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第四十話 孤児院のシスター
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「こんなもんかな? それじゃとりあえず孤児院に向かおうか?」
「ええ、かしこまりましたですわ!」
僕たちは一旦孤児院に向かうことにした。カタリナの必要な物を取りに、そして当然、シスターにはカタリナが寮で生活を始めることを伝えなければならないから。
今日の分の勉強は進まないけど、どちらも必要なことだから。制服だけで過ごす訳にもいかないし、シスターに何も告げずに寮で生活を始めると当然シスターは心配するだろうから。
「この時間はシスターは礼拝堂にいるはずですわ」
カタリナの案内で僕たちが礼拝堂へ着くと、そこにはシスターの姿が無かった。
「あれ? おかしいですわね?」
するとレオナが犬耳をピクピクと震わせた。耳のいいレオナは礼拝堂の奥の扉を指し示して僕たちにこう告げた。
「来客があるみたいです。奥から何か話し声が聞こえます」
「なるほど……邪魔しちゃ悪いし、とりあえずカタリナの準備だけ先にしとこうか?」
僕たちはシスターへの挨拶は後回しにして、カタリナの部屋へ向かおうと、その扉の前を横切った時だった。
「シスター、そろそろお金返して貰わないと困るゲス……」
「デイビッドさん。申し訳ありません……」
僕の耳にも会話が聞こえてきた。一人はシスターなのは間違いない。もう一人はしゃがれた男性の声だった。
「またかい、もう毎年毎年……確かに孤児院の運営は立派な事だけど、借りた物はしっかり返してくれないと……せめていつものように上乗せ分だけでも返してくれないゲスか?」
「申し訳ありません……今年はそれも……」
これは……そう思った僕は居ても立ってもいられず扉を開けて中に入ってしまった。中へ入ると、二人の視線が僕たちへ向けられる。
「あ、カタリナ?」
カタリナを見つけ、動揺した様子でその名を呼ぶシスターに、カタリナはこう尋ねた。
「シスター、この方は?」
「こちらはデイビッドさん……孤児院にお金を貸して下さっている方よ……」
「シスター。お金借りてたのね……」
「どうしても寄付だけじゃやっていけなくて……」
「どうして相談してくれなかったの?」
「あなた達に心配かけたくなかったのよ……」
そんな二人の会話を後目にしゃがれた声のガマガエルのような男は、顎に手を当てながらこう話した。
「へぇ……これはこれは……ま、私としてはお金さえ返してくれれば別にシスターである必要は無いでゲス。カタリナちゃんでも構わないでゲスよ? ぐへへ」
うわ……カタリナの身体を舐め回すように見てきた……この展開だとカタリナに目を付けて、身体で払わせようとか思ってるに違いない。
このゲス野郎が……
そう思った僕はカタリナとその男の間に入るように立って、その男にこう尋ねた。
「ちなみに上乗せ分とやらはいくらなんですか?」
「ん? 坊ちゃんは?」
「こちらは私と同じ組の御主神様ですわ」
デイビッドの問いにカタリナが答えてくれる。すると、今度はデイビッドは僕の頭から足元まで舐め回すように見ながらこう語る。
「なるほど。上乗せ分ですか? それは金貨三枚ですよ」
「え? 年間で、ですか?」
「もちろんでゲス」
「え、えっと……ちなみに元々いくら借りてるんです?」
「金貨三百枚ですよ。上乗せ分は今まで払って頂いてるので、それだけでゲス。これが契約書でゲス」
デイビッドは僕に契約書を見せてくる。契約書にはそう書いてあった。
「た、確かに……年で1%しか返済しなくて良いんですね」
年利1%って住宅ローン並じゃん? 条件悪くないよね? ってか逆に良いよね? あれ? 悪徳金融じゃないの? この人……
「私も商売人でゲスからね。こうやって契約書を結んでしまった以上、シスターに返してもらうしかないでゲス。私は契約書はいらないと言ったでゲスが、シスターが借りる以上は、と言ったでゲスね」
シスターにチラリと視線を送ると俯いてしまっている。
「え、えっとちなみにそのお金って僕が払ってもいいの?」
「坊ちゃんが? もちろん私は全然構いませんでゲスが……でも、金貨三枚も持ってるんでゲスか?」
「そっちじゃなくて三百枚の方ですよ」
「ええ! なぜ坊ちゃんがそんな大金を……」
「僕には両親の遺産が金貨千枚ほどありますから」
僕の言葉にデイビッドのガマガエルの様な顔は更に醜く歪んでしまった。
「ええ! そんな若いのにご両親を無くされて! 大変だったでしょう……そんな大事なお金は受け取れないでゲス! でも、そんな大事なお金を使おうとするなんて! なんて良い子なんでゲスか!」
デイビッドの目から一筋の涙が零れる……え? なんでこの人泣いてるの? もしかして良い人……なの? 悪徳金融じゃないの? ゲス野郎じゃないの? あ、口癖はゲスだからゲス野郎ではあるのか?
