縁の鎖

T T

文字の大きさ
上 下
107 / 186
変わりゆく日常

物見遊山 

しおりを挟む
カフェテリアは人で溢れていた。
いつもランチタイムは混雑しているが、今日はそれ以上だった。
食事が終わっても、誰も出ようとしない。

そんなカフェテリアの中を見て

『いつもの席は空いていないだろ』

と思ったサーペント。
だが席は空いていた。
そこだけ予約席のように、誰も座らなかったように感じた。
若干の違和感を覚えるも、サーペントとユーディアが座る。

「サーペント様、空いていて良かったですね。席が取れなかったなんて、カモミーラ様に何て言われるか。」
「ははは。本当だな。」
「あの~、ここ空いていますか?どこも空いていなくて、良ければ相席をお願いできないでしょうか?」

混雑しているカフェテリアで、他に空いている席が無く申し訳なさそうに一人の令嬢がサーペント達に声をかけてきた。

「すみません。こちらの席は今から連れが来るので、相席はできないんですよ。」
「そうだったんですね。でも他に空いていないですし、直ぐに食べ終わりますので、お願いできないでしょうか?」
「ですが…。」
「ユーディア、いいじゃないか。あの二人も相席で嫌な顔をする人間じゃないだろ?座席も3つ空いているんだ、使ってもらえばいいだろう?」
「そうですね。どうぞ、お掛けください。」
「ありがとうございます。」

令嬢はお礼を言うと、ウェートレスが運んできたランチを食べ始めた。


「それにしても遅いな。先に食べていたら、カモミーラは怒るだろうしな。」
「そうですね。カモミーラ様は怒りますね。ところで、やけに視線が突き刺さりませんか?」
「ユーディアも気付いていたか。いつも視線は感じるが、今日は異常なほどだ。」
「相席には嫌がら無くても、この居心地の悪さには、流石のジュエリア様でも顔を顰めると思いますよ。」
「俺もそう思うよ。ランチボックスでも頼んで…」
「今“ジュエリア様”と仰いませんでしたか?お二人はジュエリアお義姉様のお友達なのですか?」
「「え!?」」
「あ、私フィサリス・ライ・ソーディアと申します。今日、編入してまいりました。お見知り置きくださいませ。」

サーペントとユーディアは、突然の自己紹介に驚く。
そして目の前の令嬢が、視線とカフェテリアが物見遊山化した原因だと悟る。
同時に、ここから離れなければと危機感が募る。
しおりを挟む

処理中です...