合唱強豪校出身の俺、追い出されたので転校先の弱小校を再建し見返す事にした。

さくちゃん

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第1章〜アインザッツ

入部

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「…は?何言ってんですか…申し訳ないけど他をあたってください…」
そう言って俺は走り去ろうとした。
その時、彼女はこう言った。
「私は聖和に勝ちたい」
その言葉に反応し足を止めてしまった。
「顧問は居ないって言ったけど、最近まで居たの。でも先月聖和の顧問が辞めて新しい人を募集してる時に、顧問は聖和に行った。私達を見捨てて。」
「顧問は私達の無力さに呆れてまともな練習すらしてくれなかった。なのに自分は名門校へ行って…本当に許せないの」
…先月という事は俺とすれ違い…
話を聞いている内に心がモヤモヤしてきた。彼女の頬を涙が伝う。
「…君に入ってもらいたかったけど、これ以上はしつこくなるから辞めておくね…本当にごめんなさい。」
「…じゃあね…、」
そう言って彼女は立ち去っていった。

…自分達を見捨てた顧問を許せない。
顧問が居る聖和に勝ちたい。
彼女の気持ちに自分の過去を重ねて考えてしまっていた。

「…夏音部長!」
俺はこれでもかってくらい大声で呼び止め、走って部長の元へ向かった。
周りの生徒はこっちを見ている。
「…入部届、いつ貰いに行けばいいですか…」
部長はびっくりしている。
「…俺も聖和に勝ちたい…いや、地獄を見せてやりたくてね…」
部長は泣きそうになったが、涙を堪え笑顔を見せた。

部長に連れられ、俺は音楽室へ来た。
みんな動揺している中、部長が俺の事について紹介してくれた。
「今日から新しく入部する、清原拓人君!何とあの聖和から来た子だよ!」
聖和出身という事もあり、みんな驚いた反応をしていたし、質問責めもされた。…だが一人だけ、つまらなそうな顔で俺の事を睨んでいた奴が居た。しかし、その時は気にしなかった。

一通り紹介が終わった後、部長から入部届をもらい、サインをして提出した。
「ありがとうね。」
部長は笑顔で受け取り、部の活動について話してくれた。部の目標、役職、決まり事…etc。その後、部員全員で今年のコンクール曲を演奏してくれた。
Nコン(NHK全国合唱音楽コンクール)課題曲は、君が君に歌う歌。
Elvis Woodstockが作詞、大島ミチルが作曲を手がけた。
…お世辞にも上手いとは言えなかったが、そこは目を瞑った。だが、一人だけ上手い奴がいた。それはさっき、俺の事を睨んでいた奴だった。

朝練が終わり、部長が俺の元へ来る。
「何度も言うけど本当にありがとうね。」
「そうだ、LINE交換しよう?ついでにグループも入って欲しいな。」
そう言われLINE交換をする事になった。
LINE交換なんて久々で操作に手こずってしまったが、笑いながら部長が教えてくれた。
一通り終えると、部長がニコニコしながら可愛いスタンプで宜しく、と送ってきた。
だが俺はそんな可愛いスタンプなど持っておらず、普通に宜しくお願いしますと返した。
…そもそも目の前にいるのに文章を送らなくていいのでは…と思ったが、心の中にしまっておく事にした。

部長は何かを思い出したようで、
「また放課後ね!」
と言い部室を走り去っていった。
俺も今日提出の課題が終わっていないのに気付き、慌てて音楽室を出た。


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