! もう終わっちゃった!」

「終わった? 終わったとは?」

「だっからもう終わっちゃったの。倒しちゃったの、ほら」

 ご主人様が指さした方を見ると、確かに先程までいた場所にゴブリンは居ません。一体も……その状況に私は混乱してしまいます。

「……は? え? なんで? どうやって?」

「どうやって、ってペシッって叩い……」

「え? え? そういうことじゃなくて、ご主人様、私の目の前にずっといらっしゃいましたよね? え? なんで? いつ?」

「えっと、レオナが、纏めて? って聞く直前じゃない ?」

「んっと、多分そうかな? あんま覚えてないや」

「……は?」

 リアの言葉が本当なら、私の目の前に居たご主人様は、私が心配する前に、その場からゴブリンの所まで行き、叩いて倒した。そして戻ってきたということです。そんなの有り得ると思いますか? 私は多分、とても間の抜けた表情をしていたのかもしれないです。リアが私の肩をポンと叩くのが分かりました。

「レオナ、あなたがそうなるのも分かるわ。大丈夫安心して。あなたが悪いんじゃない。全部バカ女神が悪いのよ」

「は、はあ……」

「ま、いいや。終わったし帰ろっか?」

「え? 終わった?」

 またも私が理解出来ない言葉がご主人様の口から飛び出しました。元々の目的は私のレベル上げのはず。目標は2。そのために必要なゴブリンは10体だとリアは言ってました。でもご主人様はまだ3体しか倒していない……
 私が混乱しているとご主人様はリアにこう尋ねました。
  
「どうリア? レオナのレベルは?」

「大丈夫よ。3になってるわ」

「え? あれ? 三体じゃレベル上がらないって……」

「え? あれ? 十体じゃレベル2でおしまいじゃないの? ピッタリ10体倒したはずなんだけど?」

 私の疑問とご主人様の疑問は噛み合いませんでした。私は三体しか倒していないと思っていたのですが、ご主人様は十体倒したと仰ってます。

「ゴブリンだけじゃなくて、ゴブリンナイトとかゴブリンクイーンとかも入ってたんじゃないの? 知らないわよ、そんなの。あたしにだってマスターが何したか見えないんだし」

「は? え? どういうことです?」

 私があげた驚きの言葉に、最初に答えてくれたのはリアでした

「どういうことって、ついでにあの三体じゃなくて十体ゴブリン見つけて倒して来たんでしょ?」

「うん。レオナが早くって言ってたからそうだけど……」

「え? い、いつですか?」

「だから纏めて? って聞く前よ」

「り、理解出来ません……」

「良いわよ、理解出来なくて」

 な、なんなの……これは……な、なんで震えてるの? わ、私!
 私は何故か微かに体が震えているのを感じました。何故震えるのか一瞬分かりませんでしたが、すぐにその理由を悟ります。
 それは畏怖、私は信じるべきご主人様にある意味畏れを抱いてしまっていたのです。そして信じるべきご主人様へ、少しでも畏れを抱いた自分を恥じました。
 また、同時に私は、ご主人様は私なんかが想像出来る範囲を遥かに超えてしまっていることを理解しました。

「まーでも今回は楽だったよ。魔石のこと考えなくて倒せば良いんだから」

「マスターには跡形もなく倒さない方が大変だもんね。跡形も無いと魔石、手に入らないし」

 またまた初耳です。どうやらご主人様には魔石が残るくらいの手加減をする方が難しいらしいです。

「そうだね。でも、前より体が軽かったなぁ」

「そりゃそうよ。だってレベル5になってるもん」

「え、そうなの? でも、おかしくない? だって団結の証の効果で経験値は全部レオナに行くんじゃないの?」

「そうよ。レベルが上がったのは今じゃないわ。前にゴブリン狩った時かしら」

「えーなんで言わなかったの?」

「聞かれなかったし、言っても意味なかったから。そもそもマスターは自分のレベルあまり気にしてないでしょ?」

 リアは呆れた様子でご主人様へそう言いました。

「そっか、そういえばそうだね。レオナのレベルの方が大事かな。守りたい物を守れる強さがあればそれ以上は特に?」

「それは大丈夫よ。蟻は逆立ちしても象には勝てないんだから」

「どういう意味?」

「そのままの意味よ。ま、理解出来ないならそれでいいわ」

 ご主人様はパッとしない表情でしたが、私にはリアが言ってる意味がハッキリと分かります。多分、私は蟻。いや、ご主人様以外はきっと蟻なんだってことです。だからご主人様のレベルが上がった所で意味は無いってリアは言ってるんだと分かりました。

 ただ、ご主人様はリアの言葉にさほど興味を示した様子も見せずに、一つ伸びをしてこう口にしました。

「んー、じゃあレオナのレベルも上がったし帰るか」

「え、も、もうですか? ほとんど何もしてないと思いますが……」

「だってレオナのレベル上げが目的だったし、今日からレオナは寮に泊まるからその準備もしないとね」

「せ、せめてせっかく作ったお弁当を召し上がって頂けませんでしょうか……」

 私が恐る恐るそう尋ねると、ご主人様はしまった! といった表情になって、こう話してくださいました。

「あー忘れてた。ごめん、ごめん。そうだよね。食べてから帰ろうか」

「せっかくだし人化して食べるわ」

 私がお弁当の準備をしていると、ご主人様は楽しそうにこう呟きます。

「まるでピクニックみたい」

「そうなっちゃう原因はマスターなんだけどね」

「何か言った?」

「ううん、なんでもー。さー食べるわよー」

 そうしてリアは真っ先にお弁当へ手を伸ばしたのでした。
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