混乱し、僕はこの状況に戸惑ってしまった。
「じゃ、じゃあこうしましょう。シスター、ついでになって申し訳ありませんが、カタリナは今日から僕に仕えたいとの事です。で、僕からシスターへ、カタリナを今まで育ててくれたお礼として金貨三百枚を渡します。それでシスターはお金を返して下さい! ね? ホントそれでお願いします!」
「あー、坊ちゃん……」
デイビッドは何か言いたそうな、でも躊躇っているような様子を見せている。
「マスター、それじゃダメよ。足りないわ」
「足りない? あ!」
耳元でリアが指摘してくれた。僕はそれに気づいて言い直すことにした。
「金貨三百三枚シスターに払いますから!」
僕の言い直した言葉を聞いたデイビッドは、ゆっくりと頷きながらこう話した。
「ふむ。そうでゲスね。坊ちゃんからは受け取らなくても、シスターからの支払いを拒否することは出来ないでゲスし。そういう事なら仕方ないでゲス……受け取るまで坊ちゃんは聞かなそうでゲスし……」
「じゃ、じゃあ僕はこれで! レオナ! あとは頼んだよ! 僕は先にカタリナの部屋に行って待ってるから!」
僕は支払いをレオナに任せ、一目散にその場から逃げ出したのだった。
「ええ、かしこまりましたですわ!」
僕たちは一旦孤児院に向かうことにした。カタリナの必要な物を取りに、そして当然、シスターにはカタリナが寮で生活を始めることを伝えなければならないから。
今日の分の勉強は進まないけど、どちらも必要なことだから。制服だけで過ごす訳にもいかないし、シスターに何も告げずに寮で生活を始めると当然シスターは心配するだろうから。
「この時間はシスターは礼拝堂にいるはずですわ」
カタリナの案内で僕たちが礼拝堂へ着くと、そこにはシスターの姿が無かった。
「あれ? おかしいですわね?」
するとレオナが犬耳をピクピクと震わせた。耳のいいレオナは礼拝堂の奥の扉を指し示して僕たちにこう告げた。
「来客があるみたいです。奥から何か話し声が聞こえます」
「なるほど……邪魔しちゃ悪いし、とりあえずカタリナの準備だけ先にしとこうか?」
僕たちはシスターへの挨拶は後回しにして、カタリナの部屋へ向かおうと、その扉の前を横切った時だった。
「シスター、そろそろお金返して貰わないと困るゲス……」
「デイビッドさん。申し訳ありません……」
僕の耳にも会話が聞こえてきた。一人はシスターなのは間違いない。もう一人はしゃがれた男性の声だった。
「またかい、もう毎年毎年……確かに孤児院の運営は立派な事だけど、借りた物はしっかり返してくれないと……せめていつものように上乗せ分だけでも返してくれないゲスか?」
「申し訳ありません……今年はそれも……」
これは……そう思った僕は居ても立ってもいられず扉を開けて中に入ってしまった。中へ入ると、二人の視線が僕たちへ向けられる。
「あ、カタリナ?」
カタリナを見つけ、動揺した様子でその名を呼ぶシスターに、カタリナはこう尋ねた。
「シスター、この方は?」
「こちらはデイビッドさん……孤児院にお金を貸して下さっている方よ……」
「シスター。お金借りてたのね……」
「どうしても寄付だけじゃやっていけなくて……」
「どうして相談してくれなかったの?」
「あなた達に心配かけたくなかったのよ……」
そんな二人の会話を後目にしゃがれた声のガマガエルのような男は、顎に手を当てながらこう話した。
「へぇ……これはこれは……ま、私としてはお金さえ返してくれれば別にシスターである必要は無いでゲス。カタリナちゃんでも構わないでゲスよ? ぐへへ」
