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1話 母の死
しおりを挟む目を開けると、そこは森の中だった。
木々がさわさわと揺れ、キラキラと木々から覗く光はとても煌めいていた。
「ぅあ…」
まだ力の入りにくい体を起こし、立ち上がる。
くぁっ
と伸びをして森の空気を吸い込んだ。
それと共に一筋の涙が頬を伝う。
私の名前はライラ。
偉大な母から授かった名前、贈り物。
私はこの名前を、母の想いを一生忘れない。
魔族の世界から追放されながらも、魔力の少ない人間界で私が生まれるその時まで毎日毎日魔力を送り続けてくれた母。
たった1年半だったけど、大切に育ててくれてありがとうございました。
ライラは母様からたくさんのことを学び、たくさんの愛を貰いました。
ライラは幸せです。
こんなにも偉大な母を持てた私は果報者です。
母様、安心してください。
ライラは元気に産まれました。
本当はずっとずっと一緒にいたかったけど、ライラは母様の想いを叶えるために一人で生きていきます。
人間の父様を選んだ母様、どうか自分を責めないでください。たとえ禁忌であったとしても、世界中から非難されようとも、私は母様と父様を責めたりしません。
ライラは今、とても幸せです。
安心してくだい母様、ライラはずっと、ずっと…
「…母様を想っています」
きっと、これから辛いことが沢山ある。
けれど、私は母様から沢山の知識と愛情を貰った。私はそれで十分だ。
どうか心配しないで、ライラは一人で生きて行きます。寂しくないと言ったら嘘になるけれど、きっと大丈夫。
今にも溢れだしそうになる涙を必死に堪え、空に向かって想い、願った。
私はライラ。
偉大なる父と母の間に生まれた魔人族の娘。
私は今日、この人間界の森の中で生まれた。
今日は、私の誕生日。
おめでとうライラ。
はじめよう永劫の旅を。
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