うわ……カタリナの身体を舐め回すように見てきた……この展開だとカタリナに目を付けて、身体で払わせようとか思ってるに違いない。
このゲス野郎が……
そう思った僕はカタリナとその男の間に入るように立って、その男にこう尋ねた。
「ちなみに上乗せ分とやらはいくらなんですか?」
「ん? 坊ちゃんは?」
「こちらは私と同じ組の御主神様ですわ」
デイビッドの問いにカタリナが答えてくれる。すると、今度はデイビッドは僕の頭から足元まで舐め回すように見ながらこう語る。
「なるほど。上乗せ分ですか? それは金貨三枚ですよ」
「え? 年間で、ですか?」
「もちろんでゲス」
「え、えっと……ちなみに元々いくら借りてるんです?」
「金貨三百枚ですよ。上乗せ分は今まで払って頂いてるので、それだけでゲス。これが契約書でゲス」
デイビッドは僕に契約書を見せてくる。契約書にはそう書いてあった。
「た、確かに……年で1%しか返済しなくて良いんですね」
年利1%って住宅ローン並じゃん? 条件悪くないよね? ってか逆に良いよね? あれ? 悪徳金融じゃないの? この人……
「私も商売人でゲスからね。こうやって契約書を結んでしまった以上、シスターに返してもらうしかないでゲス。私は契約書はいらないと言ったでゲスが、シスターが借りる以上は、と言ったでゲスね」
シスターにチラリと視線を送ると俯いてしまっている。
「え、えっとちなみにそのお金って僕が払ってもいいの?」
「坊ちゃんが? もちろん私は全然構いませんでゲスが……でも、金貨三枚も持ってるんでゲスか?」
「そっちじゃなくて三百枚の方ですよ」
「ええ! なぜ坊ちゃんがそんな大金を……」
「僕には両親の遺産が金貨千枚ほどありますから」
僕の言葉にデイビッドのガマガエルの様な顔は更に醜く歪んでしまった。
「ええ! そんな若いのにご両親を無くされて! 大変だったでしょう……そんな大事なお金は受け取れないでゲス! でも、そんな大事なお金を使おうとするなんて! なんて良い子なんでゲスか!」
デイビッドの目から一筋の涙が零れる……え? なんでこの人泣いてるの? もしかして良い人……なの? 悪徳金融じゃないの? ゲス野郎じゃないの? あ、口癖はゲスだからゲス野郎ではあるのか?
混乱し、僕はこの状況に戸惑ってしまった。
「じゃ、じゃあこうしましょう。シスター、ついでになって申し訳ありませんが、カタリナは今日から僕に仕えたいとの事です。で、僕からシスターへ、カタリナを今まで育ててくれたお礼として金貨三百枚を渡します。それでシスターはお金を返して下さい! ね? ホントそれでお願いします!」
「あー、坊ちゃん……」
デイビッドは何か言いたそうな、でも躊躇っているような様子を見せている。
「マスター、それじゃダメよ。足りないわ」
「足りない? あ!」
耳元でリアが指摘してくれた。僕はそれに気づいて言い直すことにした。
「金貨三百三枚シスターに払いますから!」
僕の言い直した言葉を聞いたデイビッドは、ゆっくりと頷きながらこう話した。
「ふむ。そうでゲスね。坊ちゃんからは受け取らなくても、シスターからの支払いを拒否することは出来ないでゲスし。そういう事なら仕方ないでゲス……受け取るまで坊ちゃんは聞かなそうでゲスし……」
「じゃ、じゃあ僕はこれで! レオナ! あとは頼んだよ! 僕は先にカタリナの部屋に行って待ってるから!」
僕は支払いをレオナに任せ、一目散にその場から逃げ出したのだった。
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